勇者と共に魔王を討ち滅ぼした剣士が追放されるよくある話   作:社畜だったきなこ餅

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続きが描けないといったな。
アレは嘘だ。


目覚めたら全裸

 

 

深く昏い、沈黙に満たされた空間。

そこは朽ち果てた神殿の最奥か、はたまた打ち捨てられた洞穴の成れの果てかもはや判別のつかなくなった場所。

空間の中央に鎮座する異形の石像と床に釣り積もった塵の量から、永い時の間その場所に誰も足を踏み入れた痕跡がない事がわかる。

 

そんな場所に重苦しい音を立てて扉が開かれると同時に、一筋の松明の明かりが差し込まれる。

扉を開けたであろう一人の人間が手に持った松明を高く掲げ、部屋の中に罠や危険な存在がいないことを確認すると安心したように小さく一息ついて足を踏み入れた。

 

 

「石像……?」

 

 

揺らめく松明の明かりに照らされた異形の石像に、部屋に足を踏み入れた人物である少女は舞い上がる埃に辟易しながら不思議そうに呟く。

腰に長剣を提げ、左手にバックラーを括り付けている軽装の少女は重い扉を押し開けた際に額に浮かべていた汗を手の甲で拭いながら長い黒髪をふわりとたなびかせて異形の石像へと近付く。

 

 

「違う、コレ石像なんかじゃない……?」

 

 

異形の存在に近づくにつれて、甲冑のような皮膚が石ではない何か違うものだと気が付いた少女は警戒心を一段階引き上げると共に。

右手に持っていた松明を左手に持ち替えいつでも利き手で長剣を引き抜けるようにしながら、異形へと近付く。

 

しかし少女の警戒とは裏腹に、半ば朽ち果てたかのような状態の異形は少女へ襲い掛かるようなことは無かった。

その事に少女は大きく安堵の溜息を吐き出し……来た道の方角から聞こえてきた騒々しい声に我に返ると、急いで先ほど開けたばかりの扉を何とか内側から閉めた。

少女がこの場所に足を踏み入れたことは偶然の一環だった。

 

旅の途中で立ち寄った村、その村が流れの盗賊団によって略奪を受けていると助けを求められ、正義感の強い少女は盗賊団の撃退依頼を受諾……したのだが。

その依頼こそが盗賊団が仕掛けていた罠であった、村の長である長老はこれ以上村を略奪されない為に正義感溢れる少女を盗賊団へ差し出そうとしたのである。

 

持ち前の勘の鋭さによってあわやというところで逃げ出し村の周囲に広がっていた森の中に逃げ込めた少女、しかし土地勘がない場所でその行為は無謀という他なく。

逃げている途中で見つけた洞窟、その場所に辛くも逃げ込んだというのが事の成り行きであった。

 

少女は適当な瓦礫に松明を立て掛けると……なんとなく異形の亡骸に背を預けるようにして座り込み、ぼんやりとこれからの事を考える。

がむしゃらに逃げている間は考える余裕こそなかったが、今この時になって助けを求めてきた存在に裏切られたという事実は少女の心を確かにうちのめしていた。

 

 

「ねえ、あなたはどこから来たの?どうしてそうなっちゃったの?」

 

 

背中越しに異形の亡骸へ向けて少女は問いかける、しかし当然返事が返ってくることは無く。

返事なんて返ってくるわけないよねと少女は力なく笑みを漏らし、ふと異形の足元にくすんだ輝きを放つ直剣が突き刺さっている事に気付いた。

その時少女はなぜ今まで自分が気付かなかったのか、不思議に思いながら直剣の柄へと手を伸ばそうとする。

 

だがその時、騒々しい音を立て先ほど少女が苦心しながら閉めた扉が乱暴に開け放たれた。

 

 

「へっへっへ、追いかけっこはおしまいだぜぇ?嬢ちゃん」

 

 

扉をあけ放った一団の先頭に立つ毛むくじゃらの男が舌なめずりしながら少女へ向けて、欲望を隠そうとすることなく告げる。

少女は男やその背後に立つ一団から向けられる視線に寒気を感じながら、せめてもの抵抗をすべく腰から長剣を引き抜いて構える。

 

そして松明が放つ揺らめく火の明かりの中、多勢に無勢極まりない戦いが始まった。

少女はその細腕からは思いもよらない速度で剣を振るい、男達が振り下ろしてくる斧や棍棒を切り払うと同時に身を翻して確実に反撃を入れていく。

だが少女の剣技は良くも悪くも型にはまったかのような剣技でしかなく、次から次へと敵が襲い掛かってくる状況においては不利と言わざるを得なかった。

 

その残酷な戦力的不利は、男の一人が振るった棍棒によって少女の手から剣が弾き飛ばされるという形で現れる。

少女の剣技は多少腕前に自信がある。荒くれ程度、本来ならば敵にならない程のものだったのだが。

追いつめられているという心理的焦燥に、一息入れる間もなく次から次に襲い掛かってくる男達の猛攻に少女の体力が先に尽きてしまったのである。

 

 

「おいおい、ご自慢の剣がすっぽ抜けちまったなぁ?」

 

「代わりの剣なら用意してやるぜぇ? 俺様ご自慢の股間の剣をな!」

 

「てめぇの剣なんざショートソードじゃねえか!」

 

 

細腕の少女という見た目を裏切るかのように抵抗してきた少女、その少女の強さを担保していた剣を弾き飛ばしたと見るや男達は勝利を確信して少女へとにじり寄る。

彼らの足元には少女が振るった剣によって傷を負い呻き声を上げている男の仲間達が転がっているが、野盗に身を窶している男達は怪我を負った間抜けのことなど気にする様子も見せない。

 

男達の頭にあるのは、目の前の少女の体を弄び己達の獣じみた肉欲を満たすことだけなのだ。

少女は普段から男達から向けられるそういう感情、欲望に対して無頓着であったが……得体のしれぬ怖気を感じて男達がにじり寄るたびに後ずさり、やがてはその背中が朽ち果てた異形の亡骸に当たる。

追いつめられた少女は恐れを抱きながらも抵抗の意志を瞳に込めて男達を睨みつける。

 

 

「ごめんなさい……この剣、お借りします!」

 

 

異形の亡骸に背を預ける形になったことで、結果的に手を伸ばせば届く位置にある地面に突き刺さっているくすんだ輝きを放つ直剣を少女は引き抜こうとする。

その剣は深く地面に突き刺さっているとは思えない程に、簡単に引き抜け……。

 

少女がその剣を引き抜くよりも早く、男達の中の一人によって少女は頬を張られて地面へと倒れこんでしまった。

 

 

「あぐぅっ?!」

 

「へっ、油断も隙もねえ……おい何遊んでんだよ」

 

「い、いやお頭。この剣なんですけど抜けなくて」

 

「どうせ錆びてるか飾りだろ、お楽しみに遅れてもいいのかぁ?」

 

 

少女が抜きそうになっていた、多少の小銭になりそうな今にも抜けそうな鈍い輝きを放つ剣を引き抜こうと男の一人が手を触れるがその剣はびくともせず。

さっき確かに引き抜けそうになっていた筈と思いつつも、親分であるお頭の言う通りお楽しみに乗り遅れてはたまらないとばかりに男はまたぐらをいきりたたせながら、少女の衣服をはぎ取る一団へと加わる。

 

 

「いやぁ!離してぇ!」

 

「手こずらせやがって!三日間は寝ずに楽しませてもらうぜ!」

 

 

組み伏せられ衣服をはぎ取られ、あられもない姿にされてもはや抵抗する術がなくなった少女の姿に男達は舌なめずりして欲望を隠そうとする事もなく、好き放題言葉を放つと。

無理やり少女の脚を開いてお頭と呼ばれた男が少女の脚の間に体をねじ込もうとする。

 

このまま成す術もなく少女の体が獣欲に蹂躙されるのを待つばかりとなった空間。

その恥辱の宴が始まろうとしていた空間に、岩に罅が入るかのような音がした。

 

状況に適さないその音に、男達は洞窟が崩落しようとしているのではないかと周囲を見回す。

その時少女は男達よりも早く、その音が何処から発せられているのかを目の当たりにする。

 

 

先ほど少女が背中を預け座り込んでいた異形の亡骸、その亡骸と思われていたモノがわずかに震えていたのだ。

男達もまた少女の視線に気づくと、その先にある異形の亡骸の様子に気付きだす。

 

 

「お、お頭……これ、やべえんじゃ……?」

 

「ハッ!ビビってんじゃねえぞコラ!」

 

 

お楽しみを始めようとした瞬間に水を差されたかのように感じた頭を呼ばれた男は、不機嫌そうに下穿きを履き直そうとすることもなく。

部下の一人から刃毀れしている手斧を奪い取ると、今にも動き出しそうな異形の亡骸の頭部と思しき場所へ手斧を叩きつける。

 

松明の灯りが揺らめく空間に激しい音が反響し、異形の亡骸の頭部に手斧が深くめり込んで亡骸の動きが止まった。

 

 

「所詮死にかけの化け物か何かだろうが!……なんだてめえら、そんな情けねえ顔して」

 

 

手に伝わった感触から間違いなく亡骸に止めを刺したと確信した頭は振り返り、部下達を叱り飛ばす。

だが己に忠実な筈の部下達は頭である自分ではなく、まるでその背後に何かあると言わんばかりの恐怖に引き攣った顔をしていた。

 

頭は悪態を吐きながら、これで大したことなかったら部下の一人や二人見せしめに殺すかなどと思いながら振り返り。

そのまま、部下達が怯えていた原因を知ることなく頸椎をへし折られて絶命した。

 

 

松明の揺らめく炎に照らされた空間に、荒事に慣れているはずの男達の悲鳴が響く。

だがそれもやむなしと言えるだろう、何故ならば異形の亡骸の中から伸びてきた腕によって頭の首の骨がへし折られたのだ。

そして男達と間一髪のところで恥辱を受けずに済んだ少女の目の前で、異形の亡骸が崩れると中からは一人の逞しい体つきをした……全裸の赤毛の男が現れる。

 

男の様子はまだ状況が理解出来てないのか、不機嫌そうに周囲を見回すと少女の状況と男達の風体から凡その状況を理解したのか不機嫌そうにため息を吐くと。

都合が良いとばかりに自身の近くで首がへし折れて絶命している男から上着をはぎ取り、自身の腰へと巻き付けて死体から刃毀れした鉈を拾い上げた。

 

赤毛の男の動きをその空間にいる誰もが固唾を飲んで見守る中、赤毛の男は小汚い風体をした男達を睥睨して口を開く。

 

 

「おい、ここはどこだ。そしてお前達は誰だ?」

 

 

あまりにも不躾な質問に、頭を唐突に喪い恐慌状態に近かった男達の心に怒りが込み上げる。

誰何の声を上げたいのはむしろ自分達だと言わんばかりに怒りを露わにした男達は、口々に赤毛の男を罵り始めた。

 

赤毛の男は小汚い輩達の言葉に、まるで言葉が通じている事に若干の安堵を滲ませるような表情を浮かべるも。

すぐに男達の罵声に表情をみるみる不機嫌なモノへと変え、面倒だと言わんばかりに手近な男の顔面を死体から拾ったばかりの鉈で文字通り真っ二つに叩き割った。

 

 

「まぁいいやもう、そこで怯えてる娘に聞くからお前らは身包み残して死ね」

 

 

乱暴かつ蛮族過ぎる赤毛の男の行動と発言に、男達は仲間の仇と言わんばかりに襲い掛かる、が。

結論から述べれば、小汚い男達が文字通り全滅するまでに時間はそうかからなかった。

 

哀れなのは恥辱を受ける一歩手前で結果的に救われた少女だ。

何か良くわからない内に助かったと思ったら、暴力の嵐が目の前で吹き荒れ残虐極まりない虐殺としか言えない暴力を目の当たりにしたのだから。

 

だがしかし、赤毛の男はそんな少女の様子に気を配る気配など微塵もなく。

 

 

「こいつら山賊か何かか? 持ってる装備も金もシケにシケてやがる……」

 

 

先ほど命を奪ったばかりの男達や衣服を剥ぎ取り、多少マシな状態の衣服や装備をぶつぶつ文句を言いながら身に着けているのだから始末に負えない。

男達のなけなしの現金すら死体から奪っているのだから、どちらが山賊かわかったものではないと言えるだろう。

 

まさに暴力の化身といえる赤毛の男に少女は、胸や股間を手で隠しながら勇気を振り絞って声をかける。

 

 

「あ、あの……!」

 

「ん? ああすまない気が利かなかった、お前さんの肌を隠せるようなものも探すから待ってくれ」

 

「あ、ありがとうございます……じゃなくて!」

 

 

少女に声をかけられた赤毛の男は顔を上げると、少女の詳細な状態に漸く気付いたと言わんばかりに新たに小汚い男達の死体を漁り始める。

マイペース極まりない赤毛の男に少女は思わずお礼を言い、違うそうじゃないと気を取り直して言葉を続けた。

 

 

「え、ええと……助けてくれて、ありがとうございます」

 

 

少女は赤毛の男に色々聞きたい事があった。

何故異形の亡骸の中から現れたのか。

何故この場所にいたのか。

何故全裸なのか。

何故、眉一つ動かすことなく山賊とはいえ人間を殺戮できるのか。

 

聞きたい事は山ほどあった、しかし。

少女はそれよりも先に、まず赤毛の男へお礼を告げる。

一歩遅ければ、女として最悪の事態を迎えていた自分を助けてくれた事に変わりはないのだから。

 

 

少女のお礼の言葉に赤毛の男は動きを止めて黙り、松明の火が弾ける音が響く。

数秒間互いに無言となる時間が発生し、少女は自分が何か失礼なことを言ったのではないかと不安に思い始めた頃。

赤毛の男は乱暴に後ろ頭を音を立てて掻くと、死体から剥ぎ取った比較的奇麗な毛皮のマントを少女へと投げ渡した。

 

まるで照れ隠しかのような赤毛の男の行為、そして少女は赤毛の男が小さく呟いた声を聞き逃さなかった。

 

 

──助けてお礼を言われるなんて、久しぶりにもほどがある。

 

 

そう呟いた男の声は、まるで何か懐かしい思い出を噛みしめているかのように少女は感じ取っていた。

 




多分続いたら、次回辺り主人公こと赤毛の男の名前が明らかになる。
ついでにシリアスも臨終する。
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