俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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19話目・トラウマ解決には爆発がいい

 

 なんだなんだ、せっかく静かな店にしたっていうのに。

 デカい声で怒鳴りやがって。

 

 いったい何事だ?

 

 俺は隣のテーブルに目を向ける。

 そこには、立ち上がってわなわなと震えている若い奴がいた。

 雪みたいに白いモシャモシャ髪の、背の低い女だ。

 

 コイツか、さっき怒鳴った奴は。

 というか、コイツらって……。

 

「おい、ゴンザ! キミはボクの何が不満だって言うんだ! 今日だって華麗に活躍してみせただろうが!」

 

 立ち上がっている若い奴が、さらに怒鳴る。

 

 同じテーブルに着いている連中は皆一様に苦い顔をしていて、その中のリーダー格らしきヒゲの男がギロリと若い奴を睨む。

 

 やっぱりか。

 コイツら、少し前に黄ダン(C級ダンジョン)をクリアした連中だ。

 

 新進気鋭の急成長パーティーということで一時期街中の話題にもなっていたはずだが。

 

 いったい何を揉めているんだ?

 

「華麗な活躍だと……? やかましいわ! 調子に乗るな! バカスカドカドカ周りも見ずにぶっ放しやがって! ユミィが攻撃したら倒した以上に敵が寄ってくるんだよ!」

 

「そいつらもまとめてボクが薙ぎ払ったんだから良いじゃんか!」

 

「良いわけあるか! どんどん無駄に戦闘が長引いて、危険と消耗が増える一方だ! おかげで今日も若干赤字なんだぞ!」

 

 ああ、それは良くないな。

 俺は他人事ながらそう思った。

 

 だが、ユミィと呼ばれた白髪の若い女はそうは思わなかったらしい。

 

「ふんだ! ボクがたくさん倒したのに、ドロップ品を集めきれなかったのが悪いんだろう! あれを全部拾ってきてたら間違いなく黒字になってたよ!」

 

「はっ、馬鹿ぬかせ! あんな乱戦になって、そこら中に散らばった大量のアイテム拾ってこられるか! それに所持品枠の限界もあるんだぞ、どっちみち無理だ!」

 

「なんだよその言い草! じゃあ、戦闘はボクだけでやるから、その分キミたちは所持品枠を増やしてたくさん持って帰れるようにしたらどうだ!」

 

 おいおい、むちゃくちゃ言う奴だな。

 

 すると当然、ゴンザと呼ばれている男は激怒した。

 

「ふっざけんじゃねぇ!!!」

 

 ビリビリと、建物中が震えるような怒声だった。

 

 他の客まで成り行きを見つめているし、店員たちは厨房のほうから震えて見ている。

 

 ツバサは大声で耳がキーンとなったのか目を回しているようだし、

 

「な、なんだよぉ……」

 

 今まで勢い込んでいたユミィとやらも、さすがの剣幕にたじろいている。

 

「テメェ、俺たちのことを荷運びの小僧っ子かなにかだと思ってやがんのか? よくぞまぁそこまでみくびれたもんだな」

 

「み、みくびってなんかないだろ! ただ、そっちのほうが、皆は戦わなくていいから安全だろって……」

 

 いや、んなことないだろ。

 

 戦闘用装備品の代わりに所持品枠増加を積むなら、もしコイツが落とされたら残りのやつは自衛戦闘もできないということだ。

 

 そうなれば、結局全滅になるのは目に見えている。

 そんなことも、コイツは分かっていないのか?

 

「こちとら命懸けの場所に、毎回腹括って潜りにいってんだよ。テメェは楽しい遊び場ぐらいに思ってるかもしれねぇが、俺たちにとってはいつ死んでもおかしくない死地だ。そんなところに、武器も持たずに行けだと? ユミィお前、そんなに俺たちに死んでほしいのか?」

 

「なっ、ちがっ……! ボクは、キミたちのためを思って……!」

 

「おう、それならとっととパーティーから出てってくれや。お前が俺たちのためを思うなら、そうしてくれるのが一番親切だぜ?」

 

 ゴンザの言葉に、ユミィは何度か口をパクパクさせたが、何も言葉が出てこなかった。

 やがてガタリと腰を下ろし、ガックリとうなだれた様子で黙り込む。

 

 その様を見たゴンザは舌打ちをひとつした。

 

「おう、オメェが出ていかねぇなら俺たちが出ていく。行くぞお前たち。宿に戻る」

 

 そして、ユミィを残して皆立ち上がった。

 

 ゴンザがちらりと俺を見てきたので、俺は二本指を立ててヒラヒラと動かした(気にするな、カネさえ出せば文句ねぇ、のサインだ)。

 

「おう、皆さんお騒がせした。この場に出てる飯代は俺たちが持たせてもらう。おい店員、明日にでも領収を回してくれ。それとこれは、詫び代だ」

 

 ゴンザは怯えているウェイトレスにカネを握らせると、仲間たちとともに店を出ていった。

 

 やがて、徐々に店内は元の雰囲気に戻っていく。

 

「…………」

 

 うなだれたままの、ユミィを除いて。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 そんなこんながあった日の翌日。

 俺とツバサは再び黒ダンに潜った。

 

「ね、ねぇ。ほんとにやるの……?」

 

 俺は、所持品枠に大量の爆弾を持たせたツバサを連れて、再び第6階層の地雷ガマの密集地帯に来ている。

 

「ああ。昨日は腰を抜かして近寄ることもできなかったが、今日はここまで近寄れてるじゃないか。少しずつでいいから、慣れていくんだ」

 

 なんとしても、ツバサには地雷ガマの爆発の恐怖を乗り越えてもらわないと困る。

 

 なので、ツバサに地雷ガマ退治の方法を教えているのだ。

 

 やり方は簡単。

 火属性で攻撃するか、爆弾の爆発で誘爆させるか、だ。

 

 だが、ツバサの弓の腕は一朝一夕ではどうにもならんレベルであるため、

 

 今回はひとまず、爆弾を使う。

 

 爆弾の火力は正義だ。

 どんな初心者でも、地雷ガマと同程度の爆発を引き起こせるんだからな。

 

 頑張れツバサ!

 お前ならやれる!

 

「う、ううぅ〜〜……!」

 

 ぶるぶると震えているツバサだったが、やがて「うー、やったるぞぉー!」と気合いを入れた。

 

 いいぞ!

 こういう時ばかりは、気合いと根性でなんとかするんだ!

 

「とにかく、手の中に具現化したらPPを込めて使用状態にするんだ。手で握っている間はピンが抜けないから爆発することもない。そして、心を落ち着かせたら思いっきり遠くに投げろ!」

 

 ここはぬかるみだからハネ返ってくることはない。

 爆発地点の近くにガマがいれば勝手に誘爆するから、それで倒せるぞ!

 

「う、うん……!」

 

「もし何かあっても、俺がなんとかしてやる! だから気にせず投げろ!」

 

「分かった! ……えいっ!」

 

 と、上手投げ(オーバースロー)で爆弾を投げようとするツバサ。

 

 第一投目は手を離すのが遅すぎて、ツバサの足元の地面に爆弾がズボッと突き刺さった!?

 

 それはヤベェっ!!?

 

 俺はとっさにツバサを抱き寄せながら地面に押し倒し、俺たちと爆弾の間にフェンスシールドを三枚、上向きの斜め45度の角度で出した。

 

 次の瞬間、俺たちの足先のほうで爆弾が爆発し、大量の泥が巻き上がって上から降ってきた。

 

 ぐっ、なんとか幻想体へのダメージは回避したぞ……!

 

「あっぶな……! いやお前、さすがにそこまで下手くそだとは思わんかった! 次は下手投げ(アンダースロー)にしろ……!」

 

「う、うん。ごめんね、タッキー」

 

 謝るツバサを引き起こして、所持品枠の爆弾を装備品枠に付け替えさせる。

 

 一応、これも練習して戦闘中でもとっさに装備品を入れ替えられるようになるべきなんだが。

 

 まずは、ダンジョン内での所持品から装備品への付け替えに慣れるところからだな。

 

 そしてそれから、試しにそこらへんに落ちている石で何度か投げる練習をさせてから、再度爆弾を投げさせた。

 

 今度は、下手投げで上手に遠くまで投げたので、爆炎でちょっと顔が熱いぐらいですんだ。

 

「えいっ、えいっ、……えーっい!」

 

 それから何度か爆弾を投げているうちに、ツバサも多少は地雷ガマへの恐怖を克服できたようだった。

 

 ふぅ、良かった。

 

 そしてそれに伴って、ツバサのレベルも少し上がった。

 

・━・━・━・━・

 

【ステータス値】

LV・15(stock=33)

知力・G(5+0)

心力・F+(23+1)

速力・E(25+11)

技力・F(9+9)

筋力・B-(40+44)

体力・C+(28+50)

 

・━・━・━・━・

 

 よしよし、レベルが3上がって、ストックが33も増えたぞ。

 

 ……いやコイツ、ほんとに運は良いな。

 ほぼ上ぶれ上限の上昇可能量をストックしてやがる。

 

 まぁ、良いけどさ。

 全然成長しないよりは、よっぽど良い。

 

「ということで、爆弾が尽きたから一旦地上に戻るぞ。ここからなら、少し戻って階段上がってアイススライムのボス部屋に入り直したほうが早く出られる」

 

「はーい!」

 

「昼飯食ったら今度は白ダンに入って、ストックの使い方を教えてやろう」

 

「はーい!」

 

 というわけで、ガヤガヤと賑わう飯屋に来たんだが。

 

「すまないねぇ、ちょっと混んでるから相席でもいいかい!」

 

 と言うウェイトレスのおばちゃんに案内されたテーブルの席には、先客が一人座っていた。

 

 おいおい、コイツは……。

 

「あれ、この人確か昨日の……?」

 

 と、ツバサが指差した先には、昨日パーティーを追放されてうなだれていた白髪少女のユミィが座っていたのであった。

 

 マジか。

 

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