「なんだ……これは」
アドバイザーは目の前の無残にも荒らされている部屋の光景に驚いている。だが、すぐに落ち着きを取り戻し、
(漣も妃香梨もいない……紫は?少し妖力が残っている自分でスキマの中にいるのか?……っち……絶と滅がいる結界に干渉できない…かなり力を使ったからだな)
自身の力の消失を感じていると……頭にサイレンが鳴り響く。これは天狗の風間に緊急事態の時に鳴らすように言っていた非常ベルである。
『何だ!?』
『絶様……そこから………お逃げ…………を、狙わ………れていま………す』
『風間!?』
風間の言葉が途切れ、アドバイザーは一瞬で、殺気を察知し扉をぶち破り脱出する。その瞬間、
ドーンッ!!
家が爆発する。だが、それで驚いている暇などない。
「ガァ!?」
右足に激痛が走る。これは……
「弾丸……ッ!?スナイパーか!?」
アドバイザーが言っている意味は単にこの世界の非常識を物語っていた。
「狙撃手に暗殺されかけるのは初めてだ糞が!」
足の傷は既に塞がっており、アドバイザーは走り出す。できるだけ木々に囲まれた場所を通りながら……もう狙撃してきた場所は割れている。狙撃手が相手と言えど、自分の庭にも近い、ここで戦うということは地の利はこちらにもあるということだ。
「舐められたものだな!『霊銃』『モデル:スナイパーライフル』……世界は我を縛る忌まわしき場所……全ての場所を把握している我にとって……貴様のことなどお見通しだ!」
本来両手で撃つスナイパーライフルを片手で引き金を引くだけで何かに当たった音が起こる。だが、アドバイザーが容赦はしない……すぐさま霊銃を霊剣へと変更し、地面に突き刺す。
無音――龍脈――
地面を引き裂き、1つの線となってスナイパーライフルで撃った場所と同じ場所を攻撃をする。
すると、バッと黒い影が木から飛び出し、攻撃を回避する。だが、逃がしはしないとアドバイザーは追撃の手を緩めない。
無音――爪――
無音――我龍戦永斬――
「チィ……さっさと姿を現したらどうだ?」
「……」
アドバイザーの提案に乗ったのか、黒いフードを被った人が現れる。口元しか見えないが、その口は誰かに似ていて、妖しく笑っていた。
「……ククク、女か?我を殺そうとするのはいい度胸だな……しかし、残念なことに我は不老不死……先ほどの射撃力は敵ながら素晴らしいものであったが、相手が悪かったと思って、散れ」
「……(スッ)」
黒いフードを被った人物は何も言わなかったが、スッとアドバイザーの足元に向けて、指をさす。
「何の……ッ!?」
アドバイザーはいきなり跪く。右足を見ればさっきまで塞がっている傷は先よりもひどく傷ついており、膿んでいた。
「馬鹿な……ッ!?まさか、さっきの弾丸は……『魔弾』!?不老不死を殺すためにつくったというのか!?」
アドバイザーの驚きは最もだ。まさかこれほどまでに計画されている暗殺があるだろうだろうか……絶が不老不死であることを知っている人物はかなりの少数だ。運命の子の3人と、妖怪の上層部、絶の部下である風間、その風間の友人である岸蛇程度である。まさかこのいずれかの人物が個人で暗殺してくるわけもないだろう……妖怪は特にだ。絶が全員にトラウマを植え込んでおり、恐怖による支配をしていた時期があるのだから……
ならば、運命の子かと疑うが、そもそも動機が分からない。計画に自分たちが必要なくなったと知った時の彼らの喜びは本物であった。
そして最後の疑問は奴だ……何故、スナイパーライフルを持っている……?さらにはそれで撃てるような魔弾を作り出したことだ……河童にもこれほどの技術力はない……ならば……この目の前にいる敵は……
アドバイザーの頭の中では何千年も前のことが思い出される。
~『貴様は私のご主人様を殺したんだ!』~
~『絶は『幻想郷の敵』と見なされて』~
そう未来から来た敵なのだ……
~『紫は俺を殺すことを了承したのか?』~
「!?まさか、貴様……!」
「やっと……私の正体に気づいたのですか……遅い。遥かに遅い。貴方は……弱い」
妖しい人物はフードを脱ぎ捨てる。そこに存在していたのは……八雲 紫その人であった。
「未来の……八雲 紫……親の体を撃つとは……親の恩も忘れたのか、この愚娘が!」
「いいえ、今の私は復讐しか抱けない……私は……お父様を……絶を殺す!……
漣side
「ここは……?」
漣が目を覚ましたのは黒い空間……どこかと似ている気がするが、そんなことよりも……
「妃香梨……重い……」
妃香梨が自分の上に被さっていることで圧力を感じている漣は力技で妃香梨をどける……妃香梨はブーブーとうるさかったが、周りの空間を確認して、目を鋭くさせる。
「ここは……あそこに似ているわね……」
「え?」
「本物の『私』が死んだ場所……」
「!……ああ」
確かにそう言われれば似ている……あそこは白かったが、色が正反対だということ以外ではほとんど似ている。
「…………来てしまったのか」
「誰だ!」
明らかに漣と妃香梨とは別の声が聞こえ、漣は後ろを振り向く。そして、そこで眩暈が起きそうな光景がみえてしまう……妃香梨も流石に予想だにしていなかったのか、驚きで目を見開いていた。
「もう……止められない……頼む……」
「そんな……なんで……」
「……貴女なの?死んだんじゃ……」
「それじゃない……真実を知った顔じゃない」
「
そこにはもう一人の漣と妃香梨が存在していた。
「一つの計画で渦巻く、
二重に重なるこの記録は終わりへ……
そして世界は絶望へ……
もう途中では誰も引き返せない……
もう戻れない……
永遠が歩く道……
夢の分かれ道……」
???「そして誰もが終焉へと歩を進める……
何時か……誰かが我を倒す時、
その終焉は真実となる……絶望も希望もありはしない……そんな世界に……
あるのはただ一つ……信じられるのもただ一つ……おのれだけだ」