東方二重録【完結】   作:咲き人

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どうも咲き人です。


第九八話「愛」

漣と妃香梨が閉じ込められていた世界は徐々に綻び始め、遂には崩壊する。

そして目の前に広がる景色にふたたび言葉を失う。

 

 

紫がアドバイザー……否、絶を刺し殺したのだ。

 

 

同時に紫もアドバイザーが見せた過去の記憶の中から再び現実に戻ってきてしまう。

 

 

「嫌あああぁぁぁ!!」

 

 

紫は既に壊れてしまっていた。漣と妃香梨は何も言えなかった。二人もまた絶から真実を聞かされた身。泣きたい気持ちは山々だが、ここで泣けば誰が紫を支えているというのだ。ただでさえ、藍が支えているのに……それでも崩れているのに……

 

 

「紫……」

 

 

妃香梨が彼女の名を呼ぶ……それに合わせて紫は叫ぶ。

 

 

「私は……愚かだ!何が賢者だ!何が夢だ!何が復讐だ!お父様がいたから創れたのに……!描けてきたのに……!私は自分の弱さが何より……憎い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なく……なよ……

 

 

 

 

 

どこかでか細い声が聞こえた気がした。

 

 

「何!?まさか……絶!」

 

 

漣は絶の体を凝視する。酷い量の血は流れ、挙句の果てには凝固しているものまであるが、それでも魔剣に刺された場所からはまだ血が流れている。そして小刻みに動いている。もう死んでいるはずなのにと驚くのも無理はない。

 

 

「「絶!」」

 

「お父様ぁ……」

 

「泣く…………な………………笑……ゴフッ!ゴホッ!」

 

「絶!もういい!あんたは呪いに勝ったんだ!生きて勝てたんだ!」

 

「………ぁ……………ぁぁ…………」

 

「そうよ絶!私たちは自分で生きられるわ!安心して頂戴!」

 

「………………………フ」

 

「お父様……これからも……愛して……くれていますか?」

 

「…………」(ニコリ)

 

 

何も言わなかったが、微笑んだ。その笑顔からは当然だろと言っている気がした。

そして遂に瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲 絶――――死亡――――

 

 

 

 

 

「何故だ……何故絶望しない!?」

 

 

絶の体から噴きあがった黒い煙は口を尖らせてそう言う。

それをざまあみろと笑いながら漣は怒鳴る。

 

 

「アドバイザーよ!俺達は決して絶望しねぇ!お前の手の上で踊るくらいなら絶の方がましだったぜ!」

 

「ええ、アドバイザー!私は紫を歪ませたあなたを許さない!」

 

「……これは怒りの聖戦よ……お父様の意思は私たちが引き継いで見せる!」

 

 

「……何が絶の想いだぁ?」

 

 

三人の意思をぺっと吐き捨てるかのように反論するアドバイザーにはいつもの怪しい笑みが存在しなかった。

 

 

「貴様等なぞに絶の何がわかる!?我が何億という年単位で絶と共にいたと思っている虫けら共!絶を知ったように語っていいのは我とメリーだけだ!我は世界を恨んでいるぞ……我だけでなく絶さえもだ!この世界は狂っている……!いや、『この世界を創った奴は狂っている』!」

 

「この世界の創造者だと……?」

 

「そうだ……我は奴に復讐する!この世界を滅ぼし、奴の思惑を全て踏みにじってやるのさ!我は奴の全てを台無しにする復讐の化身となる」

 

「……そうはさせないぜアドバイザー!」

 

「アドバイザーだと……?そんな仮の名などもどうでもよいわ!

我が真名は『パンドラ』!絶望の箱に眠りし、禁忌の力……今こそ世界に復讐するために使用する!」

 

 

絶から出た黒い影は煙のように空へと辿っていって、やがて消えていった。

 

 

「……消えた」

 

「ああ、妃香梨。結界はどうだ?」

 

「無理ね……アドバイザー……じゃなくて、パンドラがつくった魔法陣のせいで結界の力を分散しているわ」

 

「しょうがない……パンドラのやつも精神体だけだからすぐには動けないはずだ……」

 

「そうでしょうね……それにしても漣と妃香梨はどこにいたの?」

 

 

紫の質問にどう答えるべきか、少し悩んだが、思い切って、

 

 

「絶と最後の戦いをした」

 

「私は滅とね……」

 

「そうだったのね……いえ、もう大丈夫よ」

 

「全く顔色が悪いのに無理すんなよ。俺達『兄弟』に頼ってくれよ」

 

 

漣の一言に、紫はやはりと呟いた。

 

 

「漣……やっぱりあなたは……いえ、あなたたちは……」

 

「ああ、俺達は……死んだ絶の子の転生者だ」

 

「……改めて、初めまして」

 

「ふふ、初めまして紫」

 

「ああ、初めましてだ。っと、帰ろうぜ。我が家に……」

 

「ええ」

 

「そうね……」

 

 

 

 

 

『計画始動編~紫色の決意~』終了。

 

 

 

 

 

最終章……始動。




???「遂に真実が明らかになったか……咲き人よ。無駄に引っ張り過ぎなのではないか?」
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