この素晴らしいテイワットに祝福を! 作:グランドマスター・リア
何故、新人指導なんていう簡単な依頼が協会直属で回されてきたのか分かった気がする。
この人達、良い人たちだけどやばいです。
まず一人目、サトウカズマさん。この人は一番やばいです。何がやばいって、私に初対面でいきなりプロポーズを迫ってきたのである。鳥肌ものである。それだけじゃない……普段から女性にはセクハラ三昧、女の子の、その、下着を無理やり奪って有り金全部捲き上げる鬼畜だと……もう一度言う、この人はヤバイ。
二人目、アクア。
何と、彼女は異世界の女神だと言う。どうやらお兄ちゃんの事とは関係ないらしいが、ウェンティに続き神に会うのは二度目だ。
それも、彼女の浄化の力はヒルチャールを問答無用で倒す力がある。だが、この人も秘境探索中に本来戦わなくて良いはずのモンスターの群れを引き寄せたりと、その度にカズマさんに泣きついたりと散々な有様だった。
三人目、めぐみん。
彼女とは多分一番仲良くなれた。人懐っこくて、可愛らしい。だが、この子も一癖も二癖もあったのだ。名前とか時々飛び出る奇妙な言葉遣いとか、そして一番は未だ直接目にはしていないものの、彼女が放つ一撃は秘境を丸ごと吹き飛ばした事があるそう。更にそれを一日に一回しか撃てず、それも打てば動けなくなる。
最後にダクネス。
最初にこの人を見た時、スタイルが良くて綺麗な女騎士だと思った。更に、言葉遣いも気高い。
唯一の常識人かと思った。だが、この人にも問題があった。この人、嬉々としてモンスターの攻撃をくらいに行くのだ。更に自身の攻撃は一切当たらないおまけ付き。何かもう、怖い。
結論、このパーティーが冒険者協会に厄介払いされた理由が良く分かる。聞けば、最近、テイワット中でヒルチャール出没が多発していたのはアビスではなくアクアのせいだったそう。散々である。
*△+このすば+▼*
晴れて、冒険者協会の出禁を脱却する事が出来た俺達。
蛍との別れ際にまた会おうと言ったらめっちゃ苦い顔をされたが、それでもしょげないめげない、ちょっと傷つくけど前を向くのがサトウカズマである。そして、俺達は今、蛍の紹介である人物と対面していた。
「やあやあ、君達が僕と会いたいって言う異邦の旅人かい?初めまして、僕はウェンティ。よろしくねぇ」
目の前にいるのは赤らめた顔をした少年。その吐息から酒の匂いがこれでもかと匂う。因みに今は真っ昼間だ。
誰も彼もが働いてる中、昼間から酒場で酒を呑む少年。だが、こいつこそが蛍の言っていたモンドの風神バルバトスなのだ。
「よ、よろしくぅ……」
いつもならそのアルコール臭さを盛大に突っ込むところだが、今は我慢。我慢だ。
「それで、俺達は早く元の世界に帰りたくてさ。ちょっと風神様に、教えて欲しい事があって」
「いいよいいよ。今は気分が良いから特別に何でも答えてあげる!遠慮なく聞いてみて!」
では遠慮なく。
俺達はこの世界を管理する上位神について訊ねた。
「それって、天理の事かなぁ?うーん、あれと関わるのはあんまりオススメしないけど……」
「ちょっと待って、天理?今天理って言った?」
「え?うん」
すると、アクアは何か思い当たったように手を叩いた。
「そうよ!天理よ!あの日がな年中、自分の世界に引きこもって天界にも出てこない、引きこもり陰険女神の天理!そう言えば、あの子の担当って辺境世界だった気がするわ!」
うわぁお、物凄い言い様である。
エリス様の時もそうだったが、こいつの後輩女神に対しての理不尽さは知っての通り。その天理さんとやらは可哀想に、こんな駄女神が流れ着いたばかりに大層な苦労を強いられるだろうなぁ……
「うわぁ、天理の事そんな風に言う人初めて見たよー」
こいつはこいつで自分の上司の事悪く言われてんのにケロッとしている。
「楽しくなってきたなぁ!よーし、もっと呑むよー!」
「おいおいどんだけ呑むんだよって近けぇよ!酒くっさ!さっさと離れろこの!」
ウェンティはあろうことか馴れ馴れしく俺と肩を組んできたのである。
それにめっちゃ酒臭い。見事な絡み酒である。更に笑い上戸に片足突っ込んでいると来た。まるで男版アクア、あいつが二人になるとか世界崩壊級の大厄災だが、真っ昼間から酔っぱらっているのがなおあいつらしい。本当に神ってろくな奴がいない。やっぱりの俺の癒しはエリス様だけだ。
*△+このすば+▼*
数か月も経てばモンドでの生活も慣れたもので、ようやく冒険協会での仕事も上手くいき始めた今日この頃。
受付嬢のキャサリンにこう言われた。
「皆さん。俗世の七執政に会いたいのでしたよね?それなら、岩神の治める璃月などはどうでしょう?貿易港など活気があっていいですよ?何なら、向こうの冒険者協会への紹介状も書きますが……」
それを聞いて、俺は顎に手を添える。
「璃月かぁ。貿易港って事は、情報も沢山集まるって事だよな?それなら、俺達の旅の目的にもピッタリじゃないか!」
「そうですね。それに美味しい物も沢山ありそうですし、手頃な岩山も多いと聞きます。是非とも我が爆裂道の糧としたい所です!」
何だかとてつもなく物騒な言葉が聞こえたが、聞かなかった事にしよう。
「えっと、それじゃあ、紹介状お願いします!」
「ふふっ、そう言うと思って、もう用意してたんですよ」
キャサリンはそう言って封筒に入った紹介状を取り出して俺に渡してくれた。
アクセルでもそうだったが、やはり受付嬢ってのは良いなぁ。奥ゆかしくて、優しくて、何気にクエスト達成の報告に来る瞬間が一日の楽しみだったまである。だが、俺はしがない異邦人に過ぎない。
用が済めば立ち去るのみ。
「うわぁ、カズマさんすっごいキメ顔で去ろうとしてるわよ?」
「ははっ、別にいいじゃないか。この町にも大分世話になったしな」
行き先決まれば早速出発だ。
今までは遠出する事はあっても基本的にアクセルを拠点として動かなったから、こういう定住のない流浪の旅ってやつも中々に良い。
「おお、また旅立つのか……勇敢な若者が」
「ギルド長……本当、今までくそお世話になりました!」
本当に、この人には死ぬ程迷惑かけたからこれからも足を向けて寝れないだろう。ちょっとおかしな人だが、この人が居なかったら俺達はとっくに野垂れ死んでいた。
「別に構わんさ。若者のやんちゃを背負うのも俺達ベテランの役目だ。今やカズマ達もモンドでは名の売れた冒険者だからな。皆、盛大に見送るぞぉ!」
「「「「おぉおお!!」」」」
「お前ら……!」
この街でお世話になった騎士の人や、一緒に酒を酌み交わした冒険者の皆。
やはり世界は違っても、こういうのって楽しいものだ。
「クズマぁ!向こうじゃ女冒険者のパンツ脱がすんじゃねぇぞ!」
「カスマ、次モンドに寄ったら、今度一緒に夜の店に行くって約束忘れんじゃねぇぞ!」
「ダクネスさん愛してまぁす!」
「じゃあな、頭のおかしい魔法使い!」
「酔っ払い祈祷師も達者でな!」
と、別れの挨拶という名の罵詈雑言を浴びせてくる冒険者の奴らに中指を立ててやる。
「お前らうっせぇ!たく、二度と来るかぁ!」
だが、心の中ではちょっぴり嬉しかったりする。やはり旅立ちのファンファーレは賑やかな方がいい。
「ふっ、仲間の声援を受けた旅立ちか。こういうのも悪くないな」
「ええ、何だかむずがゆいですけど……」
「そうね。ディルックの出すお酒凄く美味しかったから、ちょっと惜しいわね。今度来た時はちゃんと箱で買わないと!」
アクアも、めぐみんも、ダクネスもそれぞれがこの街で様々な人と出会った。
やがて正門に差し掛かると、そこには見知った顔の三人が居た。
「カズマ。今日が旅立ちか?」
「おう、ガイア。それにお前ら!」
そこに居たのは、ガイア、ジン、フィッシュル、ディルックの四人だった。
「旅人に続いて、お前達も旅立つのか。色々と問題を起こしてはくれたが、居なくなるとなれば少し寂しくなるな」
「ジン殿。私を含め、仲間達が大変世話になった。改めて、感謝する」
ダクネスはよく西風騎士団に鍛錬や手伝いに行っていて、その際にジン団長と仲良くなったそうだ。因みに、俺達が問題を起こした時に便宜を図ってくれたのも大抵この人である。ジン団長の執務室で渾身の土下座をしたのも、今となっては懐かしい思い出だ。
「我が盟友フィッシュルよ!私は故あって、更に深淵を深める旅へと出ようと思う。だが、これは別れではない。そう!お互いに深淵を求め続ける限り、再会はもはや必然なのだから!」
「カッカッカ!めぐみんよ、先に深淵の底で待っておれ!さすれば、私も千年の戦いに終止符を撃った後、そちらへ参ろう!」
この異常なまでにめぐみんと意気投合しているのは、この街随一の眼帯中二病少女フィッシュル。彼女に関しては言うまでもないだろう。何処で出会ったのか、気付いたころにはもうめぐみんと意気投合していた。まあ、それだけなら良かったのだが、この二人はクレーなんかとも組んでドラゴンスパインに爆裂魔法を打ち込みまくるもんだから、ジン団長にめっちゃ怒られたのである。
主に俺が……
「ディルックじゃない!今度来る時はたーんまり最高級のお酒用意しといてね!また来たげるから」
「うるさい!貴様のせいでどれだけ店が壊された事か……もういい。カズマ、早くこの悪酔い女を連れていけ」
「ほんと、すみません。今度璃月の珍しい果実でも贈るんで、それで許してください」
ディルックはまあエンジェルズシェアに行けば時々会えるから、完全に酔っぱらったアクアに絡まれた被害者である。
店の中で虹色の聖水をぶちまけるわ、飲みすぎた結果店の物を壊すわで、この人にもめっちゃ迷惑かけた。まあ、主に謝ったのは俺だが……
だが、まあ、総合的に言えば楽しい街だった。
本当に色んな人にも迷惑かけたし、かけられたけど、俺はこの町が好きだ。だから城門を抜けて橋を歩く途中、俺はこう叫んだ。
「キャサリンさぁぁあん!あなたの事も好きでしたぁ!」
これにてモンド編、完である。そして、俺達は新たな冒険へ。
……。
………。
…………。
「えっと、お前らどうした?」
半日後、俺達ことサトウカズマ一行はモンド城の前に居た。とんでもなくでかい大荷物をダクネスが担いだ状態で……
四人全員がジン団長の貌を直視できず背けた。それを見た彼女はさっと顔を青ざめると、部下に指示して俺達の背後にあるでっかい風呂敷に包まれた荷物を確認した。
何とそこから出てきたのは、無惨に破壊された
「おい、これは何だ?」
「すぅ……違うんです!俺は止めたんですって!でも、突然岩の仮面被ったでっかいヒルチャールが出てきて……それにビビっためぐみんが爆裂魔法をぶち込んだら、その……」
「運悪くそこに璃月の七天神像があり。壊してしまった、と?」
「……はい」
正直に白状した。
すると、ジン団長は頭をおさえて後方にぶっ倒れたのである。俺は思った、これ以上この人に迷惑はかけられないと……
というより、多分これ以上はこの人の胃とかその辺が持たない。と……
「カズマ。行きましょう」
「ああ……」
ドレインタッチでの魔力供給で復活しためぐみんが、俺の服の袖を引っ張った。
俺達は破壊された七天神像を再び風呂敷に包んで、そそくさとモンド城を後にした。
一難去ってまた一難
サトウカズマの明日に待つのは光!それとも闇!
次回は誰にも分からない
※モンドでのカズマ達の日々に関しては気が向いたら番外編として書きます