身長2m28cmの大男、平成元年の日本に転生する   作:はるあき 007

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17歳-2 オフシーズン

薄暗い部屋に、分厚いカーテンの隙間から朝の光がうっすらと差し込んでいた。

まるでバターを塗ったかのように、やわらかい光がシーツの上に滲んでいる。

このシーツは高級シルクの極上の肌触りで、体にまとわりつくような重みと、同時に心地よい清涼感を運んでくれている。

 

「ねむ・・・」

 

ベッドの中心に沈み込むように寝ていた俺は、ゆっくりと片目を開けた。

見上げた天井には目を凝らさないと見えないほどの、繊細な装飾が施されている。

流石は五つ星ホテル、天井すら高級。

意味がわからん。

逆に腹立ってきた。

 

「・・・ルームサービスでコーヒー頼むか」

 

俺は覚醒しきらない意識を奮い起こし、部屋に備え付けの電話に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱここのコーヒーは旨いな」

 

泥の様に濃いコーヒーを飲むと、徐々に意識が覚醒してきた。

やはり朝のコーヒーは濃い目に限るな。

ここのフロントとはツーカーの仲なので、指定しなくても濃い目で出てくるのが楽でいい。

 

カフェインによって意識が覚醒するにつれ、昨日聞いた衝撃的な情報が脳裏に蘇ってきた。

NCAA挑戦、NBAでの指名、スキルの封印、どれも非常に重要なことだ。

だが・・・全部一旦置いておこう!!

 

今日からは正式な休み。

待ちに待ったオフシーズンだ!!

 

去年は、日本代表の強化合宿とアジア選手権に連行されたおかげで、ろくに休み取れなかったからな。

今年こそは、ゆっくりとしたオフシーズンを過ごすんだ。

 

ルーカスとアントニオにはマカオ旅行に誘われてることだし、昨年のリベンジとしてマカオ行くのも良いなぁ。

日本に帰ってゆっくりするのもありだ。

院長とは話したいことが山の様にあるし、久々に天下統一のこってりラーメンも食べたい。

 

もしくは、このパルマ島をじっくりと満喫しても良い。

来シーズンからはアメリカ大陸だからな。

一年半ほど過ごした、第二の故郷を目に焼き付けておきたいところだ。

 

壁に設置されたスイッチを押すと、窓一面を覆っていたカーテンが動き始めた。

「ウィーン」という駆動音とともに、厚手のカーテンがゆっくりと左右に分かれていく。

やがて全面が開くと、眼前に広がったのは、パルマ島の息を呑むような風景だった。

 

透き通るようなエメラルドグリーンの海が、遠く水平線まで穏やかに広がり、波が光を跳ね返してはキラキラと輝いている。

その手前には、ヤシの木がゆるやかな風に揺れ、砂浜には朝日を浴びながらジョギングする人々の姿。まだ涼しさの残る朝の空気が、画面越しでも感じられるような爽快さを放っていた。

奥に目をやれば、丘の中腹に立つ白壁の街並みが、淡いオレンジ色の屋根とともにリズムよく連なっていた。

ところどころに並ぶカフェのテラス席には、既にモーニングを楽しむ観光客の姿もある。

見下ろせば、ラバリアの本拠地アリーナもはっきりと見える。

優勝パレードの名残だろうか。まだ撤収の終わっていない紅白の幕や、打ち上げられた紙吹雪の一部が風に揺れていた。

 

「・・・パルマ島、いいよなぁ」

 

思わず、ひとこと。

この島で過ごしてきた二年弱が、胸の中に一気に押し寄せてくる。

中学を卒業したその足で、初めてやってきた海外の地。

慣れないスペインでの生活、スペイン語の習得、初めてのプロ選手としての活動。

どれもこれも、簡単じゃなかった。

けれど、楽しく、美しかった。間違いなく俺にとっての“青春”だった。

今日も、パルマ島の朝は眩しい。

――この場所に、また戻ってきたいと思わせる景色が、そこには確かにあった。

 

「ここが俺の、アナザースカイ・・・」

 

・・・

いかんな。

オフシーズンとは言え、浮かれすぎている気がする。

 

だが、パルマ島を第二の故郷だと感じている気持ち、これは本物だ。

 

よし決めた!

このオフシーズン、まずは2週間、このパルマ島でまったりと過ごそう。

名所を廻りつつ、ラバリアの仲間や地元のファンと交流して、この島のことを記憶に刻み込もう。

 

そして、その次にルーカス、アントニオと共にマカオに行こう。

昨年行けなかった分も含めて、2週間くらいは滞在したいところ。

盛大に遊びつくすんだ。

 

最後に、日本に帰って第一の故郷を満喫だ。

院長と語らうも良し、施設の皆と遊ぶのも良いな。

食べたい日本食がいっぱいあるし、田中勇太や伊藤兄弟と遊びに行くのも魅力的だ。

 

「決まったな」

 

ワクワクしてきたぜ!

俺の最高のオフシーズン、ここに開幕だ!!!

 

 

「♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫~」

 

・・・

・・

携帯電話から着信音が鳴り響く。

 

何か・・嫌な予感がするな。

 

一旦・・・無視してみるか。

 

 

十数秒ほど放置すると、着信音が止まった。

そのまま一分ほど待ってみたが、携帯電話が再び鳴ることは無かった。

 

「たいした要件じゃなかったようだな。ふぅ、焦ったぜ」

 

俺は思わずそう独り言ちると、携帯電話を開く。

と同時に、「ピピッ」というメールの着信音が鳴り響く。

画面には新着メッセージが表示されたていた。

 

――――――――――――――

From:院長

大へ

 

来シーズンはNCAAへ、そして来々シーズンからNBAへ挑戦することになったんだってね。

アデルさんから聞きました。

おめでとう!

 

というわけで早速だけど、このオフの予定を送るね。

今年は忙しくなるぞ~。

詳細はまた電話で連絡します。

 

――

7/21(今日)@スペイン

高級ブランド「ガッチ」のCM撮影

※エリザベスさんに付き添いを頼んでます

 

7/22 移動日

 

7/23 @フランス

ヘルスケア器具メーカー「グッドウィル」のCM撮影

※アデルさんの関係者の企業です。来季ラバリアで予定されていたサラリー補填のつもりなのかも?

 

7/24-25 移動日

 

7/26 @アメリカ

ナブラ大学バスケットボール部 公開トライアウト

 

7/27 @アメリカ

TOFFFLテスト

※450/500点以上を取ってください

 

7/28~8/8 @アメリカ

大学入学試験対策

※数学/物理/化学/地理のテストがあります。トライアウトの成績も加味されますが、点数が低いと落とされます。高校三年間の内容を一週間半で詰め込むそうです。

 

8/9 @アメリカ

ナブラ大学入学試験

筆記テスト&面接

 

8/10 移動日

 

8/11 ~ 8/18 @沖縄

バスケ日本代表強化合宿

※この期間は、不規則に日本メディアへの対応、財団の承認処理、アメリカ/スペインメディアへの対応、ワールドカップイベントの対応、テレビ出演、日本企業のCM撮影などの仕事が入ります。

 

8/19~9/3 @横浜

ワールドカップ開幕

※決勝までのスケジュールを押さえています

 

9/5 @アメリカ

ナブラ大学 入学式

 

9/6~ @アメリカ

NCAAでの活動、ナブラ大学での講義受講スタート

 

――――――――――――――

 

 

・・・

・・

 

「忙しすぎるだろ!!!」

 

何だこの過密スケジュール。

一日たりとも休みが無ぇ!

俺のオフはどこに行ったんだ!?

 

内容もかなり滅茶苦茶だ。

高校三年間を一週間半で復習して、そのまま大学入試に突入するのかよ!

そんなもんできる訳・・・いや、まあ不可能ではないか。

 

前世はそこそこ難関の国立大学の工学部へ入れたわけだし、その時の知識が割と残ってはいる。

むしろ余裕をもって試験に臨める可能性すらある。

休むとしたらこの期間か?

・・いや、流石にブランクがあり過ぎるな。一週間半はみっちり勉強しなおさないと、入試問題なんて解けない気がする。

落ちたら計画が全てパーだしな。

「入試に落ちて無職になりました~」とか、洒落にならん。

この期間は勉強漬けにするしかないだろう。

 

他にどっか休めるポイントはないか?

CM撮影は一日かかりそうだし、そもそも一日休めたとて何だ?という話ではある。

 

強化合宿をサボる最終手段も残されているが、山田コーチがブチ切れそうだな・・・

流石にワールドカップは万全の状態で臨みたい気持ちもあるし。

こないだ思いついた新しいセットオフェンス、田中勇太や伊藤兄弟と練習しておきたいところでもある。

 

他には・・・無いな。

え、まじか?

今年の俺の休み、無し?

 

 

「♪~」

 

部屋の中に、来訪者を告げるブザーが鳴り響く。

 

まずい、もうエリザベスさんが来たのか!?

逃げ・・いや。

エリザベスさん怒ると怖そうだし、止めておくか。

ここで逃げたところで、どうせCM撮影は行かなきゃならないわけだし。

エリザベスさんのサポートが無いと、余計に時間がかかりそうだ。

 

「・・・はーい!今行きます」

 

俺は残ったコーヒーをがぶ飲みすると、玄関へ向かって歩き出した。

 

 

 

 

こうして、俺の激動のオフシーズンが開幕した。

 

 






ーー
オフシーズンが始まりました。
どこまで描写するかわかりませんが、ワールドカップは詳し目に書く予定。

リアルではNBAプレイオフ決勝のカードが決まりましたね。
楽しみだとは思いつつ、推しチームが居ないので心がオフの補強の話題に持ってかれています。
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