嘘吐きカルテット   作:みみずら〜めん

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初投稿です。二次創作初挑戦なので優しい目で見て下さい。 SPY×FAMILYの二次創作が少なかったため自家発電..。


01.邂逅

ヨル視点

 

「結婚しませんか?」

 

お互いの利益のためにと提案した結婚が了承され、ロイドの暴走した患者から逃げた後、引っ越しの話になり、ハッとある事を思い出して青ざめる。

 

「ロ、ロイドさん!すみません、私ってばとても大切なことを忘れてました!」

 

「大切なこと?なんでしょう?」

 

「兄妹が2人いると言ったのですが実は妹の方は体が弱いのと17歳で成人していなくて心配なので今も一緒に暮らしてまして..お引越しするとなるとその子も一緒になってしまうのですが大丈夫でしょうか?」

 

「もちろん構いませんよ。大事な妹さんでしょうし1人にさせるのは心配でしょう。部屋も空いてますし、アーニャも姉のような存在ができるのは喜ぶと思います。」

 

(ヨルさんの妹..ヒルデ・ブライアか。年齢17歳、素行に問題無し、飛び級をしてその年齢にして博士号を授与された秀才。科学者や医師など数多の道を選択できたが現在はイーデン校で教鞭をとり、初等部に理科と算数を教えている。...受験には関与していない立場だろうがイーデン校の教師が身内にできるのは今後勉強面で有利に働くだろう。経歴に怪しい点はないし家柄が庶民であるのにあの歴史や品格にうるさいイーデン校の教師となれる程優秀なのだ..近くに置いて損はない。)

 

「ほ、本当ですか!ありがとうございます。...あ、ではヒルデにも伝えなくてはいけませんね!」

 

「..結婚歴は知り合いの弁護士のツテで1年前にしようと考えていたのですが一緒に暮らすとなると流石に恋愛結婚のフリは難しいでしょうし正直に話してしまうのはどうでしょう?」

 

「そうですね。弟のユーリは取り乱しちゃうと思うので説明は考えなければいけませんがあの子はちょっとぼんやりしているというか、素直で可愛い子ですし、反対するようなこともないと思います。」

 

「わかりました。ヒルデさんによろしくお伝えください。では、また後日会えるのを楽しみにしています。」

 

「はい、お任せください。こちらこそこれからよろしくお願いします!」

 

――――――――――――――――――――

ヒルデ視点

 

「ヒルデ〜!着きました!ここが今日からお世話になるお家です!荷物は重いので姉さんが持ちますよ。あ、玄関でロイドさんとアーニャさんがお出迎えしてくれてますよ!」

 

天気は晴天。良い引っ越し日和です。今日は最近結婚したらしい姉の夫の家に引っ越す日です。

 

「ヨルさん、ヒルデさんようこそ我が家へ。お二人とも荷物はそれだけですか?運ぶのお手伝いしますよ。特にヒルデさんは体も弱いと聞いています。先に中で休んでいて下さい。」

 

(ヒルデ・ブライア..情報通りだな。色素の抜けた膝裏まで伸びた白い髪、ヨルさんより少し仄暗く赤いジト目、白い肌、背丈は149cm程で細身。今も日傘をさしている体が少し斜めになっており、若干息切れが見られることから病弱というのも嘘ではなさそうだ。)

 

「初めまして、ヒルデ・ブライアと申します。いつも姉がお世話になっています。今日からよろしくお願いします。年下なのですから敬語じゃなくて結構です。あと、体が弱いといっても虚弱なわけじゃないのでそこまで気にしなくて大丈夫ですよ。姉さんと兄さんが他の人より体力があって心配性なだけです。お気遣いありがとうございます。」

 

(この人が姉さんの..普通に好青年っぽい。変な人に引っかけられてるのかと心配して一応遅効性の毒を持ってきたけど出番はなさそうですね。人の体調を慮る観察眼もあるみたいだし今は様子見しましょう。そう、私は薬師であって殺し屋ではないのです。私怨で一般人に手を出すわけにはいきません。相手を見誤ってはいけませんよ、ヒルデ。)

 

「じゃあお言葉に甘えて少しだけ話し方を崩させてもらうよ。これからよろしく、ヒルデさん。」

 

ロイドとの挨拶を終えてジッとロイドを観察していると彼の後ろから小さいピンク頭が走ってきてヒルデのワンピースの裾を引っ張る。

 

アーニャ「はは、おば、いらさいませ!おば、辛そう。アーニャ案内するから休んどけ。」

 

(おば、毒持ってる..!?薬師はワクワクだけどちちが怪しまれないようにしないと!)

 

「初めまして、アーニャちゃん。私は大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます。」

 

(アーニャちゃん..可愛いですね。年相応の天真爛漫な態度..妹がいたらこんな感じなのでしょうか。しかしこんな小さな子にも不調だと気遣われるとは..大した事ないと思っていましたが結構顔や態度に出ていたのでしょうか?やはり引っ越し当日に新薬の治験をするのは無理がありましたか。ふむ..試飲後4時間経過、末端の痺れに視界不良、軽度の頭痛。使う人を選ぶ毒だとは思っていましたが改善の余地がありそうですね。)

 

(おば全然だいじょばない!?自分で実験してる!)

 

「んもぅ、ヒルデったらいつもこうなんです。多少の不調じゃ自分で気づけないみたいで大丈夫って言うんですよ。ヒルデ、誰から見ても体調が悪そうです。お言葉に甘えてアーニャさんと先に休んでいて下さい。」

 

「..わかりました。アーニャちゃん、お手数をお掛けしますがお願いします。」

 

「うぃ。ちち!アーニャ、準備終わるまでおばとアーニャの部屋にいる。」

 

「ああ、頼んだ。アーニャもヒルデさんも体調が悪化したらすぐに言うんだぞ。」

 

(しっかりしていると思ったが案外抜けたところがあるのか?無表情のせいで感情は読み取りにくいがあからさまに態度に現れているのにヨルさんの言う通り遠慮じゃなく本当に自身の不調に気づいていなさそうだ。)

 

荷物の搬入を姉さんとお義兄さんにまかせてアーニャちゃんに手を引かれ中へと入る。ファミリータイプとは聞いていたがそこには4人でもゆとりがありそうな落ち着く空間があった。

 

「おば、いらさいませ。アーニャの部屋あっち」

 

「すごく..素敵なお家ですね。アーニャちゃんのお部屋も可愛いです。」

 

大きなリビングを抜けるた先には廊下があり、数部屋扉が見受けられる。手前の一室が開いており、アーニャちゃんに招かれ入室する。そこはピンクを基調とした可愛らしい部屋だった。

 

「こいつはキメラ。キメラ、あいさつしろ。(うぃ。わらすの名はキメラ、よろすくおねぁいしぁす。)」

 

「ふふ。キメラさん、ヒルデ ブライアと申します。よろしくお願いします。」

 

(あぁぁあ!なんて可愛らしいのでしょう!可愛すぎて吐血してしまいそうです!んぅ?冗談のつもりでしたがこれは新薬の効果..?新しい発見ですね..ではなく、アーニャちゃんのベッドを汚すわけにはいきません。ほら、ヒルデ、ゴックン!ゴックン!)

 

「おば!?気にせず寝てろ。アーニャ、ちち呼んでくる!」

(おば血吐く!?ベッドが汚れるとかの問題じゃない!)

 

「あ、アーニャちゃん!..このくらい平気なのに。一応汚さないようにタオルを敷いておきましょう。..ふかふかのベッド。そういえばゆっくり眠るのは何日振りでしたでしょうか?..ダメです、眠くて意識が..」

 

――――――――――――――――――――

ロイド視点

 

「ちち〜!おばが!」

 

つい数分前にヒルデさんを部屋に連れていったアーニャがびゃ〜っと奇声を上げながら駆け寄ってくる。

 

「ヒルデさんに何かあったのか!ヨルさん、荷物をお願いしても?」

 

「は、はい。私もすぐに向かいます!」

 

アーニャの部屋に駆け込むと顔の横にタオルを敷いてベッドに横たわっているヒルデさんがいた。荒い喘鳴を繰り返し、体に触れると尋常じゃない熱感を生じていた。

 

「ヒルデさん、聞こえますか、ヒルデさん!」

 

呼びかけるとうっすらと目を開けるが視線は虚で焦点があっていない。

 

「カヒュー、ヒュ..ゴ、カハッ。..ぃさん、カバンの薬を..。」

 

「..!わかった。..これだね?」

(吐血まで..この人、これでどこが大丈夫だったんだ!?)

 

ヒルデさんはヨロヨロと薬を受け取ると飲み込み、即効性があったのか数分後には穏やかな寝息を立てて再び眠りへと落ちていった。

 

「すみません、驚きましたよね。あそこまで酷くなることは..結構あったりするかもですけどいつもはもうちょっと軽くて..ユーリが独り立ちしてからは1人だったのでロイドさんがいてくれて良かったです。」

 

「いえ、大事がなくて良かったです。濃い隈があったのでその疲れの上に慣れない引っ越しで体に限界がきていたんだと思います。ヨルさんもお疲れでしょうし、明日も早いですし先に休んで下さい。」

 

「うぅ..すみません、明日ヒルデとしっかりお話しますね。では、ロイドさん、申し訳ありませんがヒルデをよろしくお願いします。ロイドさんも早めに休んでくださいね。おやすみなさい。」

 

「はい、もちろんです。おやすみなさい。」

 

ヨルさんが眠りこけたアーニャを連れて部屋に戻るのを見届けてコーヒーをすする。

 

(今日は色々なことがあって疲れたな。..しかしヒルデさんの病弱があれほどまでとは..。本人の自覚が薄いのが厄介だな。とはいえ今ある対処法以外には思いつかんしな。今は目の前の受験だ。)

 

――――――――――――――――――――

 

仮眠を挟んだ後、コーヒーを飲みつつ面接対策の書類をまとめる。朝焼けがリビングを照らし始めたところでガチャリとドアの開く音がした。音の方へ顔を向けるとアーニャの部屋からヒルデさんが出てきたところだった。

 

「ヒルデさん。体調はどうだい?もう起き上がって大丈夫かな?」

 

「はい、おかげさまで。お義兄さん、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」

 

(く..私としたことが睡魔に負けて解毒薬を飲み忘れるなんて!おかげでどんな反応が出てどこまで新薬の効果なのかがわからないではないですか。はぁ..また1から調べ直しです..。)

 

「いや、回復したなら何よりです。アーニャが心配してたんで後で話してやって下さい。」

 

「はい。アーニャちゃんのベッドも占領してしまいましたし何かお詫びをしなくては。..ちなみにこんな朝早くから何をしているんですか?」

 

「ん?これはアーニャの面接対策ですよ。ヒルデさんが寝ている間に3人で面接練習をしていたんですけど全然上手くいかなくて。..あぁ、そうだ、伝え忘れていたことがあった。今日アーニャの面接の話題作り用にオペラや美術館鑑賞に行くのですがヒルデさんも体調が回復して辛くなければ一緒にどうかな?」

 

 

「すみません、お気持ちは嬉しいのですがお断りさせていただきます。面接対策も担当じゃないですしお役には立てそうにないですね..申し訳ありません。」

 

「謝らないで下さい!..病み上がりの方にする話ではなかったです。こちらこそ気分を害したならすみません。」

 

「いえ、体調面で断った訳ではなく。今から仕事なので失礼します。」

 

「は..え!?ヒルデさん!?酷い熱に吐血まであったんですよ!?それにヨルさんも今日ヒルデさんに仕事はないって..」

 

(嘘だろ!?あれだけの症状があって病み上がりすぐに仕事!?しかも休日だろ?俺のようなスパイはともかく一般人に、しかも病弱でそのワーカーホリックな姿勢は酷だろ!)

 

「...?いつものことですし薬も飲んだのでもうなんともありません。仕事も好きでやっていることなので苦ではありませんし。それでは。」

 

(ぁぁあ!昨日は新薬の結果を纏めようと思っていたのに全てオジャンですし今度は邪魔されないように自分のラボでやらなければ。治験中に明日の講義の内容を整理して..あ、あと夕方にはクライアントとの取引がありますし1分1秒無駄にするわけにはいきません。)

 

「え、ちょっ、ま..」

 

引き止めようと伸ばした手も虚しく空を切り..そそくさと出ていって閉じられた扉を見て暫し呆然とする黄昏であった。




ヒルデちゃんには作者の癖が詰まってます。
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