俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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弟子一号、ノーテンキ脳筋娘、ツバサ
4話目・無為無策の代償


 

 E級ダンジョン「黒の沼地ダークネスボトム」。

 階層数は10。

 

 5層のフロアボスと10層のダンジョンボスは多少歯応えが出てくるが、それ以外はきちんと対策をしていれば何も恐れる必要がないレベルだ。

 

 ただ、F級ダンジョンをクリアしたばかりの新人たちの半分くらいは、イケイケ気分でここに挑み、痛い目を見る。

 

 初心者が力業のごり押しで進んでもクリア可能なF級とは違い、E級ダンジョンは多少の事前準備が必要だ。

 

 無策で挑むのは愚か者の所業である。

 

 D級以上のダンジョンで同じ真似をすれば、すぐに命を落とすであろう。

 

 それがE級ダンジョンならそこそこ痛い目を見るだけで済むのだから、まぁ恩情なんだと思う。

 

 まぁ、たまに死ぬやつもいるが。

 

 そういうのは、運が悪いとかではなく、頭が悪いのだ。

 

 自分の命をすぐに決断の天秤に乗せているようでは、どのみちこの先生きのこれない。

 

「装備をちょちょっと変更して、と」

 

 俺は昼飯を食った後で一度宿に戻った。

 装備品を少し変更するためだ。

 

 このダンジョンは基本的に霧の出ている沼地を歩く。

 足場のしっかりしているところとぬかるんだところがあり、戦闘中にぬかるみに足を取られると危ないのだ。

 

 それと、出てくるエネミーの中には属性の付いた攻撃でないと倒しにくいものや、初見殺しみたいな存在の奴もいる。

 

 探索者歴だけ見れば中堅といって差し支えないこの俺が、そんな奴らに遅れを取るわけにはいかない。

 

「さぁ、今日中にここもクリアするぞー」

 

 E級ダンジョン入口門前で、俺はいつものように呟く。

 

 目標は明確に。

 そうすれば、ぎゅっと気が引き締まる。

 

 もっとも、今の俺ならほぼ間違いなく達成可能な目標だ。

 目をつぶって歩いたりさえしなければ大丈夫。

 

 さて、ダンジョンに入る。

 

 足場は悪いが、何度も通っていれば比較的歩きやすいルートは頭に入っている。

 

 まずは階段を目指そう。

 

 このダンジョンの第5階層まではフロアボス以外に戦う価値のあるエネミーがいないので、そこまでは全スルーで進む。

 

 例えばぬかるみの中に潜んでいる「スライム」というエネミーは濁った色でグネグネしたゼリー状のエネミーだ。

 ぬかるみに足を取られたと思ったらそのまま消化液で足を溶かされたりする。

 

 空を飛んで襲ってくるハゲワシのようなエネミーは高いところからのヒットアンドアウェイがうっとうしい。

 そして倒しても経験値は低いしドロップもない。

 

 デカい蛾のようなエネミーも毒の属性攻撃が面倒なわりに経験値が少なく、しかも近くの他のエネミーを呼び寄せる粉を出す。

 

 どれも戦うだけ時間の無駄だ。

 さっさと通り過ぎるに限る。

 

 途中、二足歩行のトカゲのようなエネミーの群れがいたが、「こそこそマント」で隠れてやり過ごした。

 

 あれは、今の俺のステータス値では苦戦を強いられるヤバい奴らだ。

 

 下の階層に行ってもう少しレベルが上がったら一匹残らず殲滅できるが、今は絶対に戦うわけにはいかない。

 

「クソトカゲどもが。次に会ったら覚えてろよ」

 

 捨て台詞を吐いて先に進む。

 君子危うきに近寄らず、だ。

 

 そんなこんなで第5階層に着いた。

 第5階層のフロアボスは青色のデカいスライムだ。

 名前は「アイススライム」で、うかつに近寄ると冷たい消化液をかけられ、凍って動けないまま溶かされて食われる。

 

 だから、近寄らずに弓で射る。

 弱点属性で(コア)を撃ち抜けば一撃だ。

 

「サンダーアロー」

 

 いつものように一撃で仕留めた。

 ドロップ品の「アイスゼリー」を拾い集めてから第6層に降りた。

 

 ここからは、少し戦いながら進む。

 

「ミドルボウ、ファイヤアロー」

 

 弓と火矢をいつでも使える状態にして進む。

 少し進むと小高い丘になっているところがあって、進行方向に向かってなだらかな下り坂が続いている。

 

 そしてこの丘を考えなしに下っていくルーキー探索者たちは、ここでまず痛い目を見る。

 ここから先は、今までと少し違うエネミーが出てくるのだ。

 

「んー……、あそこか」

 

 俺は、それっぽい目標物を見つけて、そこに火矢を射った。

 

 命中。

 次の瞬間、大爆発が起こった。

 

 火矢の命中地点から周囲5メートルぐらいを巻き込んで爆炎が膨らむ。

 

 爆風の余波が俺のところまで来て前髪を揺らした。

 うーん、いつ見ても凄いな。

 

「地雷ガマ、こんなところに出てきていいエネミーじゃねぇよなぁ……」

 

 この階層から、トラップ型エネミーの「地雷ガマ」が出てくるようになる。

 地雷ガマの自爆は、このダンジョンのダンジョンボスの一撃より強い。

 

 そんな奴がぬかるみの中でスライムに紛れて隠れていて、ちょこっと飛び出した頭のスイッチを踏むと大爆発するのだ。

 

 この丘から先に広がる湖沼地帯では、そのスイッチを見つけて避けて行かないと死ぬ。

 

 F級ダンジョンをクリアしたばかりの体力値の奴らでは、簡単にHPが消し飛ぶのだ。

 

 そしてそれは、今の俺も同様である。

 だから踏まないように、

 

「そこ、そこ、……そこもか」

 

 手前の丘から矢で撃ち抜いて、先に爆発させておくのだ。

 

 爆発。

 爆発。

 大爆発。

 

 周りのスライムたちもまとめて吹き飛んでいく。

 

 安全確保と経験値稼ぎの一石二鳥作戦。

 

 爆発音が続いて耳が痛いことと、音に釣られて雑魚エネミーが寄ってくること以外は何のリスクもない、素晴らしい作戦だと思う。

 

 しかし。

 

「なんか今日は、ガマの数が少ない気がするなぁ」

 

 寄ってきたものも含めて、あらかたエネミーを排除したので丘を降りてぬかるみを歩く。

 

 ドロップ品の「ガマ油」も回収しつつ、ガマの数がいつもより少なかったことに、俺は首を傾げた。

 

「レベルはまぁ、予定通り上がったからいいんだけど……」

 

 不思議なこともあるものだ、と思いながら先に進む。

 

 次の階層に降りて少し進んだところで、

 

「ん、なんだあれ?」

 

 ぬかるみの中に何かが落ちていた。

 知らない罠か?

 

 少し離れたところから普通の矢で撃ってみたが、特に反応はない。

 

 近寄って刺さった矢を掴み、持ち上げてみると、

 

「ははぁ、そういうことね」

 

 それは、誰かの脚(・・・・)だった。

 

 細いな。

 女の脚だな。

 

「誰か知らないが、ガマの自爆で吹き飛ばされたんだな」

 

 無警戒でガマのスイッチを踏んで直下で爆発すると、ルーキー探索者が使っている幻想体の体力値では耐えられない。

 

 踏んだほうの脚と腰のあたりまでが吹き飛び、残った上半身だけでは幻想体を維持できずバラバラに崩壊する。

 

 ちなみに、幻想体のHPというのは幻想体がどれぐらいダメージを受けて壊れているかを示す数値のことなのだが。

 

 これは、実はあんまりあてにならない。

 

 細かい傷の積み重ねで減った50パーセントと、大きい傷1発で減った30パーセントでは、後者のほうがヤバいからだ。

 

 幻想体は一気に壊れすぎると受けたダメージ以上に崩壊が進むという性質があるため、まとまったダメージを一気にドカンともらうのは危険なのだ。

 

 ステータス値の体力が高ければダメージそのものを軽減したり、受けたダメージ以上の崩壊を抑えたり、大ダメージを受けてもある程度粘って活動することができるようになるが、まぁルーキーの体力値では無理だろう。

 

 ああ、そういうことか。

 

「さっきの階層のガマが少なかったのも、そのせいか」

 

 新人たちのチームが無策で突っ込んで何人か散ったのだろう(散った連中は「緊急脱出装置」を装備していたのか? そういう保険もあるはずだが)。

 

 そしてダンジョンから脱出するためにはダンジョンボスを倒して帰還用のサークルを出さなくてはならないので、残ったメンバーで先に進んだに違いない。

 

 そして、ここでも誰かがガマを踏んで吹き飛んだようだ。

 まったく、一度喰らったトラップを二度も踏むようではまだまだだな。

 

 ……というか、これは。

 

「……この先に足跡が続いてるな」

 

 何度もの爆発を生き残った新人がいるのか?

 それとも、……()()()()()()状況なのか?

 

「仕方ねぇなぁ……」

 

 俺は、足跡を追うことにした。

 間に合えば良いんだが……。

 

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