嘘吐きカルテット   作:みみずら〜めん

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原作カテゴリーにないのでそんなに見られないかな..と思っていたのですが想像よりも閲覧数が多くて驚きました。
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SPY×FAMILYの別な二次創作を投稿しました。
秘密警察サイドのお話です。よければお読み下さい。


02.裏の顔と揺れる心

ヒルデ視点

 

「お疲れ様です。気持ちのいい朝ですね、守衛さん。ヒルデ・ブライアです。」

 

「おや、おはようございます、ブライア先生。いつも早くからお疲れ様です。」

 

守衛に身分証を見せて学内に足を踏み入れる。引っ越した利点の1つは職場との近さだ。交通機関は使うものの、以前の家よりも格段に通勤時間が短くなった。

部屋にたどり着くまで複数回似たやり取りをし、自身の城である化学準備室に入る。そこは書類や文献がそこらじゅうに溢れたこじんまりとした部屋だった。

 

「ふぅ..昨日はちょっとしたイレギュラーがあったので予定が崩れてしまいましたね。家にいるのが姉さんだけではないのでこれからはあまり過度な残業もできませんし効率よく働かなくては。」

 

白衣を羽織り、ざっと今日の授業内容やプリントをまとめて伸びをする。

 

「んー..。思ったより早く終わりましたね。今日の授業は昼食前と昼食後の2コマだけですし、夕方に備えますか。」

 

引き出しの丸い取っ手に爪を引っ掛け蓋を外しスイッチを押す。すると本棚が回転して地下通路が現れた。地下へ降りるとそこには実験道具や何種類もの薬剤がみっちりと置かれ、奥にはもう一部屋電話ボックスより一回り大きいくらいの小部屋があった。

 

「ふっふっふ。警備の厳重な学校と謳っておきながらこういう所はセキュリティが弱いんですから。こんな改造にも気づかないなんて流石は伝統と風格で頭が固いイーデンです。」

 

クライアントの指示通りに麻痺毒、致死毒、爆発ポーションを調合していく。黙々と作業しているとセットしておいたタイマーが鳴る。

 

「おや、もうこんな時間ですか。ふむ、キリがいいですしこのくらいにしましょう。..ノラ。この薬剤を包んでいつもの場所にお願いします。」

 

「承りました、Dr.。」

 

声をかけると音もなくスッと黒髪ボブの長身の女性が現れる。彼女の名前はノラ。コードネーム:黒狼。オスタニアでウェスタリスに内通している者を絞めている秘密組織ガーデンの諜報員だ。普段は私の助手として研究室もとい化学準備室で働いたり授業の補佐をしている。

 

「いつもありがとうございます。毎回言っていますが個人ではなくガーデンとして依頼を受けていただいてもいいんですよ?今はそこまでお金に困っていませんし。」

 

「いえ、Dr.には命を救っていただいたご恩がありますので。..本当ならお代も頂かなくて良いのですが。」

 

「そこは私の気がすまないので受け取ってください。..では私は授業に向かうのでよろしく頼みましたよ。」

 

「はい、Dr.もお気をつけて。」

 

――――――――――――――――――――

 

夜帷視点

 

「"やぁ、よく来たね。待っていたよ、夜帷。"」

 

画面に映る小部屋には1人の人間が座っていた。その者は頭全体を包帯で覆い、顔にペストマスクを付け、大きな白衣に身を包んでおり、その姿と中性的な機械音声と口調では性別や体格、年齢などその者を特定できる要素が1つも無い。彼(仮称)の通称はDr.。オスタニアやウェスタリスなどの国籍や身分、用途に問わず求める者には自身の良質な薬や毒薬を提供するマッドサイエンティストだ。

 

「..はぁ。Dr.、依頼の物は?」

 

「"まぁまぁ、そんな焦らないでよ。イライラしてると綺麗な顔が台無しだよ?"」

 

「とっとと言わないと殺す。」

 

「"うわぁ、怖い怖い。君みたいなクライアントを持つと取引方法を遠隔にして良かったって心底思うよ。あ、今回の暗証番号は4444ね。"」

 

「..チッ。確認が取れたから帰るわ。」

 

画面横の金庫を開き、依頼物が入っているのを確認して報酬を置いて扉を閉める。金庫は開けようと思えば開けられるが不正行為を行えば部屋から出られなくなり致死毒に満たされて死亡する、もしくは記憶消去処理を行われ、2度と取引を行えなくなると報告が入っているため迂闊な行いはできない。

 

「"えぇ〜、もう少しお話しようよ!そんなにもWISEは人員が足りて無いのかい?..そういえば黄昏がまた新しい任務を始めたらしいね?"」

 

その言葉にピタリと足を止める。その人は夜帷の所属する西国情報局対東課〈WISE〉の先輩で夜帷が最も尊敬している人物だ。おいそれと情報を漏らすような人ではない。

 

「何故お前がその情報を知っている。」

 

「"あっはは、嫌だな〜。私はなんの、とは言ってないよ?裏社会にいれば嫌でも耳に入ってくる人だ。常に任務に追われていてもおかしくな.."」

 

チュン。小さな音を立ててスクリーンが砕け散る。破損代を机に投げ捨てて外に出る。

 

「腹立たしいけど腕前は超一流ね。..ウェスタリスの利にもなるけどオスタニアの利にもなる。..やはり彼は危険だわ。現状は何の情報も無いから待機命令が出ているけど..いつか、絶対に殺してやる。」

 

そう吐き捨てて夜帷は次の任務へと向かった。

 

 

ヒルデ視点

 

「おや..切れてしまったみたいですね。あんな鎌掛けに引っかかるとは..夜帷ちゃんも爪が甘い。」

 

「"Dr.が煽るのがいけないのでは?あ、報酬と破損代金の回収完了しました。"」

 

「ありがとうございます。..少し楽しくなってしまっただけで煽ったつもりはないのですが。毎回破損代を置いていく所とか健気で可愛いですよね、彼女。」

 

「"はぁ..Dr.は優し過ぎます。あれくらいの挑発で銃を向けたことに対して怒って下さい。"」

 

「まぁ代金もちゃんと頂いていますし。..っとこうしている場合ではありませんでした。ノラ、今日はそのまま上がりで結構です。私も日課があるのでこれで。お疲れ様でした。」

 

「"了解致しました。お疲れ様でした。"」

 

端末の電源を落とし、私服に着替えて校舎を後にする。目的地が近づくに連れて自然と心拍数と足取りが速くなる。見えてきたのは小さなたばこ屋だ。相手もこちらに気がついたのか店内から手を振っている。

 

「おーい!今日は来ないのかと思ったぜ。遅くなるなんて珍しいなぁヒルデちゃん。はい、これ今日のデイリーオスト。」

 

「こんばんは、フランキーさん!昨日は体調を崩してしまったので今日は早朝から働いていたんです。新聞、ありがとうございます。これお代です。」

 

フランキーから新聞を受け取ってお代を渡す。このたばこ屋は通勤途中に見つけてから毎朝新聞を買うのに利用している。おかげで店主とはそこそこ良い関係を築けていると思う。

 

「また体調崩したのかぁ?無理すんなって言ってるだろ?体が資本なんだ、他より体が弱いことを自覚して気をつけなきゃ。」

 

「はい、頑張って不調に気付きますね。」

 

「そういうこと言ってんじゃねぇんだけどなぁ..。そういえばどうよ?昨日引っ越しだったんだろ?上手くやっていけそうか?」

 

「ええ。お義兄さんもいい人でしたし、姪もとっても可愛らしくて。そうそう、明日は姪がイーデン校の面接試験を受けるんですよ。」

 

「へぇ、そいつは良かったな。イーデンかぁ、じゃあ合格したらヒルデちゃんが教科担当か?」

 

「そうですねぇ..。1教科でも担当の先生は複数人いらっしゃるのでまだ分かりませんが私は配属されて2年目の若輩者ですし新入生を担当する確率は高いと思います。」

 

「そうか。姪っ子ちゃんの担当、なれるといいな。」

 

「はい!..それで、あの、フランキーさん。」

 

「んぉ?どうしたー?」

 

「今日は明日の面接対策に姉一家が外出していて夕飯も済ませてくるらしくて..その、ご一緒に..お、お食事でも行きませんか!?」

 

キュッと新聞を握る手に力が入る。数瞬の沈黙に恐る恐る目を開くとパチンとおでこに軽い衝撃が走る。

 

「あたっ..」

 

「ばーか、未成年に手は出さねーよ。いいかいヒルデちゃん、おじさんにそんなこと言うと本気にする奴もいるから気をつけるんだぞ。ヒルデちゃん騙されやすそうだしなぁ..いい人が見つかったら見極めてやるからまずはオレに紹介しろよ?..さぁ、今日は店じまいだ。ほら、もう暗くなってきたから急いで帰んな。また明日な。」

 

「はい..また、明日。.....そんな人、1人しかいないのに。..フランキーさんの馬鹿。」

 

ボソリと小声で呟いた後、新聞を握りしめて夕陽が沈み始めた街を走る。バクバクと煩い鼓動を鎮めることで頭がいっぱいのヒルデは...小さなたばこ屋の中で耳を真っ赤にして蹲っている青年の姿に気がつくことはなかった。




作者の最推しはフランキーです。
最近アニメ版を見初めて動いているフランキーを見て感動しました。
映画も不憫で可愛いかったです。
何故あんなに面白くていい人が作中では粗雑に扱われるのか..。
可哀想は可愛い..。
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