俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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70話目(完)・未知に挑む者、という意味の職業なればこそ

 

 俺が新人たちを見守っていると、最初は一生懸命話し合っていた新人たちも、次第に疲れと焦りを見せ始めた。

 

 そしてジャンケンやくじ引きで決めようだの、自分は泥の中で寝るのは嫌だのと、好き勝手なことを言い始める奴が出てきた。

 

 そうなると、決まるものも決まらない。

 話し合いの本質というのは譲り合いだからな。

 

 どこまでなら相手に譲れるのか、どこまでなら譲りたくはないけど仕方なく我慢して譲れるのか、どこからは死んでも譲れないのかを知らせ合って、お互いの妥協点を探すのが話し合いってもんだ。

 

 自分の言いたいことだけ言うやつ同士で、話なんて一生まとまるはずがない。

 永遠に平行線のままだ。

 

「なんだよ!」

 

「お前こそ!」

 

 ははは、良いぞ良いぞ。

 好きなだけ言い争え。

 

 これっぽっちのことでしっかり頭を使えない奴は、どの道どこかでやらかすからな。

 

 そうなる前に、しっかり経験しろ。

 そして身にしみて理解しろ。

 

 自分のバカさ加減、というやつをな。

 

 とか思いながら見ていると、俺の班になったイキの良い坊主が大きな声を出した。

 

「ちょっと待てよお前ら。さっきおっちゃんが言ってただろ、ちゃんと寝ないと幻想力が回復しないって! さっきPP切れになりかけてたやつは、ちゃんと寝ないと明日もPP切れになるかもしれないんだぞ!」

 

 お、コイツは思っていたよりも頭が回るな。

 

「なぁ、おっちゃん。もし明日もダンジョンクリア前に誰かがPP切れになったら、どうするんだ?」

 

「もちろん、その時点で野宿を開始します。そして、野宿のたびに君たちが使えるベッドを2つずつ減らしますので、明日使えるベッドは5つです。それに、水と食糧も君たちに配分できる量はどんどん少なくなっていくと思っていてください」

 

 ダンジョン内には無制限に物を持ち込めるわけじゃあないからな。

 物資が少なくなれば、一人頭の分量も当然減る。

 

「じゃあやっぱり、明日中にはダンジョンをクリアしないとダメってことなんだよな」

 

「そうですね。明後日以降は、君たちにはまだ厳しいと思いますよ。耐えられない者が出てくるでしょう」

 

 そう答えると、イキの良い坊主は何かを決意したような目をした。

 

「分かった。じゃあ、俺は泥の中で寝る。俺は今日、まだもう少しPPに余裕があったし、なるべく濡れてないところで、結界の壁にもたれて座って寝る。それなら、そんなに体も濡れないから、たぶん大丈夫だと思う……」

 

 ……ほぅ。そういう発想にいくか。

 だが、それも悪くはないな。

 

「……じゃあ、僕も君と同じようにして寝るよ。今日耐えて明日頑張って、ダンジョンから出られたらベッドで寝られるんだもんな」

 

 と、メガネの少年も坊主と同じ寝方をすると言い出した。さらに、

 

「それならわたしも、そうする。そうしたら、もうみんなケンカしなくてすむんだもんね?」

 

 根暗そうな顔の少女も、同調した。

 

 なるほどな。

 

「それでは皆さん、決まりましたか?」

 

 俺が確認で問うと、ぬかるみの中で寝ると言った3人は頷いた。

 

「分かりました。……本来なら、決まったとおりの寝方をさせるところでしたが、君たち3人の篤心に免じて、解決策をお伝えします」

 

 イキの良い坊主が「とくしん……?」と首を傾げ、メガネの少年が「親切とか、そういう意味」と教え、根暗そうな少女は「ものしりだね」と呟く。

 

 俺は所持品欄から実際にベッドを出してみせた。

 

「ご覧の通り、簡易ベッドは大人が寝られるサイズをしています。つまり君たちだと、一人で一つ使うのは少しもったいないんです。だからこうして……」

 

 俺はもう一つベッドを出して、先ほど出したベッドの隣にくっつけて置いた。

 

「二つ繋げれば、君たちなら詰めれば3人で寝ることができます。三つ繋げれば、小柄な者同士なら4人で寝られるでしょう。つまり、どの割り振りにするかをきちんと考えれば、10人全員ベッドで寝ることができるのです」

 

 俺の説明を聞いた新人たちの中から、「先に言えよ」とか「心配させやがって」とか言う声が聞こえてきた。

 

 俺は、ニッコリ笑ったまま文句を言ってきた奴を見た。

 

「……俺は最初に伝えたぞ。10人でどう配分するかはお前たちに任せる、と。それを勘違いしてワガママばかり言い出したから、話がまとまらなかったんだろうが」

 

 そしてニッコリ笑ったまま歩み寄り、舐めた口を利いた新人(クソボケ)の襟を掴んで軽く締めながら宙吊りにした。

 

 慌てた様子のクソボケが足をバタつかせる。

 俺はもう笑顔をやめた。

 

「おい。お前はすぐにバカやって死にそうだから死ぬ前に教えておいてやる。……舐めるな。あらゆるものにもっと真剣に向き合え。常に頭を使って考えろ。お前のクソボケ加減がお前どころか、お前の仲間を殺すかもしれないんだぞ」

 

 お前の愚かさに他人を巻き込むな。

 分かったか、クソボケがっ。

 

 俺の言葉にクソボケは涙目で必死に頷く。

 俺はベッドに下ろして座らせてやり「お前ら、さっさと割り振りを決めろ」と告げた。

 

 俺が持っているベッドをぽいぽいと出していくと、新人たちは慌ててベッドの割り振りを決めた。

 

 おう、やればできるじゃねーか。

 

「明日は6時起床で、準備でき次第出発。明日中には黒ダンをクリアする」

 

 以上だ。

 寝るぞ。

 

 

 

 そして翌日。

 

 俺たちはひたすら黒ダン内を歩き回り、沼蛇も俺が爆弾で吹き飛ばして、新人たちに順番に水中マスクを渡して沼に潜らせる。

 

 新人全員がフルマッピング状態になったのを確認してから、補佐官たちとともに新人を地上に戻した。

 

 で、最後にサークルを踏むときに、イキの良い坊主が、

 

「おっちゃんは、なんでこんなことをしてるんだ?」

 

 と聞いてきた。

 決まってんだろ。カネになるからだよ。

 

「いや、おっちゃんならダンジョン潜ってるほうが絶対稼げるだろ……。俺たちみたいな新人の面倒なんて、見なくてもいいんじゃないのか?」

 

 まぁそのへんも、お前がちゃんと成長すれば分かるようになるよ。

 

「良いから、早く出ろ。お前のお友達が待ってるぞ」

 

「あ、うん。それじゃあ、ありがとな!」

 

 イキの良い坊主が地上に戻っていった。

 俺は、独りでふぅとため息を吐いた。

 

「なんで、か。……決まってんだろ。世の中、俺より才能があるやつなんてゴロゴロいるからだよ」

 

 俺ぐらいの才能のやつでも、今の俺ぐらいは強くなれるんだ。

 

 てことは、俺よりはるかに才能のあるやつらが俺の考案した方法で鍛えれば、俺よりはるかに強くなれるってことだろ。

 

 だから俺は、俺の知識と経験を他の奴らに伝えることにした。

 

 そうすれば、虹ダン潜ってる連中も、もっと深くまで潜れるようになる。

 そうすればもしかしたら、虹ダンをクリアする連中も現れるかもしれない。

 

「……俺じゃあ、どう足掻いてもそこまで行けないからな」

 

 すでに俺は、天才型の幻想体をレベル100まで上げてしまっている。

 もうこれ以上、幻想体を成長させられない。

 

 そして俺自身の練度も、ほぼ上げ切ってしまっている感覚がある。

 装備品も、今以上にしっくりくるものは見つけられない。

 

 だからもう俺は、今以上に強くなれない。

 俺の強さは、天井に届いてしまったのだ。

 

「天井に届いたら、もうそれ以上はない。俺が強くなれないなら、俺より強くなれるやつを見つけて、きちんと強くしてやるしかないんだよ」

 

 だから新人育成もするし、新人をきちんと育成していける環境とシステムを作る。

 

 そうすれば、ツバサたちみたいな奴らが、これからも出てくるかもしれないしな。

 

「……まぁ、まだしばらくはツバサたちに負けるつもりはないけどな。銅ダンクリアするぐらいまでは、アイツらを引っ張っていってやらないとな」

 

 その後のことは、今は考えるときじゃない。

 

 そう思いながら地上に戻った、俺の脳裏に、

 

 

 

『ぴんぽんぱんぽーん♪ ダンジョン通算攻略(クリア)回数1500回を達成しました♪ ダンジョン通算攻略(クリア)回数1500回を達成した特典(ボーナス)として、貴方の幻想体のレベル上限を引き上げます♪』

 

 

 

「……は?」

 

 突然、能天気な(アナウンス)が聞こえたのだった。

 

 

 

 そして。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 アナウンスから数日後。

 

「準備良し。今度こそ灰ダンをフルマッピングクリアするぞ!」

 

 今日も俺は、弟子たちを連れて元気にダンジョン探索をしている。

 

「すでに記号表記の法則は解き明かした! このダンジョンの階層パターンは255種類+ダンジョンボス部屋1種類! それらを全て完全踏破すれば、きっと新しいフルマッピングボーナスが手に入るぞ!」

 

 俺は未だ見ぬボーナスを想像し、新人の頃のようなワクワクとした気持ちで今日もダンジョンに突入した。

 

 弟子たちがついてこれる最大速度を維持しながら灰ダンの坑道内を駆け抜け、いくつかある下り階段のうち、次に出てきてほしい階層が出やすい階段を選んで下っていく。

 

 ははははは!

 雑魚は引っ込んでろ!

 

 道中出てくるエネミーを鎧袖一触で切り刻み、あるいはハリネズミにしながら、俺は事前に検討したルートを走り続ける。

 

「タッキー、ここ最近ずっと楽しそうだね!」

 

「まぁ、まだ自分に成長の余地があるってことを、タキ兄ぃは知っちゃったからね」

 

「諦めてたものにもう一度チャンスが来たら、ター師父でもああなるのネ」

 

 弟子たちがなにやらヒソヒソと話しているが、関係ねぇ!

 

 俺の検証には文句も言わず付き合ってくれるんだからな!

 まったく、俺は頼りになる弟子を持ったもんだぜ!

 

「……そうだ、お前ら! 今回こそ灰ダンをフルマッピングクリアできたら、今までの礼も兼ねて欲しいモノ何でもくれてやるよ!」

 

 飯でも、服でも、オシャレなアクセサリーでも、何でも言ってくれていいぞ!

 だからお前らももっと気合い入れろよ!

 

「……ねぇ。タッキー今、何でもって言った?」

 

「言ったね。タキ兄ぃ、その言葉忘れるなよ?」

 

「ワタシたちも、やる気マンマンになてきたヨ」

 

 お、モノに釣られた弟子たちが、しっかりやる気になってきたな!

 

 良いぞ!

 このまま皆で、完全踏破を目指すぞ!

 

 これからも俺は……、

 ……いや、そうじゃないな。

 

 ()()()は、フルマッピング(完全踏破)ボーナス(攻略特典)迷宮(ダンジョン)無双する!!(突き進むぞ!!)

 




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