俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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14話目・勝敗は戦う前からほぼ決まっている

 

 ◇◇◇

 

 白ダンタイムアタック。

 

 ルールとしては簡単だ。

 入口門を潜ってから地上に出てくるまでの時間を競う。

 より短い時間で出てきたほうが勝ちだ。

 

 なお、きちんとボスをクリアした証として「暴れ兎の肉」を持ち帰らなくてはならないし、スタート前には所持品枠に「暴れ兎の肉」が入っていないことを立会人(今回なら、門番のおっちゃん兵士だ)に確認してもらう。

 

 また、再登場(リポップ)待ち時間などの公正を期すために、先行パーティーが入った30分後に後行パーティーがスタートすることにした。

 

 今回は少年らが先行、俺が後行だ。

 

「怖けずに来たな! こないだの借りは返させてもらうぜ!」

 

 リーダー格の少年(俺を殴ったやつだ)が言う。

 

 俺はそれを無視してタグプレートを操作し、おっちゃん兵士に所持品枠を確認してもらった。

 

「無視すんなよ!!」

 

 はいはい。

 

「で、この一週間で準備はできたのか?」

 

 飯屋で一悶着あった日から、今日で一週間だ。

 

 最低限の装備を整えるための準備期間ということで、俺はわざわざ一週間待ってやった。

 

 まぁ、こっちもツバサの歩き方を矯正するために時間がかかるからな。

 

 この一週間は有効活用させてもらったよ。

 

 おかげで以前に比べれば、ツバサも足音が静かになってきたように思う。

 

 なお、毎日歩き疲れたとか言ってしっかり公衆浴場で湯浴みをし、いろんな飯屋で晩飯をバカ食い(幻想体でいる間は腹も減りにくくなってるはずだが……)し、夜は安全な宿でしっかりぐっすり寝てるから、少しずつツバサの肌ツヤが良くなって身体つきがふっくらしてきた気がする。

 

 幻想体以上に生身の身体のほうが成長してるというのも、なんだかなぁ、という気持ちだが。

 

 まぁ、いい。

 それはそれ、だ。

 

「装備品が足りなくて素手で暴れ兎と戦うようなことは、さすがにやめといほうがいいぞ。それと安心脱出保険、入り直したか?」

 

「へっ! 大きなお世話だ! お前こそヒョロいんだから、あの大兎に撫でられてコロッと死ぬんじゃねーぞ!」

 

 おーけー、大丈夫そうだな。

 

「それじゃあ、そろそろ始めるぞぉ」

 

 おっちゃん兵士が時計を見ながら呟く。

 現在時刻は午前9時59分。

 午前10時ちょうどに少年らがスタートだ。

 

 少年らはぞろぞろと門の前に並び、スタートの合図とともに駆け込んでいった。

 

 俺をそれを見送ってから、おっちゃん兵士とダベる。

 

「すいませんね、本来なら業務外のことをお願いしてしまって」

 

「なんのなんの。どうせ暇だし、他ならぬター坊からの頼みだからな」

 

 いえいえそんな。

 また今度、屯所の皆さん宛に差し入れをしますね。

 

「ははは、相変わらず律儀だなぁ。……それにしても。ター坊にしては珍しいな、あんな若造どもと勝負するなんて」

 

「まぁ、俺にも色々あるんですよ」

 

「そうかそうか。ま、めんこい嬢ちゃん連れて毎日潜ってるようだから、その関係なんだとは思うがね。ター坊もとうとう、男を見せるようになってきたなぁ」

 

 しみじみとした様子でおっちゃん兵士が呟く。

 

 なんか、おめでたい方向に勘違いしてそうだが、あえて訂正する必要もない。

 

 どうせ否定したところで信じやしないんだからな。

 それならもう最初から笑ってごまかすぐらいがちょうどいい。

 

「けど、なんだか嬢ちゃんも、ここ数日で見違えるようになったなぁ。ほんとに、若い男どもが放っておかない別嬪さんになった」

 

 それはまぁ、確かに。

 

 というか、肌ツヤと血色が良くなって、髪の毛がふわふわになって、着ている服が清潔になって、全体的な肉付きが良くなってきたら、そりゃあ見栄えも良くなるよな。

 

 逆に今までが貧相すぎたわけだ。

 若いんだから、栄養と睡眠と運動が足りればそれだけでおのずと魅力は上がる。

 

「そんなことよりも、ツバサにはもっと覚えてもらいたいことがたくさんあるんですけどね」

 

 ダンジョン内の各エネミーの出現分布とか、特徴とか弱点とか経験値効率とか。

 

 ダンジョン内の地形状況とか湧き(ポップ)アイテムの拾い場とか効率的な移動ルートとか。

 

 マップやレーダーをはじめとする各種装備品の上手な使い方とか。

 

「歩き方は多少マシになってもメイスの振り方はまだまだ雑すぎるし、シールド捌きも下手くそだからすぐにダメージを受けるし、ビックリするとすぐに大きな声を出すから他のエネミーも寄ってくるし……」

 

 俺がおっちゃん兵士にツバサの愚痴を言っていると、当の本人が白ダン門前にやって来た。

 

「タッキーおはよー! もうあいつら行った?」

 

 ツバサは、キョロキョロとあたりを見渡す。

 

「ああ、少し前に入ってったよ」

 

「良かった! あいつら、たまにダンジョン内で見かけたら、いつもあたしたちのことジロジロ見てきてたしさー。なんかちょっと、おっかないんだよね」

 

 まぁ、向こうはお前目当てで今回の勝負を受けたわけだからな。

 

「というかタッキーさ。なんで一週間も準備期間を作ったの? 言っちゃなんだけど、あいつら陰で汚いことコソコソやりそうだよ?」

 

 まぁ、やるだろうな。

 というか、そのためにわざわざ一週間待ったからな。

 

「え。そうなの? なんで?」

 

「決まってる。普通にやったら俺が絶対勝つからだ」

 

 アイツらは、E級ダンジョンもクリアできないようなレベル帯で、このF級ダンジョンも合計クリア回数は10回もいってないはずだ。

 

「かたや俺はこの白ダンのクリア回数500回を超え、1000回に迫る勢いだ。もう白ダンなら目をつぶってても歩けるぐらいだし、俺は毎日ひたすら白ダンばかり潜ってた変わり者ってことである意味有名だ。ちょっと他の冒険者に聞けば、俺がどういう人間かなんてすぐに分かる」

 

 そんな俺が、白ダンタイムアタックなんて提案してきたんだ。正攻法で勝てるだなんて、普通は考えないさ。

 

「え。タッキー、自分に超有利な条件の勝負を持ちかけたの? なんかそれ、ずるくない??」

 

 ずるくねぇよ。

 自分が有利なフィールドに相手を引きずり込むのは戦いの基本だ。

 

 こっち有利の勝負を呑ませるために、わざわざ殴った殴られたの状況を作って場を荒れさせたんだ。ちゃんと白ダンタイムアタックにならないと、殴られ損だろ。

 

「で、向こうもどっかのタイミングで俺のことを知っただろうが。その時になって勝負方法の変更を申し出るのはビビってるみたいで嫌だろうし、なにより俺の鼻っ柱をヘシ折りたいなら、俺の有利な勝負というのは呑まざるを得ない」

 

 そしてそれを後押しするのが、一週間の準備期間の存在だ。

 

「俺になんとか恥をかかせて倒したいと思えば、むしろこの準備期間をいかに有効活用するかに頭を使う。頭を使って、準備をして、そして気づかないんだ」

 

 本当に俺に勝とうと思ったら、俺に頭を下げてでも勝負の内容を変更するしかないのにな。

 

「まぁ、奴らがどんな感じのことをしてくるかは読めるし、事前に集めた情報を読む限り、だいたい読み通りのことをしてくるだろう」

 

 まぁ、心配いらんさ。

 

「ちょっと新人たちに、先輩の強さを見せてやってくる」

 

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