東方二重録【完結】   作:咲き人

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第九零話「夢ノ分カレ道」

「しかし……紫がここまで人見知りだとは思わなかったな」

 

「本当にねー」

 

「うぅ……本当に二人に迷惑をかけてごめんなさい」

 

 

いや、むしろ俺たちが勘違いをしていたようだ。人間と妖怪に対し、分け隔てなく接し、幻想郷を創った未来の紫は、今俺たちの目の前にいる紫じゃない。人の性格は死なないと治らないが、妖怪はとんでもなく長い年月を生きる。何かちょっとしたきっかけで性格が変わることだってあるだろう。今の紫は絶という義理の父親に甘えているだけの子供だ。しかし、紫だけでなく、俺も妃香梨も絶という存在に頼りがちだ。能力を自覚する時も……剣を教えてもらう時も……

 

 

「ふっ……親離れ……か」

 

「どうしたの漣?」

 

「いや、絶に甘えすぎていると思ってな」

 

「それは確かにね……(親離れ……ね。フフッ漣も絶のことお父さんだと思っちゃったんだ)」

 

「それに計画にはもう俺たちはもう必要ないんだろ?幻想郷だって、もう紫一人でできちまいそうな程、完成に近づいている……なら俺たちの役目はもう終わりだ」

 

「旅に出る……のね」

 

「ああ、俺たちは元々ここにいるはずのない人間だからな……それに帰る家があるからいつでも帰ってくる」

 

「なら私も行く」

 

 

妃香梨は漣に抱き着く。

 

 

「……いいのか?俺の我が儘に付き合っちまって……」

 

「かなり昔から……ね」

 

「そ、そうだな……」

 

()を待つだけの()じゃないの。私は貴方の隣にずっといるから……」

 

「妃香梨……」

 

「そうでもしないと他の女が寄って来ちゃうしね~……ネー?」

 

「はぁ……」

 

 

やっぱりか……どうでこんなことだと思ってた……

 

 

「フフフ……相変わらず仲がいいわね貴方たち夫婦は……」

 

「そうか?俺たちは幼馴染だから当然だがな、俺からすれば紫と絶も仲がいいと思うぜ……まるで本当の親子みたいだ」

 

「……どうなのかしら?まぁ、貴方がそういうのならそうなのでしょう……」

 

「何だ、自信ないのか?」

 

「私がスキマ妖怪だからかしら……ね」

 

「ああ、そういうことか」

 

「ええ、私はあの人がいなければ……一人なのよ」

 

 

一人一種族の妖怪……幻想郷には紫のように、他に同じ種族の妖怪がいない一人一種族の妖怪が存在する。それらは自然発生したかのようにいつの間にか存在し、いつの間にか定着していた存在である。つまり、彼女たちには……『家族』が存在しない。人間のことが好きな紫にとって、『家族』というのは憧れの場所なのだろう。絶がそこを作った……だからこそ、八雲 紫にとっては最高であっても、一人一種族の妖怪からすれば、独り立ちできない原因でもある。

 

 

「お父様は今でこそ……優しいけれど、昔はもっと怖かったのよ」

 

「え?」

 

 

妃香梨は驚く。

 

 

 

 

 

~『昔は絶様は怒らないどころかもっとやっていいって許可してくれたりしたんだけどね』~(第五二話)

 

 

 

 

 

というニトリの言葉を思い出していたからである。

 

 

「叱られてばかりだったわ」

 

「そうだったのか……でも、それって」

 

 

漣が続きを言いかけたその時、紫の背後から二人の声が発せられる。

 

 

「「紫様」」

 

 

「あら、ごめんなさい二人とも、私はこれから用があるからお暇させてもらいますわ」

 

「あ、ああ……」

 

「行きましょう藍、狂骨」

 

「話を遮って済まない二人とも」

 

「いいわよ藍。急な用事なんでしょ?」

 

「ああ……」

 

 

そう言って三人はスキマの中へと入っていった。

 

 

 

 

 

~一時間後~

 

 

「後はよろしく頼むわ、二人とも」

 

「「はっ」」

 

 

そう言って、藍と狂骨はスキマから外へと出て行った。紫はふぅ……と息を吐くと、扇子で自分に仰ぐ。

 

 

「しかし他人を頼るってこんなに神経をすり減らすものだったかしら……流石に疲れたわね……漣の言う通り、幻想郷の作成も最終段階に差し掛かったし……ん?もしかして誰かに頼られることも初めてかしら?フ、フフフ……お父様との修業時代の夢を忘れているなんて……でも、やっぱり緊張するわね……」

 

 

紫は独り言を止めると自分の体内に存在する妖力の気を高める。

 

 

「誰かしら……私のスキマに外部から干渉するなんて……」

 

 

紫は無理矢理こじ開けられたスキマの奥にいる黒い人影に殺気を放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃……

 

 

アドバイザーは嫌な汗がやっと止まり、家へと着いていた。ドアノブをひねり、家に入ると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家具はぐちゃぐちゃに散乱し、茶わんやコップは割れ我、破片が散らばっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして誰もいなかった。




???「お前がお前でなくなるなら…我も我で無くなろう…

誰も絶望できない時代があるのなら…我が全力で苦痛を与えよう。

誰かが希望を得るのなら…我が他人に絶望を与えよう…

お前は逃げられないようで逃げられる。馬鹿げているか?

でも事実だ。お前の計画でお前は逃げることができる…だが、それでいいのか?

本当に?我は全てを知っている。こうお前に教えてもお前がやることは変わらない……

素晴らしい夜明けが来るだろう…その時、お前は狂わずに生きて行けるだろうか?

いや、済まない…悪気しかないが、少し間違えたな……

お前は狂わず、幸せに死んで行けるだろうか?

我が漣と妃香梨を殺すと咲き人は知っている…お前は知らない…我は……本当に殺すのだろうか?

楽しみでもあり、悲しくもある……漣と妃香梨がもし我に殺されたのなら…






我が墓を造ってやる……どんな造形にしようか今からとても楽しみだ……」
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