勇者と共に魔王を討ち滅ぼした剣士が追放されるよくある話   作:社畜だったきなこ餅

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本日二回目の更新がこちらになります。

そして、突っ込み役の登場により作者の想定以上に勇者ちゃんのポンコツ化が加速しました。
おかしい、もうちょっと凛とした女勇者にするはずだったのに……。


パーティ結成後初戦闘

 

フォレスティアの町にとって様々な意味で重要な施設である大規模ダム。

その場所はダムとしての機能以外に、周辺を探査する冒険者や伐採を行う伐採所にとっての前線基地でもある。

故に人と物が集まり、それを狙う悪党や魔物が現れるのは自然の摂理とも言えた。

 

 

「やぁっ!」

 

「ほいっと」

 

 

そしてそのダムの近辺に広がる森の中、ダムから比較的近い地点でゴブリンの群れと戦闘を繰り広げる一団が居た。

その一団は三名の人員で構成されており、光り輝く直剣を握りしめた可憐であるが相応に育った体つきの少女が襲い掛かるゴブリンを返す刃で両断し。

鎧と言えるものをほとんど身に着けてない赤毛の男は、まるで薪を枝葉を切り落とすかのように無造作に見える太刀筋で瞬く間に2匹のゴブリンの頸を斬り飛ばしていた。

 

一方で二人から少し離れた後衛に位置している小柄かつ平坦な体付きの、先端に丸みを帯びた長い耳を持つハーフエルフの少女は油断なく戦況を見詰めながら杖を握りしめ。

遠方から光り輝く直剣を持った少女を狙い放たれた複数の矢に対して即応すると、矢弾を反らす魔法の障壁の魔法を少女へかけることで飛来する矢から少女を守った。

 

 

「ありがとうファムちゃん!」

 

「伏兵……いや増援か、それに気配的に左右からも挟み込んできているな。どうする?」

 

「そうですね……退きたいところですが……」

 

「無理だろうな、オークは見えないがこれだけ始末しても退かない辺り。オークはゴブリン共に死んでも女を連れてくるように強く命令してるんだろうよ」

 

 

自身に向かって飛んできた粗末な造りの矢を適当に剣で切り払いながら、赤毛の男は視線をハーフエルフの少女へ向けて進退について確認。

そして返ってきた言葉に感じる気配と状況から考えられる事態を伝えつつ、木の上から飛び掛かってきたゴブリンを唐竹割にするとゴブリンが手に持っていた棍棒を空中で拾い。

遠方で矢を放ってきている鬱陶しいゴブリンめがけて投擲、鋭い風切り音と共に投げつけられた棍棒は寸分狂う事なくゴブリンの頭部に命中し汚い血飛沫を撒き散らさせた。

 

 

「嬢ちゃん大丈夫か? さっきからビュンビュンとスキルとやら使って動き回ってるけど、息切れするんじゃねえぞ!」

 

「このぐらい大丈夫です! けどラースさん、オークの命令ってそんな強いんですか?!」

 

「命令が強いというよりゴブリンが臆病なんだよ、命令違反や未達は確実に殺されるからな。あいつらも死に物狂いって事だ」

 

 

近くの木の上に陣取るゴブリンに対し、ゴブリンが居座る木を強く蹴りつけて虫のように叩き落しながらラースと呼ばれた男は面倒臭そうに少女へ答える。

恐らくはゴブリン自身もオークのお零れを狙ってるんだろうともラースは考えるも、そこまで言う必要はないなと内心で結論を出して落ちてきたゴブリンを空中でキャッチすると。

 

もがくゴブリンを先ほどの棍棒投擲のように遠方に居座るゴブリンめがけて投擲、棍棒以上の質量を持つ同族を投げつけられた哀れなゴブリンは投擲物と化したゴブリンもろとも衝撃で砕け散った。

 

 

「この手に限るな、あいつら数だけは多いから矢とか足りなくなるんだよ」

 

「そう言うことは矢を使ってから言うべきでは……」

 

「ラースさん、剣士って言うよりむしろ蛮族……」

 

 

色んな意味で無惨な事になった同族に慌てふためくゴブリン達を眺め、清々したと言わんばかりに上機嫌に嘯くラース。

そんな男の様子に……投石でゴブリンを仕留める事は見聞きしたことあるが、ゴブリンそのものを投擲物として扱う人間は初見な少女二人は何かおかしいと言わんばかりの表情と声音で呟いた。

 

 

「ですが、有難いです。良い具合にゴブリン達の動きが止まりました」

 

 

3人というこちらの人数に侮っていたゴブリン達が狼狽え慌てふためいた事で生じた隙。

その隙を逃すことなく、ハーフエルフの魔術師少女ファムは杖を構え……杖に封入している魔法の一つである攻撃魔法を発動させる。

 

発動された魔法はファムが持つ杖の先端から人の頭ほどの大きさを持つ眩い光球として空に向かって射出され、ほどなくして光球が大きく破裂し無数の光の矢として再生成される。

そして光球から分裂するように作り出された光の矢は、遠方に散らばり陣取っていたゴブリン達を一匹残らず刺し貫き絶命させた。

 

 

「おっかねぇ魔法だなぁオイ、けど最初から使わなかったのは……近くを狙うのは苦手といった所か」

 

「その通りです、それに3人で動く場合の動きも見たかったもので」

 

「ファムちゃんすごい!」

 

 

ラースの言葉にファムは軽く笑みを浮かべて会釈、そして初見のようなのに魔法の特性を看破したラースの観察力に内心で舌を巻くファム。

そんな彼女の内心を知ってか知らずか、光輝く直剣を鞘に納めた少女は無邪気に友人の魔法をほめたたえた。

 

 

「お嬢様、勝利に浸るのは早いですよ」

 

「いや、呑気に見えてこのお嬢ちゃん周囲への警戒解いてないぞ」

 

「呑気に見えるってのは一言多いですよラースさん!」

 

 

相変わらずな様子の友人であり仕える対象でもある、勇者の少女……リリフィアに思わずため息を吐くファムであったが。

ラースの言葉に半信半疑でリリフィアを見てみれば、剣を鞘に納めつつも柄からは手を離しておらず細かく周囲へ視線を巡らせていることに気付く。

一方でラースにフォローされて満更でもない顔で誇らしそうにしていたリリフィアであるも、すぐに一言多い事に気付き抗議の声を上げるのであった。

 

 

「しかしスキルてヤツぁ、本当に何でもありなんだなぁ」

 

「あのー、私の抗議は無視ですかー……ぷぎゅ」

 

 

周囲に敵の気配もなく探るような視線も感じない事を確認し、ラースは長剣を鞘に納めて感心したかのように呟く。

戦いの最中でリリフィアが見せた技量では避けられない攻撃が幾つかあったが、リリフィアの体が薄く光ったと思った次の瞬間には超人的な反応で回避していたことを思い返し、スキルと言うヤツも侮れないもんだなどと口にする。

 

ちなみにぴょんぴょんと跳ね強く抗議していたリリフィアは流石に鬱陶しかったのか、ラースは無言で跳ねようとするリリフィアの頭を無理やり上から押さえつけた。

ついでにそんな勇者のしょうもない動き、ついでに跳ねる事で自身の豊満な胸が揺れている事に無頓着な有様にファムは頭痛を堪えていた。

 

 

「力を倍増させたり足を速くする魔法に近いものを感じたが、その割には動きが限定的だったんだよな……」

 

「それがスキルの特色です、魔法に比べ直感的に使える代わりに効力を限定的にしてるのですよ。リリフィアが使った回避のスキルなんてその最たるものです」

 

「あぁ、なるほどなぁ」

 

 

スキルと言う自身が戦友らと共に戦っていた時は欠片も存在しなかった概念の産物に、ラースは好奇心を疼かせつつファムの説明に感じていた違和感が氷解したかのような表情を浮かべる。

回避行動と言うのは状況に応じて最適解が変わるもの、そんな行動を確実に発動させるならどうするべきか。

簡単な話である、限定的にでも思考と反応を一瞬だけでも無理やり引き上げてしまえばいいのだ。

 

 

「その分魔力の消費もえぐそうだけどな」

 

「その通りです、経験を積んだ戦士でも連発できるものじゃありませんし使いこなすには修練を要します。リリフィアはその点においては優秀ですよ」

 

「やるなぁお嬢ちゃん」

 

「えっへん」

 

 

先ほどまで扱いがぞんざい気味で抗議していたのに、褒められたらあっという間に機嫌を直し誇らしげに胸を張るリリフィア。

 

 

「でも回避に頼りすぎて魔力切れを起こす事も多いです、このポンコツ」

 

「わかるわ、なんかそんな感じする」

 

「酷くない? ねぇ酷くないですか?」

 

 

そして上げて落とすという言葉の見本のような扱いを親友からされ、心から傷ついたと言わんばかりの表情を浮かべるリリフィア。

とどめとばかりにラースにも深く頷かれ、同意を示されるのだから彼女のダメージは倍増である。

 

 

「と言うかこのお嬢ちゃん、こんな性格だったか? 二人でフォレスティアとやらの町まで行く時はもうちょっと凛としてたのだが」

 

「このポンコツの素はこんな感じですよ? 彼女の姉君とかはリリフィアを誰にでも懐く大型犬と称してます」

 

「え?ちょっとまってファムちゃん、私それ初めて聞いた……」

 

 

先ほどまで命のやり取りをしていたとは思えない、緩い雰囲気の会話であった。

なお弄られ過ぎたリリフィアがその後拗ねに拗ね倒し、ファムが彼女の機嫌を直すのに苦慮したことは言うまでもない。

 

 

 




最初期の勇者ちゃんとキャラが違う?
地味にあの時は裏切られた上に山賊に追い立てられて心身が追い詰められてたからね、しょうがないね。
でも正直、前書きにも書いたけど作者が思った以上に駄犬化が進んだ気がするのはなぜだろう。


ちなみに回避スキルはアレです。
ダクソとかで言うローリングとかエルデンの猟犬ステップとか、あんな感じ。
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