文谷が転移した場所は妖怪の山にある幻想風穴……そこにいた黒いローブを被った男はゆっくりと立ち上がり、大鎌を肩にかけ、相対する。
文谷も五行の刀を抜く。
「……話は聞かないが、貴様は?」
「……我の名は
「ふ、虹……ね。この世界が俺に何を求めているかは知らないが、漣には俺の世界が危機に陥った時に助けてくれた借りがある。それを今、返させてもらうぜ!」
「よかろう。貴様の恩は我は知らないが、我は絶滅を運ぶ者。我が来た場所に絶滅ありける故に貴様を絶滅させる」
先に仕掛けたのは文谷。文谷はダイ・アウターの目の前にまで迫り、刀を横一文字に振る。瞬時のところでダイ・アウターは大鎌の持ち手で弾き、分野が下がったところに刃を振う。文谷はギリギリで防ぐ……が、
(お、重い……!)
一撃の強さが尋常ではなく、吹き飛ばされる。命を刈り取るはずの大鎌で吹き飛ばされる程の威力ともなると、流石は世界に危機を陥れただけはあると感服するが、あ、いや……結構他の奴らもそんなもんだったか。そう言う感じかと考えると笑いが起こる。一筋縄ではいかぬないってことか……上等!
ここで、反撃とばかりに文谷の激しい刀の乱舞。リーチは長いものの近接ではやりにくいであろう大鎌でその乱舞を弾ききる。更にスキあらばカウンターまで加えてくる。流石の腕前だと言わざるをおえない。第三者視点から見れば文谷が一歩リード、有利に見えるが、文谷には恐れていることがあった。
(あいつの能力は一体何だ……?ただ能力だけじゃない。能力を使っていなくてもこれほどの実力者とは……不気味なオーラを見ただけでは得体の知れなさナンバーワンだな)
ここまで一言も言葉を交わさないお互いだが、刀と大鎌……両者の武器で、死合っていればおのずと理解してしまうのが、文谷から見てのダイ・アウターの不気味さを余計に増している。相手の次の一手もその次の一手もプロ同士の将棋のように分かってくる。
(決着をつけるためには恐らく……)
無限にも近い手の内の中からあるのは一つ。能力でカタをつけることだ。だが、こういう敵は大体不老不死というのが、テンプレだから殺せない……フランの時みたいに封印しなければいけないな……文谷は懐から一冊の本を取り出し、『止』の文字をダイ・アウターへと放つ―――――
その瞬間だった。その一瞬でダイ・アウターは姿を消す。『追尾』をしても反応がない。だが、その後すぐに自分の後ろから気配を察知し、大鎌を前転して回避し、すぐさま飛翔する。ザンッ!大鎌が地面に突き刺さるとそこから罅がはしり、周囲の地面が粉々に砕け散る。だが、ここで文谷、閃く。
(今のテレポーテーションがあいつの能力か……?なら今『封印』したが……)
文谷の視界に凄く高い杉の木が入る。そしていつの間にかダイ・アウターがたっていて、大鎌を振ってくる。この距離じゃ、普通は届かないが、空間に切れ目が生じ、その斬撃が広がっていく。
「くっ……!『絶対防御』!」
紙一重で文字が壁になる。
(今のは……木にテレポーテーションしたのか?『瞬間移動』じゃなければ『空間移動』か?それなら空間に歪みができる。すぐ俺の背後に回って来た時、そんなものは感じられなかった。むしろ自然すぎた……まるで『最初からそこに存在していたかのような』……待てよ?もし、それが奴の能力なら……)
「確かめるか……奏符『千本桜』!」
五行の刀から大量の桜の花びらに似たピンク色の紙吹雪のような弾幕が風に誘われるようにひらひらと、しかし、軍を率いるように千もの桜の木の花びらが一気に舞い、大勢で、ダイ・アウターへと向かう。花びらに触れる直前にダイ・アウターは瞬く間に消える。文谷は自分の周囲に花びらを散らばせる……そして、
「1……2秒」
さっきから行っている『追尾』で奴が反応しなくなってからもう一度現れるまでに約2秒かかる……それを解った上でこの行為に出た。そう……封印である。全てを書き終わるまでに最低でも一分以上かかるこの能力だが、奏符『千本桜』で最高で15秒ガードしていられる……3秒を経過したためにどこかに転移しているのは知っている。だが、少しばかり遠すぎる……流石に二度も背後をとってくるわけではなかったかと、ここで4秒が経過する。
5…………6……
「我は絶滅を運ぶ者……一重に繁栄を望み、二重に絶滅を持ってやってくる。そしてまた繁栄と絶滅……常にそれの繰り返しだ。その中の狭間。虹の糸の一つよ……そのような世界に何を求める」
「俺が望むものは、今からの未来さ」
「……その先に絶滅が待っていたとしてもか?」
「俺が生きている間はそうはさせない……!それが俺の
「……そうか……ならば我が全てを絶やし、滅そう!」
「上等だ!」
15秒……奏符『千本桜』のスペルカードの制限時間が過ぎる。
「日向『カゲロウデイズ』……!ガ……ハッ!」
文谷はスペカを発動した瞬間に吐血する。だが、顔を強張らせたのはダイ・アウターであった。
「……貴様」
文谷は腹部に多大なダメージを受けたが、ちゃんと掴んでいたのだ……腹部に刺さったダイ・アウターの左手を……文谷はダイ・アウターの能力は四肢を分裂させ、バラバラに移動することも考えに含めながら行動していたのだ。
「……やっぱりか……!」
激痛をこらえながら敵の能力を把握する。だが、同時にまずいとも思っていた。すぐ五行の刀で左手を切り捨てて、ダイ・アウターへと飛び掛かる。左手を失ったダイ・アウターは本来両手で使う大鎌を片手で使い、文谷を攻撃をいなしているが、その体を吹き飛ばされる。文谷の方が致命傷のはずなのにさっきよりも身体能力が向上しているのだ。流石のダイ・アウターも焦りが見え始め、更に後退する。敵がひるんだと追撃の機会だと文谷は攻め込む。だが……突如としてダイ・アウターは両目を閉じる……文谷は驚きながらも刀で刺突する。それを頭を少し横にずらすだけで回避される。刀を折り返し、横に振るが、振る速度よりも早く上半身を後ろへと曲げられる。しかも、右手で持っていた大鎌が異様な軌道を描き、文谷を攻撃する。その鋭利な刃が触れる前に刀で防ぎ、反撃を試みようとした瞬間、
「がはっ!?」
大鎌の持ち手で傷ついた腹を強打され吹き飛び、木にぶつかって止まるが、吐血は止まらない。そして、倒れ立ち上がろうとしている。スキも与えないつもりか、止めの一撃を放とうとするダイ・アウター。もし刀で防ごうとしても角度の問題で防ぎきれず、大鎌が突き刺さってしまう。まさに止めの一撃なのだ。
文谷ももう駄目だと思った次の瞬間―――――
キンッッ!!
ダイ・アウターの大鎌は盛大に持ち主の元を離れ、刃はこぼれ、地面に刺さる。ダイ・アウターが振り返ると、シャンンン!!上半身と下半身が分かれ、体が朽ちていく。やったのは文谷であった。最後の力を振り絞ったからか、息を切らし、地面に倒れる。そして遠くに見える自分の右手には一枚の光輝くスペルカード、無音『幻本』があった。それを見て、ふっと笑うと瞼を閉じた。
(はぁ……悪い気はしないな……)
???「まずは一勝……次に二勝……さあさあ、勝ち続けてくれ給えよ」