この素晴らしいテイワットに祝福を! 作:グランドマスター・リア
作者も修正を随時行っておりますが本当に助かっています
緊急会議。
トーマと共に城下町の怪しげな店とやらに調査に来た俺は、そこで思わぬ再会を遂げる。何とその店を営む怪しげな三人組というのが、魔王軍幹部のリッチーであるウィズ、同じく魔王軍幹部の悪魔バニル、そしてベルゼルグ王国の第一王女にして我が妹であるアイリスだったのだ。
一番最初に思ったのは"何故?"だ。
何故、この三人がこの世界で魔道具店なんざやっているのか。
その疑問を晴らすべく、サトウカズマは秘境へと……
なんぞ、ふざけている場合でもなく、俺は真剣三人と顔を合わせて店内で緊急会議を開始していた。因みにトーマには席を外してもらっている。
「やはり、カズマさんもこの世界に来ていたんですね?だから言ったじゃないですか、あの魔道具は本物なんですって!」
「やかましいわっ、このポンコツ店主め!貴様のせいで店共々こんな何処とも知れぬ場所に飛ばされたのを忘れたのか!?」
事情を聞くと、どうやらまたウィズが出自不明の魔道具でポカをやらかしたらしかった。
事の経緯は、俺達がテイワットに飛ばされてから大体一週間くらい経過した時の事。遺跡での調査から一向に帰らない俺達を心配し、アクセルの町では遂に捜索隊まで結成される事態に発展しかけていた。当然、その話は何かとアクセルに関しては耳聡いアイリスにも伝わり、彼女は俺を探すべくアクセルにお忍びで来訪し、ウィズの店を訪ねるに至る。
そこから―――
「それで、ウィズが引っ張り出した人探しの魔道具の力で、店ごとこっちに転移して来たって訳か……」
「はい……何でもその魔道具は『範囲内の物や人を、探している人物の半径5000キロメートル圏内に転移させる』という物だったみたいで、気が付けばこの稲妻に来ていたんです」
「もうそれ人探しって言えないだろ」
目前でウィズがバニルに怒られている様も既に見慣れたのか、詳しい事情を説明しながらもアイリスは「まぁまぁ」と双方を宥めていた。
それにしても探し人の近くに転移するのは良いが、5000キロメートル以内などと言うふざけた効果を持つ物を額面通りに探し人捜索用の魔道具と解釈していいのだろうか。俺達の居る場所が異世界だったから奇跡的な巡り合わせが発生したが、そうでなければ無用の長物にも程がある。
「なあ、クレアとレインはどうしたんだよ?ウィズの店に来た時も、一緒に居たんじゃないのか?」
クレアとレインはアイリスを守護する忠実な騎士と魔道士だ。
あの二人に限って不用意にアイリスから離れるとは思えない。
「実は、その時だけは運悪く二人は店の外に居まして……」
「何て間が悪い……」
今頃向こうではアイリスが居なくなったってんで国中大騒ぎだろう。
「だったら、もう一度その魔道具を使って早く帰った方がいいんじゃないか?今頃向こうは大騒ぎだろ」
それに、その方法で帰還が叶うならさっさとアクア達を見つけて俺達も一緒に帰ればいい。そう考えての提案にバニルは首を横に振った。
「どうやらあの魔道具は片道限定らしくてな。一度役目を果たすと、自身は『新たな探し人の為にぃい!!』と大声を上げて何処かへ行ってしまう困り物だったのだ」
「何だそれ地味に腹立つな!?」
バニルの高音な声真似も相まって不快感激増だ。
もしも目の前でそんな事をされたようものなら、俺はきっと渾身のドロップキックをその魔道具にお見舞いしていた事だろう。
「稲妻の将軍には直々に許可を取りに行ったからいいものを、勝手に店を開いた事になっていた我々は危うく犯罪者だったのだぞ」
「それはまた苦労を……て、雷電将軍に会ったのか?」
バニルの思わぬ発言に食いつく。
「うむ、天領奉行とやらの連中では埒が明かなかったのでな。そこなチリメンドンヤの孫娘やポンコツ店主と共に城へと駆け込み交渉したのだ。稲妻に危害を加えない代わりに、我々がここで居を構える事を許すように、とな」
「いや、確かにお前らなら神様相手でも大丈夫だろうけど……でも、雷電将軍ってのは超武闘派で、目狩り令や鎖国令を強行しためちゃくちゃ怖い女神だって話だろ?交渉なんて本当に乗ってくれたのか?」
「確かに一筋縄では行きませんでしたが、お兄様が思うほど傍若無人な方ではありませんでしたよ?私はあの方と一対一で剣を合わせたのですが、一分ほど手合わせすれば分かってもらえました」
アイリスよ、それは交渉ではなく武力解決って言うんだ。
いやまあこの三人ならそっちの方が手っ取り早いのは事実だろうけど、相変わらず価値観とか規模がぶっ飛んでいる。テイワットの七神と言えば、俺達が戦ったような魔神すらも手玉に取るような怪物達だ。
それを相手にまともにやり合ったの自体、流石というか何というか……
「へぇ、あんな規格外の奴ら相手によく戦えたもんだ」
「いえ、少し戦って分かりましたがあの方は強いです。私は攻撃を凌ぐので精一杯でしたけど、彼女は戦うというよりこちらを試している様子でした。強さだけで言うなら、恐らく魔王よりも……」
前言撤回、やっぱやべぇわこの世界の神。
もうそいつらに魔王倒してもらった方が早い気がする。
雷電将軍の話を聞けたのは収穫と言えるかもしれないが、アイリスですら敵わない相手だと言うなら敵対するような事は何としてでも避けたい。それこそ、いつものようにめぐみんが挑発なんてしようものなら俺達なんて一撃でおじゃんだ。今すぐどうにかなるような事でもないが、頭の片隅には添えて置こう。
それに、今は社奉行の仕事中だ。あまり長居しているとトーマにも怪しまれかねない。
「とりあえず、店を開いたってのがお前らなら特に問題なさそうだし、俺は一度依頼主の所に帰るとするよ」
「……もう行ってしまうのですか?」
寂しそうな表情で俯いたアイリスに、俺は微笑んで頭を撫でる。やはり彼女は俺の数少ない心の癒しだ。
「折角会えたし、積もる話もあるけどよ。あんまり待たせると依頼主にも怪しまれかねないしな。大丈夫、近いうちにまた来るよ」
「……約束ですよ?」
「おう」
言って、店の出入り口に向かう。
すると、その背中を今度はバニルが呼び止めた。
「待て、小僧。密入国を試みた結果、憐れにも漂流した貴様に一つだけ助言をしておいてやろう」
「ひとが忘れようとしてた事を見透かすんじゃねぇよ。……それで、助言ってのは?」
アイリスから刺さる視線が痛いが敢えて気付いていないふりをする。
バニルが善意で何か教えてくれるとは思っていないが、コイツの助言や占いはことごとく当たる。アクア達の事もあるし、情報をくれるというのなら乗らない手はないだろう。
「――明日の昼頃、貴様は離島地域にて数奇な運命と巡り合う様だ。赴くかどうかは貴様次第だが、気になるなら行ってみるがいい」
「離島か……分かった。サンキューな」
離島地域の事は俺も詳しくは知らない。
稲妻に来航した外国人が滞在する為の場所らしいが、江戸時代の日本にもそういった離島はあったみたいだし、それと似たようなものと考えよう。俺には当然稲妻に知り合いなんて居ないし、離島って事なら璃月やモンドの知り合いがいる可能性だってある。
綾華の仕事がなければ暇だろうし、どうせなら明日トーマにでも頼んで連れていってもらおう。
*△+このすば+▼*
てなわけで翌日。
その日は綾華からの調査依頼もなく、元々トーマの活動場所も離島である事から快く同行を許してくれた。一応、これでも密航者って事になるはずなんだが、こんなにもフリーダムに動けていいのだろうか?
とは言え、行けるというなら願ってもない。
「今離島には、カズマもよく知るであろう人物が来ているんだ。会えば驚くぞ?」
「俺が?」
疑問符を浮かべる。
でも、トーマは後のお楽しみだと言うばかりで詳細は教えてくれない。やがて、稲妻城下を出てから数時間ほど歩いて離島地域が見えてくる。こうして見ると、そこは本当に本島から切り離された小島といった様子で、客人様の区画というよりは、天然の隔離場所と言う方がしっくりくる。
トーマが道中の武士や役人に話を通して、連れられるままに離島地域に入る。
「なあ、そろそろ教えてくれよ。俺の知り合いって誰の事なんだ?」
「今にわかるさ。と、噂をすれば……」
トーマが何かを見つけたように視線を向ける。
それに従って、俺もそちらを向くとそこには見知った金髪にフワフワと浮く白いまん丸生物。トーマは二人に駆け寄ると、軽快に片手をあげて声を掛けた。
「よっ、二人共!離島での生活は変わりないか?」
「トーマ!お前、いきなり留守にするって言って飛び出して、一体どこに行ってたんだよ?」
白いまん丸生物、パイモンがトーマにまくしたてる。
「ははっ、すまない。少し急用が出来てしまってね、置いて行ったのは悪いと思っているよ。その代わりと言ってはなんだが、今日は君達に会わせたい人が居てね」
「会わせたい人?……げっ」
蛍はこちらを見るなり露骨に嫌そうな顔をしたのだ。
「おい『げっ』て何だ『げっ』て!こういう場合、久しぶりの再会を喜ぶ所だろ!?」
璃月で最後に顔を合わせたのは送仙儀式の時なので、この二人と会うのは実に一週間ぶりくらいだ。
確かにこの二人も別な方法で稲妻を目指すという話は聞いていたが、まさかこんな所で再会するとは思っていなかった。
「生憎と、下着を奪ってお金をたかってくる人との再会を喜ぶ神経は持ち合わせていない。ほら、私の顔を見て?今私が何を思ってるか、ちゃんと話さないと分からない?」
「ひ、酷い!一緒に魔神と戦った仲なのに、そんな風に言わなくても――て、うおおぉお!?」
――ドゴオォォォンッ!!!
抗議の声を上げようとした時、空気を振るわす轟音と衝撃が鳴り響き、そして大爆発の光が輝いた後に黒煙が空へと上った。それは離島と鳴神島の間、モンスターが発生する地点だろうか。いやいや、そんな事いまはどうだっていい!
この爆裂、この光、この音、間違いない。間違うはずがない。
「な、何だ!?」
トーマが驚きの声を上げる。
「あ、あ、あ、あの人達また、また……!!」
蛍が顔をさっと青ざめて口元を両手で押さえている。
あぁ何となく分かった。バニルの言っていた事の意味が……
「カ、カズマ!早く来て、私達にはもう無理……あの人達を止められるのはあなたしか居ないの!」
今の俺、一体どんな顔をしているんだろうか。
少なくとも、景気の良い顔はしていないはずだ。
俺は蛍に連れられ、あれよあれよという間に元凶の所へと連れていかれる。場所は鳴神島へと行けるルートの一つ、その中でも特にモンスターの発生しやすい地帯があって、事件現場はまさにそこだった。普段はモンスターが徘徊しているとは言っても、さざ波の音が響くよいロケーションのスポットとなっている。
それが?
今は?
砂浜は見るも無残に荒れ果て、地は抉れ、阿鼻叫喚の地獄絵図?
「うわっはぁあああ!!あぁあああーーーーー!!」
「くっ、何という衝撃……ハフッ」
「ふっふっふ、我が爆裂魔法にかかれば、あのような異形など相手ではありません」
一人は声をあげて泣きわめき、一人はボロボロの姿で恍惚とした顔を浮かべ身をよじり、最後の一人は力なく脱力してぶっ倒れながら誇らしげ。もしもそれが見ず知らずの他人だったなら、俺だって無視する事も出来ただろう。
でもなぁ……
「本島との連絡路が……」
「またてめえらか!?何度騒ぎを起こせば気が済むんだ!」
駆けつけた武士達は、その少女達――アクア、めぐみん、ダクネスに詰め寄りブチギレていた。そりゃあそうだろう、キレない訳がない。
視線を横に動かせば、トーマは何が何だか分からないといった様子で立ちすくみ、蛍は膝をついて項垂れていた。これはあれだ。いつも通り、アイツらが馬鹿やらかして迷惑をかけまくっているいつもの奴だ。
そして、あいつらがやらかした時、責任を取っていたのは誰だ?
尻拭いをしていたのは何処のどいつだ?
俺って訳だ。つまりその役が不在という事は、誰かが代役を努めなければならない。
「蛍。何か、ごめんな……」
それだけ言い残して、俺は走った。
何を言うよりもまず、事件現場へと向かうしかなかった。
「ん?何だお前は?」
武士は走ってくる俺に気付き怪訝な顔をするものの、そんな彼の前に俺はすっと滑り込むと、おでこを地面とこすり合わせこう叫んだ。
「すみませぇぇん!!」
補足
アイリスと雷電将軍が手合わせなんてしたら稲妻城が吹き飛ぶので一心浄土にて行われました
因みに淑女は二秒くらいで瞬殺されてるのに対して
ガチっている将軍相手に一分もまともに戦って、なお決着がついていないアイリスはテイワット基準でも相当強いです
※バニルとウィズまで参戦したら鳴神島が消し飛びかねないので非参戦としました