「「無音――我龍戦永斬――!」」
漣と絶は同じ技で攻撃をぶつけ合う。同じ力量で……弾かれ、態勢を立て直し、再び構えて放つ。
「「無音――紅刀――!無音――円――!!」」
霊剣は紅く染まり、円を描く斬撃が衝突する。ひしめく合う剣技はどちらも引けを取らない勢いでぶつかり合って相殺し合う。だが、漣と絶は常に能力を使用していたのだ。
『感覚を絶やす程度の能力』による漣の動きの制限。
『常識を超える程度の能力』によるそれの打ち消し。
そして『常識を超える程度の能力』によるステータスの上昇。
それを『感覚を絶やす程度の能力』による消去。
ほぼそれの繰り返しだった。永遠と繰り返される剣戟の中で漣は一つの感情に支配されていた。それは負の感情とは決していいがたいもの。希望のように全身を明るく包み込むものだった。
お互いは剣を交えることでその心情を察し、理解し合っていた。
二人は距離をとった。最後の一撃だったから。
「……師匠」
漣は絶をその名で呼んだことはなかった。そのため、絶は心底驚いた。
「……本日は有難うございました!」
そう言って漣は絶に深くお辞儀をする。絶は嬉しそうに笑い、そして枯れていたはずの左目から一筋の光が見えた。
「ああ、俺もお前が弟子になってくれて良かった。こちらこそありがとう」
「……じゃあ、これで最後だ絶!」
「おう!来い漣!」
二人は同時に走りだした……明日へと。未来へと……希望へとその足で駆け上がっていった。
絶は剣を前に突き出し、突進する形で漣と相対する。だが、ただの突進でもなく、
槍の切っ先のような形に白い膜のオーラが作り出される。
それはまるで無音奥義――絶――のようであった。
「無音奥義――滅――!!」
「無音…………」
「無駄だぜ!無音の中でこの技を超えれるものはない!」
「それはあんたの常識だ!人の常識は他者へと伝染する!よって、俺の常識でもあった!だからこそ……超えて見せる!」
「……なら見せてみろ!俺を超えて見せろ!」
「ああ!無音――超越――!!」
ザンッッ!!!
「一時的……に全ての常、識……お互いの『攻撃は当たる』という……常識を超え、無敵となったか……は、はははは……見事……だ」
妃香梨side
「打ち崩す天罰よ、振るえていく幻影よ、我が魂の脈動に触れ、
鉤状に揺らめく霹靂となれ!生まれ堕ちよ!『幻想結界』!」
「定めに一軸の煉獄、一重に死を、二重に愛を、刻みゆく我が体に
その爪痕復讐の証として今輝かん!這い上がれ!『滅亡結界』!」
相反するもの同士の攻撃は相殺され、何度も止まぬ結界の雨。
いつしかその鼓動は絶えるだろう……せめてその時までと最後の稽古が終わろうとしていた。
「滅……私を強くさせてくれてありがとう」
「……もう大丈夫か」
「ええ、二人三脚で生きていくわ」
「なら……俺を倒して会いに行くがいい……愛する者のもとへ!」
「分かっているわ!」
「これが俺の最後の
悲しみの清々とした楽園よ、
手伸ばせば届く永遠よ、
染まらぬ過去、希望抱く未来に、
我が存在はなく、永遠と過去に縛られるその姿嘲笑に至り、
我が友のために、我影となりてこの力を振るう!
受けてみよ!そして消え去るが良い!我が至高の結界!『絶命結界』!」
「……なら私も本気でいく!
過ぎ去りし我が悔いるべき過去たちよ、
その姿形黒となりて一つを繋ぎ、
究極至高の天より授けられし、我が幾年の数奇な時間よ、
永遠と我の中で輝き、絶望を乗り越え、滅亡を断る理を得、
運命よ……世界よ……どうか我に……混沌を承諾する力を!
これが罰、ゆえに罪!受け入れる……全てを!見よこれが……私が生まれ変わった証明!『超拒絶結界』!」
「……!もう……お前たちは最高のコンビだ……完敗だ」
「「絶、滅!」」
「滅はもう……俺の中に入った。元々無理やりの分裂だったからな……」
「……!」
「できれば……俺よりも……強くなってほしく……なかった。でも、もう……お、願いだ漣、妃香梨!アドバイザーを止めて、くれ……あいつはきっと前の世界と同じことするつもりだ……止めなければ……せめてお前たちが……運命を変えてくれ」
「……まさか、天照が言っていた世界を破壊するってやつか!?」
「……結果的には……そうだ……後は……俺の記憶を見せる」
「「っ!」」
絶の目を見た漣と妃香梨は急に動きをとめた。
そして静かに……
「「ありがとう……『お父さん』」」
そう呟いたの皮切りに絶はフッと笑い、そして重い瞼をついに閉じた。
???「絶と滅が死んだか……まだ消えてはいないか……
お前たちの素晴らしさは人間としての誇りを失っていないことにある……
どんな人間も力を手に入れれば強欲と傲慢で埋め尽くされる。
だが、お前たちは力を捨てるために縋った……そして「永遠の命さえも全部無くしていいから人間として死なされてくれ」とそう言ったお前たちの覚悟。逃げではない真の生き様を我は見た。いつか転生する時、このことを知っていなくてもいい……だが、ただ一言……ありがとう」