俺は、フルマッピングボーナスで迷宮を無双する。   作:龍々山ロボとみ

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8話目・弟子一号誕生!

 

 ツバサの、要領を得ない話を何度か聞き直して噛み砕いて要約すると、こうだ。

 

 ツバサは元々王国の隅っこのほうの名前があるのかも怪しいような小さな村(いや、名前ぐらいあるんだろうが、ツバサは知らなかった)に住んでいたそうだ。

 

 で、そのまま大きくなれば村で農業をしている男衆の誰かに嫁いで一生を村の中で終えることになっていたのを、

 

 一念発起して村を飛び出し、道端の草や木の根を食べながら歩き通して、とうとうこの虚空街アカシアにやってきた。

 

 そして、探索者協会で探索者登録をして、協会から借りたカネで装備品を買い、数日かけて何度かF級ダンジョンに潜ってレベルを上げ、一昨日とうとう暴れ兎を倒したのだとか。

 

 で、次にE級ダンジョンに潜るにあたって、誰かとパーティーを組むといいという聞きかじりの知識をもとに協会にいた同じレベル帯のパーティーに合流させてもらって、

 

 意気揚々とダンジョン内を進んでいたところ、突然パーティーメンバーの一人が爆発で吹き飛び(どうやらそいつは、緊急脱出装置を持っていたようだ)、

 

 その衝撃にビビってしまうわ、他のエネミーも寄ってきてさらに連鎖爆発するわでパーティーが総崩れになり、走って逃げていたところで自分も地雷ガマを踏んで爆発、

 

 生身の身体でダンジョン内に放り出されたそうだ。

 

 そして他のメンバーはツバサを無視してそのままダンジョンの奥に進んでいってしまい、

 

 一人取り残されて必死に逃げ回っていたところで、俺に助けられた、と。

 

「そういうわけだな」

 

「うん、そう」

 

 俺は、はぁっ、とため息を吐いた。

 

「お前、なんで安心脱出保険に入ってなかったんだ?」

 

 安心脱出保険とは、比較的少額で緊急脱出装置をレンタルできる制度だ。

 

 カネがないうちは、この制度で緊急脱出装置を借りておけば万が一の時も安心(もし使用しても、レンタル代以上はのカネは取られない)なのだが。

 

「だってけっこう高かったし! それに、こんな簡単に死にかけるなんて思わなかったから……」

 

 あの金額でも高いと感じるのか……。

 まぁ、そのあたりの価値観は人それぞれだろうが、見通しは甘すぎたというわけだ。

 

 死んだら終わりなのだから、まずは死なないことが大事だろうに。

 

「お前に説教したくて助けたわけじゃないからあまりくどくど言うつもりはないが……。常に緊張感を持って潜れ。事前の準備は念入りにしろ」

 

 今後もまだ探索者を続けるなら、それぐらいはちゃんとしろ。

 

「うぅぅ……、だって、そんなこと誰も教えてくれなかったし……」

 

「協会の初心者講習は受けたんだろ?」

 

 あれは無料だし、ある程度の基本的なことは講習で教えてくれる。

 

 それに、講習を受けないと装備品代を借りることはできないはずだから、間違いなく受けているはずだ。

 

「あれはー……、なんか小難しい話だなーって思ってたら、いつの間にか寝ちゃってて。気がついたら話終わってたんだよねー」

 

「……はぁっ、」

 

「あ、そのため息はなんかバカにされてる気がする!」

 

 バカにはしてねぇ。

 呆れ果ててモノも言えなかっただけだ。

 

「お前、マジで……、いや、いい。言うまい」

 

「だってだって! 講習で最後まで座ってたら装備品買うお金をくれるって聞いたんだもん!」

 

「いや、あれはくれるわけじゃねぇよ」

 

 無利子無担保無期限で貸してくれるだけだっての。

 

「……それ、くれるのと何が違うの?」

 

「返せる見込みがあるうちは放っておいてくれるが、見込みがなくなった時点で取り立てが始まる」

 

 そしてカネを返せなかったら、強制労働刑だ。

 

「強制労働……?」

 

 この町の公共施設の修繕とか清掃をやるやつだよ。場合によっては、危険なやつもある。

 

 いずれにしても。

 

「女の強制労働刑は、キツいぞ。他の労働者たちと便所も風呂も寝床も一緒だからな」

 

 そして強制労働刑になるやつなんて、だいたいロクでもない奴だ。

 

 監督官の見てないところで襲われまくって、尊厳も貞操も踏みにじられるって話だ。

 

 それよりは、別で借金して立て替えたり、割り切ってちょいと春を売ったりしたほうがマシだって聞くぐらいだな。

 

 そう伝えると、ツバサはさあっと顔を青ざめさせた。

 

「ど、ど、どうしよう……! あたし、爆発で幻想体と一緒に装備品も吹き飛んじゃった!」

 

 お金もないよ、どうしよう!

 と、慌てた様子で言う。

 

「タッキー、どうしよう! あたし、エッチなおじさんたちと一緒に汗水垂らす(意味深)のはヤだよ!?」

 

「どうしようも何もないだろ……。まったく……」

 

 俺は、半べそかいてるツバサを見て、あまりにも愚かすぎて逆に凄いなと思った。

 

 こいつ、ここまで見事に人生踏み外しそうになるなんて、実はドMでワザとやってるんじゃないかと思うぐらいだ。

 

 控えめに言って、バカすぎる。

 

「た、タッキ〜〜……」

 

 しかし、だ。

 

「はぁっ……。お前、本気でこれからも探索者続ける気はあるのか?」

 

 もうこりごりだって言うなら。

 

 悪いことは言わないから故郷に帰れ。

 協会への返済金と故郷までの馬車代ぐらいは出してやる。

 

「え、良いの……?」

 

「良いよ、別に。せっかく助けたのに野垂れ死なれるほうが気分が悪い。ああ、カネなら気にするな。こう見えて俺は、ダンジョン探索でそれなりに稼いでいる」

 

 お前とは違ってな、とは内心だけで言った。

 

「……で、でも……」

 

 ツバサはなにやら口ごもる。

 なんだよ、言いたいことはちゃんと言えよ。

 

「タッキーは、その、ダンジョン探索でお金を稼げてるんだよね……?」

 

「まぁな」

 

「それは、どうして?」

 

 簡単なことだ。

 

「俺は、人の話をちゃんと聞くし、むやみにカネを借りたりしないし、事前の準備と情報収集をするし、きちんとレベル上げをするし、常に警戒を怠らないし、毎日きちんとご飯を食べてしっかり寝ているからだ!」

 

「……!」

 

「当たり前のことを当たり前にきちんとする。だから俺は安全かつ確実にダンジョン探索で利益を上げている」

 

 もっとも、それだけということもないんだが。

 それはまぁ、今はいいだろう。

 

「ツバサ。お前、得意なことはあるか?」

 

「え、あたし? えっと、お料理はわりと得意かな……」

 

「そうか。なら俺が料理のド素人だとして。料理をすると言ってレシピも見ずに食材と調味料を適当に入れて鍋を混ぜたとしたら、どうだ? 生肉にきちんと火を通さずに皿に盛り付けて、料理なんてラクショーだなとかヌかしてたら、どう思う?」

 

「お料理舐めすぎでしょ、って思う」

 

「だろ。つまりそういうことだよ」

 

 やることちゃんとやれてないやつなんて見てて痛々しいんだよ。

 

「お前はダンジョン探索を舐めすぎだ。これからも続けるつもりなら、もう少し真面目に基礎から学び直せ」

 

「ううぅ〜〜、それは分かったけど、じゃあ、どうやって学べばいいの……?」

 

 そうだな。

 そこで提案だ。

 

「お前が本気で探索者として必要なことを学びたいというなら、俺が教えてやってもいい。装備の選び方からドロップ品の集め方、ダンジョン内での歩き方、各種エネミーの特徴や弱点、その他諸々全てをだ」

 

「ほ、ほんと……!?」

 

「ああ。そのかわり、俺の教えを受けるなら、俺の指示には必ず従え。泣き言は許さんし、途中で嫌になって投げ出すことも許さん」

 

 さぁ、どうする。

 と問いかけると、ツバサは深く考えた様子もなく頷いた。

 

「うん! やるやる! タッキー教えて!!」

 

 ようし、言ったな!

 

 ちょうどいい。

 俺も少し興味があったんだ。

 

 俺がやってる探索方法は、安全確実に安定した探索をするためのものだが、

 

 はたしてこの方法は、他の奴にも効果があるのか、ってな。

 

 もし効果があるなら。

 俺はこれから街にやってくる新人たちに、有償でその方法をレクチャーしてやるだけで、カネが得られるんじゃないか?

 

 わざわざ自分がダンジョンに潜らなくても、新人を育成してやるだけで食っていけるようになるんじゃないか?

 

 と、そういうことを思っていたわけだ。

 

「良いだろう、俺が五年かけて積み上げた知見が、他の探索者でも活用できるのか試してやる! ツバサ、今日からお前は、俺の弟子一号だ!」

 

「分かった! よろしくお願いしまーす!」

 

 こうして俺に、弟子一号ができたのであった。

 これからバリバリ鍛えてやる!!

 




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