Fate/Cradle   作:味噌そぼろ

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 魔術師(マスター)による英霊(サーヴァント)の召喚が執り行われる中、アラン・カルヴェスもまた英霊(サーヴァント)の召喚に成功していた。


英霊(サーヴァント)魔術師(マスター)③——アラン・カルヴェスとキャスター——

 「……で、君が私の魔術師(マスター)なんだな?」

 「あ……あぁ……」

 

 召喚した直後、尻餅をついたアランに英霊(サーヴァント)が話しかける。

 しかし、アランは怯えて言葉を発せないようだった。

 英霊(サーヴァント)は片膝を着き、目線を近づける。

 

 「どうなんだ?」

 「え、あ……」

 

 ようやく気を取り戻したアランは立ち上がると、英霊(サーヴァント)に向け高らかに宣言する。

 

 「お、俺がお前の魔術師(マスター)だ! アラン・カルヴェスだ!」

 「そうか」

 

 返事を聞いた英霊(サーヴァント)は満足したのか、静かに立ち上がった。

 

 「これにて契約は完了。私は英霊(サーヴァント)、キャスター。貴方の召喚に応じて参上した。これより、我々は聖杯を求める同志として、共に運命を分かち合おう」

 

 契約が完了すると、キャスターはあたりを見渡した。

 

 「しかし、ここを拠点にするつもりか? 君には酷だろう」

 

 ある程度はほうきで掃いているとはいえ、埃や虫の死骸だらけの、廃墟じみた小屋を拠点とするのは外敵に対する防御以前に衛生面が心配になる。

 

 「あ、そ、それなんだけどさ!」

 

 アランは我に返ったのか、キャスターの言葉に反応したのか、勢いよく立ち上がった。

 ズボンに付着した埃を払い、改めてキャスターに向き直る。

 

 「キャスターなら、『陣地作成』のスキルがあるんだろ? それで何とかしてくれよ!」

 

 小柄なアランは、上目遣いでキャスターの目を見ていた。

 彼の言う『陣地作成』とは、キャスターに与えられるクラススキルである。

 自分にとって有利な陣地を作り出す、文字通りのスキルだが、作り出されるものは『工房』『書斎』等様々で、キャスターによって異なる代物だ。

 そのスキルがあれば、この小屋でさえも鉄壁の要塞になる――――そうアランは考えたのだが。

 

 「ダメだ」

 

 即、キャスターは一蹴した。

 英霊(サーヴァント)が、表情一つ変えず、自身の魔術師(マスター)の頼みを断ったのだ。

 

 「な、なんでだよ、お前は、俺の――――」

 「英霊(サーヴァント)だ。そのことは十分理解している。」

 「……じゃあ、なんで」

 

 口を尖らせて抗議するアラン。

 それを受けてもキャスターは表情一つ変えなかった。

 

 「『陣地作成』のスキルはそう都合の良いものではない。周りの環境を変えるのではなく、環境に合わせて陣地を作るのだ」

 

 そういうとキャスターは周囲を見渡した。

 つられてアランも周囲を見渡す。

 ほうきで掃いただけで、まだ埃と虫の死骸だらけの床、低い天井、狭い間取り――――

 

 「この小屋に陣地を構えても、結果など目に見えているだろう。それに――――」

 

 キャスターは再び視線をアランに向ける。

 

 「それに?」

 

 アランもまた、キャスターを見ていた。

 外から入り込むわずかな光でも、その光を受けた瞳は輝いて見えた。

 

 「……むやみに、人に頼らない方が良い。君は見たところ十四、五歳だろう。もう自分で考えて行動できるはずだ」

 

 キャスターは身を少しかがめ、アランと目線を合わせた。

 

 「ここ以外で、陣地になりそうな建物は無いか? なるべく頑丈な造りの物が良い」

 「え、あぁ……」

 

 なぜ英霊(サーヴァント)に指図されなければならないのか、という疑念が浮かぶが、キャスターの眼差しに気圧されて言い返せなかった。

 とはいえ、指摘は正しい。ここは従うほかないだろうか。

 自分が外の世界を知らないだけで、本来英霊(サーヴァント)とはこういうものなのかも知れない。

 

 「……ここからもうちょっと離れたところに廃村がある。建物も多いし、良い感じのが見つかるかも……」

 

 アランは荷物の中から地図を取り出した。

 

 「ここだ。えーっと……ディヴァエロってところ。霊脈もあるし、魔力の供給については心配ないと思う」

 

 アランが指さした場所をキャスターも確認する。多少離れてはいるものの、たどり着けない距離ではない。

 

 「なるほどな……では、早いうちに移動しよう。それほど良い立地なら、先に陣地を構えたほうが有利だ」

 「わかった。……あ、待って。今明かりを――――」

 「心配はいらない。こちらで用意する。君は出発の準備をしておいてくれ」

 「え?」

 

 キャスターが魔導書のようなものを開き、何かを呟いた。

 すると、キャスターの右手が、より正確には右手の甲が光りだした。

 やはり、魔術師(キャスター)(クラス)英霊(サーヴァント)。こういうのはお手の物か。

 

 「すげぇ……でもどうして? さっきは人に頼るなとかいっといてさ」

 

 納得いかない、とばかりにアランは疑念の目を向けた。

 

 「『むやみに』頼るなと言ったまでだ。それに、君の方がこのあたりの土地勘があるだろう。ここよりも陣地に適した場所を知っているのは君の方のはずだ。その代わり、他の事は私に任せてもらおう」

 「適材適所か!」

 「その通りだ」

 

 疑惑の目から一転、キャスターの行動の真意に気づくと、納得いったとばかりに手を打って、明るい表情を見せた。

 アランは手早く準備を済ませると、小屋の扉を開ける。

 キャスターの手の甲にある光が、いつの間にか外にも見えていた。

 

 「いつの間に……」

 「私の使い魔だよ」

 

 ただの光が、とアランは思ったが、キャスターの右手の甲を目を凝らして見るとその正体が分かった。

 

 「ホタル……?」

 「へぇ、わかるのか?」

 「何回か見たことはあるけど……」

 

 今の時期にはホタルなどいないはずだ。

 もしかしたら、周辺の生物を使い魔とするのではなく、使い魔そのものを召喚する召喚魔術師(サモナー)なのかもしれない。

 

 「ほら、行くぞ」

 「わかってるって」

 

 荷物をまとめたアランは、キャスターと一緒に拠点の候補地へ歩き始めた。




英霊(サーヴァント)ステータス
クラス:キャスター
マスター:アラン・カルヴェス
真名:???
属性:中立・善
身長/体重:170㎝/60㎏
筋力:D・耐久:E・敏捷:D・魔力:C++・幸運:A・宝具:C
・クラススキル
・陣地作成:E-~A+
 自身にとって有利な陣地を作り出す。
 魔術師であれば『工房』を作り出すのだが、彼が作り出すのは『庭園』である。
 周囲の環境に依存する部分が多分にあるため、ランクの変動が激しい。

・道具作成:-
 魔力を帯びた道具を生み出す能力。宝具及びスキルの影響でこのスキルは失われている。

・保有スキル
・執筆の栄誉:C
 文章を記すことで物品に魔力を付与する。
 キャスターは生前、科学者でありながら文芸の分野においても高い評価を受けていたためこのスキルを有している。
 ただし、宝具と呼べるまでに魔力を付与するには生涯をかけて執筆を行う必要がある。

・観察眼:B+++
 固有スキル。相手の戦闘パターン、行動様式、思考などを、観察を通して解析・理解する。英霊(サーヴァント)に対してならステータスやスキル、宝具の察知に有効。真名の看破も可能だが、幸運判定が必要である。
 ターン経過ごとに判定に上方補正がかかる。また、対象が人間よりも動物に近く、さらに昆虫相手ならプラス補正は限界まで上昇する。

・使い魔(虫):EX
 召喚した昆虫、あるいは自然に存在する昆虫を使い魔として使役できる。

・生命への探求(創造):B
 生命の、及びその起源への探求心及び探求に当たっての偉業。昆虫の生態に関する研究や観察の数々はもちろん、昆虫の観察に基づく視点から進化論への鋭い批評を行った彼はこのスキルを有する。
 真名を明らかにした英霊(サーヴァント)に対して有利な判定を得られる。

・宝具
小さき生命の叙事詩(スーヴェニアズ・アントロモジーク)
・ランク:B+/対軍宝具/最大補足:200人/レンジ:0~100
 キャスターが生前執筆した昆虫についての観察記録。様々な昆虫を召喚、使役、強化が可能。
 スキルの影響で微弱ながら魔導書としても機能し、昆虫を媒介に魔術を行使可能。ただし、本人はやりたがらない。
 クモなどの昆虫以外の節足動物も召喚出来るが、消費魔力が増大し、召喚可能な数にも制限がかかる。


 
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