俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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15話目・口を動かすより先に手を動かすべきである

 

 午前10時30分になったので白ダンに入った。

 

 肉体が幻想体に置き換わる感覚とともに俺は駆け出し、真っ直ぐに次の階層に繋がる下り階段に向かう。

 

 ちなみに、最初に警戒すべきは実はダンジョン入り直後で、入った瞬間に取り囲まれて袋叩きにされる可能性もあったが、

 

「ま、さすがにそれはしてこなかったな」

 

 俺は無事にダンジョン入りできた。

 

 ということは、奴らはすでにこの階層にはいないだろう。

 

 俺が格上相手と同じ勝負するなら、それなりの手練れを雇ってダンジョン入り直後に全力の不意打ちを仕掛けるが。

 

 まぁ、たとえそれで勝ったとして、奴らが納得できるかは別の話(俺は全然へっちゃらだけどな)だ。

 

 少なくとも、自分たちがいないところで俺が落ちて(緊急脱出して)も、アイツらは勝った気になれないのだろう。

 

 まぁ、それならそれでいい。

 

「その慢心を後悔させてやるよ」

 

 俺はひたすら最短ルートを駆け抜け、2層、3層と最大速度で踏破していく。

 

 そして3層の中間地点あたりで。

 

「……来たか?」

 

 レーダーの端に、幻想体の反応がひとつ。

 

 十中八九、奴らの仲間だ。

 

 おそらく奴らの中で一番足の速い(速力が高い)やつが俺の動向を偵察しに来たのだ。

 俺のことを待ち伏せるなら、どのタイミングで来るかは気になるもんな。

 

 距離から考えて、レーダー反応ではなく(新人の奴らが俺より高性能なレーダーを使っているとは思えないしな)目視か双眼鏡で見られているか?

 

 俺は近くの岩場に隠れてデコイマフラーを取り出し、岩場の奥に押し込む。

 

 それからこそこそマントを身につけて岩場の陰に這いつくばり、レーダー反応がどう動くか観察した。

 

「……寄ってくるか」

 

 見張り役は、どうやら俺の姿が見えなくなって焦ったようだ。

 

 真っ直ぐにこちらに近寄ってくる。

 

 おそらく、レーダーを起動してこちらの位置を捉えようとしているな。

 

 俺はレーダー反応の動きを見ながらそっと岩場を離れ、デコイマフラーの反応に騙されて岩場に近寄ってくる奴の姿を直に見る。

 

 やはりというか、対戦相手のパーティーメンバーのひとりだった。

 

 ここでコイツに不意打ちして、奴らの戦力を削いでやってもいいんだが……。

 

「……いや、外でツバサが待ってるか。やめとこう」

 

 落ちたコイツが外でツバサと鉢合わせしても面倒だ。

 

 俺を見失っている間にさっさと先に進ませてもらおう。

 

 俺はそのままそそくさと這うように移動し、ある程度岩場から離れたところで再び駆け出した。

 

 4層に降りる直前でデコイマフラーを解除したので、たぶん俺がいないことに気づいて追ってくるだろう。

 

 それにどうせ奴ら、ボス部屋の前で待ち構えているだろうしな。

 

 どのみち戦闘になるならまとめて戦ったほうがやりやすい。

 

 俺はそんなことを考えながら、ダンジョン内を走り続けた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 で、ボス部屋の前まで来ると。

 

「来たなクソヒョロ……!」

 

 案の定というか馬鹿正直というか、先に入った少年たちが俺のことを待ち構えていた。

 

 しかも。

 

「思ったよりいるな。だいぶ奮発してカネ出したわけか」

 

 俺のあとを追ってきてる偵察役を除けばあと4人のはずだが、見えるだけで15人ぐらいいる。

 

 事前情報どおり、助っ人を雇って先にダンジョン入りさせてたわけか。

 

 それに、おそらく伏兵も何人かいるな。

 

 まぁ、数で囲むのは戦いの基本だしな。

 

 ここが普通の戦場だったらそれなりに脅威だっただろう。

 

 俺は、離れたところからリーダー格の少年に話しかけた。

 

「なんだお前たち、暴れ兎ごときにずいぶんと大人数で挑むんだな! よほど心配性とみえる!」

 

 といっても、この会話も偵察役がここに戻ってくるまでの時間稼ぎなんだが。

 

 しかしリーダー格の少年は、勢いづいて喋った。

 

「ははっは! 兎よりも憎たらしい奴がいるもんでね! ぜひギタギタにしてやろうと思ったんだよ!」

 

「そうか! それは嫌われたもんだな! ひとごとながら同情するよ!」

 

 と、軽く挑発してみても少年たちは余裕の表情を崩さない。

 

 ふむ、助っ人のアイツとアイツとアイツは見覚えがあるな。

 

 たしかD級ダンジョンもクリア経験があるはずだ。

 

 なるほど、自分たちより遥かに強い人間が味方について安心してやがるな。

 

 と、そこへ。

 俺の背後のほうにレーダー反応が現れた。

 

 偵察役がやっと追いついたか。

 

 そしてリーダー格の後ろにいる奴がこそっと口元を隠しているが、あれ、見張り役と通信してるな。

 

 別に口を動かさなくても喋れるのに、慣れてないからつい口が動いてるんだな。

 

 お、リーダー格に耳打ちしたぞ。

 そして何かを言い返した。

 

 偵察役はレーダーから消えたか。

 

 これは、偵察役でついてきた奴が後ろから奇襲を仕掛けて、それと同時に伏兵も奇襲。

 

 そこから全員で一斉に俺に襲いかかってくるとか、そういう感じかな。

 

 たぶん伏兵してる奴らは弓か銃で撃ってくるとして。

 

 伏兵の位置は……、さすがにレーダーには映らないが、それでもこのボス部屋前の空間で身を隠していられる場所は多くない。

 

 ここは、伏兵するにはあんまり向かない地形なんだよな。

 

 それなら3層の岩場やその先の雑木林のほうがいくらかマシだ。

 

「ま、それはさておき。お前ら、ボス部屋に入らないなら俺が先に入ってもいいのか?」

 

 まぁ、先にボス部屋に入った時点で俺の勝ちが確定するから、コイツらがYESと言うわけはないんだけど。

 

「まぁ待てよ。言っただろ。兎よりも叩きのめしたい奴がいるって」

 

 そう言って、リーダー格の少年がロングブレードを抜き、構えた。

 

 他の連中も無言で獲物を構える。

 

 さて、向こうの準備は整ったようだ。

 

「そうなのか。タイムアタックだというのに、悠長な話だな」

 

 こちらはいつでもヤれるというのに。

 

 俺はすぐさま、この階層に降りたときからずっと左手に隠し持っていた使用状態の「煙幕」を、足元に叩きつけて破裂させた。

 

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