俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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13話目・バカとアホの醜い争い

 

「んん? ……あー! あいつら!?」

 

 ツバサを連れて晩飯を食いに来て、店内に入ったとたん客の一人が騒ぎ出した。

 

 やかましいな、と思いながらそちらを見ると、大声を出した新人らしき見た目の少年が、俺たちのほうを見ていた。

 

 さらには仲間らしき他の少年たちも驚いたような表情をしているし、なにより先ほどのツバサの反応。

 

 ふむ、なるほどな。

 

 俺はツバサに耳打ちする。

 

「あいつらがそうなのか?」

 

 ツバサは、コクリと頷いた。

 

「うん。あたしを見捨てたはくじょーものたち」

 

 そうこうしていると、最初に大声を出した少年がこちらに駆け寄ってきた。

 

「やっぱりツバサだ! 良かった! 無事だったんだな!」

 

 そしてツバサの肩に手を触れようとしたので、ツバサがその手を払いのけた。

 

「良かった? 無事だった? ……ふっざけんな! あの後あたしがどんな目に遭ったと思ってるのよ!」

 

 怒髪天を衝く勢いのツバサに、少年はたじろぐ。

 

「みんなして先に行っちゃって、あたし一人取り残されて死にかけたんだから! よくそんなのんきな顔でいられるわね!」

 

「あ、悪い悪い。やっぱり緊急脱出装置持ってなかったんだな。ガマの爆煙でよく見えなくてまさかとは思ってたけど、本当に保険に入ってなかったとは思わなくて……」

 

「なにをぉー!」

 

 まぁ、そこは俺も思うけど。

 普通は入るからな、安心脱出保険。

 

「あのあと俺たちもみんなやられちゃってさ。先に還ってると思ってたらツバサだけ出てきてないし。どうしようかと思ってたとこだったけど……、生きてて良かったよ、なぁ、みんな!」

 

 少年は他の仲間たちに振り返り、他の奴らもうんうん頷いている。

 

「なくした装備品とか保険代は痛かったけど、命には替えられないし……。良い勉強になった、ということだな!」

 

「……はぁ?」

 

「それに、これでまたパーティー完全復活だ! 今度こそ実力をつけてあの沼地をクリアしようぜ!」

 

 少年はそう言って、ツバサに向けて手を差し出した。

 

 おお、こいつマジか。

 

「……なにこの手」

 

「今日はツバサの無事を祝って飲もう! 大丈夫、カネならまだ残ってるからツバサの分も俺が出すし! また明日から力を合わせて上を目指そうぜ!」

 

「…………」

 

 ははは。

 人気者だな、ツバサ。

 

 まぁ、こいつバカだけど顔は可愛いらしい胸もデカいからな。

 同じ年頃の男なら、鼻の下伸ばして仲良くしようとするのも当然か。

 

 で、お前の返事はどうする?

 

「……誰が、」

 

 ツバサは握り締めた拳をブルブルと震わせたかと思うと、

 

「お前らと、……潜るかー!!」

 

「うげぷっ!?」

 

 そのまま拳を振り上げて、少年の顔を殴りつけた。

 少年は情けない声を出して床に倒れ込んだ。

 

 あーあ、殴っちまったか。

 

 他の連中が倒れた少年に慌てて駆け寄る。

 

「な、なにを……!」

 

「マジでふざけんじゃないわよ! なんでまたあんたたちみたいなチ◯カスと潜んなきゃなんないのよ! 二度とごめんだわ! ボケ!」

 

 そのまま倒れた少年に掴みかかろうとしたので、俺はツバサの襟を掴んで止めた。

 

「それ以上はやめとけ。見苦しいから」

 

「だってタッキー! こいつが!!」

 

「別にそいつだけ悪いわけじゃないし、ここでこれ以上騒ぎを起こしたらこの店を出禁になるぞ」

 

 ここのチャーハンはマジで美味いんだ。

 俺までまとめて出禁になったら困る。

 

「あたしとチャーハンどっちが大事なの!?」

 

「今はチャーハンだ」

 

「くううっ……、タッキーもバカ!」

 

 バカはお前だろ。

 そもそも、だ。

 

「こんなしょーもない連中相手にマジになるなよ。顔見りゃ分かるだろ。こいつらお前に負けず劣らずアホだぞ」

 

「なっ!?」

 

「それに俺たちはここに飯を食いに来たんだ。こいつらとケンカするためじゃない」

 

 ということで、俺は暴れるツバサを引きずっていこうとしたのだが。

 

「ま、……待てよ! お前誰だよ! つーかなんでツバサと一緒にいるんだよ!」

 

 と、ツバサに殴られた少年が俺を指差して言う。

 

 やめろやめろ。

 人を指差すな、恥ずかしい奴め。

 

「それにアホって! なんでお前なんかにそんなこと言われなきゃなんないんだ!」

 

「そうだそうだ!」

 

「調子乗んなよテメェ!」

 

 他の連中も一緒になって俺に罵声を浴びせてくる。

 

 なんで、だと?

 

「お前ら、見たところ前衛五人組パーティーだな。やりとりを見るに関係性もそれなりにある。元々の友人同士でパーティーを組んだクチだろう」

 

「そ、それがどうしたんだよ」

 

「低ランクダンジョン探索だから前後衛のバランスはさておくとしても、そこにコイツを足して前衛六人でパーティーを組むだと? 探索効率を考えたらコイツを入れる理由がまったくない」

 

 ツバサの元々の装備は知らんが、あのステータスでソロで暴れ兎に勝つとすれば、安価で近接系のショートメイスあたりを使っていたはずだ。

 

 だが、前衛が5人もいるところにツバサが入って前衛6人になっても、なんの旨味もない(囲んで殴るだけなら3、4人いれば十分で、5人でも多過ぎだからな)。

 

「申し訳ないが、探索を主目的として組んでいたとは思えん。コイツのツラとチチに鼻の下を伸ばしてやましい気持ちでパーティーを組んでいたように思える」

 

 そういう浮ついた気持ちで、一歩間違えれば死にかける危険な場所に出向いて、実際危うく死にかけているんだ。

 

 これがアホじゃなかったら何だっていうんだ。

 

「べ、別にいいだろ!? それに、はじめはそっちから合流させてくれって言ってきたんだぞ!」

 

「そうだそうだ! 一人じゃ心細いから一緒に潜ってほしいって。だから俺たちはしかたなくそいつを……!」

 

 ふむ、そうなのか?

 

 それを聞いたツバサは、さらに気炎をあげた。

 

「はあっ!? アンタたちが誘ってきたんでしょ! あたしのステータスなら大丈夫とか、何かあってもちゃんと守るからとか言ってたじゃない!」

 

「い、言ってねーし!」

 

「そうだよ、テキトー言うなよ!」

 

「コイツらー!」

 

 おっと、水掛け論だ。

 まぁ、どっちでもいい。

 

「まぁ、いずれにせよ、すまなかったな。しかたなくとはいえこんなバカの面倒を見させて。これからは俺のほうできちんと教育しておくよ」

 

 ダンジョン探索のイロハのイからこいつの空っぽの頭に叩き込んで、誰にも迷惑をかけない一人前の探索者に仕上げてみせるさ。

 

「そういうわけだから、もうお前たちは俺やツバサに絡んでくるなよ。いちいち俺にバカにされるのも腹が立つだろう?」

 

「じゃあバカにしてくんなよ!?」

 

 じゃあバカにされるようなことするなよ。

 

 少なくとも、お前らよりマシな新人パーティーなんていくらでもいるぞ。

 

 事前準備さえきちんとしていれば、E級ダンジョンなんて普通にクリアできる難易度なんだからな。

 

「というか、だからなんでお前がツバサと一緒に潜るって話になるんだよ! 俺たちが先にパーティー組んでたんだぞ!」

 

「だからなんだ? 新入りの装備をろくに確認もせず、事前の情報収集も雑だ。不注意でミスした仲間のフォローもなければ、再び潜って助けに行くこともしてないんだろう? そんな奴らと組んでて、ツバサにこれ以上なんの得があるんだ?」

 

 俺は、少なくともお前たちよりはちゃんと探索者として面倒を見ているぞ。

 

「損得だけが全てではないが、実力的にも感情的にも、お前たちとツバサが再びパーティーを組んでもお互い損しかしないだろう。お前たちも、もう少し基礎的なことから学び直して……」

 

「ぐうううぅ〜〜! うるせー! うるせーっ!! つべこべ言わずにどっか行けよ! いかないと……!」

 

 俺は、少年に殴られた。

 ボカ、ボカっと。

 

 俺はよろめき、ツバサが「きゃっ!?」と悲鳴をあげた。

 

「ちょっと! なにするのよ! 大丈夫タッキー!?」

 

「へっ! そんなヒョロっちいのより俺たちのほうが強いぜ! おら、こっち来いよツバサ!」

 

 そう言って少年がツバサの腕を掴もうとする。

 俺は、その少年の手をそっと掴み、くいっと捻ってぎゅっと押した。

 

「あ、あいたたたたたたたたたっ!?」

 

 少年の肘関節が曲がらない方向に極まり、少年が絶叫する。

 

 ははは。

 痛いだろ。

 

 ツバサが先に殴ったから一発なら許してやったが、二発も殴られる筋合いはないぞ。

 

「なぁ、そこまで言うなら勝負するか?」

 

「痛い痛い痛い痛い痛い!? は、はなせーーっ!?」

 

「俺とお前たちとで勝負しようぜ。そうだな、タイムアタックで先に白ダンクリアしたほうが勝ちってことでどうだ?」

 

 こっちはハンデとして、俺一人でクリアしてやるからよ。

 

「分かったから、はなしてくれーーっ!?」

 

 ははは。

 よし、それならルールを詰めようか。

 

 俺がぱっと手を離してやると、少年は涙目で尻もちをついたのだった。

 




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