身長2m28cmの大男、平成元年の日本に転生する   作:はるあき 007

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16歳-5 JBA崩壊と新生ラバリア

本日、2005年11月1日、全日本バスケットボール協会はその75年の歴史に幕を下ろした。

 

 

 

…早くない?

前世のパターンだと、これからゴタゴタが色々あって2015年にようやく新体制に移った記憶があるんだが。

 

まぁ今世ではJBBリーグの分裂も前世より早かったり、協会の略称が変わったりと色んな違いはあったから、俺がリーガABCや代表戦で活躍した影響があるんだろうとは思っていたが。

まさかこんなに事が早く進むとは。

 

早速情報収集ということで、さっきまで山田コーチに電話していたんだが、どうやらJBA崩壊はアジア選手権優勝で日本バスケが国内、そして海外から注目が集まったことが原因らしい。

 

何でも、オリンピック委員会やFIBAから、プロリーグが国内に二つある状態を是正するよう圧力がかかったり、来年のワールドカップを盛り上げようとする日本の政治家たちが動いたりしたんだとか。

それに加えて、バスケ日本代表のファンになった国民の意見や、金の匂いを感じた大企業のサポートの後押しもあったらしい。

 

そんな訳で、協会はスクラップ&ビルドされることになった。

正式名称は変わるが(長いので忘れた)、略称はJBAのままで行くそうだ。

 

協会の上の人間は総入れ替えになり、会長には元女子バスケ日本代表の星宮さんという方が就任し、副会長には山田コーチが就任した。

 

山田コーチも寝耳に水だったらしく、昨日聞いたばかりだと愚痴を言っていた。

公表の一日前に知らされるのは心臓に悪いな。

 

ともあれ、これで国内のプロバスケットボールリーグは統一されることになった。

俺は完全に対岸の火事を観る気持ちで聞いていたのだが、勇太などの若手選手にとっては良い変化だったようだ。

 

まぁ、勇太は来年どちらのリーグでプレイするか、めちゃくちゃ迷っていたからなぁ。

一本化されるなら気が楽だろう。

 

山田コーチはワイドショー等から取材の申し込みが殺到しているらしい。

何故か勇太にも直撃取材がきているとか。

大変だ。

 

だが、俺は既にスペインへ戻っているので関係ない。

矛先を逸らしたかったのか、勇太から鬼電が来ていたがスルーしている。

 

日本での休暇を早めに切り上げて良かったぜ!

 

 

 

 

 

 

 

さて、スペインのリーガABCの方に話を戻そうと思う。

 

今シーズンから、ラバリアには新しく二人の選手が加入した。

203cmの大型ガードであるパブロ選手と、212cmの大型センターであるエンソ選手である。

 

おいセバスチャン!

絶対に身長だけ見て指名しただろ!

 

最初こそそんなツッコミを入れてしまったものの、よく聞けばそこまで悪い補強ではないようだ。

パブロ選手はNCAA(アメリカ大学リーグ)で活躍していた20歳の選手で、下位指名であればNBAドラフトにかかるほどの能力を持った逸材らしい。

セバスチャンが高めの年棒を提示して引き抜いてきたんだとか。

 

パブロは大学で身長が急成長したためセンターをしていたが、高校まではずっとPGをやっていたらしく、高身長でかつゲームメイクが出来る希少な人材だ。

ラバリアへのフィットという意味でも、良い選手だと言えるだろう。

 

エンソ選手はスペインの大学で活躍していた22歳の選手で、典型的なビッグセンターだ。

ルーカスとタイプが似ていてプレイIQも高いらしいので、シックスマンとして申し分ない活躍が出来るだろう。

 

よく聞くと、かなりまともな補強である。

監督、ちゃんとチームのバランス考えてたんだな。

 

そんな監督だが、補強のために世界中を飛び回ったことで疲れたのか、今日から開始されるラバリアの全体練習には間に合っていない。

指揮をルーカスに委ねて来週まで休暇を取るんだとか。

 

おい、監督ぅ。

まあいいか。

どうせ、居ても具体的な指示はしてこないしな。

 

という訳で、本日からヌルっとラバリアの合宿が始まった。

場所はいつもの練習場だ。

初めにルーカスから「まずは休暇で忘れた勘を取り戻すために、個人練習から始めよう」という指示があり、選手たちは各々サポートスタッフやポジションの近いチームメイトを連れてコートを散らばっていった。

 

俺はパブロ選手の面倒を見るように頼まれたので、今日は彼に指導をする形になる。

彼もNCAAでPGをこなしてたとは言え、ラバリアの戦術は独特なところがあるからな。

適切な依頼だと言える。

 

ちなみに、エンソ選手の方はルーカスが一対一で指導するらしい。

こちらも妥当な判断だな。

エンソ選手が仕上がれば、ルーカスの控えとして活躍できる。

そうなれば、疲労を抑えられるし怪我も少なくなる。

ルーカスにとっても、エンソ選手の強化は必須事項であると言える。

 

後は、来年度の話もある。

今シーズンはBIG7体制だが、ルーカスは来年にはNBAのドラフトにかかる可能性が高い。

というか、今シーズンも内々に声はかかっていたらしいが、ラバリアでチャンピオンになりたいという気持ちを優先して断ったらしいからな。

カッコいい漢だ。

だが、まぁ来年度はほぼ確実にNBAに行くだろう。

そうなれば、エンソ選手にはルーカスの代わりをしてもらう必要があるわけだ。

今のうちに存分に技術を伝授しておいてもらいたい。

 

『Mr.ダイ!今日はよろしくお願いいたします!』

 

色々と考察をしていると、パブロ選手が笑顔で元気よく声をかけてきた。

彼は英語が出来るらしいので、非常に助かる。

俺はまだスペイン語では簡単なコミュニケーションしかできないからな。

 

『よろしく!Mr.パブロ。英語で話せるのは助かるよ』

 

『こちらこそです!私は3歳でスペインからアメリカに引っ越してしまったので、スペイン語は全く話せませんから』

 

おっと、どうやらパブロ選手もスペイン語は苦手らしい。

だが、このチームでは俺以外にもルーカスやセバスチャンなど、英語が話せる人は何人かいるので大きな問題にはならないだろう。

 

『OK。早速だが、練習に入ろうか。パブロはラバリアの試合を見たことあるか?』

 

『はい!もちろんです。昨シーズンの試合は一通り見ました』

 

ほう、凄いな。

昨シーズンはプレイオフを含めて40試合以上あったはずだが、それを全てチェック済みとは。

 

『そうか・・・うちのチームについて、何か感想はあるか?』

 

そう問いかけると、パブロは少しだけ顎に手を当てて悩んだ後、すぐに回答をくれた。

 

『やはり身長が高いので、インサイドを支配できるチームだと感じました。その反面、ガード陣のパス能力やハンドリングが弱い印象でしたが、ダイ選手がPGについてからはその弱みもなくなりました。ベンチの人材不足も弱点でしたが、そこも私やエンソが来たことである程度解決できるかと』

 

ふむ。

なるほど、良く分析できているようだ。

彼もバスケIQは高そうだな。

 

『ああ、その認識で間違いない。じゃあ、このチームで俺たちPGが果たす役割や俺たちの強みについても、もう分析は出来ているか?』

 

『はい。まず一番重要な役割は、インサイドへのパスですね。私たちはPGにしては身長が高いので、上からのパスによってベストなタイミングでボールを供給できます。第2の役割はディフェンスですね。ターンオーバーがあったときには一番先に戻り、ゴールを守る必要があります。これについても、我々は背が高いので、他のPGよりも効果的にブロックディフェンスができます』

 

今度の質問にも、ほぼノータイムで回答してくれた。

本当に頭が良いな。

とてもまだ20歳とは思えない。

 

『それも正解だ。加えて言うと、まずオフェンスにおいて俺たちPGが意識すべきことが一つある。このチーム特有のことなんだが、分かるか?』

 

パブロにそう問いかけると、少し悩んだあと『分からないです』と答えてきた。

判断が早い、良いね。

PG向きの性格だ。

 

『正解はこれだ』

 

俺はそう言いながら、3Pラインより一歩分後ろの位置から3Pシュートを放った。

放たれたボールは放物線を描いてゴールへと吸い込まれていった。

 

『3Pシュート?それも深い位置からの…』

 

シュートを見たパブロだが、ハッとした顔でこちらを見てきた。

どうやら、早速こちらの意図に気が付いたようだ。

 

『そう、俺たちラバリアは基本的に全ポジションの選手が高身長だ。だから、普通のPGのように3Pラインでゲームメイクをしていると、インサイドが狭くなってしまってPFやCの選手が動きづらくなってしまう。だから3Pラインより外でゲームメイクをする必要があるんだ』

 

『なるほど!そして、ディフェンスを引き出すためにも、深い位置で3Pを決める必要があるという事ですね』

 

パブロは俺の説明にワクワクした様子でうなずきながら、そんな返事をしてくれた。

やはり彼は、俺の短い説明で全てを理解したようだ。

本当に頭が良い。素晴らしいな。

セバスチャンにこれを説明した時は、軽く一時間はかかったぞ。

 

『その通りだ。俺たちがいくら外に広がってプレイしても、ディフェンスが離れた位置で守ってきたらインサイドが詰まって効果がないからな。深い位置の3P、俺はディープスリーと呼んでいるが、これを決めてディフェンスを引き出す必要がある。引力のあるPGになる必要があるんだ』

 

『なるほど…納得しました。ですが、私はスリーが苦手な方ではないとは言え、ディープスリーを決めるほど得意という訳ではありません。そもそも、殆どこの位置から打ったことが無いですし』

 

自信の無さ気な顔でパブロが返答してきた。

 

『それは…練習あるのみだな。なに、俺たちが何本もディープスリーを決める必要はない。一試合に1-2本入れて、ディフェンスがスリーを多少警戒する程度で問題ない。ディープスリーはアントニオが得意だから、最悪彼に任せると言う手もあるが…PGとSGが二人とも引力を持っていた方が、より広いオフェンスを構築できるからな』

 

ちなみに、アントニオはフリーの状態であれば9割の確率でディープスリーを決めることが出来る。

もちろん努力もしたんだろうが、これはもう天性の物だろう。

俺も小さいころから3Pの練習は続けているが、6-7割が良いところだからな。

 

『一試合に1本程度なら、なんとかなりそうです。早速練習します!』

 

そう言うと、パブロは楽しそうな表情でディープスリーの練習を始めた。

 

最初の数十本は安定せずエアボールが多めだったが、徐々に熟達してきたのか1-2割の確率で決まるようになってきた。

シュートセンスは悪くないようだ。

 

途中アントニオが入ってきてアドバイスをくれたのだが、「シャッとスピンをかけるとバシュッと決まるんだよ!」とか、「ちがうちがう!もっとスピンをキュッとやるんだ!」という天才的な助言しかくれなかったので、追い出した。

(これはアントニオが悪い)

 

 

 

 

 

 

と、そうこうしている内に昼休憩になったので、パブロと一緒にランチに繰り出すことにした。

練習場に併設の食堂でもよいのだが、たまには気分を変えて近場の屋台で食べることにした。

ここの食堂、アレンさん監修だからやたらヘルシーだし・・・

 

練習場近くの屋台通りに来ると、少しランチタイムからずれているからか、あまり客はいなかった。

好都合だな。

二人で一番旨そうな匂いがする屋台へと近づいた。

 

『さて、何を食べようか』

 

屋台のメニューを見ながら、パブロに声をかける。

ちなみにメニューは全てスペイン語なので、俺には何が売っているのか全然分からない。

多少ならスペイン語は読めるのだが、メニューが直筆(達筆)だからさっぱりだ。

 

『うーん、全部スペイン語だから何が何だか分からないですね』

 

パブロが頭をかいて言った。

やはり、彼も分からないようだ。

 

屋台の店主は二人を見て、にこやかに話しかけてきたが、もちろん何を言っているのかさっぱりわからない。

綺麗なスペイン語なら多少リスニングできるのだが、この屋台のおじいさんは訛りがきつくて全く聞き取れない。

 

『何か適当に注文しようか!』

 

とりあえず、勢いでこの場を切り抜けることにした。

 

『そうですね。えーと、これとこれ、お願いします!』

 

とパブロが指をさしながら言った。

当然、何を書いているか全くわからない。

 

そして、パブロが英語で注文してしまったため、屋台のおじいさんも何を言われたか分かっていない様子だ。

三人が三人とも何ひとつ理解できていない。

謎の時間が流れる。

 

しかし、屋台のおじいさんは何かに納得したのか、調理を開始した。

…伝わったとは思えないが、これ以上出来ることも無いよな。

ちょうど屋台の隣には椅子とテーブルがあったので、ひとまずそこに座って待つことにした。

 

待つこと数分。

腕まくりをした店主が、中華テーブルのような巨大皿に山盛りの海鮮料理の盛り合わせを乗せて現れた。

 

『ええ、何ですかこれ?』

 

パブロが驚きの声をあげる。

 

『パエリア…かな?海鮮が多すぎてコメが見えないが。そうだよな、おじいさん?』

 

俺が店主に問いかけると、サムズアップで答えてくれた。

通じているのか?

いや、多分勢いでリアクションしてるだけだな。

 

『いくらですか?』

 

俺が財布を取り出しながらそう聞くと、店主は指で輪っかを作って0円の回答を伝えてきた。

いや、タダってことは訳ないだろ。

こんな大量の料理が。

 

俺は一先ず100ユーロを渡すが、店主は受け取らない。

代わりにカメラを持ってきて、ピクチャーピクチャーと話しかけてきた。

どうやら、写真を撮りたいようだ。

 

『いきますよー、3.2.1.GO!…良いのが撮れました!』

 

店主は俺の隣から頑なに動かなかったので、パブロにツーショットを撮って貰った。

パブロがカメラを店主に返却する。

すると、店主は嬉しそうに「ラバリア!GO!ラバリア!GO!」と言いながら店の方へ戻っていった。

どうやら、ラバリアのファンだったようだ。

 

『ふう、ファンだったみたいで助かりましたね』

 

パブロは安心した様子で、パエリアの様な物を食べ始めた。

 

『そうだな・・・お互い、スペイン語の勉強頑張るか』

 

俺のそんな一言に、パブロも大きくうなずいた。

ちなみに、パエリア風の物体は非常においしかった。

 

 

こんな感じで、今シーズンのチャンピオンリングを目指すべく、新生ラバリアがスタートした。

…締まらないスタートになっちゃったな。

 

 

 

 













いつも感想や評価、ここすき等ありがとうございます!

次回からシーズン開幕の予定です。
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