勇者と共に魔王を討ち滅ぼした剣士が追放されるよくある話 作:社畜だったきなこ餅
新章入る前にインターミッションをちょこちょこやってから、新たな章に入る感じを予定してます。
そして挿絵管理機能も復活したので、リリフィア率いるパーティの身長差イメージ図をお出ししようと思います。
【挿絵表示】
物理的に見比べるとファムが小さすぎて笑う。
追放剣士、漸く武器変更解放
邪教の教祖に敗北したが、色々あって結果的に結束が高まった勇者パーティ。
しかし彼女達が負った怪我は治療魔法があるとはいえ、簡単に復帰できるようなものではなかった。
簡単に列挙すると以下の有様である。
・リリフィア:触手に薙ぎ払われ吹き飛ばされた際に肋骨複数骨折
・ラース:触手に体を貫かれ内臓損傷
・ファム:触手で薙ぎ払われた際吹き飛ばされ全身打撲、左腕複雑骨折
・メルト:全身を切り裂かれ大量失血
御覧の有様だ。
一番攻撃を受けていたのに、戦いから一週間の間ご飯をもりもり食べて療養していたメルトが一番回復してるような状態である。
「メルト、お前さんマジで頑丈だな……」
「……鍛えてる、から」
漸く全員で連れ立って出歩けるようになった中、キビキビと動いているメルトを見て思わずラースが呟くのも致し方ないと言えよう。
ちなみに骨折した少女ふたりことリリフィアとメルトは、折れた骨は治療で繋がったものの痛みがある為ギプスやコルセットをつけている状態である。
本来なら安静にしておくべきなのだが、いかんせん何かしら動いてないと気が休まらないという心理状態につき。
こうして4人はフォレスティアの町を連れ立って歩いているという訳である。
そしてまず真っ先に向かった所、それはいつもラースが一山幾らの安物長剣を買いこんでいる武器屋であった。
「いらっしゃいま、せー」
入った4人を明るく接客し、ラースの顔を見て露骨に態度を変える店員。
最早様式美であった。
「剣を見せてくれ」
「はいはい、いつもの投げ売りコーナーから適当に持って行って下さいな」
「違う、お前がベテランと見込んで上等な剣を頼む」
ラースの言葉に視線もむけず陳列物を整理し始める店員、しかしラースの言葉に耳を疑い店員迫真の二度見を敢行。
何時も買っていく剣は安物ばかりだが、金払いは良かった問題客の発言を未だに信じられずにいつつも店員は上物とされる剣が陳列されているコーナーへラース達を案内する。
「ラースさんお金は大丈夫なんですか? 足りない分はこちらでも出しますよ」
「大丈夫だ、ペーペーの冒険者引き連れて狩りしまくったから金はある」
「あの酒場の冒険者達が見るたびに成長してるのは、そういう事でしたか」
案内される途中ラースの懐事情を心配したファムが声をかけ、その心配を気にするなと手をひらひら振って応じるラース。
リリフィアやファム、そしてメルトは一般的な冒険者と異なり実家や神殿からの援助で活動をしている。
ラースにも援助を受けるようファムやリリフィアは伝えていたが、ラースは自分で稼ぐから気にするなと言って聞かなかったという裏事情があったりもするが……。
コレは当時ラースはリリフィア達が心配無用なぐらい育ったら、パーティから抜ける事を視野に入れていたためであるのは言うまでもない。
「こちらになります、この剣は火炎の魔法が込められており振りかざせば火炎を投射……」
「造りは悪くないが機能が余分だな、第一炎ってのは使いづらい」
「そうですか、ではこちらはどうでしょう? 冷気の魔法を込められています」
「これも造りは悪くないけど機能が余分だな、頑丈で切れ味良いのはないのか」
ここぞとばかりに売り込もうとラースにセールスを開始する店員。
しかし虎の子と言える名剣を尽くラースは拒否、配慮の欠片もない男の様子に店員はこめかみをヒクつかせながらそれならばこれと言わんばかりに一本の剣を持ち出す。
その剣は店員が先に勧めた二本の名剣に比べ優美さに欠け、武骨とも言える風体をした片手半剣であった。
「それならばこちらはどうでしょう、お客様が望む通りの一品ですよ」
「確かに良さそうだな、コレに近い刃渡りで品質の良い片手半剣をもう一本頼む」
「この種類でお客様が求める品質の剣はコレ一本ですね、そんなに長くて頑丈な剣欲しいならアレなんてどうですか?」
品質は極上ながら客商売を考えてない見た目な上、特殊効果がないせいで売れ残っていた剣が売れる事に店員はホっとしながらも続けて無茶な事を言うラースにやる気なさそうに応じると。
店の奥の壁にかけられている剣を視線で示した。
「……剣?」
「グレートソード、と言う割には随分とその……」
「アレ人間が使えるような剣じゃないと思う」
店員が示した剣を見て、思い思いに感想を呟くリリフィア達。
それもしょうがないと言えよう、その剣はリリフィアの身長ほどの大きさを持つ剣の形をした鋼の棍棒ともいうべき鈍器であった。
「メルトさんなら使えそう」
「……使えなくはないが……」
「ていうかアレ飾りじゃなかったんですね」
流石にアレはないわぁ、と言わんばかりに感想を述べる少女達。
やけくそでその剣を提案した店員もまた、そりゃそんな反応になりますよねと頷く有様である。
しかし、問題客ことラースの反応は違った。
「おいおい、イイのがあるじゃねぇの。勧めてこないから飾りか何かだと思ったが、使えるのか?」
「はへ?! 勿論ですとも、先ほどお買い上げ頂いた片手半剣と同じ鍛冶師が日々のストレスと怒りを込めて作り上げた逸品ですよ」
「ほーん」
リリフィア達がドン引きする中、ラースの視線は問題のグレートソードに釘付けである。
「で、でもラースさん。あんなの使い辛いですよ!やめときましょう!?」
「何言ってるんだリリフィア、俺はアレよりも無茶な剣も良く振るってたぞ。あの剣もくれ」
「お、お買い上げありがとうございます」
リリフィア達が止めるもラースは躊躇することなく、冗談みたいにデカいグレートソードの購入を決行。
そのまま代金を支払い、片手半剣とグレードソードを苦も無く受け取る。
「この肩帯が鞘の代わりです、これを体にかけておけば……」
「なるほど、こりゃ便利だ」
軽々と言わんばかりの調子でグレートソードを背中に背負い、鞘に入った片手半剣を傾けながら後ろ腰に提げる。
「コレは鞘にも何か仕込みあるな?」
「はい、柄を掴んで引き抜けば鞘が展開するようになっております」
「マジで便利だな、オイ……」
店員から説明を受けつつラースは、決して安くない金額を一括で支払い呆けているリリフィア達へ振り返る。
「どうしたんよお前ら」
「い、いえ……ラースさんソレ重くないんですか?」
「おう全く問題ないぞ、けどまぁ万が一あっちゃならんから試し切りしとくか」
「お買い上げありがとうございます、こちらへどうぞ」
唖然としてるリリフィア達にラースは不思議そうな表情を浮かべつつ、店員に声をかけて購入した武器の試用スペースへとラースは向かう。
一方不良在庫がはけて大満足している店員は、浮かれ気分のままラースが言うままに試用スペースへ案内する始末である。
慌てるのはリリフィア達である、ある程度動けるようになったとはいえラースも命に係わる重傷を負っていたのだ。
あんな規格外の大剣を振り回して傷が開いたら大変とばかりに、3人は慌ててラースを追いかける。
だがしかし、その心配は全く持って無用であった。
「はっはっは!こいつぁご機嫌だなぁオイ!!」
修練場のように広い試用スペース、そこには魔法で動き自己修復する案山子が何体も設置されているのだが……。
ラースはと言えば、右手にグレートソード……左手に片手半剣と言う正気とは思えない二刀流で用い、これ以上ないぐらいに上機嫌で案山子に嵐のような斬撃を叩き込んでいた。
「……コレが、剣神……」
「そう言えば伝承だと、身の丈ほどある大剣を二刀流で振るったという記述もありましたねぇ。流石に盛ってると思ってましたが」
「ほわぁ……」
生半可な攻撃では破壊されるより早く自己修復される案山子がみるみる内にズタボロになっていき、哀れな案山子はほどなくして修復が追いつかず大破する。
そこまで好き放題やったラースはと言うと汗一つかいておらず、鼻歌まで歌いながらグレートソードと片手半剣を仕舞っていた。
「店員さん、こいつぁ最高だな。この剣に銘はあるのか?」
「……っは!え、ええ! 片手半剣の方の銘は『カルネイジ』、グレートソードの方は『フェラルレイジ』です」
「随分とハイカラな名前だな、豪剣とか鉄塊とかそんな感じの銘だと思ってたわ」
「数百年前の遺物ならともかく、今はそんな名前流行りませんよ」
購入した後にふと気になった武器の銘を店員に問い掛け、返ってきた内容に思わずぼやくラース。
彼が仲間達と戦っていた頃はそんな銘は考えられなかっただけに、千年単位でのジェネレーションギャップを感じてしまうのであった。
ちなみに余談であるがリリフィアが輝きの直剣を受け取る前に使っていた剣の銘は『ホワイトリリィ』だったりする。
実は意図的に武器とかの固有名詞を使うの避けてました。
これはラースの今の世界に対するスタンスも影響しており、深く関わる気が無かったのが関係しています。
しかしラースも過去をゲロって向き合うようになったので、固有名詞がこれから少しずつ増えていく感じです。
ちなみにラースの武器をエルデ〇リングの武器に例えるとアレです。
フェラルレイジ=グレートソード(特大剣)
カルネイジ=孤牢の大剣(大剣)