身長2m28cmの大男、平成元年の日本に転生する   作:はるあき 007

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NBAプレイオフが始まったので、更新が遅れていました。(推しチーム全敗につき、更新再開)
今年は若くて走れるチームが強いですね。

アメリカ大陸編、スタートです。




17歳-1 新チーム

スタジアムの最上階から、静かに街を見下ろしていた。

 

熱狂の嵐が吹き荒れたユーロリーグ優勝から数日。

優勝パレードで通った大通りにはまだ紙吹雪の名残が舞い、祝勝ムードの色濃いポスターや横断幕が風にはためいている。

角を曲がれば、ファンたちが歓喜に酔いしれていたバルのテラス席、色とりどりのクラッカーや使い捨てカップが転がったままの歩道。

まるで街そのものが、まだ優勝の余韻に浸っているかのようだった。

 

――それでも、何かが少しずつ動き始めている気配があった。

 

「オーナーが会議室で呼んでいます。こちらへお願いいたします。」

 

背後からかけられたスタッフの声に、俺は視線を街から引き戻し、無言で頷く。

 

会議室のドアを開けると、既にセバスチャン監督とオーナーのアデルが腰を掛けていた。

二人とも表情は硬いが、どこかウキウキとした様子でもあった。

 

重苦しい沈黙のあと、アデルが口を開く。

 

「ダイ。今日は君に、重大な話がある。」

 

そう前置きし、アデルはゆっくりと言葉を選びながら続けた。

 

「突然だが――NBAに新しいチームを創設することになった。場所はラスベガス。正式な発表は数週間後になるが、すでにリーグからは承認が下りている」

 

俺は思わず目を見開いた。

NBAの新チーム。

そんな話は、スポーツ新聞の噂程度でしか聞いたことがなかった。

どうせ飛ばし記事だろうと思って信じていなかったのだが・・本当だったのか。

しかもアデルがオーナーなのかよ。

 

「そして、だ」

 

アデルは一呼吸おいて、俺を真正面から見据える。

 

「この新チームは、ユーロリーグの選手を中心に作りたいと思っている。そして、その主軸として、君を迎えたい。リーダー、フランチャイズプレイヤーとしてだ」

 

室内の空気が、一瞬止まる。

良い話のはずなのだが、情報量が多すぎて処理できない。

 

「君はラバリアで使命を果たした。そして、ヨーロッパでこれ以上証明すべきこともない。次は世界最高峰の舞台で、新たな挑戦をしてほしいんだ」

 

俺の沈黙に何を思ったか、アデルが再度勧誘してきた。

 

・・・今世の夢の到達点であるNBAへの勧誘だ。

二つ返事で引き受けたいところだが、ラバリアのことが気になる。

NBAに行くのは、来シーズンもプレイしつつパブロとエンソを鍛え上げて、ラバリアにレガシーを残してからだと思っていたからな。

今の状況で俺が抜けると、果たして来シーズン優勝できるのか?という不安が残る。

 

すぐに言葉を返せないで居た俺を見て、アデルの横で沈黙していたセバスチャン監督が口を開いた。

 

「私もこの提案には賛成だ。ダイならきっとNBAでも通用する。いや――通用するどころか、Greatest Of All Time、GOATに成るに違いない。新しい歴史を創るだろう」

 

どこか確信めいた口調で宣言するセバスチャン。

その目はキラキラと輝いており、来シーズンの不安など一切感じさせなかった。

 

・・・そうか。

セバスチャンがこの態度ということは、おそらくスカウトの目星がついているのだろう。

俺は監督の顔を見て頷き、アデルに返事をした。

 

「その話、喜んでお引き受けします」

 

俺の宣言を聞き、微笑むアデル。

「ダイなら、そう言ってくれると思っていたよ。」

 

そして何度も小さく頷いた。

 

 

 

セバスチャン監督は黙ったまま、深く息を吐いた。

その目は、俺に対する信頼と誇りで満ちていた。

 

「君の挑戦を、誇りに思う。だが、くれぐれも身体に気をつけて。アメリカの舞台は、甘くはない。」

 

「はい。全力でぶつかってきます。」

 

その瞬間、俺の中で何かが静かに切り替わった。

ユーロリーグ優勝の余韻に包まれていた心が、新たな戦場へと歩みを進める決意へと変わっていく。

もう迷いはない。

 

いよいよ、NBAでの戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、じゃあ細かいところを聞いても良いか?」

 

会議室を出た俺は、スタジアムのカフェスペースでセバスチャン監督と向き合って座っていた。

さっきはオーナーのアデルの迫力に流されて承諾してしまったが・・・よく考えるとこの話、ツッコミどころが満載だ。

 

「ああ、何でも聞いてくれ。私も三日前に聞いた話だから、細部は怪しいが」

 

と、不安になる事をさらっと言いながら、コーヒーに大量のシロップとミルクを入れて混ぜ始める監督。

 

・・・その量入れるなら、最初からカフェオレ頼んだ方が良くないか?

まあいいか、今はそれどころじゃない。

 

「まず一番気になるところだが・・・そもそも、俺まだNBAに入れなくない?年齢的に」

 

一番の懸念はここである。

俺はまだピチピチの17歳、NBAは18歳にならないと入れなかったはずだ。

アメリカと日本で区切りは違うのかもしれないが。

 

「うむ。それについては聞かれると思っていた。一番重要な話だからな・・・というか、さっきアデルから伝えるはずだったのだが、気持ちを入れ過ぎて言い忘れたみたいだな」

 

そう言いながら、セバスチャンは一枚の紙を差し出してきた。

そこには「Admissions Guide ~Nabra University~」の文字がある。

 

「大学?」

 

俺のNBA挑戦と何の関係が?

・・・いや、少し読めてきた。

 

「その顔、ピンと来ているようだな。そう、ダイには来シーズン、大学バスケいわゆるNCAAで活躍してもらいたいんだ」

 

監督はにやりと笑ってそう言うと、茶色くなったコーヒーを飲んだ。

 

なるほどね。

俺もブラックコーヒーを飲みながら、監督の言葉の意味を深く考える。

 

大学のパンフレットを見た時点で、NCAAに挑戦するのは読めていた。

NBAへの切符として、NCAAでアピールしてからドラフトされるのは鉄板の流れだからな。

確かドラフトの7割以上はNCAAの学生だったはずだ。

だが、俺に当てはめて考えると、まだ疑問が残る。

 

「なんで今更NCAAなんだ?正直、ユーロリーグの方がレベル高いし、来シーズンはラバリアでプレイしたほうが良くないか?」

 

そう、俺が今更NCAAに挑戦する意味が良く分からないのだ。

NCAAは大学バスケとしては世界一だが、ユーロリーグに比べるとレベルは低い。

それなら今のままラバリアに居た方が、バスケの上達によさそうだ。

 

更に、アデルの話では俺をドラフトするのはもう決めているようだったし、今更NCAAでアピールする意味もない。

というか、下手に活躍すると指名順位が上がって採りにくくなるから、逆効果なのでは?

 

「それについては、新チームに関連した非常に複雑な状況があってな・・・」

 

そう言いながら、セバスチャン監督はまた一枚の紙を差し出してきた。

監督直筆のメモのようだが。

 

 

―――――――――――――――

!極秘!新チーム設立!

 

本拠地 :ラスベガス

参入時期:2008年(次々シーズン)

目標  :ユーロリーグの選手を中心に構成し、ヨーロッパのバスケットボールのレベルの高さを世界に見せつける。数年以内にチャンピオンリングを取る。

指名権 :2008年の1位、10位、30位を付与

特例  :初年度はトレードにおける釣り合い条項、サラリーキャップの下限を適用しない

問題点 :ヨーロッパの選手が主力のため、地元の応援が少ない可能性がある。

 

 

 

 

ふむふむ、なるほど。

まず、極秘の資料を見てもいいのかという問題があるが・・まあいいか。関係者だし。

というか、リーグに加入するの2008年なのかよ。来年じゃん。

アデルの勧誘、色々と情報が不足し過ぎだろ。

それに二つ返事で回答した俺も俺だが。

 

ドラフト指名権は1位が確定してるのは凄いな。

ってことは俺が大活躍しても、指名できないってことはなさそうだ。

気になるのは問題点のところか。

 

「地元の応援なぁ」

 

確かに、ヨーロッパの選手中心だと、地元が盛り上がりにくいかもしれん。

最近はユーロ出身のNBA選手も増えているけど、まだチームに1-2人って感じだもんな。

大半がヨーロッパルーツとなると、生粋のアメリカ人は支持しない気がする。

 

「そう、そこでダイの出番というわけだ!」

 

ビシッとこちらを指さす監督。

 

「ここでか?確かに俺にヨーロッパ色はないが、アジア人だぞ?アメリカ人のウケが悪いのは変わらないと思うが」

 

むしろ、アジア人の方が評判悪そうだが。

 

「今は人種や国籍は関係ない・・・だが良い機会なのでついでに勧誘しておくと、スペインの国籍ならいつでも取得できるぞ?スペイン国王やバロマの議長も君のファンでな。どうだ、ここらでスペイン人にならないか?」

 

話を脱線し、突如、目を輝かせながら勧誘してくる監督。

 

「いや、日本で15年以上過ごしてきたからな、今更国籍を変える気はないぞ」

 

前世を含めると40年以上になるしな。

流石に愛着がある。

 

「そうか・・・残念だ。まあその話は一旦置いておこう」

 

そう言って少し落ち込んだ様子を見せた監督だったが、気持ちを切り替えたのか先ほどの大学案内の紙を見せてきた。

 

「新チームで地元の応援を得るためには、地元のスーパースターの存在が不可欠だ。そこで、ダイにはこの夏からナブラ大学に入り、NCAAで優勝してもらいたい」

 

「・・なるほどね」

 

監督とアデルの考えが読めてきた。

アメリカの大学バスケは、NBAよりもずっと地域色が強い事で有名だ。

日本で言う甲子園のようなものらしいからな。

 

そこで活躍した選手となれば、留学生でも関係なく地元のスターになれるだろう。

そして、そんなスター選手が地元の新チームに入団したとなれば、地元のバスケファンを根こそぎ獲得できる。

新チーム設立前から布石を打っておくわけだ。

何というマッチポンプ。

 

「悪くない作戦だな」

 

俺はニヤリと笑って、監督に言葉を返した。

 

「そうだろう。これでラスベガス中のバスケファンが、我々の応援をしてくれるはずだ」

 

監督もニヤリと笑って応えた。

 

 

・・・なんか、悪だくみしてる気分になってきたな。

いやいや、俺らは何も悪いことをしようとしてる訳じゃない。

俺はNCAAに挑戦したくてナブラ大学に入り、そこで優勝を目指すだけだ。

その活躍に目を止めた新チームのオーナーが、偶然一位指名権を持っていて、これ幸いと指名するだけなのだ。

ラスベガスの地元ファンはNCAAのニュースターが応援出来てハッピー、新チームも地元のサポートを手に入れることができてハッピー。

誰も損をしていない。

まさにWin―Winの状況と言えるだろう。

 

 

なるほどね。

これで、俺がNCAAに挑戦する意義を理解することができた。

 

ってことは10月からアメリカで大学生か。

胸が躍るな。

異世界転生と言えば学園編だからな。

まあ異世界じゃなくて現実なわけだが。

学園編が楽しいという事に変わりはない。

久々の大学生活、エンジョイするか!

 

「そうだ、この機会にダイにアドバイスしたいことがある」

 

と、コーヒーを飲みほした監督が、少し神妙な様子で語ってきた。

 

「ダイの今のプレイスタイルでも、NCAAなら問題なく優勝できるだろう。だが、それでは君の成長にならない。少し縛りをつけてプレイするべきだ」

 

「縛り?」

 

え。

俺、縛りプレイでNCAAに挑戦するの?

大学バスケとは言え、流石にアメリカのバスケレベルを過小評価してないか?

 

「そうだ。ダイはその巨体に似合わずユーロステップやシャムゴッド、クロスオーバーにディレイレッグと多様なスキルを使うことができる」

 

「おお、ありがとう」

 

照れるぜ。

 

「だが、これらのスキルは、ある種の逃げだとも言える」

 

逃げ?

いやいや。

 

「NBA選手もみんな使ってるスキルだぞ。むしろ、ノースキルでドライブする選手なんて殆どいないだろ!」

 

俺は思わずツッコミを入れた。

 

「そうなのだが・・・それは相手よりも運動能力に劣るから、躱すためにスキルを使っているのだ。ダイほどのフィジカル、高さ、スピードがあれば、ユーロステップで相手を躱す必要などない。むしろ、相手を押し込みながらダンクすれば、ファウルをもらって一点追加することもできる」

 

そう言い放った監督は、真剣な眼差しでこちらを見ている。

 

確かに、一理ある・・・か?

いや、でも躱さないとシュートなんて打てないだろう。

 

・・・違う。

これはいつの記憶だ?

前世か?

俺が今世でシュートをブロックされたのなんて、数回程度しか無かったはずだ。

 

「ダイのスピードがあれば単純なフェイクで相手を抜き去ることができるし、ダイの身長があればフェイドアウェイなどせずともブロックはされない、ダブルクラッチも不要だ。全力で飛ぶ君をブロックできる選手など、NBAにも存在しない」

 

・・・監督に一理ある気がするが、俺の中の記憶が判断を邪魔してくる。

この記憶はいつのやつだ?

まずいな、一度今の自分の能力とスキルを整理しないと、確かにプレイスタイルが身体能力にマッチしていない気もする。

 

「・・だがまぁ、NBAやユーロリーグには規格外の選手がいるのは事実。だから、NCAAは丁度いいと思う。スキルは一度忘れて、素の能力だけでどこまでいけるか、試してみた方が良い」

 

「・・・ああ、そうかもしれない。NCAAでは、スキルを制限してプレイしてみるよ」

 

俺は混乱の中、自分のなかの記憶を整理しつつ、監督にそう返答した。

 

必要以上にスキルで躱していたのは事実だ。

NCAAで、素の能力の限界値を探ってみるのもありだろう。

とは言え、監督は監督で俺の身体能力を過大評価している気がする。

今の自分の体格にあった、今世でのプレイスタイルを見つける必要があるな・・。

 

 

 

 

 

 

その後は、トレーニングルームへと赴き、いつもの筋力トレーニングに取り組んだ。

 

身体能力についての相談がしたくてエリザベスさんを探したが、休暇中で不在だった。

筋トレに励むルーカスは発見できたものの、お勧めのサプリやプロテイン、隠れた筋肉に効かせるトレーニングフォーム等を語るばかりで、有益な情報は得られなかった。

 

結局、この日はルーカスとバーベル上げの最大重量を競い合っている内に終わってしまった(負けた)。

 

 

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