勇者と共に魔王を討ち滅ぼした剣士が追放されるよくある話   作:社畜だったきなこ餅

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というわけで今日の二回目更新です。
神殿騎士メルトさんが、何故初対面のラースに若干怯えていたのかその理由が判明します。


アレだけしておいて忘れたとは言わせんぞ(by魔竜)

 

この世界には様々な種族が活動し、時に反目しあいながらも手と手を取り日々を過ごしている。

特に多いのは活動範囲が広い人間と呼ばれる種族であるが、エルフや獣人にドワーフなどもそれぞれの生息域で生活を営んでおり……竜と人の中間のような生命である竜人もまたその中の一つの種族である。

だがその種族の成り立ちは人類やエルフに比べて幾分浅く、この世界において活動を始めたのは約2000年前からとされていた。

 

 

彼ら竜人に伝わる伝承によると、かつて宝石や希少鉱物の宝庫と言える山と拠点にとある偉大な竜がいた。

その竜は自分達よりも遥かに弱く脆い者達が我が物顔で覇権を得ている事に不満を抱き、自らが覇権を得ようと世界に対して戦いを挑んだ。

 

しかし人間は全面的な戦いを望まず、少数の英雄を竜へ差し向け筆舌に尽くしがたい死闘の末に竜は英雄達の前に膝をつく。

己の牙や爪を退け、必殺の吐息すら切り裂く英雄を前に我が命運もこれまでかと竜が死を覚悟したその時……英雄の一人が竜に手を差し伸べた。

 

自分達は魔物達と違い言葉が通じ合う、それならば手と手を取り合うことも可能なのじゃないか、と。

その心も体も強い英雄の在り方に竜は感銘を受け、英雄の申し出を受けて人々の隣人として歩むことを誓い、人に似た姿を取るようになった……というのが伝承の大まかな内容である。

 

なお余談であるがこの伝承は人間社会では、昔々魔王を討ち果たした勇者の物語の一節に収録されていたりする。

 

 

そんな昔話はさておき、神殿長から下された神託を受け4人パーティとなった勇者パーティは今何をしているかと言うと。

地味に常連となっている冒険者ギルドの奥にある密談部屋にて、互いの懇親を深めていた。

 

 

「……改めて名乗らせてもらう、私はメルト。遊撃神殿騎士の一員をしていた」

 

「勇者をやってるリリフィアです、よろしくお願いします」

 

「魔術師のファム、クーリエの森出身です。よろしくお願い致します」

 

「ラースだ、普通の剣士をやってる。適当によろしく」

 

 

ラース以上の背丈を持つ神殿騎士のメルトがリリフィア達へ頭を下げ、リリフィア達もその言葉に応じながら思い思いの歓迎の意志を伝える。

メルトは神殿長の部屋で着用していた超重装鎧は今は脱いでおり、伸縮性に長けたボディスーツ状の内鎧の上に体の線を多少隠せそうな上着を羽織っていた。

 

当然男の目はメルトの体に吸い寄せられ、話をするにしても鬱陶しいという事でファムはギルド奥にある部屋の使用を提案したという事情があったりする。

何せただでさえ男の目を惹きつけるリリフィアがいるのに、更にそんな邪な目線が増えてはたまらないというのがファムの正直な本音だ。

なお言うまでもないがファムは自身の可憐で保護欲を誘う見た目は勘定に入れていないし、リリフィアはファムが可愛すぎて男の目が集まっていると思っているのは内緒である。

 

 

「あー、えーっと。竜人だったか? お前さん」

 

「……っ! え、ええ、その通りです」

 

 

見慣れない種族である竜人と言うものに好奇心を感じ、ラースはメルトへ問いかけるが何故か自身からの発言に過剰に反応する神殿騎士にラースは内心首を傾げる。

少なくとも目の前の女性に何か無体を働いてなどいないし、そんな事働く気すらないのに初対面の時から妙に恐怖を抱かれている気がしてしょうがないようだ。

 

 

「あのメルトさん、ラースさん口も態度も悪いし男の人にはすぐ拳と足が出るけど。女の人にはひどい事しませんよ?」

 

「お嬢ちゃん、お前が俺をどんな目で見てるのか後でゆっくり話し合おうや」

 

「ヒェッ」

 

 

リリフィアもまたそんなメルトの態度が気になったのか、精いっぱいのフォローを実行。

しかしそのフォローはフォローとは言えず、むしろラースから後で説教を食らう事が確定する結果を呼び込むだけであった。

 

だがメルトはそんな二人のやり取りを見ると大きく深呼吸し、まずはラースへ向けて深く頭を下げる。

 

 

「……失礼な態度を取って申し訳ない」

 

「いやまぁ俺は構わんけど、理由くらいは聞いてもいいよな?」

 

 

しっかりと謝罪されて、逆にそこまで畏まらんでもいいのにと思いつつラースはメルトの謝罪を受け入れ。

ずっと気になっていたメルトから良い感情を持たれていない原因を問いかける。

 

 

「……その、大変情けない話なのだが。我が一族は代々赤毛の人間男性が苦手なのだ」

 

「流石の俺でも一族レベルで拒否感出されるのは想定外だぞ、オイ」

 

 

そして飛び出たとんでもない理由に、思わず半眼になったラースを誰が責められようか。

 

 

「……少し長い話、それも我が一族にのみ伝わる伝承なのですが、よろしいか?」

 

 

メルトの言葉に興味津々と言った顔を隠さないリリフィアに、学術的な興味をひかれたファムは頷き。

とりあえずどんな理由が飛び出すのか聞いてみよう、と判断したラースもまた頷く。

 

 

「……竜人が人類達に加わった伝承はご存知か?」

 

 

メルトの言葉に対し、昔々世界を滅ぼそうとした魔王を討ち果たした勇者の絵本の大ファンであるリリフィアは頷き、師匠から色々聞いているファムもまた頷く。

なおラースはなんのこっちゃと言う顔をするが、小声でリリフィアから色々あって人間達の仲間にドラゴンが加わったと聞いて納得する。

 

 

「……一般的に流布されてる伝承では、良い話になっている。しかし」

 

「実は違う、と?」

 

 

メルトの言葉に対し、学術的好奇心を隠し切れないファムは身を乗り出しながら詰め寄りメルトはその圧に戸惑いながら頷いて肯定。

 

 

「………………二人の英雄の内、片方が人間で赤毛の髪を持つ剣士だったのだが」

 

 

物凄い葛藤と躊躇をしながらも、メルトは語る。

真正面から乗り込んできた二人の英雄は、襲い掛かるドラゴン達を片っ端から半殺しにして鎮圧するばかりか。

赤毛の剣士に至っては、戦意を喪失したドラゴンの尻を蹴り上げて矢面に立たせながら首領であるドラゴンの下まで直行。

仲間への攻撃を躊躇する首領ドラゴンの隙をつき、赤毛の剣士は道中で半殺しにしたドラゴンから引っこ抜いた多数の爪や牙を使い。

 

ひたすらその爪や牙を投擲して、首領ドラゴンが抵抗の意志を持たなくなるまで投擲して痛めつけたというのである。

 

 

「それは、その……」

 

 

学術的興味で深堀りして聞いたファムは絶句し、そりゃぁあのような伝承にもなるなぁと納得しつつ英雄とされる剣士の為した所業にドン引きする。

一方ラースは、そう言えば魔竜退治に親友と行ったときそんな事もしたなぁ、世界が違っても同じ事考えるヤツいるんだな。などと思っていた。

 

 

「…………私の一族は偉大なる首領とされるドラゴンを祖としている、そして」

 

「そのお話を語り継いでるから、ラースさんみたいな人が苦手になったって、こと?」

 

「………………恥ずかしい話であるが」

 

「わ、わぁ……」

 

 

一族の恥を晒すような形だが、しかし共に命を預けて戦う仲間への礼儀を欠いた態度のケジメとして語り終えたメルトの言葉に。

リリフィアはもう何て言っていいのか、と言わんばかりに震えてちいさくてかわいい生き物みたいな声しか出せない始末であった。

 

 

「まぁ、うん、理由はわかったわ。そんなもん聞かされて育てられたら苦手にも、なるわな」

 

「……すまない」

 

 

ラースにしては珍しく気遣いながら、言葉を選びメルトを慰める。

そう言えばあの時も魔竜に止めを刺す前に、さすがに可哀想すぎると親友が止めてその行動に魔竜が感激しておとなしくなったなぁ、とラースは過去を想起する。

 

問題は魔竜退治の仕事の時に長期間家を空けた事で、ラースは家族を守れなかったのだが……間接的原因であるも、魔竜やその血族にまで罪を清算させる事はあの時ラースはしなかった。

もしあの時親友達に止められる事なく、王族の幼子や赤子すら虐殺しても気が晴れなかったらどうなっていたかは不明であるも、不思議とラースの中では区切りをつけて扱われている魔竜なのであった。

 

 

「……すぐに、慣れるようにする。改めてよろしく頼む」

 

「おうよろしく、なぁに背中から斬りつけない限りはとやかく言う気もないさ」

 

 

初対面の時と違い、真正面からラースの瞳を見詰めて宣言するメルトの言葉にラースは気にするなと笑いながら軽く手を振って応じる。

不安事項が無いわけではないが、装甲に難のあるリリフィアとファムのカバー役として重装甲の前衛としてはこれ以上ないぐらい適任であるし、何よりも。

 

 

喪った娘に酷似した存在を追う重要な手がかりである以上、ラースにメルトの参加を拒む理由はどこにもなかった。

 




しかし不思議な事もありますね、どこか遠くかはたまた違う世界かに送られた筈なのに。
ラースの辿った足跡の痕跡がじみーにあちこち残ってる、この世界。
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