彼とキャスターは陣地となり得る場所を目指し、林の中を歩いていた。
小屋を出たアランとキャスターは、
しばらく経ったときアランが何かに気づいたように歩みを止めた。
「どうかしたのか?」
キャスターはまだ何も気づいていないのか、アラン疑問を投げかける。
「結界だ……人払いの。ずいぶん古いし父さんの術式と違うけど、誰がやったんだろう?」
その言葉を受け、キャスターもアランの横に立つ。
物理的な感触こそ無いが、肌が少しぴりつくような、空間から拒絶されている感覚がある。
「なるほどな。どうする? 迂回するか?」
「まさか。わざわざ人払いしてあるなら、その先を確かめてみたいだろ?」
好奇心が強いのか、アランは目を輝かせながら先へ進んでいく。
そんな彼を見失わないよう、すぐ後ろをキャスターは歩いていた。
しばらく歩いていると、月明りに照らされた石造りの建物が見えて来た。
建物の周辺には芝生のようなものが生えており、建物の外でも過ごしやすそうだ。
「やった! ここなら文句ないだろ、キャスター!」
「あぁ。建物を中心に周囲に庭園を築けば良い陣地になるだろう。しかし……いつの間にか結界の効力が消えているようだが」
肌に感じるピリつきは、いつの間にか消えていた。
「うーん……ここらの霊脈に近づけたくないから林の中にだけ結界を仕掛けたのかな……。ってかキャスター、お前魔術師のクラスだろ? なら何かわかったりしないのかよ」
アランの言う通り、
ならば自身の召喚したキャスターもまた
「残念ながら私は生前、魔術師などではなかった。知識に関しては君の方が上だろう」
「えぇ!?」
アランはまだ十四歳、魔術師として才能はあろうとも、まだまだ成長段階である。
そんな自分に
「じゃあ、どこの
「私か? 私は――──」
キャスターは数歩歩いてアランに対面して脱帽した。ちょうど彼の顔がよく見えるように。
「私はアンリ・ファーブル。生前は昆虫の研究を行っていた。聞き覚えは無いだろうが……」
キャスターは自身の真名について謙遜したが、アランの反応は想像していたものと違っていた。
「ファーブル!? すげぇ! 図鑑で名前見たことあるぜ!」
目を輝かせている彼を前に、今度はキャスターが驚く番だった。
「意外だな、私を知っているとは」
「当たり前だろ! 家にいるときは虫取りくらいでしか遊べなかったから、よく図鑑読んでたんだ! 早く行こうぜ! どんな陣地になるか楽しみだ!」
目を丸くしたキャスターを建物の方に引っ張るアラン。
しかしキャスターの方は、アランの発言から別の疑問が浮かんだようだった。
「虫取りくらいでしか?」
「あぁ、それ以外はほとんど魔術の勉強とかだった。だから今すっげぇ楽しみなんだ!」
屈託のない笑顔を浮かべるアランに引っ張られながら、建物の中に入っていった。
「確かに、ここなら理想的だな」
二人が見つけた建物は地下室のある石造りのモノだった。
もしかしたら、他にもここを利用した魔術師がいるのかも知れない。
二人は建物を出ると、キャスターは宝具であろう本を開いた。
「整理してある。人がいた痕跡かも知れない。しばらくの間、調査を頼む」
キャスターがそう呟くと、どこからかアリが建物に入って来た。
彼は本を閉じ、アランに声を掛ける。
「さて、
「ん、なんだよ改まって」
キャスターが座ると、アランも向かい合うように座った。
「君の話を聞きたい。出来る遊びが虫取りだけというのはどういうことだ?」
「ん? ……あぁ、さっきの事? そのままだよ。敷地の草原で虫取りするのが俺の一番の遊びだったんだよ。それ以外は、大体魔術とかの勉強だった」
「すると……君は外に出たことが……」
「全くないってワケじゃないよ。たまにお父さんとお母さんと一緒に出掛けたりしたし……あ、でも一人になるのはダメっていつも厳しく言われてたなぁ……要するに過保護なんだよ、過保護。俺だってもう十四だってのに……」
それが当然であるかのように語るアランだったが、キャスターの表情は険しかった。
「過保護にしても、少々やり過ぎだろう。君の両親はなぜそのような教育方針を……」
十四歳――――本来ならば広い世界を目にして、自身の視野を広げたり、感性を育んだりする年齢である。
そんな彼を半ば閉じ込めるようなことをする両親に対し疑問を抱いていた。
アランは大の字に仰向けになり、星空を眺めながら言葉を返す。
「お父さんは確か……俺が特別な才能を持っているから、それをうらやましがる連中から守るためとか言ってた」
五大元素の何にも属さないアランの持つ属性。その特異性を時計塔か、あるいはもっと別の組織が放っておくわけがない。そう考えた父親の、子を想っての行動だろう。
「マスター、君は……それでいいのか?」
キャスターは心配そうに問いかけた。いかに子を想っての行動であったとしても。問題は本人がどう感じているか……。
「うーん……俺にとっては次の当主になれるかどうかの方が重要だしなぁ。……というかキャスター」
「どうかしたか?」
アランは上体を起こし、キャスターの方をジトっと見つめた。
「何かやけに優しくないか? 何というか、俺に気を遣ってるっていうか、俺の事情を気にしてるというか……。さっきまで『人に頼るな』みたいなこと言っておいてさ」
キャスターは一瞬ハッとした表情を浮かべたが、すぐに元の調子に戻った。
「私はかつて教師だった。その職業病、とでも思ってくれ。嫌なら、もう君の過去については聞かないが……」
「いや、いいよ。でも俺はもう十四歳だ。子供じゃないんだし、そこまで気にするなよ」
十四歳は十分子供なのではないかとキャスターが思案した時、手紙を咥えた一羽の鳩が舞い降りた。
「手紙? 一体どこから――――」
手紙を受け取ったアランは送り主を見て固まった。
「どうした?」
声を掛けて来たキャスターを不安そうに見て、アランは答えた。
「聖堂教会からだ……。」
マスタープロフィール
名前:アラン・カルヴェス
身長/体重:155cm/43kg
年齢:14
血液型:AB
属性:五大元素に属さない(父は光と命名)
魔力
量:C/質:A 才覚の影響で質は一流。量はまだ伸びしろアリ。
人物
・金髪碧眼の小柄でやや華奢な美少年。
外の世界をほとんど知らないためか、好奇心旺盛な性分に育つ。
まだ魔術師としては幼いためか明るい性格をしており、魔術師然とした態度はまださほど見受けられない。
向上心が高い。二人の兄に後れを取っていると感じているためだろう。
参戦の動機
・次期当主争いを有利に進めるための『箔』としての参加という意味合いが大きい。
聖杯への願い
・聖杯そのものに託す願いはまだ持ち合わせていない。
ただし、いざ手に入れて願いを叶える段階になれば、次期当主になることを願うことが予想される。