俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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28話目・待ち伏せしながら世間話をする

 

 ◇◇◇

 

 茶ダンには、第1階層から第5階層までのいくつかの地点に、飲み込まれると下の階層のフロアボス部屋(5層、10層、15層のいずれかだ)内まで落ちていく流砂がある。

 

 トラップギミックのひとつなのだが、落ちた先のフロアボスを倒せるレベルの探索者たちからすれば、長い砂漠の大半をショートカットできる便利な機能となるわけだ。

 

 もちろん、流砂の中には呑まれた時点で圧死するタイプのものもある(というか、大半はそのタイプだ)ため、近道用の流砂の場所を知らずに不用意に飛び込むのはオススメしない。

 

 そして俺は、15階層のボス部屋に通じる近道用流砂の場所を知っている(以前、とあるツテで教えてもらった)ので、今回はそこを使う。

 

 ユミィの話では、ガーコンたちは第3階層から10階層のフロアボス部屋に行く近道用流砂を使うらしい。なので、

 

「あとから入った俺たちが、アイツらに気づかれずに追い抜くことができるってわけだ」

 

 ということで俺は、ガーコンたちが予定通り茶ダンに入ったのを見届けてから、ユミィとともに茶ダンに入った。

 

 今は、第2階層から15階層に続く近道用流砂の地点に向かっている。

 

 まだまだ余裕はあるが、奴らより先に蜃気楼階段を完全撃破し、スフィンクスも退治してから待ち伏せする必要があるので、それなりに急ぐ。

 

「お、おい、ちょっと、歩くの早いぞ!」

 

 後ろで白髪チビが文句を言っているが、無視だ。

 

 幻想体なんだからこれぐらい遅れずについてこい。

 

「ツバサが言ってたとおりだな! このボンクラ、ほんとにスタスタ歩きやがる! おい、ボクとはぐれたらお互い困るだろ! もう少し歩調を合わせろよ!」

 

 ちっ、仕方ないな。

 

 俺は振り返り、ズンズンと肩をいからせて歩いてくるユミィを待った。

 

「キミな、速力が高くて歩速も上がってるんだから、意識して遅く歩かないとダメだぞ」

 

 すると、追いついたユミィにこんなことを言われる。

 俺は反論しようとしたが、

 

「パーティーメンバー同士で足の速さが違うなら、普通は一番遅いやつに合わせるものだろ? それぐらいボクでも知ってるぞ」

 

 と、あまりにも正論を言われてしまい、渋々引き下がった。

 

 ……まぁ、集団行動で足並みが揃わないほうが問題だしな。

 陣形が崩れて連携にも影響するし、各個撃破の的になる。

 

 俺は今までずっとソロだったから気にしたことなかったが、確かにツバサも駆け足が必要になったりしていたな。

 

 これからは気をつけよう。

 

「お前に言われて治すのもシャクだが、治さないほうが悪手だから治す。気づかなくて悪かったな」

 

 すると、ユミィがオバケでも見たみたいな表情を浮かべた。

 

 なんだよ。

 

「キミ、……ちゃんと謝れるんだな。謝ったら死ぬ呪いにでもかかってるのかと思ってたよ」

 

 俺は、ムカついたのでユミィの鼻をギュッとつまんでやった。

 

 そしたら怒ったユミィに髪の毛を掴まれて、あやうく取っ組み合いのケンカになるところだった。

 

 あの弾バカが最後は俺のことを蜂の巣にしようとしやがったので、仕方なく俺が先に矛をおさめたのだ。

 

 この件が終わって地上に戻ったら覚えてろよ。マジで。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 さて、なんやかんやで近道用流砂に入り、蜃気楼階段を完全撃破(今回は4体しか出てこなかったので楽だった)した。

 

 そこからさらにどんどん進み、20階層のボス部屋にも突入。

 ユミィと二人でスフィンクスを倒した。

 

 やはり、ユミィの火力は凄まじいな。

 普段は俺が口の中目掛けて爆弾を投げ込むタイミングで一斉射撃をさせると、バカデカいスフィンクスの体全体に弾が命中しクリティカル抜きで大ダメージを与えられる。

 

 そして空中に逃げたところで俺の毒矢を浴びせ、降りてきたところにまたユミィの射撃と繰り返すと、俺一人でやるより早く終わった。

 爆弾の節約にもなるし、やはり高火力シューターがいると便利だな。

 

 というか、生意気な性格にさえ目をつぶれば、これほど優秀なシューターもいないだろうに。

 

 ガーコンたちはつくづく罪深い。

 こんな強い奴をハメて見捨てようとしたわけだからな。

 

「お、赤石ゲット」

 

 なんとなんと、シオンさんから頼まれていた「太陽の赤石」もドロップした。

 これはツイている。

 

 それほどドロップ確率の高くないアイテムだからな。

 ガーコンたちの件が終わったら何周かするつもりだったが、その手間も省けた。

 

「おいおい、いくらボクの華麗な活躍を目にしたからって、そんなだらしない顔でニヤニヤするなよな」

 

「ん、ああ、お前やっぱすごいな。天才的だよ」

 

「っ!?」

 

 俺は、シオンさんの喜ぶ顔を思い浮かべてユミィを適当にあしらいながら、ボス部屋を出る。

 

 他のフロアボス部屋だとボス部屋内に下り階段が出現する場合が多いが、ここはピラミッドに入るというフレーバーギミックのため、一旦ボス部屋から出るのだ。

 

 すると、少し先に大きなピラミッドが姿を現し、ピラミッドに入ってすぐの小部屋に下り階段がある。

 

 このボス部屋から下り階段までの間の空間は、エネミーも出なければトラップもないため、ピラミッドに挑む前にここで休息を取る探索者たちが多い。

 

 ガーコンたちもそれに倣ってここで休息を取ることだろう。

 俺たちは、ガーコンたちが来るのを物陰に隠れて待つことにした。

 

「さて、しばらくは待機だな」

 

 俺は、所持品枠の中から砂柄の布を取り出し、日除け兼迷彩として頭から被った。

 

「ほれ、お前も被ってろ。幻想体とはいえ、暑苦しさの不快感はあるだろ」

 

 ユミィは素直に布を被って、俺の隣に座り込んだ。

 

 ついでに果実水の入った水筒も渡しておく。

 幻想体でも味覚はあるし、冷たいものを飲むのは気持ちが良いからな。

 

 そして待つことしばらく。

 

「……ねぇ、ボンクラ兄さん」

 

 なんだよ。

 というか、お前いつまで俺のことをボンクラ呼ばわりするつもりだ。

 

「ボンクラ兄さんはボンクラ兄さんだろ。……いや、その、なんだ、……ありがとうね」

 

 ほんとになんだよ……。

 そういうのは、ガーコンたちをボコってカネを取り戻してから言えよ。

 

「いや、ほら、この復讐を手伝ってくれるのは、交換条件だけどさ。最初にボクを助けに来てくれたのは、そうじゃないだろ? キミは、ケンカ別れしたボクのことをわざわざ助けに来てくれたじゃないか」

 

 そこでユミィが水筒の水を一口飲む。

 俺は、まだ何か言いたそうなユミィの言葉を待った。

 

「……ボク、ダンジョン探索のことを、心のどこかで楽しい遊戯(ゲーム)だと思っていた。だけど本当はそうじゃなくて、命懸けで挑む仕事だし、迷宮内って自分と仲間しか頼れる人間がいない危険な場所なんだよね。そんな場所で、一緒に潜った人間と仲間割れするようじゃあ、ダメなんだよね……」

 

 まぁ、それはそうだよ。

 

 ダンジョンって、まわりは敵だらけの密室みたいなもんだからな。

 閉じ込められてる間は閉じ込められた者同士で協力しないと、生き延びられないぞ。

 

「そんな、仲間に見放されてばかりのボクを、キミは助けてくれただろ。あれ、あの時は驚きすぎてちゃんと言えなかったけど、すごく嬉しかったんだぜ? だから、今言っとくんだ。ありがとう、タキオン兄さん」

 

 ……どう思うのもお前の勝手だけど、俺はそこまで深く考えて助けたわけじゃない。

 

 ガーコンたちの話からユミィの居場所はある程度目星がついたからな。

 俺の幻想体ならそこまで行くのも苦じゃないし、お前みたいな才能ある奴がこんなことで死ぬのももったいないと思った。それだけのことだよ。

 

 すると、ユミィが少しだけ拗ねたような表情になった。

 

「なんだよ。じゃあボクが天才じゃなかったら、見捨ててたのかよ」

 

「その質問は意味がないだろ。お前は掛け値なしに天才なんだからな」

 

 まぁ、それに。

 

「お前が死んだらツバサは悲しむだろうからな。そうなるとアイツの育成に支障が出る。いずれにしても、そうならないようにはしたさ」

 

 ユミィがじとっとした目でこちらを睨んでくるが、俺は無視した。

 

 そして、さらにしばらく待っていたところで、

 

「……出てきたぞ」

 

 20層のボス部屋から、ガーコンたちのパーティーが出てきたのであった。

 

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