勇者と共に魔王を討ち滅ぼした剣士が追放されるよくある話   作:社畜だったきなこ餅

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二日続けての朝更新に成功。
流石に明日は出来るか自信ない。


嫌な生態共通点

 

 

なんやかんやの末に新たな勇者パーティの一員となった赤毛の男ことラース。

彼を含んだ3人がパーティの相性確認として選んだ仕事、それは……。

 

 

「はえー、すげぇ施設だな。こんなもん建造するとか大したもんだ」

 

「フォレスティアの町は林業が盛んであると同時に幾つもの河川が繋がってますからね、治水するまでは色々大変だったそうですよ」

 

 

轟轟と音を立てて膨大な水を吐き出す堤防、フォレスティアに流れ込む一番大きな河川の上流にあるダムにいた。

これ作るのにどれぐらい人手が必要になったのやら、などと考えつつラースはリリフィアへ確認する。

 

 

「そんでもって、俺達の仕事は定期的にダムに略奪に来る魔物の撃退と」

 

「はい、このダムは近隣にある伐採所で働く人達の拠点でもありますから物資が豊富なので、それを狙って魔物がやってくるみたいです」

 

「みたいだな、同業者と思しき連中がひっきりなしに出入りしてらぁ」

 

 

ダムの入口付近にラース達と同じく武装した冒険者の一団が幾つもあり、それぞれが袋に詰まった何かを出張してきてるであろうギルド職員に手渡している。

一方で傷塗れの一団が負傷してぐったりした仲間を担いでいたりもするので、中々の激戦地のようだとラースは感じ取る。

 

 

「そんでもって出てくる魔物はゴブリンにオークだったか、あの小物達そんな大層な名前ついてたんだな……ファム、本当に大丈夫か?」

 

「ゴブリンは一匹一匹は弱いけど狡猾ですしオークの一撃は危険だから侮ると危ないですよ。ファムちゃん大丈夫?」

 

「だ、大丈夫だ……そちらのペースに併せると言ったのは私だ」

 

 

昨日はパーティ結成後町で一泊し、早朝に出発して今はお昼前。

数時間程度を歩き通しでラース達は山の中にあるダムまで来たのだが、魔術師のファムは大きな杖に縋り付くようにしながら何とかついてきていた。

 

 

「エルフは貧弱とはいえだらしなさすぎるぞ、もっと体力つけろ体力」

 

「ぜぇ、ぜぇ……私はハーフだと言っただろうが……じゃなくて言ったでしょうに」

 

「もうお前さんの本性何となく判ってるから無理に取り繕う必要ねーぞ、それより息を整えるのに集中しろ」

 

 

かつて共に旅をしたチンチクリンなエルフの魔術師も体力がなかったなぁ、などと思いつつラースはエルフ……じゃなくてハーフエルフの魔術師、ファムを揶う。

揶揄われたファムは面白くなさそうに息を整えながら、エルフではなくハーフエルフだとラースの言葉に訂正を入れて漸く荒い息を落ち着かせた。

 

 

「しかしハーフか、言われてみれば耳の先が若干丸い」

 

「一部の口さがない純血エルフには混ざり物とか言われてますがね」

 

「酷い話ですよね!」

 

 

ラースが言う本性云々は敢えて無視しつつ、ラースの言葉にファムは肩を竦めて自虐交じりに自身の出自については話せば彼女の友人である主であるリリフィアはぷんすかと言わんばかりに腰に手を当てて怒りを露わにする。

 

 

「私は気にしてませんよ、リリフィアみたいに関係なく受け入れてくれる人や師匠みたいなエルフも居ましたからね……こら暑苦しいからやめろ」

 

「えー?」

 

 

手櫛で肩口に切りそろえた髪を整えながらクールに言い放つファム、そんなファムを小動物を可愛がるかのように背後から抱きしめるリリフィアにファムは面倒そうな表情を浮かべながらもぞもぞと抵抗する。

一方でほどよく抱きしめやすいサイズのファムの感触が地味に気に入っているリリフィアは、ファムのそんな抗議に不満そうにしながら怒られる前に彼女を解放した。

 

 

「あー、話進めていいか?」

 

「失礼、今回の依頼を改めて確認しましょう。今回の依頼は一日このダムに泊まり込み周辺の魔物を間引きする事にあります」

 

「深追いの危険性とどれぐらい巣穴があるかは未知数だから、巣穴まで追い詰めて根切にする必要はないって話だったな」

 

「はい、それに深い森に覆われた山中は敵の領域です。手練れですらミスを重ねるとあっという間に討ち取られる危険地帯です」

 

 

ちょうどあんな感じに、とファムが視線で促した先にいるのは傷塗れの一団が意識を失った仲間に必死に呼びかけている様子。

どうやらのっぴきならない事態のようですとファムは呟き、少し失礼と言うと一団へ近寄っていく。

 

そして軽く状況、症状を聞き取りとファムは大きな杖を軽く振って魔法を発動させて意識を失った人物に治療魔法をかける。

放たれた淡い光が意識を失った人物を包み込むと、包帯をしてもなお滲んでいた傷がゆっくりと塞がり……光が止まるとその人物は弱弱しいながらも呼吸を再開していた。

 

 

「あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

「冒険者は助け合いですからね、お礼は情報で結構ですよ」

 

 

仲間をあと一歩で喪うところだった冒険者は涙を浮かべてファムに何度も何度もお礼をし、ファムは大した事していませんよと告げるとサービスですと言わんばかりにその一団の傷も魔法で治療した。

そのような光景を遠目に眺めていたラースは、隣のリリフィアに問いかける。

 

 

「あの娘さんが使った治療の呪文も専門店とやらで買ったヤツか?」

 

「いえ、あの治療呪文はファムちゃんがお師匠さんに教えてもらった古代魔術の一種だそうです。術式から紐解いて状況に応じて効果を使い分けられる方が便利だとかで」

 

「ほーん、なるほどなぁ……」

 

「攻撃魔法とか便利魔法とかをひたすらあの杖に詰め込んでるみたいですよ、前に聞いたけど覚えられないぐらい色々入ってるそうです」

 

 

治療と情報収集を同時に行うファムの様子に、あの治療魔法何処か見覚えある気がするんだよなぁなんて思いつつリリフィアの言葉になるほどと相槌を打つラース。

 

 

「そう言えばお嬢ちゃんは腕輪で娘さんは杖と、魔法を入れる道具はバラバラだが何か違いあるのか?」

 

「そうですねぇ、大きな媒体ほど込められる魔法の数や強い魔法を入れる事が出来ます。小さい道具でも沢山入れられる物もあると言えばありますが……」

 

「なるほど、お嬢ちゃんが言い淀むレベルで高価になるわけか」

 

 

ラースの言葉にそういう事です、と肯定するリリフィア。

ちなみにリリフィアが魔法を込めている腕輪も、一般流通している道具から見たら規格外の品質なのは言うまでもない。

 

 

「すみません、お待たせしました」

 

「いや大丈夫だ、それで目当ての情報は得られたか?」

 

「勿論ですとも、ともあれまずは冒険者用の宿舎を確保しましょう」

 

 

宿舎、そんなものまであるのかとラースが一人慄きつつも3人は主張しているギルド人員に受付を行い。

間仕切りのある部屋が宛がわれ、その中で作戦会議を始める。

 

 

「本当は二つ部屋を確保したかったのですが……ラースさん、貴方を信用していないわけではありませんが夜は間仕切りに警戒魔法をかけさせてもらいます」

 

「むしろ構わんというか、真っ当に警戒心ある事にホッとする」

 

「あの、私が警戒心皆無みたいに扱うのやめません?」

 

 

ベッドが二つある奥側と、一つベッドがある手前側の間に簡素な間仕切りがある部屋の中で3人はテーブルに備え付けられた椅子に座り言葉を交わす。

その中でリリフィアが異議を申し立てているが、その事を取り合う者はここにはいなかった。

 

 

「まず収集した情報をお伝えしますと、どうやら近隣にオークが首領となるゴブリンの巣穴が出来たそうです」

 

「ああ、そういえば上位種が無理やり指揮を執ってるところは見た事あるが……巣穴の親分に居座る事もあるのか」

 

「ええ、そしてその手の巣穴は厄介度合いが跳ね上がります。リリフィア、なぜかわかりますか?」

 

「え?」

 

 

生死に関わる重傷を負った一団から聞いた情報をファムは開示し、ラースは経験的にゴブリンは上位種の使い走りとなる事があるのを知っていたがそれでも知らなかった情報に興味深そうな表情を浮かべる。

そのラースの言葉にファムは頷き、ほへーと呑気な顔をしていたリリフィアへ唐突に話を向けた。

 

 

「ええと……ゴブリンはオークとかに抵抗できないから、どんな不利でも襲い掛かってくる。だったっけ?」

 

「その通りです、オークにしてみたらゴブリンなんて小間使いで捨て駒でしかない。ゴブリンがどれだけ死のうと最終的に自分が勝つならどんな無茶な命令でも下します」

 

「うん、だから10匹いたら2匹倒されるだけで逃げ出すゴブリンが全滅するまで襲い掛かってくるんだよね」

 

 

ファムとリリフィアの言葉に、ああそういえばそんな感じの事あったなぁとしみじみとラースは頷く。

オークではなく上位の異形に率いられたゴブリンの津波とも言うべき集団を相手にし、三日三晩ひたすら斬り続けた事はあんまり思い出したくない記憶である。

 

 

「更にオークとゴブリンには危険な特性があります、それは……」

 

「いや大丈夫だ、言わなくてもわかる。流石の俺も娘さんみたいな小さい子にそこまで言わせる気はないぞ」

 

「……配慮、感謝致します」

 

 

言いにくそうにしながらもファムが言おうとした内容を、ラースは手で制しながら告げる。

そう言うのは俺みたいな男がいないところで、お前さんからお嬢ちゃんに言ってやれとラースが言葉を続けるとファムはホっとした様子で小さく頭を下げた。

 

リリフィアやファムのような可憐な少女は特にゴブリンやオークに狙われる。

その理由は簡単で、それらの異形……魔物には雌が存在しない。

だが彼らには生殖器が存在し、そしてそれらを使って数を増やす……それが意味する事とは簡単な話である。

オークやゴブリン、そして一部の魔物は他種族の雌の胎を使ってその数を増やすのだ。

 

名前や種族名を一々ちゃんと認識してなかったラースであるが、それらの連中のせいで滅んだ村や町を幾つも見たことがあるラースは忌々しそうに溜息を吐く。

 

 

「所が変わってもアイツらマジで変わらんし、見つけ次第駆逐せにゃならんところまで一緒にならんでもいいだろうが……」

 

 

ラースの小さな呟き、その言葉にファムはラースも苦労をしてきたのだななどと思いつつ同意を示すかのように頷くのであった。

余談であるも、リリフィアはその日の内にラースが居ない間にファムからゴブリンやオークの生態について講義を受け、怒りと羞恥が入り混じった真っ赤な顔になった事は言うまでもない。

 




オークやゴブリンとかって違う作品世界観でも往々にして、他種族の雌使いますよね。
駆逐しやすい環境ならまだしも、深い山中や森に住処構えられると対応に超難儀しそう。
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