天照との一件が無事(?)に終了し、再び我が家へと舞い戻ってすぐ皆は寝てしまった。
そう……皆が寝静まった夜の出来事であった。
誰もがその静寂をかき消そうとはしない……平和な夜……妖怪の山では哨戒天狗たちが見張りの交代をしている時、幻想風穴内部の地底では鬼たちが、外の時間も分からず、酒を飲みながらワイワイと宴会している最中、天界でも同じことが起きているそんな瞬間、
そんな時、一人の人物だけが、外を歩いていた。外見からは男とも女ともとれるその人物はふと、立ち止まり……手に持っていたナイフで自らの手首を掻っ切った。
ぽたぽたと血は流れ、最近雨が降っていないため、潤いを欲している乾いた土が吸い込んでいく。そして切り口はふさがり、最初から何もなかったかのように元通りになる。その人物は傷をつけた場所をじっと見つめ、ため息をつく。そして再び歩き出す。
―――――数時間後―――――
さっきの行為を後9回程繰り返したその人物は、一つの小山を見つけるとそこを目指そうと歩きはじめる。だが、2歩進んだ瞬間、突然足を止める。汗を垂らしながら後ろにいる人物に話しかける。
「い、一体いつ…から……」
「……」
その人物は答えない。ただじっと見つめているだけである。
「何故っ……貴様がここに……!?」
「……アドバイザーよ」
アドバイザーは背筋を凍らせながら後ろにいる人物に話しかけられる。
「貴様はそのやり方で本当にいいと思っているのか」
「何だと……」
「そんな甘すぎるやり方で200億も続いた貴様の悩みはなくなると思うのか」
「…………」
「なくなるわけがない。この世界全てを生贄にしたとしても100億分しか取り返せないだろう」
「ならどうすれば……!我にはもう何も残されてないというのに!」
「あるだろう……貴様の大切なものが……」
「まさか貴様!……売れと言うのか!?我が!絶と滅を!それだけではない……漣、妃香梨、紫さえも……やはり貴様は悪魔だ!家族を引き裂くこの行為になんの悪意も持っていない!」
「悪魔……なるほど。確かにそういう風にも見えるか……いいだろう……アドバイザー。今の我は悪魔だ。悪魔が悪意を持っていないだと?笑わせてくれる……だが、その冗談も悪くない……我が手を出すのは止めておこう……」
「……(こいつ……!何を考えているのかまるで分からない……!だが、こいつのことだ。何か恐ろしいことを考えているに違いない……!)」
だが、何もできずただ、その人物がいつの間にか消えたことを気づくことしかできなかった……