身長2m28cmの大男、平成元年の日本に転生する 作:はるあき 007
ちくしょう。
目の前でラッセルにフェイダウェイシュートを決められてしまった。
ほぼ真後ろに飛んでなかったか?
何であれが入るんだよ!
憤っていた俺の耳に、審判の笛の音が届いた。
どうやら監督がタイムアウトを取ってくれたようだ。
俺は少し冷静になると、ベンチへと帰りながら今の状況を整理した。
残り44秒で79-81。
こちらのオフェンスをどう組み立てるべきか、判断が難しいな。
2点を取っても同点にしかならないし・・・
「最後どうする?アントニオのスリーが決められれば理想だが」
ベンチへと戻った俺は、ルーカスとセバスチャン監督にそう提案した。
「・・・いや、確かに決まれば理想的なんだがアントニオのスリーは相手も最大限警戒してくるはずだ。レギュラーシーズンでも、クラッチタイムはアントニオのスリーが多かったからな」
ルーカスは少し悩んだ後、そんな反対意見を言ってきた。
・・確かに一理あるな。
ワンパターンだと流石にバレるか。
「そうだな・・ルーカスはどうしたい?」
良い作戦が思いつきそうにないので、俺はルーカスに最後の作戦をゆだねることにした。
「このオフェンスで一番まずい結果は、シュートを外してしまうことだ。そして、理想はダイが言ったようにスリーポイントだが、当然相手も警戒している。だから、スピーディなオフェンスセットを組んで、開始数秒で2点を取りに行こう」
なるほど、そういうことか。
俺は得心して頷きながら周囲を見渡すと、セバスチャン監督やアルフレードが眉間にしわを寄せていた。
・・・反対しているというよりは、理解できてないなこれ。
「なるほど、流石だな。そうすれば残り時間は30秒以上余る。仮に相手のオフェンスが成功しても、こちらがもう一度攻めることができるってわけだ」
俺はルーカスの作戦の補足を入れた。
頷くルーカス、納得をした様子の監督とアルフレード。
「そうだ。オフェンスセットだが、プランGを使う。まずスローインはアルフレードだ。俺はウィングに居るアントニオのDFにスクリーンをかける。相手は俺達を最大限警戒してくるはずだから、隙をついてダイとパブロがボールを受け取りに行ってくれ。実際に受け取るのはパブロ、ダイはDFの裏を取ってゴールヘでダッシュ、パブロのパスを受け取ってアリウープダンクを決めるんだ」
ルーカスが提案したのは、何度か練習したもののまだ実戦では使ったことのないセットオフェンスだ。
確かに、速度優先ならこれが一番だな。
相手の意表を突くこともできる。
俺が頷こうとしたその時、けたたましいブザーが鳴り響き、審判が動き出した。
タイムアウトは終わりのようだ。
「よし!!プラン通りいくぞ!アントニオ、頼んだぞ!!」
ルーカスが殊更大きい声でアントニオに声をかけている。
はったりか。
流石、策士だな。
俺もアントニオの背中を叩いて手助けをした。
審判からアルフレードにボールが渡り、オフェンスが開始された。
手順通り、ルーカスがアントニオの元へスクリーンを駆けに行く。
DFの意識がアントニオの居る右ウィングに集中する。
・・・ここだ!
俺とパブロでタイミングを合わせ、トップへ向かって走りだした。
よし、慌てたマウリカが俺の後をぴったりとついてきている。
そして、予定通りアルフレードからパブロへパスが投げられた。
今だ!
俺はクイックターンをして、ゴール下へと走り出した!
しかし、マウリカは俺の動きを読んでいたのか、バックランでついて来た!
なんでこの動きが読めるんだよ!
こうなれば、アリウープダンクはできない。
俺は左ウィングまで戻って、ボールを要求した。
そこへ、パブロからのパスが供給される。
こうなりゃ1 on 1だ!
スピードのミスマッチをついてやる。
俺はボールを持って右にボディフェイクをしかけると、マウリカが反応してきた。
諦めて体を引き戻す・・ふりをして右ドライブでマウリカを抜き去る。
そしてそのまま、ワンハンドでダンクシュートを叩き込んだ!
「よっしゃー!!!」
「うぉおおおお!」
「なんてダンクだ!」
「見たかレアロ!!うちの大巨人を!」
「シノノメ!!お前がナンバーワンだ!!」
大絶叫するようにして、沸き立つラバリアファン。
これで81-81、同点だ。
だが、残り時間は27秒。
マウリカにアリウープを読まれたせいで、オフェンスに時間がかかってしまった。
「ディフェンス!ゴール下警戒!」
俺は声を張りながら、左のペイントエリアのDF位置についた。
ディフェンスは変わらず3-2のゾーンだ。
相手は24秒をフルに使いつつ、確率の高いゴール下かミドルを狙ってくるはず。
ルーカスと目配せをし、カバーDFの確認する。
ゴール下を守るのは当然だが、フリーでミドルを打たれるのもまずい。
俺たち二人で3Pライン内の全範囲をカバーする気持ちで守らないと。
こちらの予想通り、相手は24秒をフルに使うつもりのようだ。
ジェイコフとラッセルでパスを回しながら時間をつぶして・・は!?
気が付いたときには、ラッセルにスリーポイントシュートを打たれていた。
今打つのかよ!?
残りまだ十秒以上あるんだぞ!?
俺は慌ててマウリカにボックスアウトをかけるが、ラッセルが放ったシュートは綺麗な放物線を描いてリングを通過していった。
くっそ!なんだこいつら。
勝ち方を知り過ぎてるだろ!
これが元NBAオールスタープレイヤーの実力か。
「こっちだ!」
俺は左手でマウリカを押さえつつ、スローイン役のアルフレードにパスを要求した。
パスを受け取ると、そのまま全速力のドリブルでボールを自陣まで運んでいった。
残り数秒、スリーポイントしかない!
俺はプルアップでスリーを打とうと3Pラインに近づくが、ジェイコフとマウリカのダブルチームに捕まる。
まずい、アントニオもラッセルに捕まって・・いや!いた!
俺はコーナーでフリーになっていたパブロにオーバーヘッドパスを出した。
頼む!
「シュート!!」
パブロがスリーポイントシュートを放つ。
直後、試合終了のブザーが鳴り響いた。
会場中が息をのみ、スタジアムが静寂に包まれた。
時間が止まったような感覚。
放物線を描くボールを、祈るような気持ちで見つめた。
しかし無情にも、ボールはリングにはじき出され、コートに落下した。
「しゃああああああ!!!」
「REALO IMPARABLE!!REALO IMPARABLE!!」
「ラバリアに勝ったぁ!」
「ラッセル!お前は最高だ!!!」
ブザーが鳴り響いた瞬間、スタジアムの空気が爆発した。
青と白の旗が一斉に振られ、レアロのサポーターが総立ちになる。
「CAMPEONES!CAMPEONES!」
狂乱のコールが巻き起こる。
観客席からは地鳴りのような絶叫が響き、声を枯らしたサポーターが肩を組みながら叫んでいる。
レアロの選手たちはコートに倒れ込み、喜びを爆発させていた。
ベンチからは控え選手が飛び出す。
マウリカとラッセルは抱き合い、勝利の喜びを噛みしめていた。
「くそっ!!」
俺は思わず悪態をつく・・・が、強引に気持ちを切り替える。
まだ一敗しただけだ。
そんなことより、するべきことがある。
俺は呆然と立ち尽くすパブロの元に向かい、声をかけた。
「まだプレイオフは始まったばかりだ。次の試合でやり返すぞ!」
そう声をかけると、パブロは目を強く閉じて天を仰いだ。
そして、
「ちくしょう!次は絶対に決めてみせます!」
そう言って頬を叩いて気合いを入れなおすと、力強い足取りでロッカールームに向かって歩き出した。
そう来なくちゃな!
まだ初戦を落としただけだ。
プレイオフはまだ長い。
挽回のしようはいくらでもある。
俺もパブロの後を追って、ロッカールームへと歩き出した。
今回は経験の差が出て最後押し負けてしまったが、内容自体はイーブンだった。
次は負けねぇ。
ルーカスと作戦を練らないとな。