俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。 作:龍々山ロボとみ
ユミィの部屋を確認してから自分の部屋に戻ると、部屋で待っていたユミィにめちゃくちゃに詰られた。
「このクソボンクラ! ここがキミの部屋だなんて聞いてないぞ!!」
そして、ユミィと一緒に俺の部屋にいたツバサが、大きな声で聞いてくる。
「ねぇタッキー! ユミィちゃんがタッキーのベッドで寝てたんだけど!? いつの間にそんな関係になったの!?」
は?
……お前、マジか。
「あああああ!? だってキミ、ここはツバサの部屋だって言ったじゃないか! ボクも疲れててウトウトしてきたから、ツバサのベッドを借りようと思っただけなのに!! なんであんな嘘ついたんだ!!」
だってお前、俺の部屋だって言ってたら絶対またなんか面倒臭いことをゴチャゴチャ言うだろ。
「当たり前だろ! あああもおおおお!」
頭を抱えてのけぞるユミィ。
俺は、どっちにしろコイツうるせぇなと思いながら、背負っていた風呂敷包みを下ろす。
「ユミィ。残念だがやられてたぞ」
「なにがだよぉおお!」
「おそらくガーコンたちに、お前の部屋の荷物を持ち出されてた」
その瞬間、ピタリとユミィが固まる。
「お前、宿のフロント前でガーコンたちと待ち合わせてたことがあったんだろ」
ぎこちない動きでユミィが頷く。
「お前に頼まれたとかなんとか言って、フロントから鍵を受け取ったんだろうな。お前の部屋にあった予備の装備品とか金目の物とかをあらかた持ち出してやがった」
残ってた物をまとめたのがこれだ。
俺は風呂敷包みを解く。
中にはユミィの日用品や衣類が入っている。
「幸い、服や下着は荒らされた形跡はなかった。当面のカネも多少はタグプレートに入ってるだろ。俺が話してきてやるから、この宿で新しく部屋を取るといい」
ああ、それと。
「お前、意外と派手な下着が好きなんだな。……見せる相手もいないくせに」
「……!!」
俺は、怒りのままにぴょんと飛びかかってきたユミィを振り解くのに、しばらくの時間を要した。
◇◇◇
「つまり、ユミィちゃんがひどい目に遭った、……ってコト!?」
まぁ、ざっくりまとめるとそうなる。
「そんな! かわいそう! ねぇタッキー、今日はユミィちゃん、あたしの部屋で一緒に寝てもいい??」
良いけど、寝る前はちゃんと歯磨きして、夜更かしせずに寝ろよ。
「はーい! やったねユミィちゃん、お泊まり会みたいだね!」
とかなんとかやり取りがあって。
ツバサには、ユミィが困っているので仮の弟子二号としてしばらく面倒を見ると伝えた。
復讐の話は一旦内緒だ。
ツバサに伝えても利がない(というか、外でぽろっと漏らされても困る)し、どのみちコイツは茶ダンに連れて行けないからな。
明日以降で、ガーコンたちが茶ダンに潜ったタイミングで仕掛ける。
取り返すべきものも増えたしな。
勝手に持っていかれたユミィの所持金品分のカネも取り立てないといけなくなって、より手が抜けなくなった。
「今日のところは、俺が飯を買ってきてやるからツバサと一緒に部屋で食べるといい。濡れタオルで体を拭けるように桶湯も頼んでおいてやる」
あとでツバサの部屋に「すやすやベッド」とシーツも置いとくから、ベッドメイクは自分でしてくれ。
「はーい!」
「……ありがとう」
ということで近場の屋台に晩飯を買いに行き、ついでに手の空いてるやつにカネを渡して情報収集を依頼する。
そしてその日の夜はしっかり寝て。
翌日。
俺は、情報収集を頼んでいた
すると斥士の男がニヤつきながら俺に腕を回し、耳打ちしてきた。
「なんだタキ
その両方だ。
だが、これ以上お前が噛んでも得られる利益はないぞ。
「そうか? ま、今はそういうことにしておこうか。だが、地上で人手がいるならいつでも言えよ」
んー。まぁ、コイツらを拷問にかけなきゃならなくなったら、頼もうか。
「おう、それでいい。じゃあまたな」
それだけ言い残して、男は音もなく人混みに紛れていく。
……やっぱあいつ、ダンジョンの中より地上のほうが動き良いな。
ヌケニン、とか言ってたけど、以前はどういう仕事をしてたのやら。
さて、手元に入った情報によると、ガーコンたちは明日の午前中から再び茶ダンに潜るらしい。
予定では昼までには蜃気楼階段を倒し、夕方にはスフィンクスを倒す。
そしてそこで一泊し、翌日にはピラミッド入りして財宝探しに挑む、と。
それなら俺が狙うべきは、当然スフィンクス討伐後だ。
ここで奇襲を仕掛けてやる。
それから俺は、今回の作戦のために必要なものを買い回った。
そして爆弾買うなら御用達の「アルケミー・バクエンバクエンバクエンエン!」にも立ち寄ると、
「あら、セリー君だ。いらっしゃい」
転がる鈴のような美しい声が聞こえてきた。
この声は!
俺は、声の主のところへバビュンと駆け寄った。
やっぱりだ!
「シオンさん! おはようございます!」
「おはようセリー君。今日も元気だね」
「はい! 今日もバクエリーナさんの爆弾を買いにきました! 10個ください!」
「はーい。バク叔母さーん、爆弾10個だってー」
そう言って店の奥に引っ込んでいくシオンさん。
ふふふ、今日はツイてるな!
まさかシオンさんがこっちの店に来てくれてたなんて!
シオンさんはここの店主のバクエリーナさん(通称バクちゃんさん)の姪っ子さんで、俺より二つ歳上の大人の女性だ。
スラッと高い身長と安産型で豊かな腰回りというだけでも素晴らしいのに、錬金術の造詣が深く、サラサラの黒髪にメガネの似合うキリッとした知的美人だ。
ぶっちゃけめちゃくちゃタイプだ。
なんとかもっとお近づきになりたいが、普段は別の街に住んでいるのでなかなか顔を合わせられず、いまだに俺は「よくこの店に来る常連客の一人」ぐらいにしか思われていないのだ。
「はい、どうぞ。分かってると思うけど、取り扱いには十分気をつけてね?」
「了解です! ご忠告ありがとうございます!」
俺は、シオンさんに気にかけてもらったという事実だけで胸の奥が温かくなり、ホクホクした気持ちで爆弾を所持品枠に入れた。
すると。
「ねぇ、そういえばセリー君って、けっこう前から探索者をしてるんだよね?」
シオンさんから話を振ってくれた!?
こ、答えなくては……!
「はい! かれこれ5年はやっています!」
「やっぱり! じゃあ、もしかして茶ダンとかにも潜ったことあるの?」
「あります! クリアしたこともあります!」
「ほんと! じゃあ、今度手が空いてるときで良いんだけど、太陽の赤石っていうアイテムを取ってきてくれないかな? 作りたいアイテムの材料で、どうしてもそれだけ中央市場で買えなくて」
赤石ですね!
任せてください!
「もし手に入ったら、このお店に持ってきてほしいの。そしたらまた取りにくるから。報酬は……、そうだ、」
シオンさんが、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「私とデートでもする? ……なんちゃって。うそうそ、相場の一割増しで買わせてもらうね」
…………はっ!
危ない危ない。
あまりにも刺激的な発言に、意識が飛びそうだった。
「それじゃあよろしくね、セリー君。期待してるから」
俺は、気合いに満ちた心持ちで店をあとにした。
ふふふ……!
待ってろよ茶ダン。
待ってろよスフィンクス!
赤石落とすまで何度でもぶちのめしてやるぜ!
そしてついでにガーコンたちもぶちのめしてやるぜ。
俺は、ルンルン気分でスキップしながら宿に戻り、
「タッキーどうしたの? なんか変なテンションだよ?」
「なに浮かれてんだよこのボンクラ。準備はちゃんとできたんだろうな?」
あらためてバカ二人の哀れな体型を目にし、鼻で笑ってやったのだった。