C.E.71、「血のバレンタイン」を端に発する地球、プラント間の戦争は日を追う毎にその激しさを増し、皆がどうなるとも知れぬ明日に怯える日々が続いていた。
そんな最中、再三の徴用要請を拒否し続けるオーブ連合首長国に痺れを切らせた地球連語軍はオーブへ進攻。先のパナマ戦で失われたマスドライバーとモルゲンレーテ社の技術を目的に攻撃をしかけた。
アラスカJOSH-Aでサイクロプスの難を逃れたアークエンジェルとフリーダムはオーブに与し、ジャスティス、バスターと共にこれに抗戦したが、連合軍の圧倒的物量と新型MSにより抵抗虚しく、オーブ代表ウズミ・ナラ・アスハは軍指令部と共にその身を焼いた。娘カガリ・ユラ・アスハとアークエンジェルに未来への灯を託して。
宇宙に上がったオーブ軍戦艦クサナギはドッキング作業を終え一回り大きい戦艦へと変貌した。アークエンジェル艦長マリュー・ラミアス少佐、副艦長ナタル・バジルール中尉、MSパイロットムウ・ラ・フラガ少佐はオーブ軍一等陸佐レドニル・キサカと今後の方針を練るべくクサナギに移動する。
「アークエンジェルに似ている?」
クサナギの艦橋を訪れた三人の第一印象はそれだった。艦橋設備だけではない。通路の内装などアークエンジェルと酷似する部分は多かった。
「アークエンジェル『に』似ているのではない。アークエンジェル『が』似ているのだ。親は同じモルゲンレーテだからな」
キサカは共にクサナギに乗艦したモルゲンレーテ社の主任設計技師エリカ・シモンズに近辺の宙域図を出すように指示。エリカのいることにムウは驚いたが、M1の宇宙運用に彼女の力が要ると聞き納得した。
「L4のコロニー群に?」
近辺のコロニー群のうちL5はプラント、L3はユーラシアのアルテミス要塞が近い。また当面の物資は問題ないが水の確保は直ぐに問題となる。廃棄され無人となったL4ならば水場としてまた潜伏先としても使えるというわけだ。
「L4にはまだ稼働しているコロニーも幾つかある」
同乗したジャスティスのパイロット、アスラン・ザラによれば、ザフト軍は過去に不審な一団がL4コロニー群を根城にしているとの情報を得て調査したのだと言う。その際無人ではあるがまだ設備が稼働しているコロニーがあることも確認していた。これで方針は決まった。
「しかし、本当にそれで良いのか? 君は?」
「え?」
「無論君だけではない。もう一人の彼もだ」
ムウはアスランに覚悟を問いた。今後の戦闘によっては、アークエンジェルもクサナギもザフトと戦うこともある。友軍だった者たちと戦う覚悟があるのか。ムウはそれが知りたかった。
「君は、パトリック・ザラの息子なんだろ?」
「誰の子だって関係ないじゃないか!」
ムウの物言いにカガリが抗議の声を上げる。だがザフト軍の正規の軍人であるアスランにとってそうはいかなかった。
「軍は何よりも規律、そして大義を重んじる。自軍の正義を信じていないと戦争なんてできはしない」
「ましてや彼の父親はそのトップなんだ。君が思っている以上に軍を抜けるってのは大変なんだ」
ナタルとムウの言葉に、カガリは押し黙ってしまう。言い返そうにも、二人の意見は正論そのもので返す言葉がない。
「悪いんだけどな。一緒に戦うんならアテにしたい」
此方の戦力に対し、相手は尚も戦争している連合軍とプラント。両方を相手取るには圧倒的に戦力が足りず猫の手も借りたいほどだ。そんな中で後ろ弾などもっての他なのだ。マリューは心配そうにムウとアスランを交互に見る。ナタルとムウは、真っ直ぐにアスランを見据えた。
「オーブで、いえ、プラントでも地球でも、見て聞いて……思ったことは沢山あります」
アスランは胸中を語る。自分の信じてきたものが間違っているのか正しいのか、何が分かっていて分からないのか、それすら彼自身分かっていないと。
「ただ、自分が願っている世界はあなた方と同じだと、今はそう感じています」
つまり、腹は括ったと言うことだ。アスランの言葉にマリューは安堵し、ナタルもホッとして息を吐く。勿論、ムウも満足している。
「俺たちがオーブから託されたモノは大きいぜ」
たった二隻では不可能かもしれない。だが、やるしかないのだ。このまま二つの種が滅ぼし合う状況を止めねば地球にもプラントぬも未来はない。
「プラントにも同じ考えを持った人たちがいる」
アスランはプラントにいる婚約者ラクス・クラインも自分たちと同じ想いだと告げる。そして自分の父親に反逆者として終われていることも。
アスランはその後、父親に真意を問うため、また説得するためジャスティスを残し単身プラントに戻った。しかし要塞ヤキン・ドゥーエにて父パトリック・ザラの元に連行されるも説得及ばず、彼はナチュラル殲滅の意を曲げずあろうことかアスランまでもを反逆者として拘束した。連行されかけたアスランはラクス・クラインの手引きにより彼女の乗る戦艦エターナルに救出され、エターナルはアークエンジェルの待つL4コロニーメンデルへと入港した。
「はじめまして、と言うのも変かな? アンドリュー・バルトフェルドだ」
エターナルを指揮していたのは、かつてアークエンジェルと対峙した「砂漠の虎」バルトフェルドだった。彼はストライクに討たれたラゴゥの爆発から奇跡的に生還していた。当然、五体満足ではなかったが。エターナルはそのままアークエンジェル、クナサギと共にメンデルで補給と整備を行った。プラント脱出時に少々無茶をしたため最終調整に時間がかかった。
「っ!?」
その時、メンデルの外装の一部が引き裂かれた。外から攻撃を受けたのだ。アークエンジェルは攻撃してきた相手を確認、撃退するためメンデルの外に出た。
「熱源確認。この大きさは……戦艦クラスです! 距離700!」
光学映像が出るまでは距離があるが、熱探知レーダーから大型の戦艦だと分かった。だが識別コードは不明でザフトか連合かも分からない。
『アークエンジェル、聞こえるかね? こちらは地球連合軍大佐ウィリアム・サザーランドだ』
「サザーランド大佐!?」
通信から聞こえてきた声は、アラスカJOSH-Aの最高指揮官、サイクロプス起動の鍵を持つサザーランド大佐だった。
「光学映像でます」
ミリアリアが出した映像に映るのは、良く見知った艦影。色こそ黒いが、その姿はアークエンジェルと瓜二つだった。
「あれが、ドミニオン」
アラスカでの異動でナタルが搭乗予定だったアークエンジェル級二番艦ドミニオン。それが今目の前にいる。おそらく先の攻撃も彼の艦から。撃ったのは威力からして陽電子砲ローエングリーンだろう。警告もなしに砲撃をしかけて、何を話そうというのか。
「久しぶりだね。マリュー・ラミアス少佐」
「サザーランド大佐……」
「驚いたよ。まさか君たちが生きているとはね」
「はい。私たちも、生きてまた大佐にお会いできるとは夢にも思いませんでした」
サザーランドの皮肉にマリューも皮肉で返す。未だ余裕の表情を崩さぬことから、サザーランドは自らの優位性を確信しているようだ。
「貴艦は反逆艦である。が、諸々の事情を考慮し、まだ諸君らにザフト、コーディネーターと戦う意思あらば、アラスカ、オーブでの件は不問とし、このドミニオンの指揮の下、復隊を認めよう」
「え?」
アラスカで敵前逃亡、オーブでの実質的反逆行為。本来なら銃殺刑もののそれを、無罪方放免同然の扱いとするのだ。必ずなにか裏があるはずである。
「ただし条件としてそちらが所有する全MSの譲渡、オーブ残存戦力の排除、そしてコーディネーターキラ・ヤマトの拘束を命じる」
当然のようにサザーランドは要求を突きつけた。彼らの狙いは圧倒的な性能を持つフリーダム。アークエンジェルはそのおまけというわけだ。キラの拘束も、アークエンジェルクルーを人質に従わせるためだろう。
勝ち誇ったような笑みを浮かべるサザーランド。マリューたちが自分の要求を断るはずがないと確信しているようだ。
「寛大なお心遣い。身に余る光栄です」
「ではーー」
「ですが、お断りさせて頂きます」
「なっ!?」
自分の要求が断られるなど一歳疑っていなかったサザーランドの開いた口が塞がらない。頭を垂れるどころか敵意をむき出しに睨み付けるマリューに、サザーランドは目を見開く。
「な、何を言っとるんだね君は? 自分がどういった立場なのか分かっているのか?」
「自分たちの置かれている状況は重々承知しております」
「ならば何故?」
「我々はこの戦争の意義に、そして軍そのものに疑念を抱いております」
「なんだと?」
JOSH-A、オーブを経て見てきて、マリューたちは自分たちが真に守るべきもの、本当に戦わなければならない相手を見いだし始めていた。そのためにも軍には戻れない。戻るわけにはいかない。
「君はどうなんだね? ナタル・バジルール中尉」
マリューでは話にならないと判断し、サザーランドはナタルに話題を向けた。彼女なら人柄も家柄としても上官に背くことはないと思っていた。もし従うなら、一度白紙になった昇級をしても良いと考えていた。
「私も、ラミアス艦長と同じ意見です」
「な、何!?」
だがサザーランドの思惑はまたしても外れることとなる。ナタルはマリューよりも険しい、嫌悪ともとれる瞳でサザーランドを睨む。
「き、君は 自分が何を言っとるのか分かっておるのか?」
「分かっております。故に、私も大佐のご提案をお断り申し上げると申しております」
「バジルール中尉! 君は軍人の家系の出だろう! 上官の命令に逆らうなどーー」
「貴方はもう上官ではない!」
ハッキリと口に出して否定するナタルに、サザーランドは狼狽えた。
「確かに軍において規律は最も重要視すべきことの一つです」
「ならばーー」
「しかし、戦争を行う上で、その大義が意味を成さなければ、最早そこで戦う意味はありません」
「よって我々に復隊の意はありません」
ナタルの言葉をマリューが引き継ぐ。これ以上の懐柔は不可能と悟ったサザーランドの顔が歪んだ。
「あっはははは!」
そこに場違いなほど愉快な笑い声が響く。声色からして若い男性のものだ。が、状況からして軍の誰かではないだろう。
「どうするものかと聞いていたが、呆れますねえ。大佐」
「アズラエル理事」
「っ!」
「アズラエルって……」
「ブルーコスモスの盟主だ」
「ええ」
アークエンジェル艦橋に俄に緊張が走る。ムルタ・アズラエル。それはコーディネーター排斥主義を掲げるテロ組織ブルーコスモス盟主の名だ。オーブでウズミに突きつけられた声明文にもアズラエルの署名があった。
「それだけではありません」
「え?」
「アズラエルは、国防産業連合理事でもあります」
つまり大西洋連邦に強い発言力を持つと言うこと。やはり連合軍はブルーコスモスを黙認していたと言うことだ。そうとなれば、これまでの異様なまでのコーディネーター撲滅作戦も頷ける。
「言って分かればこの世に争いはなくなります。分からないから敵になるんでしょう? そして敵は討たねば」
朗々と語るアズラエル。彼の言っていることは最もらしく聞こえるが、それは敵とは相容れぬという対話も譲歩もない拒絶ともいえるものだ。
「不沈艦アークエンジェル。今日こそ沈めて差し上げる」
アズラエルはレイダー、フォビドゥン、カラミティに発進を指示。ミリアリアもレーダーで敵機の発進を確認した。彼に交渉する気など始めからなかったのだ。
「キラ君! ムウ!」
「分かりました。キラ・ヤマト、フリーダム行きます!」
「行くぜ!」
三機を迎え討つためフリーダム、ストライクに加えジャスティス、バスターも発進した。
「総員、第一戦闘配備!」
「イーゲルシュテイン、バリアント起動。ミサイル発射管全門スレッジハンマー装填」
「アークエンジェル、発進します!」
アークエンジェルも戦闘準備に入る。相手は三機とは言え性能の高さはオーブで思い知っている。後ろにダガーがいないとは限らない。
「少尉、デブリに気をつけるように。特にテザー用のメタポリマーストリングは危険だ。艦に絡み付いたら動けなくなるやもしるん」
「分かっています」
加えてこの宙域は小惑星も多く、小惑星を繋ぎ止めるためのワイヤーも張り巡らされている。目視しにくく船体の大きい戦艦の移動の妨げとなる。
「出航後、最大船速。アークエンジェルの左舷につく」
アークエンジェルを支援するためクナサギも発艦した。
「敵の狙いはおそらくフリーダムでしょう」
「それにジャスティス。だからサザーランド大佐も降伏の条件にMSの譲渡を入れたのね」
フリーダムを鹵獲しその性能を解析できれば、連合軍の戦力は格段に上がる。もし量産でもすれば、戦況は一気にナチュラル側に傾くだろう。またアズラエル自身、フリーダムとジャスティスの兵器としての性能はに興味があった。つまり相手はそのどちらかあるいは両方を可能な限り無傷で捕えたいはずだ。
「ならば、MSよりも敵艦本体を叩くのがよろしいかと」
「できるの?」
「私に少し考えがあります」
やらせて欲しい、とナタルは目線でマリューに志願した。マリューにそれを拒む理由はない。
「お願い」
「了解。ミサイル発射管、一番から六番、コリントスの終端誘導を自立制御パターンBにセットして装填」
コリントス装填を指示後ミサイルの着弾地点の指示を出す。だがそのポイントは敵艦から大分離れた所だった。ミリアリアは怪訝な顔をするが、ナタルの指示には意図があると判断しそのまま実行した。
「少尉、ミサイル発射後艦を転進。ポイントはーー」
艦の進行方向も指定する。ノイマンがレーダーでポイントを確認すると、そこは小惑星の密集地帯だった。
「少し無茶な渡航になりますね」
「多少の無茶は承知だ。やれるな?」
口外に「まさか艦長の無理が通せて自分のはできないとは言わないよな?」と含ませてノイマンに問いかける。その意図が分かっているノイマンも苦笑が零れる。艦長も副艦長も、自分の腕を過大評価し過ぎだ。
「勿論です」
だができないとは言わない。地球の重力下ならまだしもここは無重力の宇宙。少々無理な姿勢でも問題なく進行できる。だいたい無茶を通したのは向こうなのだ。文句は言わせない。
アークエンジェルは適度にミサイルやビーム砲で弾幕を張りつつ船体を星影に隠す。視界も悪いので相手からの視認もされていないはずだ。
「アークエンジェル見失いました!」
「何をやっている馬鹿者!」
サザーランドの怒声が鳴る。デブリも多くテザーに注意しながらの操舵は不慣れな新兵には辛い。頼みのレーダーも、アークエンジェルがNジャマーを起動したのか感度が悪くなっている。これでは見つけようにも見つけられない。
「ダガーを出せ! 艦の周りを警戒させろ!」
サザーランドの指示で数機のダガーが緊急発進する。艦の警護をしながらの索敵は骨が折れる。
「アークエンジェル現れました!」
「何っ!?」
視界外からの奇襲。アークエンジェルはデブリの影に隠れドミニオンが射程内に入るのを待ち構えていた。だがナタルの策の本領はここからだ。
「ミサイル来ます! 数12!」
「なっ!?」
先んじて放っておいたミサイルに着火。あらぬ方向から飛来してくるそれを迎撃しようとドミニオンもイーゲルシュテインを起動するが間に合わず、いくつかが炸裂する。
「ゴットフリード、ってー!」
その隙を逃さず追撃ののゴットフリードがドミニオンの右舷に着弾。相手のゴットフリードを破壊した。
「ゴットフリード一番被弾!」
「くそっ! 何をやっている!?」
苛立ったサザーランドが怒号を上げる。アズラエルの顔からも徐々に余裕がなくなっていく。
「カラミティを戻させます。ダガーでは、もはやどうにもなりません」
「……仕方ありませんね」
主砲を失っては攻撃も迎撃も儘ならない。かといってダガーのみでは心許ない。砲撃力の高いカラミティを加えないと失った戦力差は埋まらない。相手はアークエンジェルだけでなくストライクとバスターもいるのだ。
「サブナック少尉、至急帰艦しドミニオンの護衛にあたれ」
「ああ? 何で俺が?」
「命令だ」
「……くそっ」
カラミティのパイロット、オルガ・サブナックは渋々命令通りにドミニオンに戻る。もっと遊びたかったが、命令に背いてまたアレをやられたらたまったのもではない。
「行かせるか!」
そこにジャスティスが横槍を入れる。アークエンジェルとクナサギにはドミニオンに集中させたい。数では不利とは言え性能と経験はこちらが上なのだ。連繋が取れているならいざ知らず、ほぼ烏合である三機に遅れは取らない。
「いい加減ウザいんだよ!」
引きながらビーム砲を放つカラミティ。ジャスティスはそのビームを躱し、レイダーとフリーダムを遮る形になった。
「オルガ、テメェ!」
邪魔されたレイダー、クロト・プエルが激怒する。何度もオルガに邪魔されてそろそろ堪忍袋が弾けそうだ。
「はああっ!」
そこにフォビドゥンがビームの曲者を入れる。フリーダムとジャスティスを狙ったものだが、結果的にレイダーも掠めた。
「シャニ、この野郎!」
「邪魔なんだよ、お前」
シャニ・アンドラスが悪びれもせず言い放つ。オーブの時から感じていたが、この三機はまるでチームワークがなっていない。連繋以前に、味方も平気で攻撃する姿勢がキラたちには信じられなかった。
しかしMSの性能の高さと、なまじパイロットの技量があるのがたちが悪かった。通常なら自滅している状況でも、彼らは戦い抜いているのだから。
「カラミティ、戻れ!」
「早く行けよ!」
「とっとと帰りなよ」
ドミニオンからの催促にクロトとシャニが煽る。オルガは舌打ちすると、世話しなくドミニオンに戻る。
「来たぜおっさん」
「おっさんじゃない!」
待ち構えていたのはアークエンジェルだけでない。ストライクとバスターも既に迎撃の体勢に入っていた。クサナギからもM1が出撃し臨戦体勢を取っている。
「ああ、もう! ウザいんだよ! どいつもこいつも!」
数度砲火を交えるうち、カラミティのエネルギーが危険水準まで下がった。フリーダムとジャスティスに高エネルギー砲を打ちすぎたのとストライクとバスターが予想以上に粘ったからだ。カラミティは帰艦し補給せざるを得なくなった。それを機にアークエンジェルとドミニオンの戦闘も一時中断となり両者ともに束の間の休息となった。
「っ! この感じ……!」
不意にラウ・ル・クルーゼの気配を感じたムウがメンデル内部に突入。ディアッカもそれに追従し、メンデルでイザークと再会することとなった。
様子を見に行ったキラが、負傷したムウと、己の出生の秘密を持ち帰ったのはそれからしばらく後のことである。
「艦長!」
ムウとキラがメンデルでクルーゼと交戦中にドミニオンが再び進攻を開始。アークエンジェル、クサナギ、エターナルも応戦する。その時、メンデルの影に潜んでいたザフト軍ナスカ級戦艦ベサリウスの艦隊に動きがあった。観戦状態から一転して参戦してきたのだ。これで戦況は三つ巴の状態となった。
「地球連合軍艦アークエンジェル級に告ぐ。戦闘開始前に本艦で勾留中の捕虜を返還したい」
そう伝達があると、ベサリウスからポッドが射出された。一方的な伝達にドミニオンも半信半疑だ。
「アークエンジェル! アークエンジェル! アタシここ!」
ポッドから国際救難チャンネルの通信が届く。その声はまだ幼さの残る少女のものだ。キラはその声を知っている。彼女を知っている。
「何なんです? これは?」
「アタシ! フレイ・アルスター!」
「フレイ……」
フレイ・アルスター。ヘリオポリスでキラやサイらとアークエンジェルに乗りアラスカで別れたはずの彼女。何故彼女がこんな所にいるのか、ザフトの捕虜になっていたのかサイは甚だ疑問だった。
「貰った!」
フレイの声に気を取られていたフリーダムは無防備な姿を曝しレイダーの攻撃を背面からまともに受けてしまった。PS装甲で致命傷にはならなかったものの、アスランの呼び掛けにも応じねぬほどキラは動揺し茫然としていた。
「カラミティ、ポッドを回収しろ!」
「ああ?」
「誰なんです? 彼女?」
サザーランドが慌ててオルガに指図する。オルガもアズラエルもフレイを知らないから困惑している。
「彼女は、亡くなったジョージ・アルスター外務次官の娘ですよ」
そしてサザーランドが戦争のプロパガンダに利用しようとした人物でもある。結果的にそれは失敗に終わったが、生きているならまた別の使い方もある。手中に納めておいて損はない。
「いやしかし、だからって罠じゃあないってことじゃないでしょう?」
「しかし……」
「か、『鍵』を持ってるわ!」
鍵という単語に皆が反応を示す。その中でほくそ笑む一人を除いて。
「戦争を終わらせる鍵! だからお願い!」
「へえ、面白いことを言いますね彼女。戦争を終わらせる鍵、ねえ」
アズラエルの興味はフレイの身許よりも彼女の持つ鍵に注がれた。戦争を終わらせる。誰もが望みしかしその手段を知り得ないものを彼女は持っていると言う。興味が湧かない方が無理だというものだ。
「フレイ……!」
カラミティに一歩遅れ、キラもフレイの入ったポッドを目指すが、レイダーとフォビドゥンの攻撃を受けメインカメラを失った。そして、フレイはオルガに救出された。
「下がれキラ! そんな状態で一人で敵艦に突っ込む気か?」
ジャスティスが被弾したフリーダムを抱え戦闘を離脱する。これ以上の続行は誰がどう見ても無理だ。
「僕が傷つけた……僕が守ってあげなくちゃならない人なんだ!」
「キラ……」
キラの慟哭が響くが、それも虚しくポッドを回収したカラミティはそのままドミニオンに収容された。ドミニオンは信号弾を打ち一時撤退、エターナルとクサナギはベサリウスを突破しアークエンジェルもその穴を抜け戦闘宙域から離脱した。
ドミニオン艦橋にフレイが招かれる。出迎えたのはしかめっ面をしたサザーランドと妙なテンションのアズラエルだ。
「へえ、君があ。で、鍵って何なの? 本当に持ってるの?」
アズラエルに聞かれてフレイはおずおずとクルーゼに渡されたメモリーディスクを渡す。この艦はアークエンジェルではないが見た目が似ているから地球軍の戦艦に違いない。ならば彼の言う通り、これで戦争は終わるはずだ。
「ふうん。何だか本当っぽいじゃない?」
早々にフレイに興味を失ったアズラエルは早速ディスクの解析に移る。
「ふ、ふふふ……ははははははっ!」
そこに写し出されたデータを推考していくうちに、見る見る彼の顔が狂喜に変わっていく。
「やったー!!」
ご感想などございましたらよろしくお願いいたします。