身長2m28cmの大男、平成元年の日本に転生する   作:はるあき 007

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二話連続投稿です。二話目。


16歳-26 プレイオフ決勝戦 第七戦④ 監督の作戦

 

・セバスチャン 55歳

 

20年前のプレイオフ決勝戦を今でも夢に見る。

 

102-103、一点差で負けている場面。

残り時間7秒で私が放ったラストショット。

私の身長があと数センチ高ければ、相手DFの手がボールを掠めることは無かった。

こちらのセンターの身長があと数センチ高ければ、オフェンスリバウンドを取れていた。

 

数センチの高さがシュートを阻み、数センチの高さがリバウンドを妨げた。

 

 

20歳でプロ選手となり、ラバリアで17年間のキャリアを過ごした。

型に嵌らない天才スコアラーだと呼ばれてファンの期待を一身に背負って戦い続けたが、ついに一度もチャンピオンリングをつかむことはできなかった。

私にもう少しだけ身長があれば・・・

 

決勝戦で味わった悔しさと絶望感は、引退後も薄れることは無かった。

稼いだ金で遊ぶ気にもなれず、かといってバスケットボールをする体力はもはやない。

ただ死んでいないだけのゾンビのような人間になっていた。

 

10年前だ。

そんな私に監督のオファーが来た。

最初は断ろうと思った。

しかしオーナーの

「君のいた17年間は、可能性に満ち溢れていた。君の力が必要だ。私はまだチャンピオンリングを諦めていない」

という言葉。

それを聞いたとき、私の心の奥底で凍結されていた闘争心が火を噴くようにあふれ出てきた。

 

—もう1度チャンピオンリングを

 

気が付けばオーナーと握手を交わしていた。

ラバリアを優勝に導く、そのためだけに生きると決めた。

 

 

当時のラバリアは、私の影響もあって小柄な選手が多かった。

私はそんなチームの方向性を180度変えることにした。

バスケで必要なのは、何よりもデカさだ。

私は自身のプロキャリアでそれを痛感した。

 

9年前、スペインの名門大学でプレイしていたフランクを見つけた。

209cmの身長ながら、PFとしての得点力やパスセンスを持ち合わせた稀有な選手だ。

私は全力でアピールをして、彼と契約することに成功した。

 

8年前、当時チームのエースPGだったジャクソンとのトレードで、当時バロサでプレイしていたネルソンを獲得した。

211cmの巨体で、抜群のミドルシュートとリバウンド力を併せ持つ逸材だ。

これで、他のチームと変わらないくらいの大きさは確保できた。

 

しかし、ここから数年は冬の時代が続いた。

大学やトレード市場に有望なビッグマンが現れなかったのだ。

ネルソン、フランクと共に奮闘したが、プレイオフまで進むことはできなかった。

 

2年前、U18の世代代表にも選ばれていた逸材、ルーカスを発見した。

彼はそのままNBAに挑戦したかったようだが、20歳までは体づくりとスキル磨きをしっかりやって、スペインチャンピオンとしてアメリカへ挑戦すべきだと説得した。

幾度となく行ったプレゼンの成果が実り、ラバリアに加入してくれた。

 

また同じ時期に、205cmにして脅威のシュート力を誇る、アントニオを発見した。

彼は大学でラグビー部とバスケ部をかけ持ちをしていて、将来はプロのラグビー選手になろうとしていたようだった。

が、私がこの高い身長とずば抜けたシュートセンスを持つ男を見逃すはずがない。

高額契約を持ち掛けて、ラバリアに加入してもらった。

 

この時から、ラバリアは身長を武器に戦うことができるようになった。

しかし、トランジションが弱く、ゲームメイクができるPGの不足していたことが響き、あと一歩のところでプレイオフを逃してしまった。

 

そして去年、ラバリアで一番の大巨人であるダイが加入してくれた。

彼のことは国際試合で見たことがあり、喉から手が出るほど欲した人材だった。

だが、おそらく日本の高校を卒業しアメリカのNCAAへ挑戦する流れになるだろうと、諦めかけていたところだった。

まさか出稼ぎでスペインへ来てくれるとは思わず、ルーカスから電話で話を聞いた時には、路上にもかかわらず踊りだしてしまったのを覚えている。

彼の大活躍もあり、昨年はプレイオフに進出することができた。

ルーカスの怪我の影響で一回戦で負けてしまったが・・・

 

今年こそは!と気合いを入れ、スカウト視察に飛び回った。

そのかいあって、パブロとエンソという二人のビッグマンを獲得することができた。

ついに最強のビッグチームが完成した!

そして快勝に快勝を重ねて、ついに20年ぶりのプレイオフ決勝までくることができた。

 

 

 

だがこのプレイオフ決勝の最終戦。

今まさに負けそうになっている。

それもスモールラインナップとかいう、ラバリアの長所を殺すような戦術でだ。

 

とは言え、現代バスケの戦術は複雑すぎて私にはよく分かない。

だから作戦はルーカスとダイに任せていた。

実際、それでここまで勝ち上がることができている。

スモールラインナップにも意味があるのだろう。

 

・・・やはり、私が口を出すべきではないのだろうか?

 

 

 

いや、そうではない!

ここで指示をせずして、何が監督か。

この瞬間のために、私は10年間準備をしてきたんだ!

 

私が夢見た巨人たちのチーム。

その中でも、特に背の高い5人。

209cmのルーカス、同じく209cmのフランク、211cmのネルソン、212cmのエンソ、・・・・そしてリーグ最高225cmを誇る大巨人ダイ!!

名付けてスーパーBIG5!

平均身長213cm!

このラインナップ!

これが最強のはずなんだ!

 

スピードが遅くなる?

スペーシングが悪くなる?

そんなこと知ったことか!

スペースなら上空にある。

スーパーBIG5でなら制空権を掌握できる。

 

私は身体能力が戦術を超える瞬間を知っている。

このスーパーBIG5こそが最高のメンバー!

 

これは私のチームだ!

私の物語なんだ!

 

 

 

 

前半戦を終え、選手たちがロッカールームへと戻ってきた。

その顔には疲労感、そして「もうレアロに勝てないのではないか?」という悲壮感が表れていた。

 

「みんな聞いてくれ!」

 

私は声を張って注目を集める。

 

「後半戦だが、ダイ、ルーカス、フランク、ネルソン、エンソ、というラインナップで行こうと思う。」

 

私がそう言うと、ルーカスとダイを筆頭に皆が驚いた表情を見せた。

 

「監督、待ってくれ。アントニオは絶対に必要だ。でないとオフェンスが停滞するし、何よりラッセルをディフェンスする人がいなくなっちまう」

 

まず反対意見を言ってきたのは、やはりルーカスだ。

彼はこのチーム随一のバスケIQを持つチームのキャプテンだ。

ルーカスを説得できなければ、スーパーBIG5は実現できない。

 

「ラッセルのディフェンスだが、ダイに全てを任せよう。その代わり、ゴール下は4人で守るんだ。ボックスワンのゾーンディフェンスだ」

 

私は前半の間に考えていたディフェンスフォーメーションを伝える。

ボックスワンはペイントエリアを4人のゾーンディフェンスで守り、相手のエースだけ1 on 1で止めるやり方だ。

これなら、ペイントエリアは巨人4人で守ることができるし、何よりラッセルをダイのマンマークで封じることができる。

 

「このゾーンなら、流石にマウリカを止めることができるだろう。しかも、4人が居れば確実にリバウンドを取ることができる」

 

続けてこのディフェンスの利点を伝えた。

 

「いや、そうなるとペリメーターのディフェンスががら空きになる。3Pシュートが打たれ放題になってしまうぞ」

 

ルーカスも続けて異を唱えてきた。

 

「レアロはラッセル以外のスリーポイント成功率は高くない。ある程度打たせてやればいい。リバウンドを回収できるなら、悪いディフェンスではないはずだ」

 

私の説明にルーカスは少し思案するが・・・感触は悪くない。

どうやら、一理あると考えてくれているようだ。

 

「ちょっと待て。相手がスクリーンで俺のディフェンスを剥がしに来た場合はどうする?スクリーンを躱している間にスリーを打たれてしまいそうだが」

 

今度はダイが反論してきた。

彼もルーカスに次いでバスケIQが高いプレイヤーだ。

 

「その場合は、ディフェンスを躱そうとするのではなく、スクリーン越しにスリーポイントをブロックしてやればいい」

 

「スクリーン越しのブロック!?」

 

私の提案に心底驚いた表情を見せるダイ。

彼は常識外れなプレイヤーなのに、常識の枠でプレイしようとする欠点がある。

 

「ダイならできるはずだ。幸い、ラッセルのシュートの弾道は高くない。打点も低い」

 

そう言って補足をすると、ダイも納得した様子になる。

 

「ディフェンスは分かった。じゃあ、オフェンスはどうするんだ?言っちゃ悪いが俺達4人ともスリーポイント打てないから、ペイントエリアが大渋滞するぞ」

 

今度はルーカスがオフェンス面での問題を指摘してきた。

そこを聞かれると思っていた。

 

「オフェンスだが・・・ダイのスリーポイントで行こう!あとのメンバーは全員オフェンスリバウンドだ」

 

私は前半の間に考え抜いたオフェンスを発表した。

超高度砲台と化したダイが、スリーポイントを連発する。

これである。

 

「いや、ちょっと待ってくれ。ラッセルはディフェンスが上手くて、必ずシュートチェックでプレッシャーをかけてくる。スリーポイント成功率は高くならないぞ」

 

今度はダイが待ったをかけてきた。

相変わらず、最高の選手なのに常識の枠にとらわれている。

 

「確かにラッセルはシュートチェックが上手いが・・・ダイがそれをプレッシャーに感じる理由が分からん。ダイの全力ジャンプシュートなら、ラッセルの腕は物理的に届かない。プレッシャーなんてものは存在しない!」

 

虚を突かれたような表情になるダイ。

何か反論を言おうとして・・・口を閉じた。

どうやら、納得できるポイントがあったようだ。

 

「セットのオフェンスとディフェンスは大丈夫かもしれんが、トランジションはどうする?このラインナップだと機動力が 「ルーカス!ストップだ」

 

ルーカスの追及が続きそうなところを、フランクが制止した。

 

「俺は監督と8年以上の付き合いになる。確かにこの人はビッグマンが好きすぎて偏った補強をしたり、現代バスケの戦術を理解しようとしないという欠点もあるが・・・この人が天性の勘に任せて大きく動いたとき、必ず成功してきたんだ。ダイやルーカス、アントニオの獲得もそうだ」

 

フランクがそう言うと、続けてネルソンも口を開いた。

 

「その通り。ここぞといった場面では、この人は正解を出してきた。30年前、ラバリアで現役やってた時のプレイもそうだし、監督としてもそうだ。だから、俺も信じてみたい」

 

ネルソンの発言に、ロッカールームの雰囲気がスーパーBIG5賛成側に傾き始める。

が、ルーカスだけは未だ納得がしていない様子だ。

 

「ルーカス、確かに細かいツッコミどころは山の様にあるが・・・全体として悪くなさそうだ。何より、前半と同じような作戦で18点差をひっくり返せるとは思えない」

 

ネルソンとフランクの発言を受けてだろうか、ダイも私を後押しするような意見を出してくれた。

この意見にルーカスは少し思案した様子を見せるが・・・他に作戦が思いつかなかったのか、両手を上げて降参するようなポーズを取った。

 

「分かったよ。よく考えてみれば、悪くない作戦だ。だが、この作戦はダイの負担がとんでもなく大きいから、ダイがどれだけ動けるかに全てがかかっている。リバウンドとインサイドディフェンスは俺達で死守するが、それ以外のところは・・・任せたぞ」

 

「ああ。もちろんだ、ルーカス。今日のために練習してきたんだ。負担がどれだけ大きくなろうと、魂燃やして最後まで動き続けるさ」

 

ダイとルーカスは、互いにそんな言葉を交わす。

確かにダイの負担は大きい。

とんでもなく大きい。

だが、ダイはヨーロッパで一番の ―いや世界一のバスケットボール選手だ。

必ずや期待に応えてくれるだろう。

 

「よしっ、久々に円陣を組もう」

 

私がそう声をかけると、ネルソンとフランクを筆頭にして輪を作り始めた。

ルーカスも、ダイも、アントニオも、パブロも、アルフレードも、全員が肩を寄せ合い、互いの熱を感じながら勢いを高めていく。

 

「懐かしいな、フランク。ルーカスが加入するまでは作戦立てる人がいなくて、こうやってよく円陣組んで気合い入れてたっけ」

「戦術は気合いで打ち破るんだ!とか言ってな。まさかプレイオフの決勝でやることになるとは思わなかったが」

 

ネルソンとフランクが昔話に花を咲かしている。

思い返せば、そんな時代もあった。

だが、全然勝てなかったあの時とは違う。

今は最強のセンターであるルーカス、最高の選手であるダイもいるんだ。

気合いがあれば、必ず勝つことができる。

 

「レアロは確かに強い!だが、君たちの方が圧倒的にデカい!!この試合、まだまだ逆転できるぞ!」

 

「「「「「「「「おお!!!」」」」」」」」

 

「リバウンドは俺に任せろ!全部取ってやる!」

ネルソンが声を上げた。

 

「マウリカは俺が抑える!ボックスアウトでコート外まで弾き飛ばしてやるぞ!」

ルーカスが応じる。

 

「ペイントエリアは死守する!」「リバウンドは負けねぇ!」

フランクとエンソも続く。

 

「俺はラッセルを止めて、スリーポイントシュートを決め続ける!!」

ダイの宣言に、全員が拳を合わせた。

 

チームが、かつてないほどの一体感を見せている。

勝てる。

これだけのタレントがそろっているのだ。

あとは気合いさえあれば、絶対に勝てる!

 

「チャンピオンリング!絶対に取るぞ!ラバリア!GO!!!」

 

「「「「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」」」」

 

皆の掛け声に、ロッカールームの壁がビリビリと震えた。

それに共鳴するように、皆の魂が震えているのが伝わってくる。

 

 

そのままの勢いで先陣を切ったルーカスがロッカールームのドアを開いた。

 

 

闘気溢れるラバリアの戦士たちは、後半戦のコートへと飛び出していった。

 

 

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