身長2m28cmの大男、平成元年の日本に転生する 作:はるあき 007
プレイオフ初戦から、怒涛の日々が続いている。
俺はいまパルマ島で一番の高級ホテルである、リッツ・パルの一室でニュース番組を見ていた。
PCの画面には「ニュース27」という文字が表示されている。
日本に居た頃、そして前世でよく見ていた番組だ。
俺はスペースキーを押して動画を一時停止すると、メールソフトを開いて院長から送付されたメールをチェックした。
「大へ
如月です。
こうして連絡をするのは久しぶりだね。
スペインでは元気にしているかな?
いや、しているに違いないね。
昨日も大がレアロのセンターを弾き飛ばしてダンクシュートを決めるのを、ワクワクした気持ちで見ていたよ。
ちなみに、昨日は新宿のベルト111でパブリックビューイングがあったから、そこで試合を見たんだ。
大の関係者ということで、試合が一番良く見える特別シートで見ることができたよ。ありがとう。
やっぱりアジアカップや強化試合でファンを獲得したからか、日本での大とラバリアの人気はすさまじいね。
全国14箇所の映画館でパブリックビューイングがあったそうだし、地上波放送で生中継もされていたよ。
チケットもありがとうね。
いま勇太君と一緒にスペインに向かっているから、明日の試合には間に合う予定です。
ほんとは第五戦から行く予定だったけど、施設の周りに不審者が出たせいでその対策をしてたり、勇太君は自分の試合があったり、色々問題が多発していてね・・・
そうだ、スペインと言えば、私がフランスに居た頃はサッカーのヨーロッパリーグが放送されていたんだが、
~(院長の自分語りと近況報告が900行に渡って続いていたため、中略)~
そうそう、日本での盛り上がりを伝える資料にと思って、今朝録画したニュース番組を添付で送るよ。
祖国でもたくさんのサポーターが応援していると実感できれば、モチベーションも上がるんじゃないかと思ってね。
それじゃ、明日の最終戦は頑張ってね。
ベンチの後ろで応援しているからね。
」
・・・院長は相変わらず、とんでもない長文を送ってくるな。
だがまぁ、少しほっとしたぜ。
最初メールを開いたときに容量が300MBあったから、ついに数百万字の文章でも書いて送ってきたのかと、戦々恐々としていたからな。
動画ファイルだったようで一安心だ。
「せっかくだし動画を見てみるか」
俺はそう独り言ちると、スペースキーを押して動画を再生した。
【ニュース27】白熱!日本中が注目している、リーガABCプレイオフを解説
司会進行:五十嵐アナ、ゲスト:後藤(バスケ元日本代表)、熊本(ご意見番)
五十嵐アナウンサー:「皆さん、おはようございます。今朝のスポーツコーナーでは、現在最終決戦目前、スペインのバスケリーグであるリーガABCのプレイオフについて特集します。ゲストは元日本代表の後藤さんと、ご意見番、熊本さんです。お二人とも、よろしくお願いします。」
後藤さん:「よろしくお願いします。」
熊本さん:「どうも、よろしく。」
五十嵐アナウンサー:「さて、このリーガABC特集は今回で三回目になります。前回は2勝2敗となった第四戦まで解説しましたので、今回は先日行われた第五戦と第六戦について解説したいと思います。こちらのフリップをご覧ください。」
ラバリア VS レアロ
【第五戦】
スコア :102 VS 68
フィールドゴール成功率 :68% VS 42%
3ポイント成功率 :59% VS 33%
リバウンド数 :50 VS 19
【第六戦】(延長有)
スコア :114 VS 115
フィールドゴール成功率 :53% VS 52%
3ポイント成功率 :42% VS 50%
リバウンド数 :42 VS 40
五十嵐アナウンサー:「第五戦はラバリアの圧勝、第六戦はレアロが接戦をものにする形になりました。後藤さん、この二つの試合についてどう思われますか?」
後藤さん:「そうですね。まず第五戦ですが、この試合の勝利は本来の実力とあまり関係がありません。というのも、レアロのマウリカ選手とラッセル選手が体調管理のために欠場したからです。おかげでラバリアはアントニオ選手とルーカス選手がオフェンスで大活躍することができ、高い3P成功率とフィールドゴール成功率を残すことができました。東雲選手も、リバウンド取りまくっていましたし。」
熊本さん:「喝だ!喝!」
後藤さん:「えぇ!?なんでですか?」
熊本さん:「プロなのに、何故こんな大事な試合を休んどるんだ!たるんどる!私が現役のころは風邪を引いてても根性で登板しとったよ」
後藤さん:「なるほどそういうことですか。いや、野球と違ってバスケは動き続けるスポーツですから、体調不良だと出場はなかなか厳しいですよ・・・とはいえ、ラッセル選手とマウリカ選手は体調不良というより、疲労が蓄積したので回復の意味で休んだようですが」
熊本さん:「なおさら喝じゃないか!」
後藤さん:「うーん、ここは難しいところなんですよ。マウリカ選手もラッセル選手も35歳ですからね。一日おきの七連戦を戦い抜くのは厳しい。そう判断して第五戦で一息入れたんでしょう。そのかいあってか、第六戦では元気を取り戻して勝利しています。明日の第七戦でも体調は万全でしょうし、厳しい戦いになりそうですよ」
五十嵐アナウンサー:「解説ありがとうございます。ということは、後藤さんから見ると第七戦はレアロが有利ということになるでしょうか?」
後藤さん:「そうなんですよね・・。まず、レアロは接戦に非常に強いんですよ。ラッセル選手とマウリカ選手が経験豊富なせいで、クラッチタイムのゲームメイクが抜群なんですよね。なのでラバリアとしては、接戦にならない様に点差をつけたいところなんです。しかし第六戦では、延長戦でアントニオ選手に疲れが見えていました。明日までに快復するかどうか・・・」
熊本さん:「アントニオくんもたるんどるんじゃないのか?東雲くんは元気そうだったよ?」
後藤さん:「いや、あれは東雲選手が異常なだけですね。普通あの巨体になると40分、まして延長含めて45分を走り続けるのなんて不可能なはずなんですが・・・何故か延長戦では、両チーム合わせて一番元気でしたからね。」
熊本さん:「へー、そうなのか。じゃ、東雲くんにあっぱれあげちゃおう」
アッパレ~!
五十嵐アナウンサー:「あっぱれも出て盛り上がってまいりました。最後に、後藤さんから見て最終戦での勝利のポイントはどこになるでしょうか?」
後藤さん:「少し玄人的な見方になりますが、アントニオ選手の回復と、ベンチも含めたローテーションですね。ラバリアのキーマンとしては東雲選手、アントニオ選手、ルーカス選手が居るんですが、ルーカス選手はエンソ選手と交代して休むことができるんですよ。もちろん、少し強度は下がってしまいますが。問題は、アントニオ選手と東雲選手の替えが居ない事です」
熊本さん:「なるほど。東雲くんはずっと出しておけばいいけど、アントニオくんはどうにかローテーションしてスタミナ管理する必要があるってことか」
後藤さん:「その通りです。ただ、ラッセル選手とマッチアップできる選手が、アントニオ選手くらいしかいないんですよね。パブロ選手やアルフレード選手で間をつなぎたいですが・・・その間に点差を離されない様にする必要があります」
五十嵐アナウンサー:「なるほど、分かりやすい解説をありがとうございます。アントニオ選手が休む時間を、どうやってつなぐのか。ラバリアの戦略に期待しましょう!それでは、お時間が来てしまったので、このあたりで。本日は後藤さん、熊本さん、ありがとうございました。」
後藤さん:「ありがとうございました。」
熊本さん:「どうも、ありがとうございました。」
ーーーー
「ふふっ、あっぱれ貰っちゃったよ」
俺は思わずそんな独り言を漏らした。
なんか、前世から見ていた番組だから、感慨深い物があるな。
有名人になった気がするというか。
色んな番組に素材が行った報告はあがっていたから、知識としては知っていたんだけども。
・・・さて、真面目な話に戻るか。
後藤さんも言っていた通り、最終戦でのローテーションは非常に悩ましいところだ。
アントニオを下げると、ラッセルが攻守ともに暴れまわるからな。
オフェンスは言わずもがな。
ディフェンスも、ラッセルとマウリカのダブルチームが俺に来ようもんなら、流石にボールをスティールされてしまう気がする。
かと言って、連戦の疲れが溜まっているアントニオをずっと出すわけにもいかない。
ラッセルとマウリカも休んでくれればいいのだが、あの二人は第五戦休んだおかげで元気いっぱいだからな。
歳も歳だし、おとなしくしていてほしいもんだが・・・
実はルーカスも、サイズアップしたせいでスタミナが落ちたのか、割と満身創痍なんだよな。
今日もアントニオと二人して休養施設に行って、酸素カプセルと針治療、電気治療のフルコースを受けている。
これで少しは回復してくれればいいが・・・
ちなみに、俺も先ほどオイルマッサージの施術をうけてきた。
だがこれは体が痛いとかでは全然なくて、延長戦に負けたストレス解消のために行っただけである。
朝には流石に若干の筋肉痛があったが、昼寝したら治ったしな。
健康スキルさまさまだ。
俺の体力を二人に分けてやりたいところだ・・・
いよいよ、明日はホームアリーナでの最終決戦だ。
朝にアントニオとルーカスの状態を確認して、それを基にルーカスと作戦を立てないとな。
俺も今夜は、軽く筋トレしてから早めに寝るとしよう。
明日でこのリーグの覇者が決まる。
チャンピオンになるために、この一年全力で頑張ってきたんだ。
パルマ島のファンも、日本のファンもみんな応援してくれてる。
負けるわけにはいかねえ。
明日の試合、絶対勝つぞ!!
少し短めの閑話でした。
次回、最終決戦スタート。