俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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54話目・ダンジョンお泊まりin赤ダン

 

 文字通り全身を死ぬほど揉みほぐされてから昼飯を食ったユミィは、午後からの探索でマジで疲労が溜まりにくくなっていた。

 

 そのことに本人が一番驚いていて、「めっちゃ足が軽い! 全然疲れない!!」と、幻想体とは思えない感想(何度も言うが、幻想体でいる間にいくら動いても肉体的な疲労は残らない)を言いながら歩き続けていたが。

 

 それが事実だとして、真面目に考察すると、ユミィは常人より幻想力が多いから、幻想体内での幻想力が滞りやすく、それが体力値に見合わないスタミナ量の低さに繋がっているのではないだろうか。

 

 で、モコウのクソ痛ツボ押しマッサージの効果で幻想力の流れがよくなったため、スタミナ量が正常な状態に戻ったと。

 そういうことかもしれないし、単にユミィの気のせいかもしれない。

 

 検証が足りないので真相ははっきりしないが、なんにせよパーティーとしての移動速度が上がったのは喜ばしいことだ。

 

 おかげで、午後の間には第5階層のフロアボスを倒せたばかりか、第7階層まで完全踏破することができた。

 

 そして日没の時間になってきた(ダンジョン内では陽は暮れないが、ステータス表示の隅のほうに時計があるので時間は分かる)ので、第8階層に降りてすぐのところで結界カンテラを使用することに。

 

「ほれ、目一杯PPを入れろ」

 

 一番PP総量の多いユミィに満タンまでPPを充填させ、結界カンテラを使用する。

 高さ3メートル、半径10メートルの結界が展開し、俺たちは幻想体から生身に切り替えた。

 

「ふぅ……。お前ら、今日はよく頑張ったな。午後からは想定以上のペースで進めたから、明日以降の行程に少し余裕ができた」

 

 俺が弟子たちに労いの言葉をかけると、3人はひどく驚いた顔で俺を見てきた。

 

 なんだよ、その顔は。

 

「いや、タッキーがあたしたちを労うなんて珍しいから……」

 

「この後まためちゃくちゃなことを言われるんじゃないかと思ってさ」

 

 お前ら、俺のことを何だと思ってるんだ?

 

「ちゃんとできたら労うし、素晴らしいことをしたら褒めるし、バカやったら叱る。当たり前のことだろうが」

 

「じゃあ、ボクがカンテラにたくさん幻想力を篭めたおかげで皆が安心して寝られるわけだから、もっとボクを褒めてよ」

 

「バカ言うな。どうせ寝たら全員PPが全回復する状況で、お前が一番PPを余らせてるから無駄にならないように使ってやってるんだろうが」

 

 お前こそ、他の皆に感謝したらどうだ?

 無駄飯食らいの無駄PPを有効利用してくれてありがとうございます、ってな。

 

「このクソボンクラ、案の定舐めたこと言ってくれるじゃんか。明日の探索は背中に気をつけとけよ?」

 

「誰がボンクラだ、白髪チビ。お前らの水と食料は俺が管理してることを忘れるなよ。お前の分だけ味付け薄くしてやってもいいんだぞ?」

 

「おいモコウ! このクソヒョロも足ツボ押して絶叫させてくれよ! ボクだけ叫んだのは不公平だぞ!」

 

「大丈夫ヨ、ユミィ。全身ツボ押しで叫ばずにいられる人間、存在しないアル」

 

 おい待て、まさかとは思うがモコウ、そんなヤバいやつをやるつもりなのか?

 俺は肩こりさえ治れば良いんだぞ??

 

「ダメよ、ター師父。中途半端は余計な歪みのもとヨ。やるなら徹底的ネ」

 

「ユミィちゃんも大丈夫だよ! もし薄味にされたら、あたしの分と交換してあげるね!」

 

 ツバサが、何の屈託もないニコニコ笑顔で言った。

 

「だってユミィちゃんのおかげで、あたしたち安心して寝られるんでしょ? それならユミィちゃんが一番美味しいの食べなきゃ!」

 

 ツバサの言葉を聞いて、ユミィは感極まったようにツバサに抱きついた。

 

「ありがとうねツバサ。ツバサは天使だよ。そこのボンクラとは器の大きさが違うや」

 

「えへへ、それならユミィちゃんとモコたんも天使ね! 皆で天使様になって、あとで一緒にお歌でも歌おっか!」

 

 と、バカみたいなことを言っているのはともかくとして。

 

 俺はなんだか、ツバサに負けた気分になった。

 

 ……くそ、仕方ない。

 ユミィの飯もしっかり味付けしてやるか。

 

 俺は、ニンジンとタマネギとベーコンを塩胡椒でさっと炒めたものにケチャップをかけ、干し豆と干しキノコのスープを添え、温めてチーズを挟んだ堅パンとともに弟子たちに出してやった。

 

 それから簡易衝立(組み立て式の枠で布を吊るタイプ)を用意し、弟子たちそれぞれが用意した個人用荷物袋(着替えとかお菓子とかが入っているらしい)とともに、沸かした湯とタオルを弟子たちに渡した。

 

「それで体を拭け。俺はこっちで勝手にやる」

 

 俺は、調理器具や皿の汚れを練りスライム粉を使って綺麗にしたあと、自分の身体を水に濡らしたタオルで拭き清めた。

 

 俺は服は着替えない。

 一応予備は持ってきているが、毎日着替える分はないからな。

 

 毎日の着替えを持ち込むのはさすがにかさばるし、着替えを入れるスペースがあったら水や食料や薬をその分増やす。

 

 俺は、装備品枠が多いので所持品枠も増やせるが、それでも無限に物を持ち込めるわけではないのだ。

 

 荷物はきちんと考えて選ばなくてはならない。

 

 そして弟子たちより先に肉体を拭き清めた俺は、湯を沸かして茶を淹れた。

 

 砂糖なしで濃いめに淹れた茶を飲みながら明日のルートを再検討していると、

 

「タッキー、お湯ありがとね」

 

 と、多少はサッパリした様子の弟子たちが戻ってきた。

 俺は、茶の入ったポットを掲げる。

 

「お前らも飲むか? 角砂糖を入れてやろう」

 

「うん、ちょうだい」

 

 俺は弟子たちに茶を淹れてやってから、衝立の内側にベッドを2つ並べて置いた。

 

 また2つのベッドを3人で使ってもらうつもりだ。

 少し狭いだろうが、すやすやベッドは使わせてやるから我慢してほしい。

 

 で、俺の分のベッドを衝立から離して置いたところ、モコウに「寝るとこできたなら、やるアルカ?」と指をワキワキしながら言われた。

 

 俺はそこから、意地でも叫ぶまいと歯を食いしばりながら、モコウのクソ痛マッサージを受けた(結局途中で叫んだ。あんなもん我慢できるか)のであった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 翌日は、13階層までフルマッピングし、14階層に入ってすぐで野営した。

 

 この日は晩飯の準備と片付けをツバサが手伝ってくれたため、前日より早く就寝することができた。

 

 いや、以前にツバサが料理は得意と言っていたわけだが、本当に、予想以上に手際が良かった。

 

 これなら、今後の探索中の飯の準備はツバサに任せて、俺は探索行程の再チェックなどにもっと時間を割けそうだな。

 

 それと、体を拭いた後に茶を飲んでいたら、弟子たちが持ち込んでいた菓子を分けてくれたので、一緒に茶を飲みつつ翌日の行程について説明した。

 

 おかげで気をつけるべき点が事前に共有できた。

 翌日分の行程を寝る前に説明するのは、今後も続けたほうが良いかもしれないな。

 

 そして赤ダンに入って3日目も、俺たちはひたすらテクテク歩き、マップのマス目を埋めていった。

 

 赤ダンフルマッピングの一番の難所、15階層のフロアボスの手前にある百連洞窟(このうちの数か所ランダムな穴に、宝箱があるのだ)もなんとかマッピングし終えたので、あとはひたすら山道を歩くだけ。

 

 道はどんどん細く険しくなっていくが、そうは言っても所詮はD級ダンジョン。

 新人を脱したばかりの半人前たちでもなんとかクリアできる難易度しかないわけなので、よそ見して道を踏み外さない限りは大丈夫だ。

 

 もっとも、ツバサはすでに3回ほど滑り落ちてるけどな。

 

 そのたびに俺は慌ててホバーブーツを使ってツバサを追い、崖下に着地する前になんとか救出した。

 

 このバカ、マジで上空を飛ぶ中級翼竜(ミドルワイバーン)とか崖上から狙ってくるワイルドコヨーテにビビってそっちばっかり見るからな。

 前と足元をしっかり見てろと言っているのに、ちっとも理解しない。

 

「お前な、マジでいい加減にしろよ。この階層で崖下まで落下したら、落下ダメージだけで一撃緊急脱出になる可能性だってあるんだからな!」

 

 ここまで来てフルマッピング失敗なんて、マジでゴメンだからな!

 真剣にやれ、真剣に!

 

「はーい……。ごめんなさい」

 

 そんなこんなとハプニングはありつつ、俺たちはさらに探索を続け。

 とうとう、20階層のダンジョンボス部屋前にたどり着いた。

 

「なんとかここまで来たな……」

 

 時間もだいぶ押しており、すでに地上はすっかり夜の時間だが、ここでもう一泊するのは時間の無駄なので、このまま突入する。

 

「良いか。今から突入して速攻でボスを倒してボス部屋内を素早く歩き回って地上に戻れば、ギリ公衆浴場に入れるかもしれないぞ」

 

 弟子たち3人の目の色が変わる。

 まぁ、2日続けて体を拭いただけなので、今日こそはちゃんと風呂に入りたいのだろう。

 

「入ったら俺がデコイマフラーをつけてボスを引きつける。ユミィは、全開で撃ちまくれ。ツバサは、火の玉を投げまくれ。モコウは、2人が息継ぎをするタイミングに自在盾で守ってやれ」

 

 というわけで、行くぞ。

 俺はボス部屋の扉を蹴り開けながら「突撃!!」と叫んだ。

 




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