勇者と共に魔王を討ち滅ぼした剣士が追放されるよくある話   作:社畜だったきなこ餅

3 / 27
続ける予定そんなになかったけど、短編として終いにしようとしたら書きたい展開が浮かぶ不具合が発生したので投稿します。


受け継がれる刃

 

 

木漏れ日が差し込む森の中、獣道とほぼ変わらない林道を二人の人物が肩を並べて歩く。

一人は腰まで届く長さをした緩いウェーブがかかっている髪の毛が特徴的な少女。

そしてもう一人は無造作に伸ばした燃えるような赤毛をした長身の男であった。

 

 

「それでお嬢ちゃん、この道を進んだ先に村があるという話だったか?」

 

「そうですけど……お嬢ちゃんはやめて下さい、私にはリリフィアという名前があるんです」

 

「自分の力量もわからず多勢に無勢されてた半人前にゃ、お嬢ちゃんで十分だろ」

 

 

つい先ほど撃退したばかりの山賊から剥ぎ取った戦利品が詰まったずだ袋を担いだまま、赤毛の男はリリフィアと名乗った少女の抗議を欠伸交じりに一蹴。

命と尊厳の恩人とはいえあまりにも無礼というか無法者な男の態度に、リリフィアは頬を膨らませて遺憾の意を示す。

 

 

「それに私は名乗ったんですから、貴方も名前を教えてくださいよ」

 

「んあ? そんな大したもんじゃねーよ俺は、お貴族様に記憶されるような人間でもない」

 

 

赤毛の男が何の気なしに放った男に、少女の脚がぴたりと止まる。

 

 

「え……?」

 

「何不思議そうにしてんだよ」

 

「え、だ、だって私は家名も何も名乗って……」

 

 

会って間もない、それも異形の亡骸から出てきたという正体不明としか言いようのない男が自分の略歴を看破してきたことに少女は驚き足を止めたのだ。

一方赤毛の男の方はと言えば、半分カマかけみたいなものだったのだが思った以上に少女が面倒な出自であることを理解し、内心藪蛇を突いたかとげんなりしていた。

 

 

「別にタカるだのどーだのする気はねえよ、というか隠したいなら少しは隠す努力をしろよ」

 

「そ、そんなこと言われても突然言われたらこうもなるでしょう?!」

 

 

半笑いを浮かべて少女をからかうような傍若無人極まりない男の発言に、少女は思わず淑女的姿勢をかなぐり捨てて全力で抗議の姿勢を示す。

しかしそんな少女の気持ちを一蹴するかのように男は歩き始め、少女は慌てて後を追いかけた。

 

そうやって二人他愛ない会話を続けて歩いた先に、簡素な木でつくられた防壁に囲まれた村が見えてくる。

人のいるところに到着できたことにリリフィアは安堵の表情を浮かべるも、すぐに自身を山賊に差し出そうとした村であることを思い出してその顔を暗くする。

一方赤毛の男の方は、そんな少女の表情に何かしらを察しつつも言葉にすることはなく固く閉ざされた村の入口まで進む、そして。

 

 

「こちらは旅のモノだが、襲い掛かってきた山賊を十人ほどぶち殺した。戦利品の買取りを頼みたい!」

 

 

少女の気持ちを知ってか知らずか、それとも知っていてあえて全力で無視したのか。

声を張り上げて村のモノを呼びつけるかのように、己の欲求をシンプルに伝えた。

 

 

「ちょ、ちょっと何を言って?!」

 

「まぁ見てろって」

 

 

思わず詰め寄ろうとする少女を、赤毛の男は軽く手で制して途端にざわめきだした村の動きを観察するかのような目つきを門へと向けており。

男の泰然自若とした姿勢にリリフィアは不満を感じながらも、男が少女を背後に庇うかのように立ち位置を変えた事に気付き、無言で男に意図を問いかけるが男はその視線を無視する。

 

 

そしてそうする事数十秒、やがて村の門がゆっくりと開き始めると痩せ細った村人が顔を出す。

村人は赤毛の男の背後に隠れる少女を見て一瞬ギョっとした表情を浮かべるも、少女を背後に庇う赤毛の男に忌々しそうな顔を浮かべるとその口を開く。

 

 

「男は後だ、先に勇者様を中に」

 

「……え? 勇者様?」

 

 

村人の言葉に呆気にとられたのは赤毛の男である。

思わず背後に庇っている少女を見下ろせば、視線を向けられた少女はムフーと鼻息荒く誇らしげに豊満な胸を張った、そして赤毛の男は鼻で笑った。

 

 

「いやお前節穴過ぎない?こんなお嬢ちゃんを勇者様とか」

 

「おかしな事を言うなお前、その方は王国にも認められた由緒正しい勇者様だぞ。この村に立ち寄られた際に印も見た」

 

 

赤毛の男、迫真の二度見を背後に庇った少女へ敢行。

 

 

「悪い、少しだけタンマ」

 

 

そして赤毛の男は村の門から不審そうにこちらを見てくる村人へタイムを要求すると、自身が意識を取り戻した洞窟の床に刺さっていた親友が愛用していた剣を少女へ差し出す。

何とかあの場所から持ち出せる程度には手になじんだその剣は、運ぶ程度なら男にもできたが手に持って構えようとすると異様な重さを持つ鈍らとなったのだ。

まるでお前にこの剣は相応しくない、そう剣自身が言っているかのように。

 

 

「お嬢ちゃん、この剣で軽く演武を見せてくれ」

 

「なんなんですか唐突に……」

 

「まぁまぁいいからいいから」

 

 

男の突然の行為と発言に、リリフィアもまたジト目になりながら男から鈍い輝きを刀身から放つ剣を受け取る。

その剣は不思議な事に、男がとても重そうに持っていたとは思えないぐらい羽のような軽さをしていた。

それだけではない、その剣を手に持つと体の奥から力が湧いてくるような感覚すら覚え、リリフィアは剣を受け取ると高揚する気持ちに導かれるように剣を用いた演武を披露し始める。

 

構え、避けて、斬る。

ただそれだけの動きで構成された即興ともいえる演武であるも、一つ一つの所作の完成度はリリフィアが積んできた研鑽と彼女が持つ技術の高さを証明していた。

 

気が付けば村の門からリリフィアの演武を見守る村人も増えている中、リリフィアは軽やかに舞い踊るような演武を終える。

赤毛の男は小さくマジかよ、などと呟きながらもしっかりとした演武を披露してくれた礼とばかりに拍手を贈った。

 

 

「ふぅ……とても良い剣ですね、この剣」

 

「そりゃそうさ、俺の親友が愛用していた剣だからな」

 

 

赤毛の男の親友、勇者と呼ばれた青年が振るっていた時に比べ弱くもあるがそれでもしっかりとした輝きを放つ剣に、男は疼く胸の痛みを表情に出すこと無く剣の由来を少女へ伝え。

本当は言うつもりがなかった言葉を、その口から紡ぐ。

 

 

「その剣はお嬢ちゃん、お前を選んだ。不満がないのなら使ってやってくれ」

 

「え? ……ええ?! こんな名剣受け取れませんよ!貴方の親友の剣でしょう!?」

 

 

赤毛の男の言葉に少女は目をぱちくりとさせ、手に携えている剣と男の顔を何度も無言で見比べ。

そして放たれた少女の叫び声は、森の木々に止まっていた鳥達が飛び立つ程度には大きな声であった。

 

 

なおその間も村の門に控えていた村人が放置されていたのは言うまでもない。

 

 

 




なお主人公は明確に勇者ちゃんこと、リリフィアが村人に裏切られたという事実は知りません。
しかし、何か間違いなくあったな、なんて思ってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。