身長2m28cmの大男、平成元年の日本に転生する   作:はるあき 007

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16歳-12 ユーロリーグ初戦

 

・・・えらいことになった。

 

嵐のような会見から一夜明け、俺はいまフランスの高級ホテルであるリッツ・パリの一室でニュース番組を見ている。

番組では、昨日実施されたアーヴェルとラバリアの記者会見の様子が流されており、コメンテーター達が熱い議論を交わしている。

議論の内容はもちろん、ノア選手の差別発言についてだ。

 

2006年の現在では、令和の時代ほど差別に厳しいわけではない。

(まぁ、令和の時代も黒人やLGBTへの差別が厳しく弾劾されるだけで、アジア人差別は対象外といった感じもするが・・・話がぶれるので置いておこう)

しかし、それでも公共の電波で露骨な差別発言はほとんどないし、そんなものが放送された暁にはアナウンサーが正式に謝罪するレベルであることには違いないのだ。

 

そこにきて、昨夜のノア選手のド直球のアジア差別発言。

当然、めちゃくちゃ炎上した。

このままノア選手が出場停止になるのでは?という雰囲気もあった・・・のだが。

結局、ノア選手に対する罰則は1万ドルの罰金をユーロリーグへ支払うという少し緩めの罰に落ち着いた。

 

なぜ厳しい罰にならなかったのか?

これについては様々な理由がある。

 

まず一番大きい理由としては、差別発言をしたノア選手に対して、俺が即座に強烈なカウンターパンチを入れたことだ。

・・・実際のところは、ルーカスに「あいつをディスりたいんだけど何て言えばいい?」と聞いて、聞いた言葉をそのまま放っただけなのだが。

とにかく、このカウンターパンチが強烈すぎた。

スラング過ぎてニュアンスは分からなかったが、街のヤンキーに言えば即座に殴りかかられるレベルの煽り性能がある言葉だったらしい。

言葉の切れ味で言うと、ノア選手の発言を超えていたんだとか。

 

そもそも、バスケは試合中にトラッシュトークで罵りあっていたり、不良上がりの選手が多かったりと、他のスポーツに比べて柄が悪い印象が浸透している。

そんな風潮もあり、会見で罵りあうくらいはトラッシュトークの範疇なのでは?と言った見方が多かったようだ。

 

加えて、世間の注目を大いに集めたこの試合を中止にしたくないというユーロリーグの意向や、フランスバスケリーグのロビー活動やらなんやらもあったらしい。

あと、俺がユーロリーグのスタッフに意見を聞かれたときに、「あいつとは試合で戦いたい」とフォローするような回答したのも影響したのかもしれん。

ここでノア選手に逃げられると不完全燃焼だからな。

試合で直接対決して、その上でボコボコにしてやりたいところだ。

差別発言は容認できないが、ああいう闘争心の塊みたいな若い奴は嫌いじゃないしな。

 

『それでは、実際に街の声を聴いてみましょう』

 

と、番組ではコメンテーターの議論が終わり、世論調査のコーナーが始まっていた。

パリ市民へのインタビュー映像が流れているが、思ったよりノア選手を悪く言う人が多い。

ざっくりカウントすると、フランス人だと女性は9割、男性は5割、アジアを含む他の人種の人は全員が俺の味方をしてくれている。

 

インタビューに続いて、様々な国や地方で「どちらを応援したいか?」という世論調査を実施した結果が棒グラフで表示されていた。

 

・パリ

ノア:+++

ダイ:+++++++

 

・リヨン(アーヴェルの本拠地)

ノア:++++++++

ダイ:++

 

・アメリカ

ノア:++

ダイ:++++++++

 

・中国/日本

ノア:

ダイ:++++++++++

 

ざっくり見ると、やはり俺を支持してくれる人が多いな。

中国日本は当然として、アメリカやパリの人たちも味方をしてくれている。

アーヴェルの本拠地であるリヨンの市民はノア選手の味方だが、まあこれは当然だろう。

ノア選手はアーヴェルのエースPGらしいからな。

 

コメンテーター達がこのグラフを基に再び議論を始めている。

徐々に議論は白熱していき、俺を支持する女性が極端に多い事を挙げて顔が良いから不当に得をしているという発言まで出る始末。

おいおい、差別問題に加えてルッキズムまで議論し始めると、いよいよ収拾がつかなくなるぞ!

時代を先取りしすぎだろ。

 

頭が痛くなってきた俺はテレビの電源を落とし、そのままベッドに倒れこんだ。

 

『おーい!開けるぞー!』

 

と、タイミングよく玄関の方からそんな声が聞こえてきた。

少し待つと、チームジャージを着たルーカスが現れた。

 

『あっはっは、大変なことになったな』

笑いながら、他人事のように声をかけてくるルーカス。

 

『いや、八割以上お前のせいだからな?カウンターのパンチラインが強すぎるだろ』

 

思わずツッコミを入れる。

 

ルーカスは、

『まあまあ。ああいう輩には舐められたら負けだからな。言われた以上の言葉を返さないと』

と、爽やかな顔で言いきってきた。

・・・こいつもなかなか気が強いやつだよなぁ。

 

『さて、さっき監督とも話したんだが、アーヴェルとの試合はアイソレーションを使ってダイを軸にしてオフェンスを組み立てるからな?あっちも乗ってくるだろうから、1on1でノアをボコってやれ』

 

・・・ほう。

なるほど、真っ向からノアとやりあう作戦のようだ。

こりゃ願ったり叶ったりだな。

燃えてきたぜ。

 

『いい作戦だな!となると相手オフェンスもアイソレーションで1on1をやってきそうだが・・・ヘルプはいらないからな?』

 

俺がそう言うと、ルーカスはにやりと笑って、

『当然だろ。ダイがあんな木偶の坊のカスに負けるはずがないからな!』

と、サムズアップを返してきた。

 

・・・期待してくれるのは嬉しいが、昨夜から口が悪いなルーカス。

身内に喧嘩売られると燃えるタイプなのかもしれん。

 

 

 

ということで、アーヴェルに対する作戦は決まった。

あとは練習あるのみだな。

 

そのままの流れで、ルーカスと共に試合会場となるアストロ・アリーナに向かった。

チーム練習では、アイソレーションの動きを繰り返し練習した。

監督からは、

『ノアとかいうのは君よりスピードも遅く技術もない選手だ。何より君よりずっと小さい。224cmの君が203cmのチビに負けるはずがないさ』という言葉を、

アントニオからは、

『あいつは左手でのフィニッシュが弱いから、左のドライブに誘導すると良いよ』というアドバイスをもらった。

新入りのエンソやパブロ、先輩であるフランクやネルソンも応援の言葉やアドバイスをくれた。

 

大事なユーロリーグの初戦だというのに、みんなして協力してくれている。

これだけお膳立てされて、負けるわけにはいかねぇな。

この試合、絶対に勝つ!

 

 

 

 

 

 

 

 

@アストロ・アリーナ

 

リヨンの中央に位置するアストロ・アリーナ。

3万人もの観客席を有する超巨大施設であり、通常のリーグ戦では満席になることはまずない。

しかし、今日は席のすべてがサポーターで埋め尽くされていた。

ホームコート側には緑色のユニフォームを着たリヨンの市民たちが、逆サイドには真っ赤なユニフォームを着たラバリアのサポーターが座り、一触即発の異様な雰囲気を醸し出している。

境目付近の座席では、試合前であるのにも関わらず口喧嘩が頻発し、警備員がフル稼働で止めに入っている。

 

 

試合開始直前を知らせるブザーが鳴り、ラバリアとアーヴェルのスタメンがコートに集まる。

俺がジャンプボールのためにセンターサークルに入ると、ノアもサークルに入ってきた。

こちらをにらんできたので、目を下に向けて見下して睨み返した。

 

ラバリアのサポーターからは俺に対する応援が、アーヴェルのサポーターからはノアを鼓舞する言葉が飛び交う。

ティップオフの瞬間は静かになるのがマナーだが・・・観客たちの熱が入っているのが伝わってくる。

審判がサポーターに手を向けて合図を出し、ようやく静かになった。

 

 

いよいよ、始まる。

審判がボールを上に投げた。

 

俺は思い切りジャンプして、ルーカスが居る方へボールを弾き飛ばす。

ノアもジャンプ力はあるようだが、俺の上を行くほどではないな。

 

ルーカスからボールを受け取って、ドリブルで右サイドへと向かう。

すると、事前の作戦通りラバリアの選手は全員、左サイドへ寄った。

相手チームもこちらの作戦に受けて立つつもりなのか、ヘルプディフェンスは残さず全員が左サイドへと退避した。

これで、完全にノアと俺の1on1だ。

 

右手でドリブルしつつスキップフェイントを入れながら、ノアのディフェンスを分析する。

細かいステップに全て反応しているのを見るに、やはり身体能力や反応速度は高いようだ。

 

俺は右手でボールを左前に弾いて、左から抜くようなフェイントを入れた。

するとノアはすぐに反応してコースを塞いできたので、そのままボールを逆手で右側に返し、右サイドからのドライブでノアを抜き去った。

 

こうなれば、もう止めることはできない。

俺はゴール下で大きく踏み切り、両手でボールをリングに叩きつけた。

 

『流石ダイ!!見たか木偶の坊!』

『スラムダンクの迫力やべぇ!!』

『おっしゃー!そのままいってくれ!!』

『シャムゴッド上手すぎるだろ!』

 

ラバリアのコートサイドからは耳をつんざく様な大歓声が聞こえてくる。

そして、逆サイドからは大きなブーイングが響いている。

 

ノアを見ると、膝を叩いて悔しがった後、こちらをにらみつけてきた。

さて、次はあちらのオフェンスだ。

お手並み拝見と行こうか。

 

 

 








長くなったので、後編に続きます。
次話は近日公開。
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