この素晴らしいテイワットに祝福を!   作:グランドマスター・リア

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璃月編ラスト!
という訳で増量版、いつもより倍くらいの文字数になっちゃいました


この渦の魔神に爆裂を

 

成り行きを説明しよう。

前回、割と意味が分からない所で終わったので、状況を理解できていない者が大半である事だろう。え?誰に喋ってるのかって?そりゃあ画面の向こうの良い子達さ。てな訳で、前回の続き。始まる!

 

 

 

昨日の晩、頭のおかしい爆裂娘によって再び多大なる借金を負う事になった俺達は絶体絶命の危機に陥った。

しかし、そこに我が盟友のタルタリヤによって救いの手が差し伸べられ、いつもは駄目なアクアの予想外な活躍によって無事借金は解決。めちゃくちゃ上機嫌に宿で眠りにつき、これはもうサキュバスのお姉さんのサービスなみにいい夢が見られそう。

 

見られそう、なくらいに本当にいい気分だったんだ。

 

「カズマ!カズマ起きろ!」

 

「うるさーい!何だよこんな夜遅くに……折角いい気分で寝てたってのに」

 

ベッドごとがくがくと揺らされて、俺は眠りから覚める。

目の前にあったのは、血相変えたダクネスの顔で。俺は眠りを妨げられた怒りで怒鳴り散らす。

 

「そんな事を言っている場合ではない!今すぐ起きて着替えろ!外が大変な事になっているぞ!?」

 

「はぁ?そう言えば、さっきから何か外が騒がしいな?」

 

今もガタンガタンと窓がうるさく叩き付けられる音を立てている。

とうとう何事かと思った俺は窓を開けると、途端に俺はそこから吹いた突風と雨風によって部屋の壁まで吹き飛ばされる。

 

「うおおっ!?何だこれぇ!」

 

見れば、外はとんでもない豪雨の大嵐と化していた。

 

「だから言っただろう!突然の嵐で、倒壊する建物まで出てきている。街は大混乱だ!」

 

「ほ、本当にやばいじゃねぇか!」

 

ただ事じゃないのを理解した俺は、ともかくいつもの冒険者服に装備を身に着けてダクネスと共に宿の外で出る。すると、そこには彼女の言った通りの阿鼻叫喚。逃げ惑う民を千岩軍や冒険者が協力して、何とか避難誘導をしているが皆それぞれ切羽詰まった様子だ。

 

「カズマ!ようやく起きたのですね?」

 

「めぐみん、一体これは何の騒ぎなんだよ?昨日まではあんなに晴れてたのに、急にこんな嵐が襲ってくるなんて……はっきり言っておかしいだろ?」

 

駆け寄ってきためぐみんに状況説明を求める。

 

「詳しい事は私にも……千岩軍の人に聞いた話によると、何やら巨大なモンスターが璃月の近海に出現したそうで、恐らく原因はそれかと……」

 

何じゃそりゃ。

ここって各国の商人が集まる貿易港なんじゃ無かったのかよ。近海にこんな嵐を巻き起こすようなモンスターが出現って、デストロイヤーや魔王軍幹部よりも下手をしたらタチが悪い。見れば、普段は怠惰なアクアでさえ怪我人の治療をしている様子。

しかもこの豪雨。そのモンスターが討伐されない限りは止みそうもない様子だ。

 

(あれ?ハッキリ言ってこれ、超やばいんじゃね?)

 

もはや璃月港を諦めて逃げおおせる事すら考えた。

しかしそこで、俺は一人の少女が璃月港を走っているのをこの目に映した。

 

「あれ、蛍じゃないのか?」

 

「え?あ、確かに、でもあんなに急いで他の方達に見向きもせず一体どこへ行くのでしょう?」

 

何やら蛍とパイモンが慌てた様子でとある場所に向かおうとするのを、俺は二人が走り去ってしまう前に大声で呼び止めた。

 

「おーい、蛍!パイモン!そんな所で何やってんだ!!」

 

「カズマ!それに皆も……あなた達なら、もしかしたら」

 

急停止した蛍は、俺達の姿を見て何やら悩んだした様子で数秒考え込むと、パイモンと顔を見合わせて頷きあった。それを見て、俺は何のことか分からないなりに声をかけたのを後悔しそうになる。

だが、そんな俺の心情など関係なく蛍はこちらまで駆け寄ってきた。

 

「事情は走りながら話す!だから、皆も一緒に来て!」

 

「来てと言われても、一体こんな時にどこに行くってんだ?」

 

「群玉閣だよ!璃月を救うために、あなた達の力もきっと必要になる。お願い、力を貸して!」

 

はい、王道展開きました。

あれだよなこれ、強大な敵の出現になす術なく蹂躙される街。しかし、そこに偶然居合わせた勇者に助けをこう美少女冒険者。爆裂魔法を撃ち込まれてキレたベルディアとか、運悪くアクセルを進路上にしたデストロイヤーとか、温泉街に出現したハンスとか、そんなパワーバランスぶっ壊れのくそったれ展開じゃない。

いつもの俺なら尻尾をまいて逃げ出す所だし、ぶっちゃけ今もめちゃくちゃ断りたい。でも……

 

「カズマ」

 

そこで、声をかけて来ためぐみん。彼女だけじゃない、ダクネスも。

 

「行こうカズマ。私達の力が必要だと言うのなら、世話になったこの街の為にも立ち上がるべきだ」

 

「お前ら……あぁもう、仕方ねぇなぁ!」

 

結局、こうして俺はいつもみたいに渦中に飛び込む事になるんだ。

 

「おーいアクア!お前も行くぞ!」

 

「え?ちょっと何カズマさん、どういう事?行くって何処に?危ない所なら嫌よ?私はここで兵士の人達に守ってもらうんだから!やめて、引っ張らないで!」

 

いつも通り嫌がるアクアを引きずって、俺達は蛍に「案内してくれ」と頼むと彼女の後についていく。

行き先は『群玉閣』。俺は一度も言った事が無いが、常に璃月港の上空に浮かんでいる浮島だ。そこは璃月の商業の中心で、内部には数知れないほどの重要な商材やら情報が眠っているらしい。

これだけで、ただの一般冒険者でしかない俺達には過ぎた場所なのは言うまでもない。しかし、蛍はどうやらすでにそこの管理者と関わりがあるらしく、入る事も可能だ。

 

そこに向かう途中の道中で、俺は蛍から今回の件のあらましを聞いた。すると、何という事だろう。タルタリヤの手によって、何千年も前に世界を荒らしまわった魔神の復活?それが璃月に上陸したら一巻の終わり?

ヤバすぎるだろ!

少なくとも、ここはモンドから引き続いて二つ目の街で、ボスにしたってもうちょい難易度低めなのが出るべき所じゃないか。それがいきなりのラスボス級出現ときた、どうやらこの世界も大概パワーバランスはぶっ壊れているみたいだ。

 

「でも、タルタリヤにしたって……もう魔神が居たのは何百年も前の話なんだろ?一体、どうやって……」

 

「禁忌滅却の札、というのを使ったみたい。私にも詳しくは分からないけど……」

 

おっと?

 

「ん?禁忌滅却の札?」

 

雲行きが怪しくなってきたぞこれは。

 

「あれには神と仙人の力がこもっていて、魔神を復活させる事も出来るって。どういう方法を使ったのか分からないけど……タルタリヤはそれを量産して、魔神を復活させたみたいなんだ」

 

冷たい汗が頬をダラダラと流れる。

禁忌滅却の札?そして、それの量産?あらやだ、これ俺とアクアもバチバチに関わってる奴じゃないですかぁ。しかも悪人側。昨日ノリノリで量産しまくったアクア謹製の霊符、この駄女神が言うにはその威力はオリジナルの三倍はあるとか言ってた。

忘れかける時もあるが、曲りなりにもコイツは女神だ。そんな奴が神力を込めた札なんて使えば、そりゃあ魔神なんてバンバン復活しますがな。

 

「ねぇねぇカズマさん?これ私達のせいじゃないわよね?し、知らなかったんだから仕方ないわよね?タルタリヤが私達を騙してたって事にすれば、どうにかならないかしら?」

 

「あぁ金さえ受け取ってなけりゃあ、その言い訳も通じたかもな」

 

群玉閣に登るための浮き岩を待つ途中、俺とアクアは他の面子に事が漏れないように少し距離を離して会話していた。

だが、今コイツに言った通り、タルタリヤからの報酬を受け取っている以上知らぬ存ぜぬは通用しない。俺達は金で雇われて璃月崩壊に貢献した立派な大犯罪者であり、その先待つのはいつかの国家反逆罪による極刑以外に有り得ないだろう。

 

「いいかアクア?俺達の助かる道は一つだ。その魔神とか言うのを俺達で倒して、その国家反逆罪ごと魔神討伐の活躍で無かった事にするしかない」

 

借金まみれになるのは免れないかもしれないが、流石に璃月を救った英雄を極刑に処すなんて事はないだろう。

自分達のツケは自分達で払う。今までとやる事は同じだ。

 

「わ、分かったわ」

 

よし、後はこの駄女神が口を滑らせなければ……

 

「ほう?私達の知らない間に、そんな事があったのだな?」

 

「だ、ダクネス!?それにめぐみんも……いつから聞いて」

 

すると突如、背後からドスの聞いた声が響いた。振り向くと、そこにはダクネスとめぐみんがとてつもなく怖い顔をして立っていた。

 

「全部だ。お前達が妙によそよそしく話をするものだから、何かあるのではと思ってな?」

 

「こういう時のカズマが何かやらかしていない訳がないですからね。まあ、実際は案の定だった訳ですが……」

 

終わったかもしれん。

もはや背後は崖っぷちの谷。とうとう俺の命運もここまでか……

 

「……本当に、仕方のない人ですね」

 

「めぐみん?」

 

言って、俺に背を向けためぐみんはその赤い目をこちらに向けた。

 

「倒すんでしょう?その魔神とやらを……いつも通り、この私が爆裂魔法で消し飛ばしてやりますよ」

 

「カズマの問題行動は今に始まった訳でもないからな。どちらにしろ、この街の為にも、魔神討伐は果たさなければならないだろう」

 

「めぐみ、ダクネス……お前ら」

 

めぐみんとダクネスは笑って、グッと親指を立てた。

いつもいつも俺を困らせる癖に、こう言った時だけは誰よりも頼りになる奴らだから本当にタチが悪い。

 

「当ったり前だろ?俺が今までどれだけの強敵を倒してきたと思ってるんだ?」

 

役者は揃った。

さあ、おっぱじめるとするか。いざ、群玉閣へ。

 

 

 

*△+このすば+▼*

 

 

 

図らずしも初の群玉閣入りを果たした俺達は、その山よりも高い場所からついにその視線の先に今回の大ボスを拝むことになる。

 

「で、でっけぇ!なんじゃありゃ!?」

 

璃月の近海には巨大な渦のような長い四つ首の化け物が出現していた。あれが魔神だと?デストロイヤーや魔王軍幹部なんかよりも断然にやばいじゃねぇか。確かにあんなのが璃月に上陸したら、逃げるどころの騒ぎじゃない。

 

「な、なあカズマ!何だあの巨大な龍は?あんな太い首から放たれる一撃を受けてしまったら……私は、私はどうなってしまうのだろう!?」

 

いつも通り変態クルセイダーは平常運転ですね。

 

「ハッハッハ!魔神と聞くからには中々の巨躯であると予想はしていましたが、これ程とは……ここで奴を我が爆裂魔法で討ち取れば、『魔神殺しのめぐみん』の名がこの璃月に未来永劫刻まれる事でしょう!高鳴ります、高鳴りますよカズマ!」

 

こっちもノリノリな様で安心したが、改めて思うが、あんな化け物を見てそんな事が言えるこいつらの頭は一体どうなっているのだろう?

 

「ね、ねぇカズマさん。私、今回は本当に死ぬかもしれないわ」

 

「いや、お前が死んだら誰が俺を生き返らすんだ?やめろよ、本当に!」

 

アクアは魔神を前にしてすっかりと震えあがっているみたいだが、今回ばかりは俺もコイツと同じようなもんだ。こうして目の前にしただけでも、魔神の放つ緊張感が全身ビリビリ伝わってくる。多分、異世界に転生したばかりの頃の俺なら、それだけで気絶してぶっ倒れていた事だろう。

 

と、そこに一人の少女が現れ、俺達へと声を掛けた。

 

「あの上古の魔神を前にして、このお気楽さとはね。流石というか……今回ばかりそんなあなた達を少し見習いたい所よ」

 

「刻晴!そうか、お前は璃月の七星だから、ここに居るのも当然だよな」

 

彼女に続いて、他の仙人やら七星と思しき人物達が一堂に会する。中には鶴とか鹿とか、もはや人間じゃないのまで混じっている。

 

「あなたがサトウカズマさんね?噂はかねがね耳にしているわ。私は璃月七星の一人『天権』の凝光。今回は魔神討伐に協力してくれる事、璃月の七星を代表して礼を言わせてもらうわ」

 

「い、いえ、そんなお礼なんて……」

 

すみません、コイツが復活したの俺達のせいなんです。

だから頭なんて下げないでくださいお願いですから!

 

「ふむ、この者達が絶雲の間の一角を吹き飛ばしたという不届き者共か?本当に役に立つのだろうな?」

 

そこで、鹿のような奴。恐らくは仙人が、俺達に向かってそう言った。しかし、それに対しては甘雨は説明してくれる。

 

「カズマの奇策に、アクアの回復。めぐみんの爆裂魔法の威力と、ダクネスの耐久力は必ず今回の『渦の魔神』討伐にも役立つはずです。問題行動は目立ちますが、この者達の実力は確かです。そこは私が保証します」

 

「甘雨……」

 

そう、刻晴も甘雨も迷惑かけてばかりの俺達はそれでも見捨てずに色々してくれるくらい、本当にいい奴なんだ。

 

「……その言葉が偽りでないのを願うとしよう」

 

どうやら甘雨の説明には仙人を一時的にとはいえ納得させるだけの説得力があるようだ。

 

「実際、上古魔神の威圧を前にして、千岩軍の新兵は立ち上がる事すらできないわ。それこそ一介の冒険者では、文字通り立っているのがやっとでしょうに、カズマ達は見ての通り全く応えていないみたいだし……」

 

そこは今までの戦績でたまりにたまった経験値とレベルのおかげだ。

刻晴の言葉が本当なら、ここに集まった人達もまさに精鋭揃い。これはひょっとすると、思ったより簡単に勝てるんじゃないのか?

 

「今ここに居る七星、千岩軍、それと仙人にカズマ達の力を合わせれば、あの魔神を倒せそうか?」

 

そんなパイモンの不安げな問いに対してめぐみんは自信満々に解凍する。

 

「当ッ然、です!我が爆裂魔法にかかれば、あのようなデカ物など恐るるに足りません」

 

「確かに、めぐみんの爆裂魔法はこちらに取っても切り札になるでしょうね」

 

いつものめぐみんの語り口調に刻晴が同意を示すと、凝光が疑心ひめた目でその言葉の真意を問う。

 

「話には聞いているけれど、それ程の威力なの?」

 

「山一つ打ち砕くと言って不足ない程には」

 

ざわめきが走る。

そりゃあそうだ。こっちの世界にも元素力なんてとんでも技があるが、一発の威力においてめぐみんの右出る技なんて早々ない。それこそ、七神とか魔神とかそういうレベルになる。

 

「ならば、我が改造した帰終機によって、十分に弱らせた上に放つのが良かろう」

 

「波状攻撃って訳か。乗った!」

 

勝てる、勝てるぞこの勝負。

最初の方はあんな化け物と戦えるのか甚だ疑問だったが、幾らか希望が見えてきた。

 

「ここに居る仙人達も、装置に力を注ぐことが出来るはずだし、これで『新帰終機』とめぐみんの爆裂魔法で魔神と戦えるわ。善は急げ、今が決戦の時よ――作戦開始!」

 

*△+【緊急クエスト】渦の魔神オセルを討伐せよ+▼*

 

言葉と共に凝光が天に舞い上がり、岩元素の力と『天権』の権限で群玉閣の力を解放。それによって、戦いの基盤となる舞台が形成され、そこに三つの新帰終機が設置される。仙人達もすかさずそこに構え、力を注ぎ始める。

そして、力を装填された帰終機が無数の光の矢を魔神に放つ。

 

「すっげぇ!これなら魔神だって、無傷じゃ済まないだろ!」

 

「いいえ、まだよ」

 

刻晴の一括の後、帰終機の配置された舞台の上に奇妙な穴が開き。そこから何人ものファデュイが出現し始める。その行く先は当然ながら帰終機だ。

 

「ファデュイ!?あいつら、まさか帰終機を攻撃して俺達を邪魔するつもりか?」

 

そうはさせるかと蛍、刻晴、甘雨を始めとして千岩軍の兵士達も出陣する。まさにそれは両者入り乱れての乱戦だ。

 

「カズマ、こうなっては是非もない。私達も参戦するぞ!」

 

「はぁ!?いやあいつらに任せとけばファデュイなんて……て、ちょっ、やだって言ってんだろ離せよ!」

 

抵抗虚しく俺は変態クルセイダーにしょっぴかれる形で戦いの最中に放り出される。

傍にはまるで高揚した表情のダクネスが居て、見事なまでに俺達はファデュイに囲まれている。

 

「さあかかって来い!その卑劣な手と武器で、私を追い詰めてみせろ!」

 

「ふざけんなよ、この変態クルセイダー!お前の性癖に俺を巻き込んでんじゃ……」

 

言ってる傍から、ファデュイのエージェントが切りかかってきた。

 

「死ねぇ!」

 

「ひぃ!?くそ、上等だ。やったろうやないかぁ!!今まで数多の強敵を屠ってきたこの俺を舐めるなよッ!!このチュンチュン丸の錆にしてやるぜ!」

 

と、息まいたは良い物の俺は別に腕っぷしが強い訳でもなければ、サポート能力が特別高い訳でもない。

スティールやらの盗賊スキルに、ドレインタッチ、更に初級魔法や一部の中級魔法を駆使してあの手この手でファデュイを追い払うが、一人ならまだしも一行に数が減らないとなれば流石に俺の火力じゃキツイ。

 

「どわぁ、あっぶねぇ!?」

 

遂に頬を掠めた刃に情けない悲鳴を上げて、大袈裟に後退する。

しかし、その先でぶつかった小さな背中に俺は怒鳴られる。

 

「ちょっと邪魔!って、カズマ?何よ、こんな時までセクハラのつもり?本当にどうしようもないわね、あなたは!」

 

そいつは今もファデュイ相手に一騎当千の活躍をしている刻晴だった。

 

「んな訳あるか!?こっちだって変態クルセイダーに無理やり出陣させられて、てんやわんやなんだよ!」

 

と言いつつも、必死にファデュイの攻撃から逃げ……避けて、その隙にドレインタッチをかまして戦闘不能にする。

更に豪雨で濡れた床をフリーズで凍らせて、クリエイト・ウォーターでずぶずぶにしてやればいっちょ上がりだ。

 

「……戦ってくれてる手前、こんな事を言うのは非常に遺憾なんだけど……あなたの戦い方、何というか、本当にアレね」

 

「うっせぇよ!悪口だってんなら下手に言葉選ぼうとすんな!」

 

変に気を使われる方が余計に傷つく。

 

「とは言え、これでほぼ全部倒しただろ?傷付いた兵士もアクアが片っ端から治療しているみたいだし、これなら……」

 

すでに邪魔者は居ない。となれば、ようやく魔神の対処に専念できるって訳だ。

 

「邪魔者は消えた。ようやく本気を出せる」

 

その言葉の真意を示すように、三つの帰終機の光が一点に集まって極太な光の奔流が魔神に向かって放たれる。

 

「おおッ!これなら行けるんじゃないか?」

 

放たれた光の矢は一直線に魔神へと向かう。しかし、ここでまさかの事態が起こる。

 

「ちょっと待って!魔神の様子が変よ!?」

 

刻晴が叫ぶ。

俺はどういう事か分からなかったが、目を凝らすと魔神は四つの首を一方向に向けて悠然と佇む。すると、光の矢が着弾する直前に突然、何か壁にぶつかったかのようにその力が四散したのだ。

 

「は、弾かれたぞ!?あれも魔神の能力なのか?」

 

「……いえ、幾ら上古の魔神と言ってもあの威力の攻撃をそう簡単に防いだりは出来ないはず」

 

だったら何が原因なんだ?

今の様子から見るに、まるで魔神の周囲に結界のような物が張られたように感じたが……

 

「厄介だな。奴、何やら新たな力を持ってこの海に顕現したらしい」

 

「新たな力ってなんだよ?」

 

鹿の仙人に問い返す。

 

「我にも詳しい事は分からん。だが、何か神聖な力が、奴の周囲を取り囲み、帰終機による攻撃を霧散させた様だ」

 

「神聖な力って……そんなのどうやって――あ」

 

言葉を反芻した時、俺は頭の中で全てが繋がる感覚を覚えた。

魔神を復活させたのはアクアの作った『【強化版】禁忌滅却の札』だ。水の女神であるアクアが力を込めた札を使った以上、何らかの恩恵を魔神が受けていてもおかしくはない。だとすれば……やばいやばいやばい。これは超絶ヤバイ。

またしても俺達のせいで、璃月が崩壊の危機だって事になる。

 

「そ、それは……そうだ!アクアーー!!」

 

結界って言うならアクアの解除魔法で結界破りが出来るはず。

 

「何よカズマさん。今私みんなの治癒で忙しんだけど……言っとくけど、前に出るなんて嫌だからね?絶対に嫌だからね!?」

 

コイツぅ、自分もやらかした一人だってのに偉そうにしやがって。

 

「言ってる場合か!?とにかく、あの魔神がとんでもなく強い結界を張ってて、帰終機の攻撃が届かないんだ。アクアの結界破りでどうにかしてくれ!」

 

「え、無理よ」

 

「なんでだよ!?デストロイヤーの時はそれでどうにかなったじゃないか!」

 

速攻で無理だと断ったアクアに詰め寄る。

 

「し、仕方ないじゃない!あの結界、一回破ってもまたすぐに張りなおされるわよ?私の作った札の力があるから当然なんだけど……あいつの結界の要になってるコアをどうにかしないと、今すぐに結界を破っても意味ないのよ!」

 

うっそぉん、それって詰みって事じゃないですか?

どうすんだ?このままじゃ、めぐみんの爆裂魔法も通用しない。折角勝てそうなのに、最後の最後に墓穴を掘るのか?いや、まだ方法はあるはずだ。考えろ、何か、何か策は……

 

「っ、そう言えば、今結界の核がどうだとか言ったよな?お前」

 

「え、えぇ……ほら、あそこ。魔神の首の一つに変な色の違う玉みたいなのあるでしょう?あそこに私の作った札が凝縮されてるみたいなのよ」

 

「すぅ……それなら、あれを取り除けさえすれば結界破りが出来るんだな?」

 

「まあ、あれが無かったら張りなおす力もない訳だから、そうね」

 

確かにスキルを使って目を凝らさなきゃ見えないが、アクアの言った通り変な球体みたいなのがある。

あれを取り除け、か。こんな遠くからじゃどうにもならないのは当然として、ならば近づくにしたってあまりにも危険すぎる。だが、もし近くまで行ければ結界越しでも俺のスティールであれをぶん取る事が出来るはずだ。

つまりこれ、俺の頑張り次第なんじゃないか?

 

「はぁ……しょうがねぇなぁ!」

 

もともとアイツをどうにかしなきゃゲームオーバー確定なんだ。

だったら、少なくとも希望のある方へ賭けた方が良い。どちらを選んでも地獄なら、なおの事だ。

 

「なあ、鶴の人!その帰終機ってのは、矢以外にも物を飛ばしたりとかは出来るのか?」

 

「む?まあ、人程度の大きさの物なら我が操作すれば可能だが、何故そんな事を聞く?」

 

「いんや、ちょっと作戦を思いついたんだよ。あの結界を破るとびっきりの策をな!」

 

留雲借風真君の返答はイエス。出来るという返事を聞けただけでも十分。

さてと、やったるとしますか。

 

「めぐみん!撃たせたやるよ、とびっきりの奴を!前に出て準備しといてくれ!」

 

「ッ、分かりました!」

 

めぐみんには決まり手を。

 

「ダクネスは、皆を攻撃から守ってくれ!」

 

「分かった。こちらは任せろ」

 

ダクネスにはいつも通り守備を。

 

「アクア!俺があの核をどうにかするから、結界破りは任せたぞ!頼りにしてるからな!」

 

「勿論よ。カズマさんも、どーんとぶっ飛んで来なさいな!」

 

アクアには結界破りを。

このパーティーだからこそ出来る唯一の戦法で、あの魔神にどでかい一発を叩き込んでやろうじゃねぇか。

 

「って事で、その帰終機で俺をあいつに向かって飛ばしてくれ!」

 

「何?策があると言っていたが……貴様、まさか自爆でもするつもりか?」

 

「似たようなもんだよ。安心しろ、死んでも死ぬつもりはねぇから!」

 

命をかけるなんていつもの事だ。

デストロイヤーに、魔王軍幹部。何度も死にかけたし、ぶっちゃけ実際に死んだのだって一度や二度じゃない。でも、その度にいつだって勝ってきたのは俺達だ。今更、ポッと出の魔神なんかに負けるなんて情けないにも程がある。

 

「……良かろう。貴様の言葉を信じよう」

 

鶴の人も納得してくれたのか、俺の提案に乗ってくれた。

 

「ちこう寄れ、帰終機を一時的に人間射出型に調整する」

 

「お、おう」

 

緊張感に武者震いしながら帰終機に近づくと、体が光に包まれて気が付けばつがわれた矢の如く、俺は帰終機に装填されていた。

 

「え!?ちょっと、何をやっているのですかカズマ!?それに留雲真君も……」

 

流石に異変に気付き血相を変えた甘雨が駆け寄ってくる。

 

「なぁに、ちょっとアイツの結界を破るために行ってくるだけだよ!帰ってきたら、ちゃんとその角さわさわしてやるから覚悟して待ってろよ!」

 

「ふざけてる場合ですか!?あと角はダメです!」

 

「全く騒々しい。その様子なら問題ないな。では、やるぞ」

 

留雲真君に声をかけられて、俺は身構えた。

正直めちゃくちゃ怖いし、今すぐにでも逃げ出したい。でも、それと同じくらいには成功を納めてやりたいんだ。まあ、あいつらなら後の事は全部任せられるからこそ、俺だって無理を通せる。

 

「おう、ドーンとやってくれ!」

 

「帰終機――発射!」

 

ズドーンと轟音と共に体が凄まじい勢いで空中に投げ出される。

 

「あばばばばばばばばばッ!?」

 

仙人の光に包まれた体が、矢のように魔神の攻撃をかいくぐって向かっていく。その距離は近づいて、瞬く間に目と鼻の先に魔神の巨躯が迫る。

 

(うおぉおお!?近くで見るとやっぱ怖えぇ)

 

遠くで見る百倍は怖い。

でも……

 

「その分、お前の弱点もしっかりと見えるぜぇ!!」

 

手を伸ばす。

間違いない。この距離なら行ける!

 

「食らえ――スティール!」

 

手の内が輝いて、スキルの力は結界を素通りして奴の中にある核を捉えた。

俺の幸運値とレベル、その全てをかけた盗賊スキルは、違う事なく俺の手の内に黒い球体を収めた。瞬間、渦の魔神が巨大な悲鳴を上げた。

 

「よし、後は頼んだぞ。お前らぁああ!!」

 

帰終機による打ち出しの推進力を失った俺は、そのまま真っ逆さまに海へと落下していった。

 

 

 

その頃、アクアはご自慢の杖を持ち羽衣も纏って渾身の解除魔法を発動させていた。

 

「はあぁぁぁああ!」

 

群玉閣の正面に巨大な魔法陣が展開され、そこに幾つもの光が集まる。

 

「セイクリット・ブレイクスペル!」

 

それが奔流となって放たれて、渦の魔神の結界に直撃すると僅かな拮抗の後に露を払うが如く結界が砕け散った。

 

「余計な壁は消えたようだな。今度こそ目にものを見せてくれる」

 

それに乗じて仙人達も最大の力を帰終機に込めて打ち出すと、今度こそ光の矢は何物にも阻まれる事なく魔神に届く。その際に凄まじい威力と衝撃を伴って、魔神の巨体をこれでもかと揺らした。

 

「効果があったぞ。このまま行けば」

 

「いや、まだ何か来る」

 

パイモンの言葉を蛍が否定すると、魔神は最期の抵抗にその首を全て天に掲げそこから巨大な水の柱で曇天を貫く。

それを起点に、雨の様な水の槍が無数に群玉閣へと降り注ぐ。これによって、帰終機は破壊され、兵士達もそれによって次々と負傷する。

 

「危ないッ!」

 

兵士の一人に水の槍が直撃しかけた所で、それをダクネスが寸前で自らを盾にした事で防ぐ。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい」

 

だが、それも束の間に群玉閣によって形作られていた足場も崩壊する。

仙人達が落下する者を救出した事で犠牲者は出なかったが、群玉閣はこれで反撃の起点を失った。

 

「帰終機がなければ反撃は難しい。だが、先程の一撃で魔神も十分に弱った事だろう」

 

「ええ、これなら」

 

それぞれの視線が彼女に向く。

眼帯をしたとんがり防止の少女、めぐみんへと。天下の爆裂少女は赤い杖をくるりと回して構え、ばさりとローブを翻し、その赤い目は感情に高ぶりに応えて雄々しく光る。

 

「ふっふっふ、真打登場です。この私が、真の破壊というものを見せてやりましょう!」

 

めぐみんは誰よりも前に出て、渦の魔神を睨む。

そして、魔法の詠唱を開始する。

 

「――我が名はめぐみん」

 

赤い巨大な魔法陣が展開され、万生に生きる仙人達ですらたじろぐほどの圧倒的な破壊の力が集約される。

 

「紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者」

 

その呼び声に応えて、今のこの決戦の刻に彼女の最大の一撃が示される。あの日、デストロイヤーを破壊する際、カズマに激励され彼女は奮い立った。今この時も同じ、最後を飾るのはやはりの彼女の爆裂をもって他にない。

 

「猛き渦を支配する魔神よ。我が力を見るがいい!」

 

起句は終わり、現出した破壊は、確かな紅となって顕現する。

 

「穿て……エクスプロォオーーージョン!!!!」

 

かの世界で最大の破壊魔法と唄われ、更にそこに幾十もの研鑽を詰んだソレは渦の魔神を容易く飲み込むほどの爆裂を起こす。

そこには断末魔の悲鳴もなく、あるのはただ赤き光と重い衝撃が唄う叫びのみ。爆炎に包まれた後、光が止んだそこにもう魔神の姿は無かった。あるのは、消し去られた雲の合間から差し込む光の柱と、青い空のみ。

めぐみんは後ろに倒れながら、親指を立てて言う。

 

「200点。最ッ高、です」

 

*△+【緊急クエスト】渦の魔神オセルを討伐せよ+▼*

達成




爆裂!最高……
節目という事でまずはお礼を
この作品は普段から読者皆さんの誤字修正に非常に助けられてます

変換ミスやら、作者のうろ覚えやらで、結構ミスってる所も多いかと思いますが作者も見つけ次第修正して参りますのでどうかご容赦を

次回は璃月編のエピローグと稲妻編の入りまでやると思います
世界任務に関してももっと広げていきたい、まだまだカズマ達と組ませたいキャラが沢山居ます
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