早くヒルデとフランキーをくっつけたいのにモジャモジャが素直じゃないせいで作者が1番やきもきしています..。
ヒルデ視点
ジリリリリッ..
電話が鳴った瞬間ギュンと体を方向転換させてロイドが受話器を取る。
「はい、フォージャー!」
通話を終えたのか受話器を置き、こちらを向く。その手にはクラッカーが握られていてパァンと軽やかな音が響く。
「合格だ!!よく頑張ったな、アーニャ!」
「やたー!」
「良かったですね、良かったですね!嬉しいです!」
「アーニャちゃん合格おめでとうございます。」
「お二人も本当にありがとう!」
数日前不合格となり、鶏のように口を窄ませて気の抜けた顔をしていた3人だったがそんな光景は夢だったかのような和気藹々とした姿にホッと胸を撫で下ろす。そんな中リビングに来客を知らせるブザーが響く。ロイドが玄関の扉を開けるとそこには見知った想い人が立っていた。
「うぉーい、合格したって?お祝いだ、お祝い!」
「お前耳早いな..」
「え、フランキーさん!?な、なななな何故ここに!?」
「うぉ、ヒルデちゃん!?お姉さんの結婚相手ってロイドだったのかよ!あ、初めましてヨルさん。ロイドの友人のフランキーです。」
「モジャモジャ!」
視界の端で姉が挨拶しているのが見えるが思わぬ出来事すぎて頭が真っ白になって何も考えられない
「なんだ、2人とも知り合いだったのか?」
(お前の店にわざわざ行くとか何か裏があったりしないか?情報屋。)
「おう。ヒルデちゃんはうちで毎朝新聞を買ってってくれるお得意さんよぉ。趣味も合うしマブよマブ!」
(今んところは何もないから安心しなさんな、黄昏さんよ。)
「へぇ、そうだったんですね。ヒルデってば自分のことは全然話さないんですから。フランキーさん、いつも妹がお世話になってます。これからも仲良くしてあげてください。」
「ちょっ、姉さん..」
「おぅ、あたぼうよ!それよりホラ、宴じゃ宴!酒もあるしデリバリーも頼んどいたぞ!」
(えぇぇぇえ、どうしましょう!これは棚からぼた餅というやつですね!こないだの食事は断られてしまいましたし成人するまでは断られ続ける可能性は高い..そうなると後1年はご一緒できません..。こんな幸運は滅多にありませんね!あぁ、神様!結婚相手がお義兄さんであったことを心より感謝します!)
(おば、愉快)
それから料理に舌鼓をうち、大人たちがだいぶ出来上がってきた頃、キッチンでアーニャ用の飲み物を汲んでいるとフランキーがアーニャの合格について話し出した。
「〜..いやー、しかし良かったねアーニャちゃん!今ならパパがご褒美に何でも買ってくれるってよ。」
「こら、勝手に約束するな!」
少し距離があるから全て聞き取ることは出来ないがどうやらアーニャのご褒美についてらしい。
「アーニャちゃんのご褒美のお話ですか?私も何かあげようと思っていたので1枚噛ませてください。」
アーニャの前に飲み物を置くとアーニャはあざざます。と言ってちびちび飲み始めた。可愛い。
「あー..それが物ではなくしたいことらしくて。」
「アーニャ、おしろでたすけられごっこしたい。」
「お城ですか..私のお給金ではカンパした所で足しにもならなそうですね。..困りました。」
(副業もしてるのでお給金は良いんですけど大半は薬の制作に消えてしまいますしお金が掛かるお願い事だとお役に立てませんね..。)
「ヒルデさん真面目に考えなくて大丈夫ですよ。普通より突飛なお願いなので本気にしなくていいです。それに今ちょうど格安でレンタルしてるみたいなんでこれはボクとフランキーでなんとかします。」
「そうですか..お役に立てずすみません。ではアーニャちゃん、他に何か欲しい物とかありますか?」
「んー..あ、アーニャ、キメラ以外のぬいぐるみ欲しい。あとおばのピーナツくいたい。」
「了解しました。じゃあ今度一緒にぬいぐるみ見に行きましょうか。ピーナツ料理も近々作りますね。」
「うぃ!ありがと、おば!」
「良かったな、アーニャ。..入学祝いまで貰っちゃってすみません、ヒルデさん。」
「いえ、お気になさらず。家族みたいなものですし、私もイーデンでアーニャちゃんに会えるのが嬉しいので。」
「うし、じゃあ手続きも終わったことだし、話も纏まった所で行きますか!」
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「うわぁ!おしろ!おしろーー!!」
「すごいですね..。本当に大きなお城。」
そこは山や海などの自然に囲まれた雄大な洋風のお城
だった。ハスハスと嬉しそうにしていたアーニャがひとしきりはしゃいでピタリと止まる。
「人いない..なんか違う。アーニャ、学校行けなくなる。」
アーニャがそう言って僅か数分でホール内が人で溢れかえる。資金といい人材といい一体どこから調達してくるのだろう?
「で、どうするんだ?」
「んーと…ちちはアーニャを助けるスパイのひと!モジャモジャはあくのおやだま!ははは..なんでもいい!おばは…アーニャのそばにいろ。」
「わ、わかった」
「え〜悪もんかよ〜」
「雑..ショックです…」
「一緒に捕らえられた側仕えということでしょうか?頑張りますね。」
配役に各々のリアクションを見せてそれぞれ配置に着く。劇は進み、ゴンドラを使ったクイズや悪の組織などを乗り越えて最終局面であるアーニャ姫の救出シーンになる。アーニャは私と手を繋いでテーブルの幽閉ゾーンから声を上げる。
「たすけてロイドマーン」
「ロイドマンさん、私はいいので姫をお助け下さい!」
(アーニャちゃんの手..小さくてぷにぷにで可愛いです。フランキーさんに囚われる..一生解放されたくないですね。)
(おば、喜んでる。)
「ぐははは、よく来たなロイドマン!姫と侍女は渡さん!」
「ひ、姫をかえしてもらおう」
(諜報員全員の前でこんな恥ずかしい小芝居を..!?しかし入学のため…!)
「バカめ!大人しく返すとでも?さぁゆけ、最強の魔女ヨルティシア!あの男を八つ裂きにするのだ!」
(姉さん、ふらふらですが大丈夫でしょうか..?お酒が弱いのにいっぱい飲むから..。)
姉がフラフラとしながら前にでる。ロイド目掛けて繰り出されたキックはドビュオッ..と風を切る音がする。足が掠ったロイドの顔には一線の血が走っている。
「..……え?」
「アーニャさんをさらおうとする者は許しません..!」
「うぉぉぉおっ」
(魔女なのに物理攻撃..!というか..つ、強い..!!殺られる..!!)
ロイドが本当に天に召されてしまわないかハラハラしながら見ていると姉の靴のヒールが折れて床に倒れる。ぶつかった拍子に気が抜けたのか寝てしまったようだ。
「フハハハ!よくぞここまで辿り着いた、ロイドマン!だがこの私はそう簡単にギャン!!」
セリフの途中に一撃を入れられ、フランキーが吹き飛ぶ。そんなところも素敵だ。
「た……助けに来たよ、アーニャ姫。」
「ちちぃ〜!!」
「え、父親設定なの…?」
アーニャが私の手を離し、ロイドに飛びつく。ワッ…と感動の救出に会場が沸いた。
「あ、ちち。もう1人助けてない」
「お前が手を離したからだろ。あー…アーニャ姫の侍女さん?お迎えが遅くなり申し訳ありません。アーニャ姫は無事に救出しましたよ。」
「…あぁ、本当ですか!ロイドマンさん!姫を…姫をお助けいただきありがとうございました!一介の侍女に過ぎない私まで..感謝してもしきれません。」
「ハッピーエンド!…おば、すごい!えんぎうまい!」
「驚きました..本当にお上手だ。ヒルデさん、アーニャのわがままに付き合っていただきありがとうございました。」
「そうでしょうか?ご満足いただけたなら幸いです。こちらこそ楽しかったです。あ、私は片付けのお手伝いに行ってきますね。」
一礼して大勢が家具の片付けをしている方で未だ床に倒れているフランキーさんと寝ている姉さんの介抱に走る。
「…?おかしいですね、確かに何か感じたのですが。..まぁ気のせいでしょう。2人とも、起きて下さい..」
背中に刺すような視線を感じて振り返るがそこには楽しそうに話すロイドとアーニャの姿しかない。首を傾げつつ介抱に戻るのだった。
――――――――――――――――――
ロイド視点
なんとか小っ恥ずかしい小芝居が終わり、テラスで一段落つく。頭の中では先程のヒルデの演技を振り返っていた。
(先程の演技..普通ではなかった。いや、普段のヒルデさんと比べたらというべきか。数日間しか過ごしていないがいつも驚いた時は目を少し見開いたり生徒に笑いかける時も口角を少し上げた引き攣った笑みだったりと微々たる変化しかなかった。それが先程はどうだ。侍女然とした美しい所作、心から安堵していることがわかる潤んだ瞳に震えた声や吐息の間隔..素人が即興ではできないような人を惹き込む演技だった。あれは..偽ることに長けた人間しかできないものだ。職業上演技力は必要ない。天賦の才や趣味によるものも考えられるがそれなら日常行動にも現れるだろう。...経歴や素行に怪しい点はなかったが演技力に加えてヨルさんと同じく勘が鋭い部分も見受けられる。..これだけで判断するのは早計かもしれんが裏社会に繋がっている可能性も出てきたな。)
「......ちち、ここにいた。」
考え込んでいたため周囲の警戒が疎かになっていたらしい。振り向けば戦闘で使用したボールで遊んでいたアーニャが足元まで来ていた。最近気が緩んでいていかんな。
「ん..?アーニャか。どうした?」
「ちち、おばは.....えんぎ上手くてゆかい。..アーニャ今日すごい楽しかった。」
(ちち、おば疑ってる..?おば、そんなに悪いやつに見えない。)
「あぁ、上手だったな。楽しめたなら何よりだ。..学校、頑張れそうか?」
「..うぃ!アーニャこじいんでてからわくわくいっぱい!ちちのおかげ。アーニャ学校も頑張る!」
「そうか。まぁ、なんだ..入学おめでとう。」
(...不確定なことに悩んでいても仕方ない。調査はおいおいやるとして今はこいつの入学を喜ぼう。......ほんと落ちなくて良かった。)
そうして夜は更けていった。ある親子は2人で景色を楽しみ、ある者は再び打ち上げを始めた酔っ払い達の後始末に追われ、ある者は..陰から主の楽しそうな姿を盗み見て頬を緩めていた。
もう少し後に小さな嵐がフォージャ一家を襲うことを今はまだ誰も知らない。
作者は物語の人物に感情移入して書きがちなのでこの作品を執筆中はフランキーガチ恋勢になり、もう一つの作品ではユーリを良き部下として(恋愛要素は検討中)好きになるため情緒がしっちゃかめっちゃかになって大変苦しまされています...。