この素晴らしいテイワットに祝福を! 作:グランドマスター・リア
私は蛍。
色々あってこの世界に漂流してきた旅人です。今は仲間のパイモンと一緒に、お兄ちゃんを探してテイワットを旅していて、その最初の国であるモンドに今居ます。風龍やアビスに関する調査などがひと段落して、今は璃月に出発するまでの余暇をモンドで過ごしている。
だが、ずっとグーたらしている訳ではなく、冒険者協会で依頼をこなしつつだ。そして、キャサリンから指名の依頼が入っている。
「実は、今回は個人ではなく、協会から旅人さんあてに出された依頼なんです」
「協会からって事は……また貴重な素材の回収とか、新発見された秘境の調査とかか?」
パイモンが訊ねるとキャサリンは首を横に振った。
「いえ、ちょっとそれは変わった趣旨のものになりますね。どうも、最近問題……し、新人として入ってきた冒険者の方々が居まして!腕は良いのですが、まだ協会での仕事に慣れていないので、出来れば旅人さんから指導をしていただこうかと……」
凄くひきつった笑顔で言葉を選びながら言うキャサリンに私は首を傾げた。
「……別に良いけど、その人達は何処に?」
凄く引っかかるものがあるが、協会からの指名依頼は危険な物もある分、報酬は割高だ。
このモンドは特に、冒険者も重要な戦力として数えられているので待遇も悪くない。キャサリンの言葉や態度にはひっかかる物を感じるが、そう無茶な事も言われないだろう。
「はい、今はエンジェルズシェアで待っていただいています。……黒髪黒目の男性、その男性と同じ特徴の少女と、青髪青目の少女、そして金髪の女騎士の四人です。依頼内容の詳細はこちらに……」
*△+【クエスト】四人の新人冒険者を指導せよ+▼*
「分かった。それじゃあ行ってくる」
言って冒険者協会を後にする。
歩きながらクエスト内容を確認すると、それは至って簡単なもの。その四人組が受けるクエストに同行し、マナーや仕事の仕方を指導し、最終的に簡素な報告をこのクエスト用紙に記載して提出するというもの。
「えっと、本当にこれだけなのか?ちょっと簡単すぎるんじゃ……」
「うん。これくらい、現役の冒険者に高い依頼料を出してわざわざ頼まなくても、協会の職員だけでも出来る」
ますますおかしな気配が漂い始めた。
エンジェルズシェアに到着すると、扉を開けて入店する。バーテンダーのチャールズに依頼の事を話すと、例の四人は二階に居ると案内された。階段を上ると、そこには一目でわかる四人組が端っこの席にちんまりと座っていた。
「おい、もしかしなくてもあいつらだよな?特徴一致しているし……でも、何か見てるこっちが悲しくなるくらい空気が重くないか?」
ここは酒場なので繁盛するのは日中よりも夕方以降だが、それでも人気の店なので日中もそれなりにお客は居る。
なのに、その四人組の周囲にだけは一人として居ないのだ。まさに、そこに流れる暗く重い雰囲気を避けるように……
(どうしよう。とてつもなく話しかけたくない……)
だが、受けてしまった以上は仕方がない。
大丈夫、ただ新人冒険者を指導するだけだ。そう自らを戒め付けて私は一歩を踏み出す。
*△+このすば+▼*
ありのまま、今まで起こった事を話そうと思う。
第一章『謎の遺跡からの転移』で、俺達はギルドから依頼された遺跡の調査に向かい、そこで色々とあって変な黒い穴に吸い込まれた。その後、俺達の前に待っていたのは、見知らぬ台地に、これまた見知らぬ青い空。
最初は悪くても他国に飛ばされたくらいだろう、と楽観視していた。
しかし、それはあまりにも愚鈍な考え方だったのだ。
森の中で目を覚ました俺達は、四人で揃って周囲を彷徨い歩き、ようやく森を抜けた。そこで目に飛び込んだのは広大な湖に聳え立つ、風車の多い街だ。仕方がないので、その町に行き、帰り方を探す一行であったが……
『アクセル?知らない街だな』
『ベルゼルグ王国?えっと、七国の中にそんな名前の国は無かったはずだけど……』
出るわ出るわ、知らない単語知らない単語知らない単語知らない単語知らない単語!!
「頭おかしくなるわぁあ!」
ベンチから立ち上がって、往来の白い目も憚らずにそう叫んだ俺を誰も責められないだろう。
「おいアクア?お前さっきからずっと黙ってるけど……何か重要な事隠してないか?」
「っ……!!」
確定、ビクリと震えた肩、露骨に逸らした目がその証拠だ。
俺はダクネスとめぐみんと結託して、町の裏手でアクアを問いただした。すると、この駄女神はようやく口を割ったのだ。曰く、ここは俺達の居た世界とは、また別の異世界らしい。天界でも放置されるほどの辺境世界で、アクアも名前くらいしか知らなかったらしいが……
『テイワット大陸』それがこの世界の名前らしい。
どうやら、転移はやはり遺跡にあったあの像が原因らしい。あの像はこの世界では『七天神像』と呼ばれており、崇高な神を祀るものらしい。
そして、それがどういう訳か俺達の世界に現れてそれにアクアが神の力を注いだ事で活性化して、何らかの作用が働いてここに転移させられたと。
「異世界……帰れない……」
「頭が、クラクラします……」
「おーい!めぐみん、ダクネス!しっかりしろ!?頼むから、気絶だけはしないでくれ!この状況でこの駄女神と二人きりになったら俺のメンタルが崩壊する!」
何とか二人を落ち着かせて、俺はアクアと今後の方針を話し合った。
とにかく、元の世界に戻るのは絶対的な目標だが、それをする為にはこの世界を管理する神に合う必要があるらしい。
アクアから交信しても返事はないらしく、自力で会うにしても、せめて名前くらいは分からないと探しようもない。
だから俺達は一先ず情報収集に打って出て、それからも本当に色々とあったがザックリ説明すると……
冒険者協会というギルドの様な場所でとりあえず日銭を稼ぎ、この世界の常識をとりあえず一通り調べ上げた。『俗世の七執政』とか『七国』とか、とにかく色々だ。世界そのものを管理する上位神に会うためには、直属の部下である七神に合う必要がある。
だから俺達は、まずこの『モンド』の神である風神バルバトスを探すことにした。
その間、協会で依頼を受けながら日銭を稼ごう。そう思っていた。思っていたのに……
「はぁ、結局こうなんのかよ……」
結論、いつものように馬鹿やらかしまくったら協会から危険人物扱いされ、追い出されました。
今は協会が派遣してくれるという、指導人を酒場で待っています。
「言うなカズマ。指導人をよこしてくれるだけ、まだマシな方だろう」
「ああ、そうだな。と言っても、この馬鹿共のせいで借金まみれなのは変わりないが……」
めぐみんとアクアが気まずげに顔を逸らした。おい、目ぇ会わせろよお前ら……
特にめぐみん。
こいつが調査しろと言われた秘境を爆裂魔法で消し飛ばしたり、アクアに関しては考えなしに魔法を使った結果、大量のヒルチャールを呼び寄せた挙句、モンド中の町を大混乱に陥れたり、ダクネスはそのモンスター共に突撃するわ……
そりゃ危険人物扱いされても仕方がない。仕方がないのだが……
「くっそぉ、どうしても俺はいつも幸先の良いスタートを切れないんだぁ!」
ガンガンと涙ぐみながらテーブルを叩く。
そうしていると、そこに一つの鈴のなるような声が聞こえた。
「あの」
「ん?」
目を向けた。
すると、何という事だろう。サラサラした金色の髪、くりっとした琥珀色の目。ワンピースのような白色の衣装は儚げな印象にピッタリで、声なんてまるで懐かしさを感じそうなほど愛らしい。そう、この感覚は自慢の妹であるアイリスと出会った時に似ている。
美少女と出会ったかと思えば、初手で期待を裏切られ続けた。だからこそ、分かるのだ。
「私、協会から派遣されてきた指導員のーーえ?」
この少女は、まともで、絶対に良い子だと……
ガタンと、俺はテーブルを揺らし、椅子から立ち上がった。
「カズマ?どうしたのですか?」
めぐみんが聞いてくるが、それは今俺の耳には微塵たりとも届かない。
何故なら、俺はこの緑無き砂漠にオアシスを見つけたのだから。オアシスに飛びつく旅人を誰も責める事なんて出来ないはずだ。
「すぅ……」
少女の前に跪き、その手を両手で取って精一杯のキメ顔で言った。
「結婚してください」
「……ふぇ?」
少女の困惑顔、疑問符を末尾に敷いた声すらも可愛い。
うむ、これだよな、これがファンタジー世界の美少女って奴で……
「あ、すみません。自己紹介がまだでしたね?俺の名前はサトウカズマと申しまッスぅぅぅううううーー!」
そこで、俺の思考は断ち切られる。横から顔面にクリーンヒットした、衝撃によって俺は吹き飛ばされ酒場の床を転がった。
そして間髪入れずに叩き起こされて、胸倉を捕まれぐわんぐわんと揺らされる。
「お前という奴はお前という奴は!この大馬鹿者!どうしていつもそう、全力で道を踏み外すのだ!?」
「離せ」
「そうですよカズマ!いきなりプロポーズなんて非常識にも程があります!ほらぁ、そっちの女の人もめっちゃ引いてるじゃないですか!」
「離せ……」
矢継早に叩き込まれる説教に、俺は胸倉を掴む手を振り払う。
「離せつってんだろうが!俺はもう限界なんだよ!訳の分からない世界に転移させられたと思えば……来る日も来る日も皆に白い目を向けられながら、仲間の尻ぬぐいに情報収集……そんな俺の前に天使が現れたんだ!いくらお前らでも、俺の一世一代の恋路を邪魔なんてさせねぇぞ!?やるってんなら容赦しないからなぁ!」
それはもう喧嘩を売られたネコのようにふしゃあっと唸り、バッと構えを取る。
「ごめんなさいね。あいつちょっと頭がおかしくなってんのよ。私達が直ぐに更生させるから、ちょっと待ってて」
「は、はい」
アクアが少女の相手をしている間、俺はめぐみんとダクネスに立ち向かい。そして……
「ずびばせぇん」
ハイ、めちゃくちゃボコボコにされました。
今はフロアの隅に正座させられています。そして、協会から来た少女の相手はアクア達三人でやっていた。
「すまない、先程はお騒がせした。あなたが、協会から来た指導員で良いのだろうか?」
「蛍って言います。今日は協会から、皆さんの指導をするように言われて来ました」
やはり彼女が話に聞いていた指導員という事で、アクア達は約一名を除いて快く受け入れ握手をした。まあ蛍の方はめちゃくちゃ顔が引きつっていたが、多分気のせいだろう。
指導とは審査形式で行うらしく、秘境調査のクエストをこなしてそれを蛍が見届け、上に報告するというものだ。因みに今度問題行動を起こせば、どうなるかは想像に難くないだろう。
(つまりこれは最後のチャンス!絶対に挽回して、協会からの信用を取り戻さないと)
幸先は本っ当に悪かったが、いつでも降ってわいたチャンスは俺の味方だ。
これを機に、この世界でも輝かしい冒険者人生を繰り出す。その為にはまず、この試練を突破しなくては……
「へぇ、蛍やパイモンも最近冒険者協会に登録したばかりなんですね?それなのにモンドの栄誉騎士だなんて凄いです!」
「えへへ、別にそこまでじゃないよ」
いつの間にかめぐみん達は蛍と仲良くなっていた。
対して俺はどうだろうか?
少しでも近付こうとすれば距離を取られ、微妙そうな笑みを浮かべて「カズマさんは、ちょっと……」とか言われるんだぜ?確かに初手の印象があんまりだったのは認めるが、こういうやんわりと嫌悪感を示されるのが一番傷つくんだ。
「なぁカズマ」
「ん?何だよパイモン……俺は今絶賛傷心中なんだ、話なら後に」
このふよふよ浮いてる美味そうな謎生物はパイモン。蛍の旅仲間らしい。
「お前の仲間から聞いたんだけどさ。お前、今までもあんな風に会う女性全員にセクハラして来たって本当なのかよ?」
「な!?……そ、そんな訳ないだろ?一体、誰がそんな……」
「アクアだ」
あいつぅッ……!
少し目を離した隙に言いたいように言いやがって、また秘境の奥に置いてって新たなるトラウマを植え付けてやろうか。
「本当かぁ?でも、旅人にも初対面からやってたし……それに言われてみれば、何かそういう事やりそうな顔だし」
「顔って何だ顔って!?てか何だよ言われてみればッて、それを吹き込んだのもアクアか!?」
この健全かつ平凡な日本男児の容姿を犯罪者っぽいとか言いやがったぞこの謎生物!?
アクアは鉄拳制裁確定だが、こいつもこいつで人を舐め腐っている事に違いない。今度、こんがり焼いて即席の非常食にでもしてやろうか?
「おい、カズマ。そろそろ目的地の秘境だ。気を引き締めろ」
到着した秘境はとある貴族が遥か昔に作り上げたダンジョン的な場所で、試験内容はその奥にある宝玉を取って帰ること。
秘境内では当然、ヒルチャールを初めとした数々のモンスターが闊歩している。比較的に危険すぎず簡単すぎない難易度だ。協会では、冒険者のランク選定にも使われる秘境らしい。
確かに違う世界には来てしまったが、それでも俺達は今まで数多の強敵を屠りしパーティーだ。今更、こんな中級者向けダンジョンで躓くわけがない。中に入れば、苔むした遺跡のような世界が広がる。
「カズマ!敵がわんさか来ましたよ!早速撃っていいですか?」
「いいわけねぇだろ!ダクネス、いつもみたいに壁役頼む!」
「壁役?わ、わかったぁ!!」
壁役と言われてこんなに喜ぶのこいつくらいだろう。
超ハイテンションでモンスターの所へ突っこんでいく、それを傍目に俺は潜伏スキルで潜みつつ一体いったい「ン、ソゲキッ!」で屠っていく。
(楽勝楽勝。俺達を倒したければ魔王軍幹部クラスでも連れてこなきゃ相手にならないぜ!)
ヒルチャールは謎に一通りアンデッドモンスター扱いなので、アクアの浄化スキルで倒せる。遺跡守衛といったゴーレム系モンスターだけ俺があの手この手で倒せばいい。それはそうと、一緒についてきた蛍もやはり中々やる。
この世界は魔法ではなく、元素と呼ばれる力を使って戦うのだが、蛍は剣を主体に風の元素を使って次々と自分へと襲い来るモンスターを倒していた。
「凄いな、蛍!」
「そっちも!私以外にも神の目なしで、元素力を扱える人が居るなんて思わなかった!」
正直、めちゃくちゃうちのパーティーに欲しい。
攻撃が当たらないクルセイダー。日に一回しか魔法を打てない爆裂魔。活躍の差し引きをマイナスにしなければ気が済まないポンコツ女神。それに比べて、蛍はたった一人でも上手く立ち回って、正に夢に描く凄腕冒険者って感じ。そうだよな、冒険者ってこういうのだよな……
「え!?皆もテイワットの外から来たの?」
「『も』って事は蛍もそうなのか?」
「うん。色々あってね」
聞けば、蛍は元々兄と共に色んな世界を巡っていたようだが、この世界で出会った見知らぬ神によって行方知れずとなり、今は探している途中らしい。
どうやら彼女も傍迷惑な神によって困った境遇に置かれているみたいだ。その気持ちは大変よくわかるので、出来れば協力してあげたい所である。
と、そうしている間にも秘境攻略はどんどん進みついに最深部にやってくる。
「うわぁぁああああ!カズマさぁん、めっちゃ狙ってきてる!めっちゃ私の事狙ってきてるぅ!」
そこに待ち受けていたのは雷を纏うキューブみたな敵で、アクアはアンデッド系モンスターでもないのに何故か狙われていた。
こいつを倒さないと宝玉は手に入らない。しかし、どうしたものか……俺の魔法じゃ、精々注意を引くくらいしか出来ない。スティールもああいった奴には効果が薄い。
「ふっふっふ、お困りのようですね?カズマ」
「はい、カズマです」
「こういう時こそ、真打の出番という奴ですよ!」
杖を構え、バシンと前に踏み込むめぐみん。
「おいちょっと待て、ここは秘境の中だって言っただろ!?こんな所で爆裂魔法なんて打てば、また大変な事に……」
今やめぐみんの爆裂魔法は一撃で大きな岩山を消し飛ばす威力だ。
そんなものをこんな閉鎖空間でぶっぱなせばどうなるか何て想像に難くない。
「黒より黒く、闇より深き漆黒に我が深紅の……」
「だからやめろつってんだろうがぁ!」
構わず詠唱を始めるめぐみんに掴みかかると、取っ組み合いの喧嘩になる。
何とかドレインタッチでめぐみんの魔力を爆裂魔法を使えないレベルまで吸い上げると、今度は無相の雷に向かって走り出す。
「ちっくしょう!こうなりゃ自棄だ!俺の力を見せてやる、行くぜーースティール!」
俺の手のひらが光り輝くと、数秒後に妙な重さが付けたされた。
手に収まっていたのは、紫色のでっかい球体だ。
「あ?何だこれ?」
「そ、それ!あいつのコアだ!それを壊せば倒せるぞ!」
「よぉし分かった死ねぇ!!」
パイモンの叫びを聞いた俺はすかさず球体を秘境の床に叩き付けて、チュンチュン丸で殴りまくる。そうする事数分後……
でっかい球体を砕け、無相の雷は爆発四散した。一生狙われていたアクアは完全に燃え尽き、アクアの身代わりになって被弾しまくっていたダクネスはボロボロの状態なのに満面の笑みで転がっていた。
*△+【クエスト】四人の新人冒険者を指導せよ+▼*
達成