勇者と共に魔王を討ち滅ぼした剣士が追放されるよくある話   作:社畜だったきなこ餅

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昔のRPGとかではアイテム所持数制限がシビアでしたよね。
今でもシビアなゲームあるっちゃあるけど、それでもかなり緩和された印象あります。


さらばアイテム所持数制限

 

 

辺境にある開拓村から最も近い町まで徒歩で三日間。

馬を使えば一日ほどで駆け抜ける事が出来る距離であるも、そのようなものがない少女と赤毛の男は道中を共に過ごすことになった。

 

二人の旅路の波乱は、初日の野営から始まる。

 

 

「そろそろ暗くなってきたな、急いで見晴らしの良い水を補充できる場所を探すぞ」

 

 

太陽が傾いてきた空を見上げた男は少女へ告げるや否や耳を澄まし、僅かに聞こえてきた沢の水音を聞き取るとそちらへ歩き始める。

少女もそろそろ野営場所を探す頃合いとは思っていたが、想定よりも早い男の動きに慌てて小走りで追いかける。

 

 

「ラースさん、水の場所わかるんですか?」

 

「音と周囲の地形を照らし合わせれば簡単だろ、ほらあったぞ」

 

 

少女からの問いかけに対して男、ラースは道すがらに落ちていた枯れ枝を拾いながら振り返ることなく答えると、目的の沢がある場所へ難なく到着。

小脇に抱えていた枯れ枝の束を適当なところに放り投げると、屈んで水辺周辺の痕跡を何やら探り始める。

 

ラースの言葉通り水源があった事に少女は感心しながら、腕輪に手を当てて野営のときに必須と言っても過言ではないと言われ、専門店の店員が言うがままに封入した魔法を唱える。

驚いたのはラースである、水源周辺に幾つかの野生動物の足跡がある事から食料確保は問題なさそうだと思っていたところで、同行者である少女が何やら魔法を使ってるのだから。

 

 

「おい嬢ちゃん、何をする気だ?」

 

「何って……警戒の魔法を使ったんですけど」

 

 

私何かやっちゃいました?とラースの問いかけに首を傾げる少女。

少女ことリリフィアは何も悪くない、野営をする時に野営地で真っ先にこの魔法を使う事は半ば常識なのだ。

問題はその常識を欠片も知らないラースである。

 

 

「警戒? それってもしかしなくても、接近してきたら教えてくれる魔法か?」

 

「はい、検知すると音がなります」

 

「マジかよ……交代で見張りする時の負担が軽くなるにもほどがある……」

 

 

自身の問いかけに対して、ムフーと誇らしげに胸を張りながら答えるリリフィアの言葉にラースは思わず頭を抱える。

自分達が旅をしていた頃は野営をするときは周囲に鳴子を用意し、その上で交代制で不寝番を置くことが当たり前だったのだから彼の苦悩も当然と言えよう。

 

 

「そりゃお嬢ちゃんみたいなのが一人でも旅を出来るわけだ……」

 

 

こんなものがあの時あったら、旅路が楽になる事この上なかったと言葉に出すことこそないが……一言多いラースのボヤきに、警戒心皆無と言われたに等しいリリフィアはムっとした表情を浮かべる。

だがラースはそんな少女の様子を一顧だにする事なく、周囲警戒と索敵が不要なら手間が省けたと呟くと枯れ枝の中から適当に枝を一本引っ張り出し。

開拓村でせびった報酬で得たものの一つである、肉厚のナイフで枝を笹掻きにしていく。

 

ムスーとしていたリリフィアは、ラースが何をしようとしているのか理解できずきょとんとした表情を浮かべる中。

手際よくラースは枯れ枝を組み上げ、火打石で先ほど笹掻きした枝に火を点けて枯れ枝を組んだ場所へと放り投げて焚火を熾した。

 

 

「わ、すごいですラースさん!」

 

「いやお嬢ちゃん旅をしてきたんだろ? 火熾しくらい知ってるだろうが」

 

「え? だってコレを使えば一発ですもの」

 

 

子供のように目を輝かせてはしゃぐリリフィアの様子に、思わずこの娘本当に大丈夫かなどと思いつつラースが問いかけると、リリフィアは虚空から取り出した人差し指ほどの太さの短い棒をラースへと見せた。

 

 

「色々と聞きたい事はあるが、まずソレは一体何だ?」

 

「使い捨ての着火棒です、発火の魔法が込められてるから魔力をちょっと込めれば簡単に着火できます」

 

 

ラースの質問にこともなげに答えたリリフィアの言葉に、ラースは思わず愕然。

彼の常識にある使い捨ての魔法道具というのは破裂と共に爆炎をまき散らす道具や、強力な閃光と爆音をまき散らすモノぐらいなのである。

言ってみれば使い捨ての癖に高価だったり使い処が限られる、そんな代物しか知らないのだ。

 

 

「便利なもんだな……それともう一つ、お嬢ちゃん今コレをどこから取り出した?」

 

「魔法の格納空間からですよ?」

 

「まほうのかくのうくうかん?」

 

 

着火棒をリリフィアへ返しつつ、ラースはもう一つ質問を少女へぶつける。

明らかに少女はこの着火棒を虚空から取り出していた、目にもとまらぬ早業かというとそんなそぶりもなかったのである。

 

だがリリフィアから返ってきた言葉は、ラースが想定していた回答の斜め上を飛びぬけていくものであった。

 

 

「……その魔法の格納空間とやらも、その腕輪に専門店とやらで購入したものか?」

 

「はい」

 

「マジか、マジかぁ……」

 

 

リリフィアの言葉にラースは遠い目をしながら夕暮れに染まり始めた空を見上げる。

男は少女が旅をするにはあまりにも軽装すぎる事を気にしていたが、まぁ奪われるか紛失するかしたのだろうなどと思い込んでいたのだ。

だが蓋を開けてみれば何てことはない、重い荷物など持ち歩く必要がなかったというだけなのである。

 

 

「食料や水とかもそれで運んでたわけか」

 

「はい、寝具に身だしなみを整える道具や鏡台も入れてます!」

 

「お前は旅を何だと思ってるんだ」

 

 

開拓村で得た報酬の一つである凹んだ鍋を使った蒸留装置を作りながら、ラースは重苦しい溜息を吐き出した。

彼は心の中で親友らへ語る、俺思った以上に遠いところに来たみたいだわ。と。

 

 

「……まぁいい、ちゃちゃっと狩りに出てくる。足跡からして結構豊富にいそうだし、食えそうな野草も取ってくる」

 

「は、はぁ……」

 

 

水の煮沸が終わった鍋を火から下ろしつつ、世界観ギャップに疲れ果てたラースはため息を吐きながら鉈を手に森へ向かって歩き始める。

そんな男の後ろ姿を、何故この人はショックを受けているのだろうと不思議に思いながらリリフィアは見送るのであった。

 

 

余談であるがその日の夕餉はリリフィアが一人旅をしていた時よりも、かなり豪華になったらしい。

 

 

「あの、どうするんですかコレ……」

 

「いや俺は悪くないぞ、コイツが襲い掛かって来たのが悪い。それに狩りに出てくるって言ったろ」

 

「……こんな大きな熊と猪引きずってくるとは思わないですよ、普通」

 

 

なお熊の死骸がリリフィアの魔法の格納空間に収納される事になったのは言うまでもない。

 

 

「うわーん!お気に入りの鏡台に熊の匂い移ったらどうするんですかー!?」

 

「いや大丈夫だろ、収納した物品が互いに干渉することは無いって言ったのもお嬢ちゃんだろ?」

 

「気持ちの問題ですー!!」

 

 

そして同時にリリフィアは一つ確信に至った事があった。

この男、ラースにデリカシーや配慮など求めても無駄であると。

 




ラースがかつて往った旅路は、装備含めてアイム所持数が一人8個ぐらいまでとかそんな旅路でした。
そりゃ、四次元ポケッ〇な魔法の存在知ったらお前ふざけんなよ…!ってなりますよね。
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