この素晴らしいテイワットに祝福を!   作:グランドマスター・リア

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この膨大な借金に返済を

 

刻晴による取り調べの後、俺達は二日ほどで出所となった。

 

「はぁ……久しぶりのシャバの空気は美味いぜぇ」

 

「一時はどうなる事かと思いましたが、無事に牢屋を出ることが出来て良かったですね」

 

めぐみん、ダクネス、アクアも無事出てこれたみたいでほぼ一週間ぶりに俺達は顔を合わせた。

アクアに関しては度重なる暴挙への制裁として一発脳天にゲンコツを落としてやったが、それ以外は万事良好。空は晴天、足元の調子も良い。さあ、こんな忌々しい牢獄からはおさらばだ。

 

「待ちなさい、サトウカズマ」

 

「この声は……刻晴さん!」

 

目を向けると、そこには見知った紫の頭があった。

 

「これ、出る時にあなたに渡すようにって凝光様からよ」

 

「ん?ああ、七天神像の弁償に関するやつか……」

 

刻晴が差し出してきた茶封筒には、『七天神像の弁償額』と書かれていた。

 

「それじゃあ、私はもう行くわ。あなた達、もう問題起こすんじゃないわよ?事後処理するの私なんだから……」

 

「その……何かすみません」

 

めっちゃ苦い笑みを浮かべながら去っていった。

何処となく疲れを滲ませたその背中に、俺は凄く申し訳なくなった。

 

「ねえカズマさん?それで、弁償額ってどれくらいだったの?」

 

「あぁ確認してみるか。どうせとんでもない額だろうけど……さあどれどれ、ッ!?」

 

封筒を開き、中の紙を取り出して内容に絶句した。

次第に脚、腕、体全体が震え出す。

 

「カズマ、どうした?そんなに震えて、一体何が書かれて……」

 

ダクネスが俺の手から手紙を取ると、他の三人もそのあまりの凶悪さに言葉を失った。

ウン千万モラくらいの額は覚悟していた。多少危ない任務も受けて、それでちょっとずつでもどうにかしていこうって、そう思っていた。だけど、俺の考えはほとほと甘かったのだと知る。

 

ーー【前略】サトウカズマ一行に、七天神像の賠償額として300億モラを請求します。

 

「さ、さ、さ……三百……?え、三百億?」

 

恐るべし七天神像。

流石は七神を祀る祭壇。異世界の遺物。まさかアクセルの外壁や領主の屋敷よりもお高いとは……

 

その昼下がりの空に、アクアの大泣きが響き渡った。

 

 

 

*△+このすば+▼*

 

 

 

三百億の借金通告を受けた俺達は、来る日も来る日も頑張った。

命懸けの秘境攻略、危険なモンスターの駆除。

相場は何十万を越える依頼を何度もこなして、だけど……どれだけ稼いでも消えていく金と減らない借金。

 

「いやぁぁああ!私もうこんな生活は嫌ぁ!アクセルの屋敷で、ぐーたらしながらシュワシュワ飲むっていう私の生活を返して!ねぇ、返してよ!!」

 

「うっせぇ、耳元で騒ぐな!俺達だって疲れてんだから、せめて大人しくしてろよこの駄女神が!!」

 

遂に璃月港の往来でアクアが号泣しはじめてしまった。

途端に向けられる白い目。早くも街の人達には、問題児としての認識が定着してしまったらしくもう守衛を呼ばれる事もない。

 

「たく、泣きたいのはこっちだよ」

 

「カズマ。気持ちは分かるが、その辺にしてやってくれないか?最近の過酷な生活を考えれば、アクアが泣き出すのも無理はないだろう」

 

「う……確かにそうだけどさぁ」

 

ダクネスに宥められて、俺はバツが悪くてそっぽ向いた。

そう、来る日も来る日も死と隣り合わせのクエストを受け続け、当然宿に泊まる金なんて無いから野宿続きで、起きたらまた出発するの繰り返し。

ハッキリ言って俺達はもうボロボロだ。

 

「爆裂就寝爆裂就寝、起きたらまた撃って寝て……」

 

めぐみんなんてほら……もうずっとこんな事を繰り返し呟いているんだぜ?

今だって、終わらせたクエストの報酬を受け取るために冒険者協会に向かっているのだが、折角の任務達成なのにその足取りは非常に重い。そりゃあそうだろう、貰った端から待機してる役員によってブン取られるんだから……

 

「はぁ、この報告が終わったらまた……」

 

地獄の日々に逆戻り。

と、言おうとしてそれはダクネスによって遮られた。

 

「待て、カズマ。あれを見てみろ?協会の前にいるの、蛍じゃないか?」

 

「え?」

 

俺は顔を上げると、そこには確かに天使のような金髪の少女がそこに居た。

その後ろ姿を俺が見間違うものか。間違いない、蛍だ。

 

「む?カズマ、どうした?」

 

ダクネスの問いにすら、俺は答える事なく疾走した。

ただ、その体を前へ、心を彼女の元へ。やがて接近に気付いた蛍がこちらを見て「カズマ!?」と驚愕すると、そんな彼女に掴みかかって俺はこう叫んだ。

 

「助けてください蛍サァン!!」

 

蛍とパイモンは何言ってんだこいつ?と言った顔で「え?」と言葉をこぼした。

 

 

 

*△+このすば+▼*

 

 

 

「頼むよ、もうお前たち以外に頼れる奴は居ないんだ!後生だからぁ!」

 

「いい加減、離して!本当にどうにもならないから!」

 

璃月港の冒険者協会。その真ん前で、金髪の少女に泣きつく男の姿在り。

 

「おい離せよカズマ!オイラ達でもどうにもならないって言ってるだろぉ!」

 

「そこを何とか!一か月後にある最初の支払いだけでも十億モラも必要なんだ!」

 

最低な頼みごとをしているのは分かっている。

蛍のスカートを引っ張りながら、涙目で泣きつく姿の嗚呼なんと情けない事か。同じく当事者であるめぐみん達ですら、俺に白い目を向けている。

 

「前に酔った勢いで胸に飛び込んだ事謝るから!だから、頼むよぉ!」

 

「キモッ!?そんなんだから、クズマとかカスマとか言われるんでしょ?自業自得だよ!」

 

おおっと天使枠の蛍がこの辛辣さである。

と他の冒険者も距離をとって近付こうとしない現場に、一つの足音が近づいてきた。

 

「何やらギルドの前が騒がしいから来てみれば……えっと、どうしたんだい?旅人」

 

「公子!いい所に……この変態をどうにかしてくれ!」

 

「ハハっ、何やら面白そうな事になっているみたいだね?」

 

突然現れた公子と呼ばれた優男っぽい茶髪で長身のイケメン。

パイモンがそいつに俺達がモンドの知り合いであり、更に多額の借金を背負っている事を話すと、彼は興味深そうに俺達を見て得心いったように頷いた。

 

「旅人と同じように外から来た客人か……それに君達、よく見れば……あの時広場で千岩軍に連れていかれていた人達じゃないかい?」

 

「そうだが……まずは貴方の名前を聞いてもいいだろうか?見たところ、蛍の知り合いみたいだが……」

 

「おっとすまない。俺とした事が自己紹介がまだだったね?俺はタルタリヤ。またの名をファデュイの執行官『公子』とも呼ばれている。以後お見知りおきを、異邦の旅人達」

 

ダクネスが訊ねると、そうして名乗り。所作まで爽やかでスマートと来た。

この世界も異世界なだけあって美男美女揃いではあるが、顔面偏差値とか高すぎだろって毎回思う。

 

「それで、七天神像を壊したんだって?凄いねぇ、あれってそう簡単に壊れるような代物じゃないんはずなんだけど……でも、それが本当なら三百億モラは納得の金額だ」

 

どうやらこいつも蛍同様、話の分かる奴らしい。

この世界に来てから出会った人間は、一癖二癖あっても基本的に話の通じるやつばかりで涙が出てくる。元の世界もこれくらい人々がまともなら良いのに……

 

「フッフッフ……我が爆裂魔法の直撃を受ければ、例え固い岩山であろうと灰燼と化します。まあ、像の一つや二つくらい訳ないですよ!」

 

「お前は何偉そうぶってんだ、この爆裂魔!お前の壊したその像の一つや二つのせいで今こんな事になってんだろうが!?」

 

調子に乗っためぐみんに対し、眼帯を引っ張ってパシンとした後に側頭部にチョップを食らわせる。

 

「出来れば俺としては、めぐみん嬢やダクネス殿と手合わせしてみたいものだけど……そうだね、君達の借金。俺がどうにか出来なくもないよ?」

 

「なっ、本当か!?」

 

にこやかに首肯するタルタリヤ。

普段ならそんなうますぎる話に食いつく俺じゃない。でも、彼がファデュイの執行官であり多額の金を動かせる立場にあるのは間違いないみたいだから、今は藁にも縋る思いだった。

 

「ああ。だが勿論条件付きだ。タダの契約なんて何の拘束力もないだろう?俺は君達に貸しとして借金返済の目途を立て、そして君達は俺の頼みを聞く。契約の国『璃月』では、これ以上に信用のある関係もない。……但し、金額が金額だからね。頼み事の内容も、当然危険なものだ。君達に、それをこなす覚悟はあるかい?」

 

ゴクリ。生唾を飲み込む。

確かに目下必要な金ですら十億。どんな危険なクエストを受けさせられるのか、俺達は緊張せずにはいられなかった。

 

「……その頼み事って言うのは?」

 

聞き返すと、タルタリヤは笑顔で頷いた。

 

「頼み事は三つ。一つ目はーー」

 

こうして、俺達はタルタリヤからの頼み事を受けて、超危険なクエストへと駆り出されることになったのである。因みに蛍はこれ以上絡まれないように、そそくさとどっかへ行った。

 

*△+【クエスト】タルタリヤからの三つの依頼をクリアせよ+▼*

 

てなわけで、簡単に俺達が受けた依頼の内容を説明すると……

 

一つ目は、軽策荘の水が近頃汚染されているらしいから、それをどうにかして来て欲しいというもの。まあ、これはアクアが軽策荘を住処にしている『純水精霊』っていう奴にかかった呪いを浄化した事で、どうにかなった。はい、解決。次……

 

二つ目は、ファデュイが調査する予定だった秘境の代理調査。

というのも、奥にかなり強いモンスターが居るから、代わりに行って倒してきてくれというもの。これもダクネスに壁役をしてもらいながら、アクアで延々と回復し続けて、ボスの遺跡重機を俺のクリエイト・ウォーターとフリーズの合わせ技で谷底に落とした事で何とか撃破。

正直生きた心地がしなかったぜ。はい次……

 

三つ目、に関しては今から行くのだが、内容的に俺達だけじゃ流石にきついという事で助っ人が居るらしい。

 

「タルタリヤにはここで待ってろって言われたけど……」

 

璃月港の冒険者協会前で、俺達はタルタリヤの呼んだという助っ人を待っていた。

ただ何もせずに突っ立っているのも何なので、俺は依頼用紙を広げて再度三つ目のクエスト内容を確認した。

 

「『【討伐対象】エンシェント・アビサルヴィシャップ』。岩のように隆起した体と、炎、水、雷、氷の四属性に変化する元素攻撃が特徴的。放たれるブレスは非常に危険で、熟練の冒険者でも命を落とす危険性あり……確かに、見るからにヤバそうなモンスターだな」

 

「カ、カズマ!そ、その、討伐の際はブレスというのを一撃受けてみてはダメだろうか?文章を見るだけで、喜びの身震いがおさまらんのだ!」

 

「おい変態騎士。ここにデカデカと『非常に危険』って書いてんだろうが!!突っ込むなよ?絶対に突っ込むなよ!?」

 

「それは振りか?」

 

「ちげぇわ!もし不審な動きを見せたら、その場でドレインタッチだからな?」

 

これだから危険なモンスターと戦うのは嫌なんだ。

ただでさえ危ないクエストなのに、うちの爆裂魔と変態クルセイダーのせいでさらに危険度が増すというとんでもない縛り付きだ。アクアはアクアで途中で泣きだしてはしがみついて来るし、正直今まで生きてこれたのが不思議なくらいである。

 

「問題ありません。そのアビサルヴィシャップとやらは、会敵早々、即座に我が爆裂魔法の灰になる事でしょう。岩のように隆起した巨体に、我が渾身の一発をぶち込むのが今から楽しみでなりません」

 

「あ、言っとくけどこいつ基本は洞窟の中に巣を作ってるらしいから、拓けた場所におびき寄せるまで爆裂魔法は打つなよ?」

 

前に秘境の中で爆裂魔法を放った際には、危うく崩れる秘境の中で生き埋めになる所だったのだ。

もしあれがテレポートですぐに脱出可能な最深部でなければ、俺達は今頃全滅していただろう。閉鎖空間で爆裂魔法など撃たせてたまるか。

 

「ねぇカズマさんカズマさん。このクエストが終わったら、しばらくは働かなくて良いのよね?私、この町の酒場にそろそろ行ってみたいんだけど……」

 

と、ここにも相手するのが面倒な奴がもう一人。

確かにこのクエストを終えれば、今までよりも間違いなく余裕は出来る。少なくとも野宿生活とはおさらば出来るだろう。

 

「……しょうがねぇな。但し呑みすぎるなよ?今度有り金全部使ったとか言ってももう聞かないからな?」

 

ここ一か月はほぼ断酒状態で頑張り抜いた事だし、今日を頑張り抜けば少しくらい休んでもいい……はずだ。

というより、そろそろ休まないと俺もあやうく過労でぶっ倒れそうだ。アルカンレティアで執拗なアクシズ教勧誘を受けた時並みの精神崩壊に突入しかねない。

 

「ーーそこの冒険者方、少しいいだろうか?」

 

そうして四人で話していると、背後から男が声をかけてきた。

 

「ん、ああなんですか?」

 

そこに居たのは茶髪でこれまた長身のどことなく老人のような雰囲気を持つイケメンだった。

 

「俺は公子という者から、とある四人組の依頼を手伝うよう頼まれた者だんだが……それはあなた方の事で間違いないか?」

 

「あ、はい!そうです!」

 

これまでの経験から助っ人と聞いてもろくな奴が来るか半信半疑だったが、やはりこの世界の人間は比較的にまともな奴が多いらしい。

初対面の印象は傑物然とした目の前の男は、外見は年若く見えるのに、纏う雰囲気はどちらかと言えばウィズとかバニルみたいな印象を受ける。とは言え、あのタルタリヤが派遣してきたという事は、腕利きなのは間違いないんだろうし、何よりも助かるのがある程度の常識を持ってそうな所だ。

 

「そうか。では改めて、俺の名は鍾離。往生堂という所で、客卿を勤めている」

 

鍾離の名乗りに対して、こちらもそれぞれ自己紹介をする。

 

「ふむーーカズマに、アクア。めぐみんに、ダクネスというのか。こちらこそ、以後よろしく頼む」

 

やはり俺の目に狂いはなかった、この人めっちゃ常識人。

秀逸奇抜な人間はもう懲り懲り。やはり頼れるのは、大人な余裕を持つ常識人だけだ。

 

という訳で、俺達は早速鍾離と一緒にアビサルヴィシャップの住処へと急いだ。聞く所によると、この鍾離はタルタリヤや蛍ともそれなりに仲が良いらしく、先日まで(主に俺達が牢屋にぶち込まれてた間)は、共に迎仙儀式の道具集めの為に奮闘していたそうだ。

 

「俺は岩元素の力で、皆に攻撃を防ぐ障壁を付与する事ができる。これで、あのアビサルヴィシャップのブレスも防げるだろう」

 

「おお!それは頼もし――」

 

「な、何だと!?それでは私が攻撃を直に受けることが出来ないじゃないか!鍾離殿、ここは一つ私だけその障壁とやらは付与しないで……ぴゅやぁああああ!」

 

突然アホな事を言い出したダクネスを黙らせるべく背後から首筋にドレインタッチ。そのまま後頭部を掴み頭を下げさせる。

 

「すみません、このアホにはちゃんと戦いまでに言って聞かせますので!」

 

「流石はカズマ……不意打ちで魔力を吸った挙句、無理やり頭を下げさせるとは……やはり、他人(ひと)をぞんざいに扱う事に関してはお前の右に出る者は居ない!!」

 

「だぁもう、お前はクエスト終わるまで喋るんじゃねー!いつまでも話が進まないだろうが!」

 

折角鍾離がシールドを張ってダメージを軽減してくれると言っているのに、それを邪魔な物扱いするとか……

今更ダクネスにその性癖を自重させるなど不可能な事は分かっているが、頼むから人様に迷惑かけるのはやめて欲しい。

 

「なに、気にする事はない。むしろ、より高い次元へと挑戦しようとする精神は武人として尊ぶべきものだ」

 

「おお!鍾離殿は分かってくれるか?この私の高鳴る思いを!」

 

違うんだ。違うんだよ鍾離。

こいつは仲間を守りたいって気持ち自体は本当でも、敵の攻撃を進んで受けたがるのはそんな高尚な理由なんかの為じゃない。ただ真正のドMってだけなんだ。頼むから常識人のあんたまでこんな変態と意気投合しないでくれ。

 

 

 

とまあ、いつも通り騒がしい道中をこえて俺達は件のアビサルヴィシャップの住処へとやってきた。

 

「あそこで寝てるのが、その話に出てくるアビサルヴィシャップか?確かにめっちゃでかいな」

 

巨大な円形の洞穴の中央で眠っているモンスターは、その巨体ゆえに威圧感が半端ない。

 

「ああ、特にエンシェント種は凶暴な事で有名だ。一度外敵と目を合わせれば、こちらが倒さない限り三日三晩暴れ回るだろう」

 

「何それ怖!?そういう事なら、ここは慎重に様子を伺いながら……」

 

「あぁ、直視すれば想像以上だ。あの巨岩の様な体に、鋭利な爪。その爪に引き裂かれ、巨体から繰り出される一撃はどんな物だろうか……!カズマ、もう辛抱たまらん!」

 

「は?ちょっと待てお前何する気だ!?」

 

もはや止める暇すらもない。人の言葉も聞かずに変態クルセイダーは駆け出した。

 

「ちょっと行ってくりゅう゛!!」

 

「だぁああ!やめろこの馬鹿ぁ!」

 

案の定、アビサルヴィシャップはダクネスの接近によって目を覚まし、耳をつんざくような咆哮を上げた。

途端に現場に満ちる緊張。

 

「か、カズマさん?これやばくない?」

 

「やばいなんてもんじゃなぇよ畜生!あいつ……慎重に行こうとしてた俺の作戦を早くもぶち壊しにしやがって!」

 

だが、そんな事を言っても後の祭りだ。

ダクネスは既にアビサルヴィシャップの爪や巨体、更に丸太のような尻尾やブレスなど、ありとあらゆる攻撃を嬉々とした悦声を上げながら受け続けていた。ほらぁ、凶暴なヴィシャップさんですら「なんだコイツ?」って顔で動揺してるよ。

 

「鍾離先生!俺にその障壁ってやつをお願いします!」

 

「分かった――『難攻不落』!」

 

それによって岩元素が俺の体に集まると、確かに体を覆うようにバリアみたいなのが展開された。

 

「よし、これなら!めぐみんは洞穴の入口で待機だ!でっかいのをお見舞いさせてやるから楽しみにしてろ!」

 

「分かりました!信じてますからね、カズマ!」

 

アクアはボロボロになったダクネスの回復役として、鍾離の近くに置いておけば安全だろう。

さあ、いっちょやってやるか!

 

「うおおぉぉおおお!」

 

なけなしの勇気を奮い立たせながら走る。走る!

やがて、距離二十メートル。この距離なら行ける。

 

「ン、ソ・ゲ・キッ!」

 

矢を射るとヴィシャップさんがこちらに向いた。

 

「おらぁ、こっちだこっち!」

 

ガオォオと雄叫びを上げてこちらへと迫ってくるヴィシャップさん。

 

「なぁ!?ズルいぞカズマ!」

 

「うっせえよ!誰のせいでこんな事になってると思ってんだ!?」

 

と、言ってる間にもヴィシャップさんは俺へと攻撃を開始する。

鋭利な爪が振り下ろされて、俺の体をシールドごしにガンと叩いた。

 

「ひいぃい!?シールドがあるとは言っても、やっぱこえぇ!」

 

我ながら情けない声を上げながら、俺はヴィシャップを伴って洞穴の出口へと急ぐ。

鍾離のシールドは強力だが、一定以上の攻撃を受ければ解除されてしまう。これは時間と体力の勝負だ。お前が俺を殺るのが、先か俺が逃げ切ってお前を屠るのが先か。どっちが先か勝負と行こうじゃねぇかぁ!!

 

この魔王軍幹部すらも捲く健脚をもってダッシュし、辿り着いた洞穴の出口。

そこから飛び出して、俺は即座に潜伏スキルを使って身を隠す。

 

「今だぁ、めぐみん!」

 

その合図と同時に俺を見失って右往左往するビシャップさんの頭上、洞穴の出口の上あたりに赤い姿が揺らめく。

 

「感謝しますよ、カズマ。ええ、感謝しますとも!こんなにも絶好のシチュエーションを作ってくれるとは、流石はカズマです!」

 

バッと杖を構えて、ヴィシャップへと向ける。

 

「光に覆われし漆黒よ――」

 

詠唱の開始と同時に凄まじいエネルギーが杖の水晶へと集まっていく。

この世界の理に則るなら、火と風の元素を束ねる混合エネルギーが生成され超高倍率で圧縮。その威力は一時的に七神の一撃にも届きうるだろう。そう、この一撃こそがこれまで魔王軍幹部や化け物共を屠って来た最上の一撃。

 

「穿て……!エクスプロォォージョン!!」

 

赤い光が放たれて、直後アビサルヴィシャップに直撃する。

ビシャップは耐えるべく咄嗟に元素エネルギーをためたブレスを吐いたが、そんなものはこの一撃の前には焼け石に水だ。凄まじい爆炎は巨体を易々と飲み込み、文字通り跡形もなく消滅させた。

 

「ナイス。爆裂」

 

洞穴の前には、消滅したヴィシャップの代わりに巨大な窪地が刻まれたのだった。

 

*△+【クエスト】タルタリヤからの三つの依頼をクリアせよ+▼*

達成

 




何だかんだまだ爆裂してなかったのでここで今作初爆裂かましました
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