俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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30話目・復讐とは、自分自身を納得させるということ

 

 二重結界効果とは、二つのカンテラを使って二重に展開した結界の内側で緊急脱出すると、転移先が外側の結界内に留まってしまうという仕様(クソルール)だ。

 

 これは、緊急脱出装置の効果が「装備者を今いるダンジョン内エリアの外側にある安全空間に生身の状態で転移させる」というものだからだ。

 

 今いるダンジョン内エリアとは、ダンジョンの階層、階層内のボス部屋、もしくは階層内に作られた、結界壁で区切られた結界空間のこと。

 

 そしてその外側にある安全空間とは、基本的には虚空街アカシアの街中のことを指す(アカシアの敷地内はエネミーの出ないダンジョン空間で、ここは安全空間として認識されている)のだが。

 

 安全空間として区切られた結界のすぐ外側に別の安全空間として区切られた結界を展開すると、外側の結界範囲が「今いるダンジョン内エリアの外側にある安全空間」として認識され、そこで転移が止まってしまうのだ。

 

 つまり、どういうことか分かりやすく言うと。

 

「お前らの近くに潜んでお前らが作る結界範囲内にいればお前らと一緒にお前らの結界に入れるだろ、お前らが結界を作ったあとで外側にもう一つ別の結界を作り内側の結界内でお前らを落とすとお前らは生身で外側の結界内に転がることになる」

 

 というわけだ。

 

「うるせぇ! 全然分かりやすくねぇじゃねぇか!! 意味分かんねぇことヌカすな!!」

 

 と、バカ丸出しのガーコンが喚くが、すでにガーコンたちは全員俺の手によって両手両足を縄で縛られてミノムシのようになっている。

 

 ははは。

 クソ野郎の遠吠えは威勢がいいな。

 

 俺は地面に横たわるガーコンの顔を軽く蹴ってやった。

 ガーコンの鼻に爪先が刺さり、鼻血がドバドバと流れ出す。

 

「あんぎゃああああああああっ!?」

 

 おいおいどうした?

 ずいぶんご機嫌じゃないか。

 

 俺はさらに優しくみぞおちを蹴って静かにさせてから、ガーコンの顔を踏みつけた。

 

「今すぐお前たちを、縛ったままピラミッド内に運んでやってもいいんだぞ?」

 

 そうすればピラミッドに入って最初に出てくるミイラ蟲が、お前たちを優しく巣穴まで運んで生きたまま幼虫のエサにしてくれるからな?

 

「ま……! 待ってくれ! お前の望みはなんだ!」

 

 と、俺の言葉に焦った様子の副リーダーが口を開く。

 

「見りゃ分かんだろ。お前らにひどい目に遭わされたユミィが、お前たちに復讐したいんだとよ」

 

 当然だよな。ユミィはお前たちにダンジョン内で殺されかけたんだからな。

 こうして、猶予を与えて話をしているだけでも温情だと思ってくれ。

 

「そ、そうか……! だが、待ってくれ! 先日ユミィのことをハメようと言い出したのはガーコンだ! 俺たちはガーコンに逆らえなくて、渋々従っていただけで……!」

 

 ユミィの光弾が、副リーダーの頬をかすめて髪の毛を焼く。

 髪の毛の焦げる匂いに、副リーダーは情けない悲鳴をあげて身をよじった。

 

「ガーコンに逆らえなかっただって? おいおい、調子のいいことを言うなよ。そこのタキ兄ぃから聞いたぞ。ボクを捨てて迷宮を出たあとで、厄介払いができたとか言って皆でゲラゲラ笑ってたそうじゃないか……!!」

 

 ユミィの表情が歪む。

 真っ赤な瞳が激しい怒りに燃えていた。

 ユミィの背後に浮かんでいる分割された大量の光弾がブルブルと震える。

 

 俺はサッと下がってユミィの斜め後ろに移動した。

 

 その直後ユミィが、発射準備状態になっていた光弾を全てガーコンたちに向けて発射した。

 

「死ねっ!!!」

 

 百発以上の光線がガーコンたちを襲う。

 ダダダダダンッ、とほぼ一斉に着弾した。

 

「はっ、はっ、はあっ……! ……すーー、はあーーっ……」

 

 荒い息から、大きく深呼吸するユミィ。

 俺はガーコンたちのほうを見る。

 おお、やるなぁ。

 

「ヒッ、ヒッ、ハヒッ……、た、たしゅけて……、こ、殺ざないでくでよぉ〜!!」

 

 ガーコンが、涙と鼻血を垂れ流しながら情けない声で懇願した。

 他の奴らも顔を青ざめさせて、身じろぎ一つしない。

 

 ユミィの放った光弾は、全弾ガーコンたちの輪郭(りんかく)をかすめるようにして結界の床面に着弾していた。

 

 光線の威力で肌や服が多少焼けたりしているところもあるが、まともに当たっている弾は一発もない。

 

 ここまでギリギリを狙えるとは。

 コイツ、やはり天才だな。

 

 それに。

 

「自分の手で殺しとかなくていいのか?」

 

 俺は、あえて悪ぶって問う。

 ユミィは疲れたような表情で、ふるふると首を横に振った。

 

「ほんとは殺したかったけど。発射する瞬間に、……ツバサの顔がよぎった」

 

 ほう?

 アイツの?

 

「……ツバサは、自分を置いてった連中のことを、許したそうじゃないか。それに、ここでコイツらを殺したら。……ボクはそのことを、ずっと心のどこかに引きずったまま生きることになりそうな気がする」

 

 まぁ、そういうこともあるだろうな。

 

「俺は、お前がそれでいいなら、構わないぜ」

 

 お前まで無理に悪ぶる必要もないしな。

 お前の復讐心が満足したなら、そこまでにしとけばいい。

 

「……ガーコン。お前、ボクの荷物を盗んで売り払ったんだってな。地上での窃盗は、文句なしに犯罪だ。ダンジョン内でのことはさっきので水に流してやるから、地上に戻ったらきちんと法の裁きを受けろ」

 

 そうすれば殺さないでやる。

 というユミィの言葉に、ガーコンたちは首が取れそうなほどの勢いで頷いた。

 

「あと、それとは別に持ち金は全部寄越せ! 装備品もだ! 一人ずつ縄を解いてやるから、順番にタグプレートを出せ!」

 

 さもないと、と再び光弾を生成したユミィに、逆らう人間はいなかったのだった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ガーコンたちから所持金と装備品を全て受け取った俺は、代わりに一人ずつ「脱出装置(緊急使用できず手動で使用する必要のある脱出装置だ。もちろん一番安いやつな)」を渡してやった。

 

「破損した幻想体が回復して使用可能になったら、幻想体になって脱出装置を使えばいい」

 

 そうすれば、ダンジョンから出られる。

 もちろん、ダンジョンの外では衛兵たちに待ち構えていてもらうから、回復し次第さっさと出てきて大人しく捕まれよ?

 

 向こうさんも暇じゃないからな。

 公的機関の人間を無闇に待たすようなことをするんじゃないぞ。

 

 なお、結界カンテラは没収(これが一番高額だからな)したので、奴らはダンジョンからの威圧感(プレッシャー)に震えながら幻想体の回復を待たなければならないわけだが。

 

 それぐらいは甘んじて受け入れてもらおう。

 

 ユミィだって生身でしばらくダンジョン内を彷徨っているんだ。

 

 エネミーもトラップもない暑苦しいだけの空間にしばらくいるぐらい、安いもんだろ。

 

 一応、持ち込んだ水と食料は置いてきたので死ぬこともあるまい。

 

 それと、奴らが宿とか各人名義の口座とかに溜め込んでいるカネは、後で窃盗被害の弁済金名目でユミィが受け取れる手筈にしてある。

 

 そのあたりは衛兵の皆さんに事前相談(手土産を渡しておべっかを使って、こちらの要望を伝えることだ)してある。抜かりはない。

 

 で、俺はユミィと、ガーコンたちのパーティーの新入りの銃士を連れて(コイツだけはとばっちりなので、先に俺たちがダンジョン外に連れていく)20階層のボス部屋に入り直した。

 

 一応、反対から入り直してもスフィンクスと戦う必要があるのだが。

 

 ユミィの一斉射撃と俺の毒矢のコンボで何もさせずにスフィンクスを倒した。

 

 ドロップはまた「神造大理石」×3であった。

 ちっ、渋いな。

 

「……スフィンクスが、あっという間に光の泡に……」

 

 生身の銃士の男は、俺のこそこそマントを着たまま呆然としていた。

 

 俺は銃士の男の背中を小突いて、帰還用サークルを踏ませたのであった。

 

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