俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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58話目・インスタントでビッグなパワーを求めて

 

 アンコウ会から買い上げた借用書を宿に持ち帰った俺は、弟子たちを自分の部屋に集めた。

 

「というわけで、無駄金を使ったから稼ぎに行くぞ」

 

「無駄金はひどくない!?」

 

 無駄金だよ。

 なんで俺がツバサの故郷の村の井戸堀り債権を買い取らなきゃならないんだ。

 

「今後ツバサが村に戻る可能性もあるならまだしも、今のところその予定はないわけだろ。だったら全然知らんところにカネを捨てたようなもんだ。無駄金以外の何物でもない」

 

「でもでも! そのおかげでもうアンコウ会はあたしとかあたしの家族に手を出さなくなったんでしょ! それだけですごく良いじゃん! ありがとうねタッキー!」

 

 と、ツバサにむぎゅっと抱きつかれたがそんなことはどうでもいい(いや、胸の感触だけは素晴らしいと思ったけどな)。

 

 手前事の後始末と今後の根回しが終わった以上、残りのやることなんて限られている。

 

 つまり、決闘に向けてできるだけ強くならなくてはならん。

 

「で、だ。決闘のことを色々確認してみた結論として、その場しのぎの強さでも必要になりそうだ」

 

「その場しのぎって、どうするアルカ?」

 

 分かりやすく言うと、お前たちの幻想体のレベルを上げてステータス値を高める。

 

「本来なら、少しずつ慣らしながら探索を進め、力量不足を感じ始めたところで練度とレベルのどちらを上げて対処すべきか考えるもんなんだが」

 

 お前たちも最低限の練度は身についた状況なので、今回はスペアキーのレベル上げをする。

 

「決闘は5日後の正午。つまり、明日から4日間で上げられるだけレベルを上げる必要がある」

 

 そのためには、何が大事だと思う?

 

「はい! エネミーをいっぱい倒す!」

 

 それも正解だ。

 

「量も大事だが、質もだろ? より強いエネミーのほうがもらえる経験値が多いもんな」

 

 それも正解だ。

 

「オォー、倒しやすさも大事と思うネ。硬いのよりは、柔いのが良いヨ」

 

 それも正解だ。

 

「つまり、全部大事だ。付け加えるなら、ドロップの美味いやつがいい。今後のことを考えれば、もう少しカネを稼いどく必要もあるからな」

 

 で、俺にはその全部を兼ね備えた素晴らしい狩場と狩り方の知識がある。

 

「ほんとに? いくらタキ兄ぃでも、それはちょっと信じがたいな」

 

 本当だよ。

 もっとも、その狩場を活用するためには、白黒赤をそれぞれフルマッピングクリアしておく必要があるわけだが。

 

特殊(フルマピ)スキルが必要ってこと? 何をどうするの?」

 

「それは現地に着いてから説明する。ということで、俺は明日からに備えて買い出しをしてくる。お前らは自由時間にしてろ」

 

 素振りしててもいいしキャッチボールしててもいいぞ。

 モコウに習って皆でクンフーでもしてるか?

 

「んー……。はい! あたし、タッキーのお買い物ついていきたい!」

 

「なに? いや、来るのは構わないが、それなら荷物持つの手伝えよ?」

 

 所持品枠に入れれば重さも関係ないわけだからな。

 

「あ、じゃあボクもついてくよ。人手が多いほうが荷物たくさん持てるんだろ?」

 

「アイヤー、それならワタシも行くヨ。仲間外れはイヤネ」

 

 おいおい、お前たちもか。

 いやまぁ、良いけどよ。

 

 そんなわけで、俺はなぜか弟子たちを連れて買い物巡りをすることになった。

 

 街中をてくてく歩いて馴染みの商店や中央市場に行き、水や食糧や必要物資を買い込んでいく。

 

 なお、中央市場という名前になっているが、実際には市場とは少し違う。

 ここは、ダンジョン機構のひとつであり、ダンジョンからの物資配給所、という呼び方のほうが実態に即している。

 

 もう少し具体的に説明すると、ここは俺たち探索者が持ち帰ってきたアイテムを無制限に回収してくれるリソースの回収場であると同時に、回収したアイテムを増幅して放出する払い出し口だ。

 

 ダンジョン内で手に入れられるアイテムの大半は、ここでカネを払えば誰でもまとまった量を買うことができるし、そのアイテムは実体のある物質なので、街の外まで輸出することもできる。

 

 じゃあ、なぜここで買えるのに、わざわざ探索者たちはダンジョン内からアイテムを回収してくるのかというと、一定期間中にここに納品された数量に応じて、その物品(及び、追加で購入可能になる納入物類似品)をここで買う際の値段が下がるからだ。

 

 要するに、皆がいっぱい回収してきたアイテムは安価で大量に買えるようになるということだ。

 

 それはすなわち、食糧品として扱えるドロップ品は常に一定量以上回収してきて購入額を適正価格以下に抑えなくてはならない(でないと街の住人が飢えてしまう。この街及びその周辺は農業等に適していない土地になっている)ということでもある。

 

 だから、D級ダンジョンを安定してクリアできる者は一人前として認められるんだ。

 

 青ダン緑ダンでは食糧品系アイテムが大量にドロップするし、少し上級者になって黄ダン灰ダンに潜れば、高級食材や嗜好品、工業用資材などを入手できるからな。

 

 文字通りこの街の住人の生活を支える立場になれるわけだ。

 

 ちなみに、ここに売りに来ることができるのは売買店として登録している者のみであり、ほとんどの探索者は直接売りに来ることができない。

 

 その辺りの商売人保護関連のシステムは俺もそこまで詳しくないが、とにかく俺たちは馴染みの店でアイテムを買い取ってもらい、店の人はここに売りにきたり、直接売買で稼ぎを出す。

 

 そして宿屋や飯屋の人たちがここで買った食材を使って飯を売り、俺たちはその飯を食ってまた探索に行くのだ。

 

 なお、一定期間中に納入のなかったアイテムは品切れ状態になり、また誰かが納入しない限り中央市場で買えなくなる。

 

 この間スフィンクスからドロップした「太陽の赤石」なんかがそうだ。

 ああいう、特定のフロアボスが落とすレアドロップ品は品切れになりやすい。

 

 なので、どうしても欲しかったら探索者に直接依頼したり(1個だけでも納入すると何個か買えるようになるが、その場合の売値は通常の倍以上だ)もする。

 なんならそういうレアドロップ品の回収を専門にしている奴もいるぐらいだ。

 

 とかなんとか、買い物ついでにこの街で暮らすうえで必要な知識なんかも弟子たちに教えてやりながら買い物を続け、最後はやっぱりここ、至高の爆弾販売店「アルケミー・バクエンバクエンバクエンエン!」に立ち寄る。

 

「すいません、バクちゃんさん。爆弾あるだけ全部売ってください」

 

「なんと!! そんなにいっぱいどうするおつもりで!!」

 

「大丈夫です。悪いことには使いませんので」

 

「分かりました!! 他ならぬセリー君なのでお売りしましょう!!」

 

 というわけで、弟子3人がドン引きするぐらいの量の爆弾を買った。

 

 よし、これで準備完了だな。

 あ、お前らも、また菓子とか着替えとか持ってくなら、自分でちゃんと用意しとけよ。

 明日から長丁場だからな。

 

「……タキ兄ぃ。良かったら、明日からどのダンジョンに行くかだけでも教えてくれない?」

 

 ん、それぐらいなら、まぁ。

 

「明日から茶ダンだ」

 

 ピラミッド内で、狩りまくるぞ。

 




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