東方二重録【完結】   作:咲き人

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どうも咲き人です。


第九六話「絶ガ望ンダ結末」

「ここが、絶の記憶……?」

 

「そうとも……ここは絶が最初生まれた。言うなれば『第一の世界』。

ここで絶が生まれ、そして次の存在()へと生まれ変わった」

 

 

簡単な記憶のめぐり合いだった。

 

 

前に聞いていた話と同じで両親から残虐なDVを受け、

精神が既に壊れていたために寧ろ大人びており、常に視野が広く、

勤勉な人間へと成長していた。

 

 

 

18歳を迎えた直後のことまで記憶の旅は飛ばされる。

 

 

 

 

 

「このころ、絶はある女を愛していた……その女が絶の家に泊まった日の事だ。

絶は寝ていたその時の映像がこれだ」

 

 

1・2・3ではなく……

 

 

絶の寝室にて……絶が寝ているその真横に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚ろな目で包丁を構える女が存在していた。

 

 

「!?」

 

 

紫は驚きのあまり、眼を見開く。

 

 

「なんで……」

 

「……これが絶の本当の呪いの正体なのだ……」

 

「そんな馬鹿な!?貴様が絶の呪いではなかったのか!?」

 

「違ったのだよ……我さえも勘違いする程だ……絶は『絶望を与える程度の能力』という呪いをかけられている……『あの人』に」

 

「あの人?」

 

「ヴォル〇モートではないぞ。奴には特定の名前がないのだ」

 

「……だからと言って、呪いの原因を討てとでも?この記憶に何の意味がある!?

私は復讐を終えた!運命は変わったのよ!」

 

「それは……未来の我がそう言ったのだろう?」

 

「!」

 

「貴様は我の話を聞かなければいけない……何故なら。未来の我に唆され、力を与えられ、そして過去へと来たのだからな」

 

「くっ……!」

 

「本当の話はここからだ。あの女の名前はメリーと言って、絶とは相思相愛であった。そして、この映像を見ても分かる通り、絶は……」

 

 

ザンッ!

 

 

絶の首元にメリーが持っていた包丁が突き刺さる。

 

 

「これも『絶望を与える程度の能力』の効果だ。メリーは絶の妻になれる唯一の存在だったから、この能力の対象になったのだ」

 

「……」

 

「だが、これで終わりでもない……絶に更にこの能力が発動して、メリーと高校の仲間たちは全員死んでいる……そういう光景を見させられた」

 

「そして……」

 

「そう……その瞬間に、首元の傷が原因で死に、転生する……前世()の記憶を持ってな……そして滅を生み出して……」

 

 

そこからは想像に難くない。もう一度、同じ性格の両親の下で生まれ、同じ孤児院で育ち、同じ人を愛して、運命を変えようとしたのだ。

 

 

精一杯に……だが、人間一人のできることなどたかが知れている……

 

 

結論は目に見えていた……無理だったのだ。初めから……

 

 

だが、諦めなかった。1回目が駄目なら2回目……それもだめなら3回目と心は壊れてしまったが、滅がいた。 

 

 

「ゲームスタートだ!」

 

 

まっすぐだった。転生して絶望しても尚、立ち上がったのだ。

 

 

「第3の世界は原始地球の時代から転生してしまった。目の前には溶岩と噴煙しかないような地獄のような世界だったが、絶はいつまでたっても前向きであった。

大量の鉄資源が存在するのなら武器防具が創れる。不老不死なら時間も余裕であると、

後は耐えればいいと……」

 

 

そして約四十億年後……八意永琳と協力し、人に技術を提供した。

 

 

「そしてそやつらが月へと行って何千年かした後、ありもしない奇跡が起きた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここらへんも草が生えてきたな……もう放射能はなさそうだな……う~ん!

良い朝だ!何日ぶりの太陽かな!さてと、鍛冶はいいからこんな日なんだし、

散歩でも……と、何の用だい?」

 

 

絶の前に現れたのは後の大天狗。今は下っ端だが、立派な絶の部下だ。

 

 

「それが、山に見知らぬ女妖怪が現れたと言うんでぇ!」

 

「何?」

 

「しかも親方()様を探しているって言うもんで、あっしらはたまげました!」

 

「ふむふむ……取り敢えず、その人をここに連れてきなさい……

3拍で」

 

「へい!」

 

 

ぱーん、ぱーん、ぱッ

 

 

「連れてきやしたぜ!親方様!」

 

「相変わらず仕事が早いね。で、一体どちらさ……」

 

 

 

 

 

絶から言葉がなくなった。何故なら絶の目の前にいる人物は……

 

 

 

 

 

「メリー?」

 

 

 

 

 

自分が殺した愛しい人だったからである。

 

 

「絶……やっと、会えたッ!」

 

「訳ありみたいでやんすね……じゃ、あっしはここいらでお暇させていただきやす!」

 

 

そう言って、天狗はいなくなった。

 

 

「なんで……!死んだんだ……間違いなく、俺が、この手で……」

 

「私は……あなたと同じ方法でここにいるのよ」

 

「転生!?だから女妖怪って……!」

 

「絶……私……貴女に詫びたくて……!」

 

「俺もだ……会いたかったんだ……謝りたかったんだよ、メリー!」

 

 

二人は強く強く抱きしめ合った。

 

 

 

「そして、ククク!もうお分かりかな?八雲紫。そうお前が今持っているその写真に写っている双子の子は絶とメリーの子なのだ……」

 

「……こんなの見せつけられれば誰だって分かるわ……」

 

「だと思っているのだろう?」

 

「何ですって?」

 

「ならなぜ、メリーは死んでいる?双子の子は生きていない?

その理由はまだしらないだろう……」

 

「……」

 

「昔、ここよりも少し離れた場所に『(ドラゴン)』が存在していた」

 

「幻の爬虫類……そんなものが、本当にいたと?」

 

「ああ、恐竜の進化形であった。そして竜はこの映像の数年後に絶滅した」

 

「!?」

 

「原因は……竜の主食が人間の赤子だったからだ」

 

「人間の……赤子……!まさか、絶の双子の子を!?」

 

「そう喰ったのだ。竜そのものは手を出さず、その時期は天狗に命令させていた。

種族の繁栄をとるか、人間の赤子の命をとるかの2択を迫ってな……」

 

「……卑劣な手を使っているとは言いませんが、何故天狗は他の子どもを攫わなかった?」

 

「絶が昔、何と言われていたのか覚えておるだろう……」

 

「そうか『人間と妖怪の支配者』……その者が定めた最強の条約。不可侵条約。

妖怪は人間の陣地から人間を、人間は妖怪の陣地から妖怪を攫う・殺すをしてはいけない」

 

「そう……絶は自分自身の定めた条約により、首を絞めることになったのだ」

 

「滑稽ね」

 

「皮肉にもこの時、双子の子を攫った天狗は、『風間……輪瞳(りんどう)疾風(はやて)の父親』であった。そして、襲撃を成功するために『岸蛇の父親』に手を借りていたのだ」

 

 

 

 

 

その日は雨が降っていた。

 

 

「なんだ!?な、何故、家が燃えて……メリー!?メリー!どこにいる!?」

 

「こ、ここよ……」

 

 

声は瓦礫の下からであった。

 

 

「め、メリー!今、救助を……!無音――絶――!」

 

 

瓦礫を一瞬で消滅させる。

 

 

「め、メリー……」

 

「私のことは、いいから……はぁ……はぁ……子供たちを……」

 

「どこに!?」

 

「て、天狗が……あっちの山に……(ドサッ)」

 

「め、メリー!?気を失っているだけか……」

 

「絶殿!?どうしましたか!?」

 

「村長!良いところに!メリーを医者の所に!」

 

「こ、これは酷い傷だ……!急いで手当てを!」

 

「「は、はい!」」

 

 

「頼みます!」

 

 

絶はメリーが指した方向の山へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

山にて……

 

 

絶の速さはトップクラス。天狗のスピードさえも上回っていた。

そして山の洞穴に天狗が入っていくのを確認し、鉢合わせる。

 

 

「『颯天』!『崖蛇』!何故お前たちが!?」

 

「くっ!早い到着ですね!弁明は間に合わないでしょうが、私たちも命を握られているのです!」

 

「ここの主にか!だが、うちの子は返してもらうぞ!」

 

 

 

 

「くかかか!良い匂いがするのぉ……」

 

「地竜様……ッ!」

 

「てめぇか!天狗たちに子供を攫わせているのは!」

 

「血気盛んな男だ。肝は苦そうだ……おお!おお!おい、天狗。そちの手に持つ赤子美味そうじゃのう!さぁ、持ってくるがいい!」

 

「死ね屑が!」

 

 

絶は飛び掛かり、霊剣で斬りかかろとするが、横から地竜の尻尾が強烈な一撃をかまし、絶を吹き飛ばす。

 

 

「絶様!」

 

「あの人をいとも容易く投げ飛ばすとは……」

 

「早くしろ天狗!二人も赤子を連れてきたのはいいが、飯を食わせぬとはどういうことだ!」

 

 

どうやら地竜はかなりの短期のようで、天狗が持っている子供を無理矢理食おうと、

巨大な手を伸ばした。

 

 

「させねぇ!」

 

「ええい!うっとおしいわぁ!」

 

「「絶様!」」

 

 

颯天と子供を庇うように前に出た絶は地竜の手に弾かれ、壁に衝突する。

 

 

「さっさと寄越せぇ!」

 

 

今度は口を開き、颯天ごと喰らい尽くそうという魂胆なのだろう……

これならば絶も手出しできないと踏んで……

 

 

「うおおおお!」

 

 

絶は一瞬のうちに移動し、颯天を抱えて、回避する。

 

 

「大丈夫か颯天!?」

 

「何故、許してくれるのですか!?私は、とんでもない間違いを!」

 

「悔やんでいる暇があるならその子たちを連れて逃げろ!」

 

「そうはさせんぞぉ!」

 

 

地竜が足踏みをすると入り口が落石により、閉じ込められる。

一瞬の暗闇に気を取られ、次の瞬間には……

 

 

「ぐああ!」

 

「崖蛇!」

 

 

崖蛇は尻尾にはたきつけられ、子供を手放してしまう。

 

 

「馳走じゃ、馳走じゃ!」

 

 

そう言いながら子供に向かって手を伸ばす。

 

 

 

「させ、ねぇえええ!!」

 

 

 

絶は必至に足を動かす。

だが、足りない……

 

 

グシャアアアア!!

 

 

鮮血が飛び散る……

 

 

「お前……たちぃ……」

 

「何をしてくれているんじゃワレェ!!」

 

 

颯天と崖蛇は絶の子供を庇い、地竜の手に貫通していた。が、決して子供には届かせなかった。

 

 

「なんで……」

 

「ごほぉ……ッ!わ、れわれにも……子供がいます」

 

「はぁ……はぁ……俺たち……は、未来を……託さなければいけない……!」

 

「ええい!この役立たず共がぁ!」

 

 

地竜は二人の死体を投げ飛ばし、再び、赤子の元へと移動を開始するが、

 

 

「無音――滅――」

 

「ぐるううおおおぉぉぉぉ!?」

 

「死ね死ね死ね死ね!これは今までの赤子の分だ。これは今までの被害者の家族の分だ!これは今までの天狗の分だ!これは颯天と崖蛇の分だ!」

 

「GYAAAAAAA!?」

 

 

 

 

数分後……

 

 

「はぁ……はぁ……すまない……後で墓を造ってやるからな……さて、二人とも。

帰……ろう……か」

 

 

 

 

 

 

 

そして、子供も見て、霊剣を消した。

 

絶は怒りに燃えていた。

 

死んだ地竜に……

 

強烈な怒りに……

 

 

すぅっと息を吸い込み、ばっと吐き出す勢いのまま叫ぶ。

 

 

「このクソトカゲが!死んだくせにこの密閉空間に毒ガス噴き出すとか何考えてんだよこの愚図がああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

二人の赤子の死因は……毒であった。

 

 

 

 

 

帰れば帰っても地獄であった。

 

 

「絶殿……申し訳ございませんが、奥方様は……我々の技術では到底……今、息を引き取りました」

 

「治せなかったのか……」

 

「はい……誠に申し訳ございません」

 

「いや、いい。彼女も諦めていた。寧ろこの時間まで生き延ばしてくれただけで感謝しているはずだ。少なくとも俺は……」

 

「いいえ、奥方様はまだ諦めておりません」

 

「え」

 

「持ってきてください」

 

 

そう言って、医者が抱えていたのは一人の赤ん坊。

 

 

「この……子は?」

 

「奥方様が最後の力で生みました……赤子です」

 

「三つ子……だったのか?」

 

「私たちは一人の命を見捨て、一人の命を救いました……後は、絶殿の意思だけです」

 

「ありがとう村長。皆……初めまして俺の子よ……お前は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が晴れ、虹が見えた。

 

 

「名前は……決めた……虹の一番外側で全ての始まりの色……『紫』だ」

 

 

「え?」

 

 

紫は耳を疑った。だが、紛れもない事実である。

アドバイザーはクククと怪しく笑って、転げまわる。

 

 

「そう!これが貴様への最後のプレゼントだぁ!お前の名前は八雲 紫!

絶があの子に付けた名前も紫だ!凄い偶然だなぁ!」

 

「そ、そんな……あるわけ……あるわけない!だって絶は……!!一度も……」

 

「そうさ苗字を言ったことはないだろう?そう!そうなのだよぉ!絶の本名は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、八雲 紫。俺は『八雲 絶』だ!」

 

 

彼は絶望の中でただ……笑っていた。




???「揺れ動く旋律が、巨大な力を巻き起こす。
人が奏でる音のように……オーケストラのように……
いつまでたっても響き渡る良い音色だ……
我の感情はないが、常にこの音を聞いている時だけは……
自分自身が笑っていると錯覚できる……良い趣味であり、いい音だ





絶望の悲鳴というのは……」
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