身長2m28cmの大男、平成元年の日本に転生する   作:はるあき 007

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本日二話投稿!一話目





17歳-3 オフシーズン2

 

扉を開けると、南国の鳥みたいにカラフルな色が飛び込んできた。

 

「おっはよー!いよいよバケーションが始まったわね!」

 

弾ける笑顔と共に、そんな宣言をするエリザベスさん。

大ぶりのサングラスに、オレンジとハワイアンブルーカラーの南国風ノースリーブワンピース。胸元には大胆な花のネックレスが揺れ、手にはココナッツの容器に入った謎のドリンク。髪には花、足にはビーチサンダル、肩には信じられないほど大きなトートバッグ。

そして、全身からあふれ出る「サマーバケーションを楽しむぞ!」とでも言わんばかりのハイテンション。

 

・・・浮かれ切ってやがる!

こいつ、スケジュールに忙殺されそうな俺を横目に、長期休暇に浮かれ切ってやがる!

 

「・・・エリザベスさん、テンション高過ぎじゃない?」

 

見ろよ、この俺のローなテンションを。

 

「当たり前でしょ!いよいよバケーションが始まったんだから!!さぁ、今日の予定は山ほどあるんだから!美容室でのスタイリング、ビーチでの撮影、スタジアムでの撮影、さっさと終わらせて、バケーションを満喫するわよ!」

 

生き生きとした表情でそんなことを抜かすエリザベスさん。

 

「・・・いや、今日の仕事を早く終わらせたところで、俺にバケーションなんかないけどな」

 

思わず、ぽつりと不満をこぼす俺。

 

すると何か思い出したのか、エリザベスさんは手をポンと叩いて

「あー、院長さんの立てたワーカホリックなスケジュールのことね。こっちでちゃんと修正しておいたわ」

と言いながら、自慢げに一枚の紙を見せてきた。

 

 

――

7/21(今日)@スペイン、パルマ島

美容室でのスタイリング。高級ブランド「ガッチ」、ヘルスケア器具メーカー「グッドウィル」のCM撮影

※撮影場所をパルマ島にしてもらって、一日にまとめました

 

7/21夜~7/22 移動

 

7/23~25 @ラスベガス

バケーション。

 

7/26 @ナブラ大学

ナブラ大学バスケットボール部 公開トライアウト

 

7/27~29

TOFFFLテストと大学入試対策

※推薦入試のペーパーテストなんて、ダイなら2-3日で終わる筈よ。伝手で過去問も入手したから、さっと終わらせましょう。

 

7/30~8/8 @ラスベガス

バケーション

 

8/9 @ナブラ大学

ナブラ大学入学試験

筆記テスト&面接

 

8/10 以降、ワールドカップ

―――

 

・・・

・・

 

「なんだこの最高のスケジュールは!!!」

 

休みがたくさんある!

1,2,3,4・・・・13日!?

いっぱいだ!休みがいっぱいだ!

俺のオフシーズンが戻ってきた!

 

「エリザベス姉さん!」

 

「なによその呼び方は・・・ちなみに、ラスベガスにはアントニオとルーカスも呼んであるわ。一緒にマカオ旅行に行く予定だったんでしょ?マカオへは行けないけど、カジノもプールも食事もラスベガスの方がハイレベルだから、存分に楽しめるはずよ」

 

「エリザベスの姉御!!」

 

「ちなみにラスベガスで一番のホテル、ドナルドホテルのスイートルームを全員分押さえてるわ。ホテルにはスパや映画館もついてるし、夜にはサーカスショーも観れるわよ」

 

「エリザベス女王!!!」

 

「それは不敬になるからやめておきなさい・・・ま、喜んでくれたなら良かったわ。日本人は隙あらば仕事を詰め込もうとするわよね~。休むときは休まないと」

 

そう言いながら、呆れたような顔つきで元のスケジュール(院長案)を見つめるエリザベスさん。

 

ほんまやで!!

 

と、言いたいところだが、院長も完全な善意でやってるところがあるから文句も言いづらいんだよな。

院長、養護施設で365日働きながら、株取引も深夜までやってるし。

仕事が大好きでたまらないタイプなのだ。

 

俺のスケジューリングとかメディア対応も嬉々としてやってくれて、物凄く助かっているのも事実だしな。

 

「ほんと助かったよ、エリザベスさん。なんかお礼でもできればいいんだが」

 

マジで今、俺にはこの人が女神に見えている。

何とか感謝の気持ちを伝えたいところだが・・・エリザベスさん割と金持ちだし研究しか興味なさそうだし、プレゼントも思いつかないんだよな。

 

「いいのよ、ラバリアの仲間じゃない!―ま、強いて言うなら、私も来年度はナブラ大学で特任助教授として研究することになったから、そこでダイのDNAとか筋肉・骨強度の分析をさせてもらいたいわね。あそこの大学、最新設備がそろってるから、今までできてなかった分析ができるのよね~」

 

なんだ。

なあんだ、そんな事か。

 

「もちろん!その程度で良ければいつでも協力するよ!」

 

俺も自分の体のことは気になってたしな。

超常現象で生み出されたこの肉体、普通の人とどんな違いがあるのか知っておきたい。

トレーニングの参考にもなりそうだし。

 

俺がそう言うと、エリザベスさんは目を怪しく光らせながら

「ありがと!じゃ、設備の予約を押さえておくわ!」

と言って、手帳に何かを書いていた。

 

エリザベスさん、ほんとに研究好きだなぁ。

今日でバケーション好きなのも分かったが。

 

いや、ヨーロッパの人は皆これくらい休暇が好きなのかな?日本人感覚だと大人になってサマーバケーションを取るって感覚が無いんだよなあ。

このあたりは見習っていきたい。

 

 

「さて、じゃあ早速美容院に行くわよ!そのボサボサに伸びきった髪を切ってもらわなきゃね」

 

そう言いながら、俺の頭をビシッと指さしてきた。

言われてみれば、髪が伸びてきた気がする。

いつもは月一で切りに行ってたけど、プレイオフで忙しくて忘れてたな。

 

「今日は高級ブランドのガッチの撮影もあるんだから、いつもと違ってちゃんとスタイリングしないといけないわよ?・・・というか、いつもの雑な短髪はなんて注文してるのよ?」

 

雑な短髪て・・。

いやまあ、日本で言うスポーツ刈りなので、割とあってる表現かもしれないが。

 

「耳とか眉に髪がかからない様に短くしてください。って感じかな?」

 

「適当過ぎるでしょ!童貞みたいな注文ね」

 

「ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」

 

これでも前世は・・・あれ?

そういえば今世はまだ経験ないな。

まじかよ、俺童貞だったのか!?

 

・・・まあ、だから何だという感じではあるが。

元々ガールフレンドはアメリカで探す予定だったしな。

モテてないわけじゃないので、何も問題はないのだ。

 

「ガッチは最近フェミニンな雰囲気を売り出してるから、それに合わせましょう。細かい修正はガッチの専属スタイリストがやってくれるけど、雑な短髪じゃ修正しきれないでしょうからね。これ見せて、こんな感じでお願いしますって言ってくるのよ」

 

そう言って一枚の写真を渡してきた。

 

そこに写っていたのは、ハリウッドで王子様と呼ばれているあの俳優だ。

陽の光をまとったようなウェーブヘア。しっとりとしたツヤと柔らかいボリューム感。

サイドはほどよくタイトに収められ、額にふわりとかかる前髪。毛先には軽くレイヤーが入っていて、繊細で、かつ圧倒的な華がある。

もはや「天使のいたずらでそうなった」レベルの完璧な仕上がりだ。

 

「いや、これは無理じゃね?」

 

どうやって髪を切っているのか想像もできない。

美容師というより、芸術家の手が必要になりそうだ。

 

「大丈夫よ、プロに任せれば!バルマ島で一番の美容師さん予約しといたから。ちょっと強引なところもあるけど、腕は確かよ!その人に髪切られた人、みんな“新しい人生が始まった”って言ってるんだから!」

 

「宗教かなにかか?」

 

「人生観が変わったという人もいるわ」

 

「インド旅行に行った大学生か?」

 

「出された水を飲んで腹を壊したって言う人もいるから、水は飲まない方が良いわ」

 

「インド旅行に行った大学生じゃん」

 

やだよ。

そんな場所行くの。

 

「まあまあ。とにかくこの写真を見せて、あとはなすがままにされてきなさい!」

 

「なすがままって・・・というか、エリザベスさんは来てくれないのか?」

 

てっきり、一日サポートしてくれるもんだと思っていたが。

 

「髪を仕上げるのに結構時間がかかるみたいだから、その間私は近くのビーチで肌を焼きながら待ってるわ。見てこの水着!可愛くない!?昨日、3時間かけて選んだのよ!」

 

そう言って、ワンピースの下からちらりと花柄ビキニの端を見せてきた。

ほんと、バケーションに浮かれ切ってるなぁ。この人。

 

しかし、それを不快に思う気持ちはもはや無い。

俺も今日の仕事さえこなせば、ロングバケーションに入れるのだ。

ロンバケだロンバケ!

俺も浮かれ切ってやるぜ!

 

「良いね!俺も早く仕事終わらせてビーチ行くぜ!待ってろ美容院!!」

 

俺はそう宣言をして、エリザベスさんと共にロビーに向かって歩き始めた。

 

 

こうして、俺の最高のオフシーズンが開幕した。

 

 

 

 

 

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