アイリスを咲かせて   作:赤辻康太郎

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機動戦士ガンダムSEEDナタル生存if第二話です。今回はオーブ解放戦の場面となります。一応冒頭に前回のあらすじを書いています。
また今回からノイナタ要素が出てきます。


理念の翼

C.E.71、地球連合、プラント間の戦争は日に日にその苛烈さを増し、両軍ともに官民問わず多大な犠牲を払っていた。

そんな中、プラント最高評議会議長、パトリック・ザラは「オペレーション・スピットブレイク」を強行し、パナマ襲撃に見せかけ連合軍本部アラスカJOSH-Aを強襲、一掃にかかる。しかしこの奇襲作戦は連合側にリークされていた。連合上層部はこれを逆手に取り、ザフト軍の一網打尽ならびに軍内部の不用分子の処分も兼ねマイクロ波発生装置「サイクロプス」を起動、基地の自爆とともにザフトに多大な損害を与えた。

大西洋連邦軍所属少佐、マリュー・ラミアスは戦艦アークエンジェル艦長としてアラスカ防衛戦に参戦。文字通りの防戦一方となるなか、連合軍の動向に違和感を覚えたムウ・ラ・フラガ少佐、ナタル・バジルール中尉の機転により戦闘海域からの離脱を決意。一度は撃墜寸前まで追い詰められるが、突如飛来したMSフリーダム、キラ・ヤマトの助力で窮地を脱した。サイクロプスの魔の手から逃れた一行は中立国であるオーブ連合首長国にその身を預けることになる。

 

「ノイマン少尉!」

アークエンジェル整備スタッフと打ち合わせをしていたアーノルド・ノイマンに声がかかる。声の方を向くと、駆け足で向かってくる女性士官の姿があった。

「バジルール中尉?」

声の主はナタルだった。彼女は呼吸を整えると、マリューからの呼び出しがあったことを告げる。

「艦長が? それも全員ですか?」

「ああ。詳細はその時艦長から聞かされる。お前たちも、キリの良いところで切り上げて集合するように」

ナタルはノイマンたちにそう通達すると、他のスタッフにも伝えるためまた走り出した。ノイマンは訳の分からぬまま、打ち合わせを切り上げ言われた場所に集合した。

「現在、オーブに向け地球連合軍艦隊が進行中です」

マリューの口からオーブの現状が告げられる。地球連合軍は再三の徴用要請に応じないオーブに業を煮やし、終に強行手段に出たと言う。要請に従わなければザフト支援国と見なすとのことだ。オーブも外交努力を重ねているが、アラスカ、パナマの現状を踏まえ、戦闘回避の可能性は極めて低い。

アークエンジェルは脱走艦であるため命じる者はなく、また艦長も最早その権限を持たない。

「これを機に、艦を降りる者は速やかに退艦し、オーブ政府の指示に従って避難してください」

マリューはこれまでついてきてくれたクルーに感謝を述べ、頭を下げた。ここで艦を降りても誰も非難しない。むしろどれだけの兵が残ってくれるのかと不安だったが、予想に反して半数以上が残ってくれた。

「結局、退艦は11名となりました」

「皆凄いじゃないの。よっぽどJOSH-Aのことが頭に来たのかね」

艦橋の窓に寄りかかって黄昏ていたマリューに、ナタルとムウが話しかける。

「二人は、何で戻って来たんですか?」

「俺? 俺はーー」

「私は、軍に納得ができなくなった。ただ、それだけです」

目を背けながら切り捨てる様に告げるナタル。彼女は軍門の名家の出自だ。幼い頃から厳しく躾られている。そんな彼女が軍に逆らうなど酷く抵抗感のあるものだったが、それ以上に軍の有り様に憤りを感じていた。彼女もアラスカでの光景が忘れられない一人だ。しかし同時にまだ大西洋連邦を捨てきれないナタルがいるということをマリューも察していた。彼女の言葉の刺も敢えてのものだとあうことも。

「そう。でも、ありがとう」

「いえ……」

ナタルに優しく微笑むマリュー。その痛々しいほどに柔らかい笑みに、ナタルはいたたまれなくなった。

「艦の整備状況を見てきます」

一言だけ添えると、ナタルは艦橋を後にした。あとに残ったムウが困ったように頭を掻く。

「まったく。真面目だねえ中尉は」

「……少佐は何故戻ってらしたんですか? JOSH-Aで」

改めて、マリューはムウに問う。彼もナタル同様、アラスカで異動が決まっていた。それを蹴ってまでムウはアークエンジェルに戻ってきた。戻るメリットなど何もないというのに。

マリューの問いに、ムウは深い溜め息を吐いた。まさかここに来てまで気づいてもらえないとは思ってもみなかった。

「……今更聞かれるとは、思わなかったぜ」

ムウは少し強引にマリューの唇を奪う。マリューは突然のことに驚きつつも、それを拒まなかった。

「わ、私はMA乗りは、嫌いです!」

「あ、俺今はMSのパイロット」

顔を赤めながら、マリューは少しの抵抗を見せたが、ムウには全く効いていなかった。結局、マリューはムウの想いを受け入れまた熱い口吻けを交わした。

「結局、君も残ったんだな」

「え?」

船底で艦のチェックをしていたノイマンにナタルが話しかけた。

「何ですか? 藪から棒に」

「いや、何だかんだ私たちは最初から最後まで一緒だなと思ってな」

アークエンジェルはヘリオポリスでの完成間近にザフトの襲撃を受け当時搭乗予定だった艦長を含め多くのクルーを失った。ノイマンやナタルはその数少ない生き残りだ。

「それを言ったら、中尉こそなぜ戻ってこられたんです?」

「なぜって……」

「ドミニオン、良い艦なんでしょうね」

アークエンジェル級2番艦ドミニオン。大西洋連邦軍の新型軍艦。アークエンジェルのデータを基に造られたそれに、ナタルは乗る予定だった。少佐として。

「そうだな。これと同型だからな。悪いわけがないだろうな」

「確かに」

二人で上を見上げると、赤と白に彩られた大天使の姿があった。ヘリオポリス襲撃から地球降下、アラスカ、そしてオーブ。今まで経験したことのない濃密な時間をこの艦と共に過ごした。最早身体の一部の様なものだ。

「良かったんですか? 向こうに乗らないで」

「言ったはずだ。屍の上に君臨する椅子なぞに、私は乗りたくない」

もしナタルがあのまま異動していたら、キラが間に合わなかったら、アークエンジェルは堕天の一途を辿っていただろう。それを考えると、ナタルは背筋が凍る思いだった。

「それに、向こうに君はいないからな」

「え?」

「今更、君以外が操舵する艦に乗る気は起きん、ということだ」

ナタルはノイマンの肩をポンと叩き「頼んだぞ」とその場を後にした。ノイマンはただその後ろ姿を唖然として見届けていた。

明後日、地球連合軍とオーブ軍との戦いの火蓋が切られた。連合軍はオノゴロ島沖に陣を敷き、オーブ軍もまた防衛線を引いた。M-1アストレイとダガー、艦隊と艦隊。各々が敵を討つべく激突する。アークエンジェルもこれに加わるべくフリーダム、ストライクを乗せ発進。戦場に躍り出た。

「キラ・ヤマト、フリーダム行きます!」

「ムウ・ラ・フラガ、ストライク出るぞ!」

キラとムウがMSに乗り発艦する。キラはアークエンジェルとともに戦闘海域を、ムウはオノゴロ防衛網を支援するため機体を走らせる。二機は瞬く間に敵MS部隊を無力化していった。

「ゴットフリート照準、ってー!」

「ヘルダート、ってー!」

艦橋にマリューとナタルの指示が飛ぶ。アークエンジェルも防衛戦線を維持するためその剣を振るう。一機でも多く、一隻でも多く。でないとオーブがアJOSH-Aの二の舞になる。

「敵MS……いや、MA接近!」

「え?」

ここに来て地球軍からMAが向かってきた。この局面でただのMAを投入するとは思えない。少なくとも、新型であるのは間違いない。

「地球軍の新型か?」

連合軍の新型MS、レイダー、フォビドゥン、カラミティは次々とオーブ軍を蹴散らしていく。新型三機の導入で戦況は一気に傾いた。フリーダムも応戦するが三機の無茶苦茶とも言える攻撃に苦戦を強いられた。

「早くそっから引けよ! アークエンジェル!」

「こちらザフト軍特務隊、アスラン・ザラだ」

だがアークエンジェルにも思わぬ援軍が来た。解放されたはずの捕虜、ディアッカ・エルスマンとキラの親友でもあるザフトのアスラン・ザラだ。二人は軍関係なくバスター、ジャスティスを繰り戦闘に介入した。

「アスラン……」

「あいつ、何で……」

突然の介入に、キラもアークエンジェルクルーも戸惑いを隠せない。しかし、ナタルは冷静だった。

「艦長っ!」

「取り舵20!左の艦隊を潰す!」

二機の横槍に、連合に隙ができた。ナタルはこの好機を逃すことなく連合軍に風穴を開ける。

「数だけいって!」

そう。新型三機を除けばほか量産型。数だけ見れば向こうが上だが、質や練度はこちらも劣らない。たが、その数が問題だった。

「撤退?」

徐々に戦況が押されるなか、突如三機が撤退を始めた。それに呼応するように旗艦から信号弾が打ち上がり部隊も撤退していく。戦闘は一時中断となった。

夕暮れの浜辺に、二機のMSが鎮座する。フリーダムとジャスティス。自由と正義の名を冠する機体は、互いに向かい合うようにその翼を畳む。

コクピットから両機のパイロット、キラとアスランが降りてきた。二人は砂浜に足を降ろすと、しばし見つめあい、歩み寄った。

「お前らー!」

マリューたちが見守る中、カガリが二人に駆け寄る。カガリは親友である二人が互いに敵同士なのを心良く思っていなかった。それが今、敵ではなく友として並んでいる。そのことが、自分事のように嬉しかった。二人の肩を抱き涙するカガリにつられてか幾人かの啜り泣きが聞こえる。

「……」

ナタルも涙こそしなかったが、二人の再会を心から祝福した。それと同時に痛感する。この戦闘が、この感情が、今までキラが背負っていたものなんだと。

 

アークエンジェルの食堂でクルーは各々の時間を過ごしていた。雑談に華を咲かせる者、端末で艦体のチェックを行う者、疲れた様子で椅子にぐったり座る者。皆様相は様々だが、戦いの直後だからか顔には疲労が滲んでいた。ナタルも集団から少し離れたところで椅子に座っていた。

「どうぞ」

「え?」

差し出された紙コップに顔を上げると、そこにはノイマンがいた。ノイマンはコップをナタルの前に置くと、自分もナタルの正面に座った。

「アイスコーヒーです。少しはスッキリすると思いますよ」

「ありがとう。少尉」

ナタルは渡されたコーヒーを一口すする。口に広がる苦味は、いつもなら思考をクリアにしてくれるが、今はなんだからそれすら重い。

「浮かない顔してますね」

「え? いや、そんなことは……」

心を見透かされたようだ。実際、ナタルの心境は暗い。ついこの間まで味方だった者たちと戦っているのだ。苦しくないわけがない。だが部下にそれを吐露するわけにもいかない。上官が狼狽えては艦の士気に関わる。だが分かっていてもつい顔に出てしまう。やりきれない思いに溜め息が出そうになる。

「何がしたいんですかね? 連合は」

「え?」

「アラスカで味方ごと自爆して、今度は味方にならないからってオーブを攻めて。滅茶苦茶ですよこんなの」

「そう、だな……」

感情的になるノイマン。それも無理もない。アラスカでサイクロプスに巻き込まれかけたのは、他でもない自分たちだ。そしてまた、連合の魔の手に脅かされている。

「……すいません。つい……」

「いや。気にするな。私も君と同じ思いだ」

ナタルもまた、連合の動向に思い悩んでいた。アークエンジェルの後継機ドミニオンができていたというこたとは、次世代型のGAT-Xシリーズができていてもおかしくない。おそらくあの三機がそれだろう、とナタルは見当をつけていた。だからと言って、アークエンジェルをあの様な形で処分するなど到底納得はできない。ただでさえ混迷を極めているというのに、身内もめなどやってる場合でないというのに。

「……いつになったら終わるんですかね? この戦争は」

「……」

ノイマンの問いは皆が抱いているもの。だがその答えを誰か知っているわけではない。そもそも、どうすれば戦争が終わるかが分からない。敵を斃せば終わるのか。相手を滅ぼせば終わるのか。その屍を越えたさきに未来はあるのか。考えれば考えるほど思考は底無し沼のように深みに嵌まっていく。

その思考の泥沼の中でふと横切った思惑を、ナタルは即座に振り払った。アークエンジェルもGAT-Xシリーズも連合軍ではトップシークレット。正規クルーナタルやノイマン、製造に関わっていたマリューらにしか知られていなかったはずだ。製造でさえかなり特殊なルートで大西洋連邦首脳陣がオーブに接触しモルゲンレーテ社のヘリオポリス秘密ドックで造らせたほどに。それがプラント側に漏れていた。だとしたら内通者がいることになる。ザフトの諜報部隊が潜入していた可能性もあるが、ナチュラル用にセッティングされていたOSですぐさまMSを操れたということは……。

悪い考えは洪水の様に溢れかえる。それは同時に一つの疑問に答えをもたらした。ザフトのアラスカ強襲作戦。あの様な大規模作戦が昨日今日で立てられるわけがない。ザフト軍もそれ相応に入念な準備をしていたに違いない。それを逆手に取った自爆作戦もまた直ぐに立案できるわけがない。あの規模のサイクロプスなど数日の内に用意するなど不可能だ。だとしら早い段階で情報があったに違いない。こちらも諜報部隊の成果かもしれないが、もしザフト側にも内通者がいるとしたら。

「……終わらせるんだ」

絞り出すようにナタルは言葉を紡ぐ。もしそうなら、この戦争を望む者が、両者が滅ぼし合うのを願う者がいる。

「終わらせなければならないんだ」

それが組織か個人かは分からない。たが、彼の者の思う通りにさせてなならない。

「中尉……」

ノイマンの声が少し遠くに聞こえる。無意識に強く結んだ掌が少し痛かった。

 

明朝。連合軍が攻撃を再開した。オーブは再三の会談を要請したが、連合はそれを聞き入れなかった。回答の代わりがこれだった。フリーダム、ジャスティス、ストライク、バスター、アークエンジェルもこれを退けるべく出撃する。

「フリーダム、ジャスティス、戦闘海域に出ました」

「ハウ二等兵。二人に繋いでくれ」

「え? は、はい」

ナタルがミリアリアにキラとアスランに通信を繋ぐよう言う。マリューも何事かと聞き耳を立てた。

「フリーダム、ジャスティス聞こえるか? ナタル・バジルールだ」

「バジルール中尉?」

「時間がないので手短に言う。今回の戦闘でも君たちには例の新型を相手をしてもらうことになるだろう」

連合の主戦力であるレイダー、フォビドゥン、カラミティの性能はストライクやバスターと同等以上となる。ならばそれよりも上回るフリーダムとジャスティスが担当するのは数の上では不利だが妥当と言える。

「だが無理に倒す必要はない」

「え?」

ナタルの言葉に、キラとアスランだけでなくアークエンジェル内にも驚きの声が上がる。マリューも心配そうにナタルを見る。

「おそらくアレらはGAT-Xシリーズの後継機だ。ならば必ず補給する時が来る。まずはそこまで耐えるんだ」

「ちょっと待ってくれ! そんな消極的な戦いでは」

確かにアスランの言う通り、戦いが長引くということはそれだけこちらも戦力を消耗するということだ。あまり得策とは言えない。そんなことはナタルも重々承知の上だ。

「分かっている。消極的な戦いは返って相手に付け入る隙をあたえることは」

「ならば何故?」

「この戦闘が、敵を倒すことが目的ではないからだ」

ナタルの言葉に、アスランはハッとした表情になる。誰も死なせたくない。戦わなければ守れないものがある。出撃前にそうキラとディアッカと話したばかりなのに、もう自分は滴を倒すことしか考えていなかった。

「このままオーブ軍の防衛線が崩されれば被害は市街地にも及ぶ可能性がある。まだ民間人の避難が完全に終了していない地域もある。まずはその時間をかせぐ」

敵の殲滅よりもまずは民間人の避難を優先する。それがナタルの指示だった。

「ただでさえ君たちは連合の注目の的なんだ。だから厄介なあの三機をできるだけ引き付けて欲しい」

昨日の戦闘で、連合軍もフリーダムとジャスティスを脅威に感じているはずだ。ならば前線で二人が暴れれば、相手もそれを倒そうと躍起になるはず。

しかしそれは、キラとアスランに囮になってくれと言っている様なものだ。ミリアリアとサイはナタルに少し非難めいた視線を送る。

「分かりました。やれるだけやってみます」

「キラ君?」

だがキラは、ナタルの指示をすぐに受け入れた。ナタルがこんなことをさせたくないのは分かっている。けれどもアレの相手は誰かがやらなければならないし、相手も自分たちを倒そうとしてるのも理解している。どの道やらねばならぬなら、ナタルの言う通り、少しでも多くの人を守るために戦いたい。幸か不幸か、フリーダムにはニュートロンジャマーキャンセラーが搭載されている。向こうとは違い、エネルギー切れの心配はないのだ。ならば使えるものは何でも使う。例えそれが自分の命でも。やらないよりは、ずっと良い。

「……分かった。俺もそっちの指示に従う」

「アスラン……」

キラの熱意にアスランも折れた。どうせキラは1度決めたら聞こうとしない。その性格と優しさは昔から変わらないのだ。ならば此方もそれに付き合うまでだ。

「たが倒せると判断したら倒す。それでも構わないだろう?」

「無論だ。敵戦力を削れることに越したことはない」

「了解」

ナタルは最後に「無理はするなよ」と伝え通信を切った。ふと視線を感じると、マリューがこちらをジッと見つめていた。ばつが悪そうに、ナタルは帽子を目深に被り直す。

「失礼しました。少々でしゃばりが過ぎました」

勝手に指示を出したことを詫びるナタルに、マリューはいいえ、と首を振る。

「バジルール中尉の言う通り、この戦いはオーブを守るための戦いです。皆それを念頭に戦闘に就くように」

マリューが全員に檄を飛ばす。マリューもまたナタルと同じ思いだった。まずはオーブに降り注ぐ火の粉を払う。この戦いは、そのためのものだ。

「ゴットフリート、ってー!」

「バリアント、ってー!」

アークエンジェルに続き、オーブ軍も奮闘するが、圧倒的な物量差は覆すことができない。次々と防衛線が突破されていく中、ついにオーブ政府は、オノゴロ島の放棄を決断した。

「オーブを離脱? 我々に脱出せよと仰るのですか?」

オーブ連合首長国代表ウズミ・ナラ・アスハはアークエンジェルにオーブ離脱を指示。娘であるカガリ・ユラ・アスハとオーブ軍残存戦力を戦艦クサナギに乗せ、アークエンジェルと共に宇宙へと上げた。そして自らはオーブ軍本部と共に焔の中へ果てた。

「このままでは世界は、認めぬ者同士が際限なく争うばかりのモノとなる」

迫り来る星空を眺めながらナタルはウズミの言葉を反芻する。最近まで自分もその世界を二分する片側に居たのだ。いや、今でも心のどこかでまだソコにいるのだろう。

「違う未来を知るものならば、今ここにある小さな()を抱いてソコへ向かえ」

それが過酷な道だとはマリューも分かっている。だがこのままではウズミの危惧する未来が訪れてしまう。

「小さくとも強い()は消えぬと、私たちも信じております」

自分に言い聞かせる様にウズミに答えたマリューの言葉を、ナタルもまた思い返す。

「私は抱けているのだろうか。その強い灯を」

誰に聞かせるでもなく呟いた言葉は、宇宙(ソラ) の虚空へと消えていった。

 

 

 

 

 




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