俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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59話目・ストックの真価

 

 翌日。

 俺たちは茶ダンに入った。

 

 第2階層の流砂から15階層のフロアボス部屋に入り、蜃気楼階段を8体倒して次の階層へ。

 

 そのままガンガン進んでスフィンクスもドカバキボコッと倒して、ピラミッド手前の空白地帯で一休み。

 

「ほれ、お前らの分だ」

 

 弟子たちに冷えた果実水を渡し、甘苦塩っぱい棒形クッキーと一緒に流し込ませてから、ピラミッドに突入。

 

 で、本来なら、各階層の構造を下へ下へ(このピラミッド、砂上部分は天井みたいなもので、中枢部は砂中に埋まっているのだ)進みながら下り階段を目指すのだが。

 

 俺たちは、最初の分岐で登り階段(初見の探索者たちをハメるトラップ構造だ)を選んで進み、どんどん登って頂上部の行き止まりにたどり着いた。

 

「よし、着いたぞ」

 

 ここを、この3日間のキャンプ地とする!

 

「ここ? 確かに行き止まりだからエネミーがやって来にくいけど、たくさんエネミーがいるところに倒しに行くのも大変じゃないか?」

 

 と、ある程度ここに潜ったことのあるユミィが言うが、それは要らぬ心配というものだ。

 

「大丈夫だ。俺たちは3日後に茶ダンを出るまでこの天井部屋から()()()()()()

 

 いや、厳密には俺だけ出るけど。

 お前たちは出ない。

 

「……? どういうこと?」

 

 だから、そのままの意味だよ。

 

「お前たちはこの部屋でひたすらレベル上げに勤しむ。その間ここから出る必要がないんだ」

 

「そんなことある??」

 

 あるよ。

 これからそのやり方を説明してやる。

 

「まず、なんとなく分かっていると思うが、この部屋はこのピラミッドの一番上の部分だ」

 

 本来的には無知な探索者をハメて無駄足を踏ませるための部屋なんだが、ここが巨大な構造物であるという設定の都合上、下層の部屋から抜けてきている通気口のようなものが何か所か空いている。

 

 俺が、部屋の端のほうの床を指差すと、弟子たちにも、拳大サイズの空洞があるのが分かったようだ。

 

「それで、その通気口がどうしたの?」

 

「この通気口自体は、ダンジョンエネミーが通ってこないサイズになっているんだが、ダンジョンエネミーがいる部屋と直接繋がってはいるんだよ」

 

 それと、ここからが大事なんだか。

 

「この通気口、ちょうどギリギリ通るサイズになってるんだよな」

 

「何がアルカ?」

 

()()()、だよ」

 

 ここまで言うと、ユミィが「あーね……」と理解した。

 

「タキ兄ぃ。いつも思うけど、タキ兄ぃはどうやってこういうズルっ狡いことを見つけてるの? 普通に探索してたら、こんなこと気づかないだろ」

 

「何回か普通に探索してクリアしたあとに、フルマッピング用ルート開拓のためにひたすらダンジョン内を歩き回ったりしてるんだよ」

 

 マップのマッピング済み判定って意外とシビアでな。

 

 開けた場所を歩くときはある程度の広さをまとめてマッピングしたことになるんだが、狭くて入り組んだ道は視界に入っただけじゃダメで、きちんとその道を歩かないとマッピングしたことにならなかったりな。

 

 そして厄介なのが、隠し小部屋や、崖上や水中といった特殊な装備品をつけていないと入れない場所だ。

 

 そういうところは、そもそもマップ化している場所かどうかから調べないとならん。

 

 だからマップの埋まり具合を逐一確認しながら歩き回ってみて、どういうルートを通ればきちんとフルマッピングできるか確かめたりしてるんだよ。

 

「で、そういうことをしていると、ダンジョン内の構造の穴というか、設計上の綻びに気付けるようになってきてな。そういうのをうまく組み合わせたら、うまいこと何かできないだろうかということを常に考えるようになってくるんだよ」

 

 で、うまいことそれらの知識が噛み合うと、今回みたいなハメ技ができるようになったりするわけだ。

 

 そういうのって、楽しいだろ?

 

「え、やば……」

 

 ユミィがドン引きしているみたいな声を出すが、俺は気にしない。

 

 それにこれは必要なことだからな。

 限界まで効率を高めて、爆速でレベルを上げる。

 

「あ、それと。この部屋から出るまでは俺とお前たちのパーティー登録を一旦解除しておく」

 

 今回はお前たちの幻想体になるべく多く経験値を入れないとだめだからな。

 

 俺が経験値泥棒にならないようにしておく。

 

「パーティー分割中の暫定リーダーはユミィな」

 

「それは良いけどさ。……けど、3日も潜ってないとダメなの?」

 

 まぁ、お前の疑問ももっともだ。

 普通は、そんなに長い時間潜っていても効率的なレベルアップはできないもんな。

 

「エネミーには、適正レベル帯の設定がされてるのは知ってるよな」

 

 ユミィ以外の2人は首を傾げた。

 それならなおさらよく聞いとけ。

 

「簡単に言うと、こっちのレベルが上がってくると同じ階層の同じエネミーを倒して得られる経験値に減少補正がかかるんだ」

 

 具体的にいうと、適正レベルを10以上超えた状態でエネミーを倒しても、得られる経験値はほぼ0だ。

 

 この適正レベル外補正はパーティー内での経験値分配後にかかるから、レベルの高いやつがレベルの低いやつを連れ歩いて無理やりレベルを上げたりするのは可能なんだが、

 

 それでもレベル帯に合わせたエネミーを倒していかないとどこかでレベルアップが頭打ちする。

 

「今回俺たちが狩ろうとしているミイラ蟲も、一度にたくさん出てくるのは鬱陶しいが、単体ではそれほど強くないエネミーだ。こちらのレベルが20を超えたぐらいで経験値がかなり割り引かれる」

 

「……それだとなおさら、ここでレベル上げするのは効率が悪いんじゃないか? ボクたち3人とも、もうレベル20なんて超えてるぞ?」

 

 まぁな。()()()()、そうだ。

 

「それなら論より証拠だ。一度試してみようか」

 

 俺は、この中で一番レベルの低いモコウに爆弾を渡して装備させる。

 

 そして使い方を教えたあと、この部屋の床に開いた穴のうちの一つを、指差して教える。

 

「この穴は、ミイラ蟲たちの巣に繋がっていて、穴の向こう側には女王ミイラ蟲と、大量の幼虫ミイラ蟲がいる」

 

 そこに爆弾を投げ込むと、一度にまとめて幼虫ミイラ蟲を倒せるし、うまく爆風が当たれば女王ミイラ蟲も倒せて、経験値がガッポリ入る。

 

 それと、ミイラ蟲たちはレアドロップとして「純金の腕輪」という換金アイテムをドロップする。

 

 ミイラ蟲たちに喰われた盗掘者が身につけていた装飾品、という設定らしいが、これがなかなかの高値で売れるのだ。

 

 何回か爆弾で吹き飛ばしたらミイラ蟲たちのリポップ待ち時間になるから、爆発でミイラ蟲たちの数が減っている間に俺がドロップ品を回収してくる。

 

 これをひたすら繰り返す、というわけだ。

 

「爆弾の爆発待機時間を最大に設定したら、ピンを抜いてここの穴に転がし入れろ」

 

 言われたとおりにモコウが、通気口に爆弾を転がし入れる。

 

 丸い爆弾はヒューンカラカラカラと通気口を転がり落ちていき、やがて落ちる音が聞こえなくなる。

 

 それから、爆発待機時間が過ぎたあと、穴の奥から小さな炸裂音が聞こえてきた。

 

「モコウ。ステータスを見てみろ」

 

「オゥ、レベルが2つ上がてるネ」

 

 な、楽々でレベルが上がるだろ。

 

 それで、だな。

 

「ここからは少し内緒の話だ。ユミィの懸念を解消するために、お前たちに良いことを教えてやる」

 

 お前たち、3人ともスペアキーとストックを持っているだろ。

 

「ストックを持ってると、レベルが上がっても勝手にステータスが上がらず、ストック内にステータス上昇可能量が蓄積する。そしてスペアキーを持っているので、お前らはレベル1戦闘訓練のとき、毎回幻想体を破棄して再作成したよな」

 

 でも、レベルが上がっても勝手にステータスが上がらないなら、毎回再作成する必要がないと思わないか?

 

「え。……あー? ……確かに」

 

 ユミィだけは、俺の言ってることを理解して考え込む。

 

 ツバサとモコウは、ちゃんと聞いてるから続きを言って、という顔のまま静かにしている。

 

「毎回再作成していた理由のひとつは、何度も再作成することで天才型の乱数を引くのを待っていたということ。そしてもう一つの理由は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からだ」

 

 ストックにステ値を残したまま幻想体を破棄すると、使わなかったステ値も一緒に破棄されるんだが、その破棄したステ値が一定量を超えると、ストックの性能が変化するんだよ。

 

 これは俺の推測だが、……破棄したステ値が()()()()()()()()()()()()()()()()しているのかもしれん。

 

 とにかく、ストックが成長するとだな。

 

「幻想体を破棄する際に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことができるようになるんだ」

 

 俺が、ストックの隠し機能について説明したところ、

 

「……?」

 

「……は!?」

 

「……オォー?」

 

 弟子たちは、三者三様の反応を示したのだった。

 




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