嘘吐きカルテット   作:みみずら〜めん

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ここ3日程寝落ちして投稿出来ずじまいということが続きました..泣

作者は慢性的な睡眠不足によるブラックアウト多発民なので昼間の活動時間がとても辛いです..。

皆さんも睡眠不足にはお気をつけください..。


04.ご褒美

ヒルデ視点

 

アーニャの要望であるお城で助けられごっこを終えて入学まであと数日となったある日。仕事で都合が合わなかったロイドを除いた3人は街中を歩いていた。

 

「ははー、おばー!アーニャかわいい?」

 

「かわいいです、かわいいですぅ!!」

 

「はい、通算13回目ですが何度見てもとっても可愛らしいですよ。」

 

ロイドというツッコミ役不在の3人組は仕立て屋で、後に公園でと場所を移しつつも何度となく同じやりとりをしては制服姿のアーニャを褒め続けていた。

 

「…あ、アーニャちゃんの可愛さに見惚れているうちにこんなに時間が経っていたのですね。もうすぐ夕方ですしのんびりしていてはお店が閉まってしまうかもしれませんね..。少し急ぎましょうか。」

 

「本当です..もうこんな時間!アーニャさん、そろそろ行きましょうか。」

 

「うぃ!ぬいぐるみやさん、わくわく!」

 

 そう、今日の目的は制服の受け取りだけではない。アーニャへの入学祝いであるぬいぐるみを買うという大事な用事があった。3番街を歩いて少しするとパステルカラーで彩られた可愛らしいお店が見えてくる。

 

「ぬいぐるみやさーん!」

 

「アーニャさん、走ると危ないですよー!」

 

 よほど楽しみなのかアーニャはひと足先に店前まで走っていってしまった。

 

「ふふ、アーニャさんすごく喜んでますね。そういえばどうしてこのお店に?ヒルデはその、なんというか..も、もう少し違う趣味ではなかったですか?」

 

「…ッ!よく気づきましたね、流石姉さん。そうなんです、本当は私としてはあのお店の数軒先にあるファンシーショップの方をおすすめしたかったのですがアーニャちゃんにぬいぐるみを買うお話をフランキーさんにしたら多分こっちの方が喜ぶとおっしゃっていたので…。」

 

チラリと少し先に見える行きつけのファンシーショップを流し見る。黒ずんだレトロな風貌の店先のウィンドウには目玉が飛び出た黒猫や舌が通常よりも長い白目を剥いた闘犬のぬいぐるみが飾ってある。

 

 (あ、新作が出てますね...可愛い。今度見にいきましょう。)

 

 「そ、そうなんですね。」

 

 (フランキーさん、グッジョブです!)

 

 (おば、趣味悪い)

 

――――――――――――――――――

アーニャ視点

 

「遠慮せずに好きな子を選んでくださいね。私も店内を見ているので決まったら呼んでください。」

 

「オーキードーキー!」

 

 アーニャの答えに軽く口角を上げて(おばは微笑んでいるつもり)店の奥に消えていく。

 

アーニャはこの日を本当に楽しみにしていた。孤児院から連れてきたキメラは気に入ってはいるが、誰にも使われず部屋の隅に捨て置かれたやつを自分の物にしただけだったため、誰かが自分の為だけに自分用のぬいぐるみをくれるというのは初めてのことだった。店内を見回すと当たり前だがどのぬいぐるみも汚れておらずほつれてもいない可愛いものばかりだった。

 

「…はは。ほんとうにアーニャこのなかからすきにえらんでいい?」

 

「…?もちろんです!アーニャさんの入学のお祝いですから。あ、でも後でヒルデにありがとうってお礼しましょうね。…それよりアーニャさん、どの子も可愛いですよ!早く見にいきましょう!」

 

「……うぃ!」

 

 母と店内を回ってしばらくした頃、アーニャは悩みに悩んでいた。

 

「かわいいのいっぱい..アーニャまよう..。」

 

「うーん..どれも素敵ですからね。…そういえば全然ヒルデの姿が見えませんね。どこに行ったのでしょう?」

 

「…アーニャたちまだあっちみてない。たぶんそこ。」

 

「あら、本当です..。大体見たと思っていましたがまだ奥があったのですね。」

 

 (アーニャ本当は場所わかる..おば、凄い真剣..!)

 

 母の手を引いて奥に進む。先程とは違ってカッコいい恐竜やキメラに似た一風変わったぬいぐるみが並んでいた。そこには顎に手を当ててジッと棘の生えた鳥や顎が外れたクマのぬいぐるみを視つめるおばの姿があった。

 

 (ここにも中々良い品がありますね..。いえ、いつもの店と比べたら天と地ほど違いますが..センスは悪くありません。)

 

「おばー!」

 

「ヒルデってばこんな奥にいたのですね。姿が見えないから心配しましたよ。」

 

「…アーニャちゃんに姉さん。連れて帰りたい子は決まりました?」

 

「まだ。いっぱいいてなやみちゅう。」

 

「そうでしたか。私のおすすめはこの辺なのですがどうでしょう?もし気に入れば近くに良い店が..」

 

 (アーニャちゃんが持っているのはキメラのぬいぐるみ..。あそこにはバジリスクと食虫植物の掛け合わせもありますし..アーニャちゃんならあの店の良さがわかるかもしれません!)

 

「…アーニャ、このみせでいい。」

 

「そ、そうですか。」

 

 (ガーン..同志ではなかったのですね..。)

 

 ふと項垂れるおばの横に目がいく。そこはおばの見ている棚と恐竜の棚の境目らしく少し愛らしくもカッコいい鳥のようなぬいぐるみが置かれている。

 

「…!アーニャこいつにする!なんかひとめぼれした!」

 

「わぁ..カッコいいですね!グリフォンですか?」

 

「…気に入ったのがあってよかったです。ではその子で決まりで良いですか?

 

「…うぃ!このグリホンがいい!おば、あざざます!」

 

「いえ、お礼には及びません。入学おめでとうございます、アーニャちゃん。」

 

 (…個人的にはあの店の血濡れて横たわるグリフォンの方が良いですが..アーニャちゃんが気に入ったのなら良いでしょう。)

 

 (やっぱりおば、変わってる)

 

――――――――――――――――――――

「少し薄暗くなってきましたね。スーパーだけ寄って忙しで帰りましょうか。」

 

「うぃ!ピーナツのごはんたのしみ!」

 

「…よし。アーニャさん、ヒルデ!今日は私もお夕飯を作ります!」

 

 (いつもロイドさんかヒルデに作ってもらってばかりです..。偽りの夫婦だってことはわかっていますが..公園にいた方たちのようにもっと母親らしくできないでしょうか..。)

 

「え..。姉さんが料理とは久々ですね..楽しみです。」

 

 (思えば私が化学に興味を持ったのも姉さんの料理がきっかけでした..。姉さんの料理はどこか不思議で面白いです..楽しみ。)

 

「わ、わーい..アーニャもうれしー。」

 

(おば、楽しみ..!?アーニャ前に1回食べたことあるけどははの料理..死人が出る..!)

 

「ふふ、2人とも喜んでくれて嬉しいです!腕によりをかけちゃいますよ!」

 

 アーニャはその言葉に楽しみと不安が入り混じった複雑な気持ちでスーパーに入る。しかし、数分後にはそんなことは忘れて買い物客に制服とグリフォンを見せつけていた。

 

 (とりあえずお肉とお野菜があれば何かが出来上がりますよね。どれが何やらさっぱりなので全種類買っちゃいましょう。)

 

「…ん?おや、ノラではありませんか。」

 

「…ブライア先生、こんばんは。そういえば少しお話したいことがあったんです。」

 

 (新薬の件でお話が..。あ、いばら姫先輩もいらしたのですね。)

 

「…アーニャちゃん、姉さんすみません。ちょっと同僚と仕事の話があるので先に外に出てますね。後で払うので姉さんのとお会計一緒にお願いします。」

 

 (話..こないだの新薬についてでしょうか?)

 

「あら、ノラさんお久しぶりです。わかりました、終わったらお店の前で集合しましょう。」

 

 (黒狼さんならヒルデを任せても大丈夫でしょう。)

 

(この人も殺し屋..!?おばのこともははのことも知ってる..わくわく!)

 

 ははが不穏なことを考えているとノラという女の人が現れておばを連れて外に出る。ははが会計しているまで一緒にいたが流石に飽きてきた。おばの会話が気になってくる。

 

「ははー、アーニャさきでてる。」

 

「あっ、遠くに行っちゃダメですよ!!ヒルデと一緒にいてくださいね。」

 

 おばの所に行こうとスーパーの扉を開いた瞬間口を塞がれる。

 

「むぐっ!?」

 

「ごきげんよう、お嬢ちゃん。」

 

「ちょっとだけいい子にしててね。メイドさんから小遣いもらったら放してあげるから。」

 

(わるもの…!!制服屋さんが言ってたことほんとだった!)

 

 アーニャの脳裏には先程の仕立て屋のおばさんがイーデンではいじめや誘拐が..と言っている姿が浮かぶ。

 

「制服も高値で売れるって聞いたぜ?」

 

「そりゃいい。ぬいぐるみと一緒にいただこうか。」

 

 (おば、いない..!アーニャピンチ..!!)

 

「それじゃお嬢ちゃん、その服脱...」

 

「…その子に何をしているのです。放しなさい、下郎が。」

 

 プスッと軽い音がしたと同時にアーニャの口を押さえつけた男がくたりと地面に横たわる。後ろを振り向けば息を切らしていつもより顔を青くしたおばがボールペンを握って立っていた。

 

(緊急用のボールペン型麻酔針..持っていて良かったです。)

 

「おばー!!」

 

 (秘密道具..!ボンドマンみたいでカッコいい..!!)

 

「もう大丈夫ですよ、アーニャちゃん。…遅くなってしまってすみません。少し話が立て込んでしまいまして..」

 

「な...そいつに何したんだよ!...こ、こりゃ慰謝料も上乗せだな!」

 

「...まぁ待てよ。お嬢さん、叔母だかなんだか知らねぇがよく見たら中々綺麗な顔してんなぁ。どうだ、お嬢さんが代わりに俺たちの相手してくれたらその子は見逃してやってもいいぜ?」

 

 サングラスの男がグッとおばの腕を掴んで下卑た笑みを浮かべる。

 

「…離してください。」

 

「そりゃあできない相談だなぁ。お嬢さん、顔色も悪いし..具合が悪いんじゃないか?大人しく俺たちと休憩できる所に行こうぜ?……なぁ?」

 

 (…チッ。掴まれてしまっては残りの薬も使えません..。ノラも帰してしまいましたし..。アーニャちゃんを逃すには......それが得策でしょうか。)

 

 (ど、どうしよう。今度はおばがピンチ!アーニャも囲まれてて逃げられない..!助けてはは..!!)

 

「……仕方ありません。まずはその子を解放し..」

 

 おばが答えようとした瞬間ゴッ...!とどこからともなく野菜が吹き飛んできてサングラスの男が吹き飛んだ。飛来元を見ると鬼気迫る表情のははが破れた紙袋と中身の詰まった紙袋を持って立っていた。

 

「何を..しているのですか...。」

 

「おっと…これまた治療費の上乗せだ。財布を出しな、家政婦さん。」

 

「…所持金は全て使ってしまって残っていません。なのでどうぞお引き取りを。」

 

「…そうかい。ならお嬢ちゃんの身ぐるみ剥ぐかお嬢さんをお借りするかでおしまいだ。どっちか選んでとっとと帰んなクソメイド!!」

 

 男がカボチャを投げようとした瞬間。ははが男に迫り手刀を放つとバガムッとカボチャがバラバラになる。

 

「わ…私はその子の母親でそっちの子の姉ですッ!!!…そのお野菜のようになりたくなかったら早々に立ち去りなさい!!」

 

ははの気迫に連中は気絶した男2人をおぶって逃げていく。

 

「はは..!」

 

「イタタッ…すみません、姉さん。..助かりました。」

 

「2人とも大丈夫ですか...!?すみません、私が目を離したばかりに..。食材もダメにしてしまいましたし..私ってばダメな母親です…。」

 

「……アーニャ、強くてかっこいいははすき!…ひっさつぱんちぼがーん!!」

 

「は…恥ずかしいです!」

 

「…ふふ。確かに姉さんはかっこいい自慢の姉です。…食材も私の方は無事のようですし少し予定を変更して家のものも合わせて私が作るので気にしないでいいですよ。」

 

「あ…じゃあはは、アーニャにとっくんして!」

 

「と…特訓ですか…?」

 

「いーでんのせいときけんがいっぱいってわかった!…でもとっくんしてつよくなったらちょっとだけこわくない..。がっこうでもしなないでがんばれる!…アーニャ、ははみたいになりたい!」

 

「……よし!じゃあ早速帰って特訓です!!」

 

 (普通の母親らしくふるまうことはできなくても…私にできることを精一杯がんばりましょう!)

 

「とっくん!!」

 

――――――――――――――――――――

ロイド視点

 

「ただいまー。」

 

「おかえりなさい、お義兄さん。もう少しでお夕飯できますよ。今日は以前アーニャちゃんにリクエストいただいたピーナッツ料理がメインです。」

 

 部屋の中にはピーナッツの香ばしい香りが漂っている。街で買ってきたのかソファには勇ましいグリフォンの大きなぬいぐるみが置かれていた。

 

「今日も美味しそうなご飯ですね、ヒルデさん。いつもありがとう。……ところであれは何をしてるんだい?」

 

「せいっ!!」

 

「せいっ!」

 

 リビングではビシュッ、ぴっ…と風切り音を立てながらヨルさんとアーニャが拳を振っている。

 

「あー……その、入学準備です。」

 

「…………うん、そうか。…………?」

 

 (…マジで不安しかない。)

 

 この後4人で夕食を囲んで美味しいご飯を頬張りながら今日あった出来事を聞いた。

 

 なお、次の日ヒルデの手首の跡を見つけて事の詳細を問いただしたモジャモジャ頭の情報屋が秘密裏に制裁を下したのはまた別のお話..。




モジャァ...。
今回は遠隔での参戦でした。..もっと絡め...。

オリジナル展開を混ぜて書いてる時が1番楽しいです..。
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