Fate/Cradle   作:味噌そぼろ

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 セイバー、シュヴァリエ・デオンを召喚した阿津部は、彼(彼女)と共に拠点に向かっていた。


プロファイリング①~阿津部(あつべ)憲政(のりまさ)という男

 車に乗り込んだ一行は、あらかじめ用意されていた拠点へ向かっていた。

 

 「……で、セイバー、俺について聞きたいことがあるのか?」

 

 後部座席に乗る阿津部が、隣に座るセイバーに話しかける。

 

 「あぁ。まず、貴方の言う所属について聞きたい」

 

 車に乗る直前の会話について気になったらしい。

 

 「そうだな……俺と斎藤は同じ組織に所属している。魔術協会の総本山、『時計塔』の、いわば下請けみたいなもんだ。異端魔術師の狩猟が主だったから、『猟犬』なんて呼ばれてるな」

 「つまり、秘密結社……だと?」

 「まぁそうなるな。……お揃いだな、セイバー」

 「私の事、知ってたのかい?」

 「戦場がフランスって聞いたんだ。ある程度は調べているさ」

 

 セイバー、シュヴァリエ・デオンもまた、ある秘密結社の会員だった経歴を持つ。

 触媒に関係する英霊(サーヴァント)の中でも共通点のあるセイバーが選ばれたのは、ある意味必然と言えたかもしれない。

 

 「それと……もう一つ、いいかい?」

 「別に、質問があるならいくつでも構わないぞ」

 「そういうところだよ」

 

 阿津部が首をかしげると、セイバーはさらに疑問を投げかけた。

 

 「ご主人様(マスター)は、英霊(サーヴァント)である私を人間のように扱っている。魔術師にとって使い魔は道具も同然のはず……だけど貴方は違う」

 「まるで魔術師を知ってるみたいな言い方だな」

 「まぁ、色々な関りがあるからね、『仕事』の都合で」

 

 秘密結社にスパイと、裏稼業と、裏稼業と接する機会が多そうな経歴のあるセイバーならば、当然と言えば当然か。

 

 「私が見て来た魔術師とは違うから、気になったんだ」

 「なるほどな……」

 

 阿津部は、少し考えた。

 

 「質問で返すようで悪いが、お前は、道具として扱われたいのか?」

 「それは――――嫌だな」

 「だからだ。今は使い魔、英霊(サーヴァント)としてこの場にいるが、元は人間。現界して道具みたいに扱われるのは、誰だって本望じゃないだろ?

 そのせいでお互いに信頼できなくなれば、聖杯どころか命も危うい。普段、誰かと任務を遂行する時もそうだ。人の事を蔑ろにするのは絶対にしてはいけないことだ」

 「ご主人様(マスター)……」

 

 セイバーが感心していると、斎藤が会話に参加してきた。

 

 「優しいんだねぇ、憲政君は」

 「……黙って運転してろ」

 「ハッハッハッ! 手厳しい!」

 

 呆れ気味に返答する阿津部と大笑いする斎藤。セイバーに対する言動とは矛盾しているようで、二人にとってはよくある冗談なのだろう。

 

 「でも、優しい君にこそ、聖杯を手に入れて欲しいねぇ。世界征服なんて願われたらたまったモンじゃない」

 「――――そうだ、マスター。これも聞いておきたい」

 

 斎藤の言葉で、何かを思い出したように話し始めるセイバー。

 

 「なんだ?」

 「マスターは――――聖杯を、どう使う?」

 

 聖杯戦争の魔術師(マスター)に選ばれた時点で、聖杯に託す願いがあることは確実と言っていい。

 そしてそれは、魔術師(マスター)英霊(サーヴァント)の共闘関係を築く上で重要なことである。

 阿津部がセイバーとの信頼関係を重視するように、セイバーもまた、重視したいものがあるようだ。

 

 「内容によってはマスター……貴方と共闘することは難しくなる」

 「おいおい……」

 

 いきなりの宣告に焦る阿津部。

 しかし、嘘をつくようなことでもない。阿津部には令呪がある。何かがあれば、従わせることは可能だろう。

 

 「俺は、聖杯に託す願いは特別持ち合わせてはいない。俺のいる組織――――『猟犬』が研究の一環で作り出した聖杯だ。よその手に渡したくないから、同じ組織である俺が手に入れろ。そんな命令が下ったから聖杯戦争に参加している」

 

 セイバーはしばし思考を巡らせる。

 先ほどの台詞が台詞なだけに、妙に気まずい時間となった。

 

 「聖杯を――――生み出した?」

 

 どうやら、共闘についての思考ではなかったらしい。

 阿津部はセイバーにある書類を渡した。

 

 「これは?」

 「俺の任務の概要だ。同時に、俺の行動原理でもある。お前も読んでおけ」

 

 セイバーは資料に目を通す。

 

 『猟犬』が聖杯について研究を行う、その一環として生み出された聖杯こそが、今回の聖杯戦争の報酬、『ゆりかご』であること。

 調整中だった聖杯は、それが完了すると同時に意図せず起動したこと。

 起動した聖杯は実態を失ったため、停止も破壊もできないこと。

 聖杯戦争を勝ち残り、実体化をさせる必要があること。

 任務に当たる阿津部憲政への報酬は――――聖杯そのもの。

 

 「なるほど……つまりこんな大事の任務を請け負うご主人様(マスター)は、組織のエース、ということかい?」

 「あるいは、貧乏くじを引いた悲しき構成員だな」

 

 自嘲気味に笑う阿津部だが、その反応からセイバーは何かを察したようだった。

 

 「もしかして、ご主人様(マスター)はこのこと――――」

 「あぁ。任務を請け負ったときに初めて知った。不思議だよな、上層部の失敗、その尻拭いを何も知らないやつがやる羽目になるんだから」

 「そんな……ご主人様(マスター)は何も悪く――――」

 「良いんだよ、俺にはよくあることだ」

 

 事実、阿津部に舞い込んでくる仕事の量は多い。

 ここ数年は帰宅できず、使用人に家と拓洋の事は任せっきりである。

 そんな中でも、今回の聖杯戦争については例を見ない程の案件ではある。

 

 「聖杯についてだが――――今のところは、あまり考えてはいない。しいて言うなら、家族の無病息災くらいか」

 「ご主人様(マスター)に、家族が?」

 「意外だったか? 息子が一人と使用人が一人……血のつながりは無くても、大事な家族だ」

 

 拓洋を養子に引き取って8年、宮口が使用人に来て6年になる。

 家に帰ることがほとんどないとはいえ、大切な存在に変わりはない。

 

 ――――いや、これはむしろ贖罪だろうか。自らの“枷”として、人生を狂わせてしまった二人への。

 拓洋はもっといい環境で魔術の研鑽を詰めただろう。

 宮口は年齢的に遊び盛りで、恋だってしたかっただろう。

 それを、自身への枷とするためだけに歪めることになってしまった。

 ならばせめて、聖杯は彼らのために――――

 

 「へぇ、僕はてっきり記憶を取り戻すのかと」

 「ん……あ、おい――――」

 「記憶?」

 

 思考を寸断したのは斎藤の言葉。そして余計なことを、と言わんばかりに声を上げる阿津部。

 しかし、セイバーは興味ありげに阿津部の方を見ているため、逆に何も言わないのも怪しい。

 阿津部は、自分で話すことにした。

 

 「――――今から八年前、俺はある任務に就いていた。どうやらその時の事故が原因で、俺は記憶の一部が欠落しているらしい。幸い、任務は無事に成功して自分の名前も、魔術も、所属も――――すぐに思い出せた。

 自分が何者かわからなくなるほどの重症じゃないんだ。気にすることは無いさ」

 「その、事故というのは?」

 「それは――――」

 「憲政君、ウチの職員を守ってくれたんだよ。自分の死を(いと)わずにね。……ホント、優しいんだか、命知らずなんだか……」

 「勘違いするな。それが任務だったんだろう」

 「ご主人様(マスター)……」

 「なんだその笑顔は」

 

 セイバーにとっては、必死にワルぶろうとする子供にでも見えたのだろうか。

 しかし、本当の自分はそうではない。

 自分はもっと――――

 

 「着いたよ」

 

 斎藤が声を掛けた。

 どうやら、拠点に到着したらしい。

 車から降りて拠点を確認する。

 

 「民家、か……? 廃墟に見えるが」

 「人が住まなくなって久しいからね。だけどつくりはしっかりしてるし、使えるようにメンテも終わらせてある」

 「霊脈は?」

 「反応はあったよ。潤沢とまではいかなくても、十分実用の範囲のはずだ」

 

 斎藤は一人、車内に戻った。

 

 「僕にサポートできるのはここまで。多分監督役から連絡が来ると思うから、その時はちゃんと出向いてね」

 

 そういうと、斎藤は車を走らせた。

 

 

 

 

 斎藤を見送った阿津部とセイバーは、拠点の中を確認することにした。

 

 「二階建て、キッチンも地下室もある……良く見つけたな」

 「シャワーもあるよ、ご主人様(マスター)

 

 斎藤が言っていた通り、かなり古いが、ある程度設備が整っていた。斎藤をはじめ、戦闘面以外での人材は阿津部の想像より遥かに豊富かつ優秀なのだろう。

 職員たちの働きに関心していたが、阿津部は重要なことを思い出した。

 

 「セイバー、俺との共闘についてだが……どうだ?」

 

 拠点に向かう道中、車内で行われた問答である。

 祖国(フランス)に忠誠を誓うセイバーにとって、自身の魔術師(マスター)祖国(フランス)に害を為す者か重要である。

 聖杯への願いから、そんな人物であるかを推し量ろうとしていたが――――

 

 「もちろんだよ、ご主人様(マスター)。君は家族のため、私はフランスのため、共に聖杯を掴もう」

 「あぁ。改めて、よろしくな、セイバー」

 

 二人は再び握手を交わした。 




マスタープロフィール

名前:阿津部憲政
英霊(サーヴァント):セイバー
身長/体重:174cm/74kg
年齢:33
血液型:A
属性:空

魔力
量:B/質:B+

人物
・やや短髪の黒髪、中肉中背だが筋肉質の肉体を持つ男性。
 第三次聖杯戦争を機にアインツベルンから分家した存在の末裔、その三代目当主に当たる。
 8年前、ルーマニアでの任務で記憶の一部を欠損している。しかし本人は気にしていない様子。
 英霊(サーヴァント)を道具として扱わない、『根源』に執着しない、携帯電話(スマートフォン)を使用するなど、魔術師らしからぬ性質を持つ。

参戦の動機
・所属する組織が極秘裏に研究・製造していた聖杯『ゆりかご』を他者の手に渡る前に聖杯戦争を終わらせるために参戦。これは彼自身の意志というより、組織から彼に課せられた任務である。

聖杯への願い
・彼が聖杯へ願うことは、しいて言うならば家族の無病息災である。彼自身は贖罪のためと語っているが――――
 
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