この素晴らしいテイワットに祝福を!   作:グランドマスター・リア

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このくそったれな疑惑に潔白を

 

拝啓くそったれな人生。

俺は今、璃月の独房に入れられています。

 

「……何でこんな事に」

 

目は虚ろ、顔はアンデッドよりも生気がない状態で、俺サトウカズマは固い床の上に体育座りをしていた。

こうなった経緯?

俺達は出発後、あの馬鹿魔法使いのせいで璃月の七天神像を軽くぶっ壊し、そして誰にも気付かれないように現場へ放置した。仕方がないだろう、まだ捕まりたくなかったんだから……でも、その後だよ。

 

 

 

 

波乱の旅路の末、璃月港に無事辿り着いた俺達がさきほどまでの事などすっかり忘れて璃月を満喫していた。

そんな中で、俺達は展望台みたいな所で岩神にまつわる特別な儀式をやるってんで、もしかしたら岩神に会えるかと思い見物に来たのだ。しかし……落ちてきた龍はそのまま動かなくなり、それを見た白髪のお姉さんはこう言ったのだ。

 

「帝君が殺害された。この場を封鎖しろ!」

 

瞬間、広場を璃月の兵士『千岩軍』が取り囲んだ。

 

「おいおい、何かまずい事になってないか?」

 

「カズマさんカズマさん。気のせいだと思うんだけど、私なんか嫌な予感するのよね?こう、今までの経験から?」

 

「奇遇だな。俺もだよ!」

 

そう、こういう物騒な事の渦中にいた際に大抵ろくな目に合わない。

町を救ったはずなのに借金まみれにされ、果ては国家転覆罪として拘束され裁判にまでかけられた俺が言うんだから間違いない。事が起こる前に逃げるべきか、素直に取り調べを受けるべきか……

 

「おい、そこの者。少し話を聞いてもいいか?」

 

「え?あ、はい。勿論」

 

と、考えている間に千岩軍の一人が俺達の取り調べに来た。

 

「見ての通り、岩神が我々の目の前で殺害された。現場に怪しい動きをした者は居なかったか?」

 

「い、いえ、そういったのは見かけませんでしたけど……」

 

落ち着け、落ち着け、俺。

大丈夫、俺達は何もやってないんだ。びくびくした方が怪しまれるってもんだ。ここは堂々と、堂々と、かつ相手を刺激しないように……

そこで俺は一番危ない奴に目を向けた。めぐみんだ。こいつはこう言う時に絶対なんかやらかす。俺がアイコンタクトで黙るように言うと、めぐみんはうんうんと頷いた。

 

「おい、何をしている?」

 

「あぁいえ、何でも……それより、折角モンドから遥々『迎仙儀式』を見に来たのに、こんな事になるなんて……」

 

「何?お前達、モンドから来たのか?」

 

「ああ、これがモンドの冒険者協会で書いてもらった紹介状だ」

 

ダクネスがそう言って紹介状を兵士に見せた。ナイス機転だ!

すると、兵士はそれを確認して首肯するとそれを俺達に返した。

 

「確かに、紹介状はモンドの冒険者協会で書かれたものだ。印も確認した。これでお前達の容疑は一先ず晴れた。時間を取らせて悪かったな?もう行っていいぞ」

 

「ふぅ、良かった。それじゃあ、お勤め頑張ってくださいねー」

 

君子危うきに近寄らず。

岩神の殺害事件は気になるが、こんな危ない場所はさっさと離れるに限る。そそくさとその場を後にしようと、広場の出口に足を踏み入れたその時だった。

 

「あぁ!お前達は、石門近くの七天神像を破壊していた四人組ではないか!」

 

未だ取り調べを受けていたうちの一人の男、が俺達を指差してそう言ったのだ。

 

「はぁ!?ちょ、何だよあんた!何の事だよ!」

 

同時に兵士達の目がこちらに向いて内心で「やべぇ」と思いながら臆せず応戦する。

 

「しらばっくれても無駄だ!ちゃんと見てたんだからな!そこな眼帯の娘が、とてつもない元素力をぶっぱなして七天神像を破壊した所を!」

 

(げ!こいつ、本当に全部見てやがったのか!?)

 

やばいやばいどうする?

落ち着けサトウカズマ。冷静になれ。こいつが幾ら口で言ったところで、それが事実であると誰が証明する?ここは毅然に、少しでも下手に出ればそのまま押し込まれかねない。

 

「あのなぁおっさん!俺達が七天神像をぶっ壊した?変な言い掛かりはやめてもらおうか!証拠はあんのかよ、証拠は!?無けりゃあただの名誉棄損だぞ!果たして牢屋に入んのはどっちになるのかなァ゛!?」

 

体を大きく広げ、口角を三日月型にし、まるで野獣クマの如く相手を威嚇する姿勢で言い放つ。

 

「うわぁ……私が言うのも何ですが、とんでもない開き直りですね」

 

「しっ!カズマさんが本当は怖くてちびりそうなのに、持ち前の二枚舌で場を乗り切ろうとしてるんだから、突っ込んじゃ可哀想よ」

 

「そこ、話が進まないからもう喋るな!あとちびってねぇし!怖くなんかねぇし!」

 

そもそも誰のせいでこんな事になったと思ってんだよ、この即効性ボマーが!

この二人は後で必ず殴る事を誓って、俺は目の前の男に向き直った。どうだ、俺のあまりの迫力に男もたじろいでいる。そりゃあそうだ、こんな文明レベルが中世ヨーロッパ並みの世界に、さっと取り出して証拠を撮れるような携帯みたいな機械なんてある訳がない。

 

今まで魔王軍幹部やら、王国の貴族やらを早口レスバでぶっ倒してきた俺の最強論破戦法を舐めるなよ!

勝った、計画通り。

この勝負、今度こそもらったぁ!

 

「証拠ならある!」

 

「……え?」

 

何と、男は自信満々に言い放ったのだ。雲行きが怪しくなる。

 

「そ、そんな訳……」

 

「これを見ろ!」

 

高々と掲げられたものに俺は目を見開いた。

 

「はっ!?」

 

それは俺達が壊れた七天神像を風呂敷に包んでいる様を映した写真だった。

 

「私はこれでも各地の撮影を生業とする者でね。この様に、少々値は張るが写真機はいつでも持ち歩いている訳だ。どうだ少年?証拠がなんだって?名・誉・棄・損が?何だってぇ?」

 

うぜぇ、こいつマジで殴りてぇ……!

してやったりといった顔でニヤリと笑った男の顔を今すぐどつきまわしたくなる。

 

「七天神像を壊すという事は、岩王帝君に対して並々ならぬ恨みがあるという事!帝君を殺害したのもお前だろう!」

 

「なっ、それとこれとは関係ないだろ!?」

 

だが、そんな叫びはここに来てはもう意味をなさない。

場は完全なアウェイ。そして、周囲を取り囲みにじり寄る千岩軍に対してその指令が実行された。

 

「確保ッ!」

 

「結局こうなんのかよぉお!!」

 

こうして俺は千岩軍に拘束されたのでした。回想おしまい。

 

 

 

 

「すぅ……納得いかねぇぇえええ!」

 

牢屋の中で俺は叫んだ。

この理不尽な現実に、何よりこの認めがたい仕打ちに。

 

「ざっけんなよ!確かに七天神像は壊したかもしんねぇけど、だからって神様の殺害容疑まで吹っ掛けるとかどうなってんだこの国の司法は!?舐めとんのか!」

 

ゲシゲシ鉄格子を蹴りながら怒鳴り散らす。

何度蹴ろうと、怒鳴ろうと、誰も牢屋には来ない。牢屋には旧式の錠ではなく、岩の元素力によって非常に高度なロックが施されているのもあって、俺の万能盗賊スキルの数々を持ってしても脱出は不可能だ。

やがて怒るのも疲れた俺は、再び固い床に座り込んだ。

 

「虚しい……」

 

天井と床のシミの数を数え始め、それが終わろうとしていた頃、ようやくそこに何者かが来訪した。

 

「出なさい。サトウカズマ、取り調べの時間よ」

 

牢屋の扉を開けた紫髪ツインテールの美女が、凛々しい顔つきと声音でそう告げた。

 

 

連れてこられたのは、これまた無機質な取り調べ室だった。

テーブル一つ挟んで向こうには紫髪の少女、そして背後には取り調べ内容を記す書記官だ。

 

(どうしよう、この状況めっちゃ覚えがある)

 

どうやらこの世界には便利な嘘発見器とかは無いようだが、その分、目の前の少女から放たれる圧が凄い。

 

「取り調べは、この璃月七星の一人、刻晴が務めさせていただくわ。尚、これは取り調べなので、黙秘権はありますが……罪を軽くする為にも、事実はありのままに話しなさい」

 

「はい。お願いします……」

 

もうすでに俺の心の中はお通夜ムードなんだよちくしょう。

刻晴は良くも悪くもお堅い取り調べ官と言った所で、嘘八百で切り抜けるのは難しそうだ。一発でバレそう。

 

「まず、あなたの容疑は二つ。一つは七天神像の破壊。もう一つは岩王帝君の暗殺よ。まずは前者から行かせてもらうわ。……まず、あなたの仲間が七天神像を破壊したというのは本当かしら?」

 

「はい。本当です」

 

「そう、正直でよろしい。じゃあ、何でそんな事をしたの?」

 

理由を聞かれて、俺は涙ぐみながら答えた。

 

「別に、したくてした訳じゃ……いきなり俺達の前にヒルチャール岩兜の王が現れて、それにビビった仲間が全力の魔法を使ってしまったのが、たまたま当たっちゃっただけなんです」

 

「魔法?元素力の事かしら……うーん、まあ大方他の仲間の取り調べとも一致するわね。青髪の子のやつとは違うみたいだけど……」

 

青髪の子?

その言葉を俺は聞き逃さなかった。

 

「すみません。因みにその青髪の子は俺の仲間なんですけど、そいつは何て言ってましたか?」

 

「え?……『私は止めたんだけど……カズマさんがやれって言うから仕方なく、こうなっちゃったのよ。私は止めたのよ?』と……」

 

「っ……!!」

 

あいつ何他人に罪着せようとしてんだ!?

どうせ仲間に関する供述でもすれば、罪が軽くなるかもとか言われたのだろう。アクアの事だ、知能平均値以下の頭ではそんな安っぽい挑発にすら確実にひっかかること間違いなしだ。

 

「どうかしたの?」

 

「いえ、続けてください」

 

アクアの事は後で弧雲閣の地に埋め立てるとして、今は自分の身の潔白を証明する方が先だ。

 

「えっと、それじゃあ次ね。岩王帝君の暗殺についてだけど、やったのはあなた?」

 

「そ、それは本当にやってません!確かに七天神像をぶっ壊したのは悪かったと思ってますけど、神様を殺すなんて、そんな恐れ多い。大体、俺みたいなへなちょこ冒険者があの岩神に勝てるわけがないじゃないですか?」

 

噂には岩神とは七神の中でも腕っぷしは最上級と聞く。

孤雲郭は昔の戦争で岩神が投げた槍がそのまま島になったものだとも聞く。魔王軍や歴戦の悪魔とも渡り合ってきた俺だが、流石に相手のスケールが違いすぎる。正面から戦ったって勝てるわけがない。

 

「確かに、あなたみたいにパッとしない男が、あの岩王帝君を倒したとは思えないわね」

 

うん、面と向かって言われると俺だって少しは傷つく。

思ったよりもズバっと切り捨てられて傷心のカズマさん。でも、俺は負けないくじけない。絶対に無実の罪を晴らして牢屋から出てやるんだ。

 

「まあ、流石に私も、あなた達が本当に帝君を殺害したとまでは思っていないわ。あなたの仲間の女騎士が持っていたモンドの紹介状も本物だったし、それなりに名の売れた冒険者っていうのは事実みたいね」

 

「そうなんですよ!七天神像を壊したのだって……何度も言いますけど、わざとやった訳じゃないんです!事故だったんですよ!信じてください!」

 

テーブルに乗りかかって詰め寄る。

 

「ちょっと近いわよ、離れなさい!」

 

思い切り剣の柄で殴られる。

めっちゃ痛い。

 

「コホン。七天神像破壊の件に関しては、当人達も認めている事だし、追って沙汰がくだると思うわ。まあ、あなた達負担で修繕費が請求されるくらいでしょうけど……帝君殺害に関しては、恐らく無罪として取り計らわれるはずよ」

 

「あ、ありがとうございます!いやぁ、刻晴さんが取り調べの人で本当に良かったです!これが話の通じない人だったらどうしようかと……」

 

「言っとくけど、まだ決まった訳じゃないわよ?それに、最低でもあと数日は牢屋に拘束させてもらうわけだし……」

 

「良いですよ。それくらい!」

 

七天神像は周囲に元素力が満ちて、近くに居るだけで回復する事ができる様な凄い代物だ。

そんなものの弁償とか、一体何千万モラになるのか考えたくもないが……まあ、過去にも国家予算並みの借金を無事返済してきた俺達だ。何とかなるだろう……

 

ーーと、思っている時期が俺にもありました。




不穏な空気がただよいますねぇ
次回、高すぎる借金デュエルスタンバイ
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